研究活動上の不正行為(盗用)の認定について(2015-02)
【基本情報】
番号
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2015-02
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不正行為の種別
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盗用
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不正事案名
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研究活動上の不正行為(盗用)の認定について
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不正事案の研究分野
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社会学
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調査委員会を設置した機関
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大学
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不正行為に関与した者等の所属機関、部局名、職名
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准教授
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不正行為と認定された研究が行われた機関
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大学
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不正行為と認定された研究が行われた研究期間
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-
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告発受理日
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平成27年5月20日
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本調査の期間
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平成27年6月11日~平成27年8月27日
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不服申立てに対する再調査の期間
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なし
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報告受理日
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平成27年10月22日
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不正行為が行われた経費名
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科学研究費補助金、学術研究助成基金助成金
※盗用と直接的に因果関係が認められる経費の支出はなかった
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【不正事案の概要等】
◆不正事案の概要
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- 告発内容及び調査結果の概要
本件は、学外の研究者(以下「申立人」という。)から、本学紀要に掲載された准教授(以下「被申立人」という。)の論文2報に、申立人と被申立人が研究分担者として参加する共同研究における現地調査の活動状況について、申立人がその成果として作成した「報告書」の文章を、申立人に無断で、被申立人の単独名義で2014年2月及び2015年2月に発行された本学紀要に公表したとの申立てを受けて、予備調査を開始し、その結果申立ての合理性を認め、本調査委員会を設け、関係する資料の精査及び研究者への聞き取りにより事実関係の調査を行った。
調査の結果、研究活動における不正行為である「盗用」が行われたものと認定した。
【申立人から申立てのあった不正の態様及び不正行為であるとする理由】
(1)不正の態様
申立人が研究分担者として参加する共同研究における現地調査の活動状況について、申立人がその成果として作成した「報告書」の文章を盗用した疑い。
(2)研究活動における不正行為であるとする理由
申立人が研究活動の成果として作成した報告書を無断で被申立人の成果として本学紀要に掲載し、その内容がほぼ同様な文章であることが認められたことは不正な行為であること。
- 本調査の体制、調査方法、調査結果等について
(1)本調査委員会における調査体制
8名(内部委員4名、外部委員4名)
(2)調査の方法等
1)調査対象
ア)対象研究者:准教授
イ)対象論文等:申立人から不正行為(盗用)の疑いがあると指摘のあった本学紀要2編
2)調査方法
共同研究における申立人が執筆した「報告書」と、被申立人の二つの論文とを比較検証するとともに、申立人、被申立人及び共同研究代表者から聞き取り調査を行い、共同研究における「報告書」の取扱い等について確認した。
(3)本事案に対する本調査委員会の調査結果を踏まえた結論
申立人から研究活動における不正行為(「盗用」の疑い)があると指摘があった、「被申立人が本学紀要2編において発表した2論文」に関し、本調査委員会が実施した調査結果を踏まえた大学の結論は以下のとおり。
(結論)
調査の結果、被申立人の論文2報に、共同研究における申立人が執筆した「報告書」から広範囲にわたる無断流用が認められたことから、大学における規程及びガイドラインで定義する研究活動上の不正行為である「盗用」(他の研究者のアイディア、分析・解析方法、データ、研究成果又は用語を当該研究者の了解若しくは適切な表示なく流用すること)が行われたものと認定した。
(認定理由)
本件不正行為は、共同研究として研究活動を遂行する中で、海外で行った実地調査の成果として、申立人が記録と感想を取りまとめて文章化した「報告書」を、被申立人が共同研究における共有資料として占有できるものとの錯誤によりなされたものであり、被申立人の研究倫理に関する重大な認識不足が背景にある。
複数の研究者による共同研究において、その活動の成果として共同研究者間で報告されたものであっても、他の研究者の文章を無断かつ適切な表示なく、被申立人自らが取りまとめたかのようにして流用していることから「盗用」と判断した。
- 認定した不正行為に直接関連する経費の支出について
「盗用」を認定した論文2報は、科学研究費補助金(基盤研究(B)、2012~2014年度)及び学術研究助成基金助成金(基盤研究(C)、2012年度~2014年度)の研究成果の一部とされているが、盗用とした論文2報に関連して支出された費用等はなかった。なお、盗用とした論文2報が掲載された本学紀要の発行に係る費用は、本学経常研究費より支出されているが、当該の費用及び論文の取下げに係る費用については被申立人に返還を求めないこととした。
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◆研究機関が行った措置
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- 競争的資金等の執行停止等の措置
競争的資金等に直接の因果関係が認められる経費の支出はなかったが、競争的資金及び学内個人研究費について執行停止とした。
- 被申立人に対する大学の対応(処分等)
本調査委員会による本件不正行為に関する調査報告書を受け、平成27年9月16日、就業規則に基づき人事審査委員会を設置し、被申立人の懲戒事由の該当性等について審議し、平成27年9月30日付で被申立人を懲戒処分とした。
- 論文の取下げ
盗用とした論文2報について被申立人に取下げを勧告し、被申立人から取下げの申出を受けたことから、盗用論文掲載の紀要を、当該部分を欠頁として再印刷し、関係機関へ配布することとした。
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◆発生要因及び再発防止策
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本件は、論文執筆に際して当然必要とされる手続(他の研究者の成果に対する使用許諾や適切な引用手続等)に関して、被申立人の研究倫理に関する重大な認識不足から生じたものであり、学内での研究者としての基本的な心構えが徹底されていなかったことによる。
大学としては、文部科学大臣により制定された「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」及びそれに則した本学の研究倫理に関する規程等の周知徹底を図り、研究活動上の不正行為に関する研修等による研究倫理教育を更に強化する。
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◆配分機関が行った措置
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科学研究費補助金及び学術研究助成基金助成金について、盗用と直接的に因果関係が認められる経費の支出はなかったため、返還を求めるものではないが、科学研究費補助金及び学術研究助成基金助成金の成果として執筆された論文であることから、当該資金への申請及び参加資格の制限の対象となる。このため、資金配分機関である日本学術振興会において、資格制限の措置(平成28年度~平成30年度(3年間))を講じた。
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科学技術・学術政策局研究環境課
研究公正推進室
電話番号:03-6734-3874
メールアドレス:jinken@mext.go.jp