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特定非営利活動法人 アサザ基金

自分の頭で考えられる人になってください!

所在地…〒300-1233 茨城県牛久市栄町6-387
TEL…029-871-7166 FAX…029-871-7169
URL…http://www.asaza.jp/ E-Mail…asaza@jcom.home.ne.jp

茨城県牛久市

1 団体の概要

代表者名…飯島 博
設立年月…1995年 認証日…1999年11月30日
有給スタッフ数…常勤/10名、非常勤/0名
事業規模(09年度決算収入)…59,076,884円
(内訳:会費907,500円、寄付金2,883,396円、委託事業収入43,900,106円、助成金9,055,000円、その他2,330,882円)

活動の目的・趣旨

 霞ヶ浦、北浦流域での、自然や文化などの保全や復元の活動を通じて、霞ヶ浦・北浦流域全体の自然や文化などを再生させるとともに、人と自然、人と人との関係を再構築することによって、霞ヶ浦・北浦流域を含む地域住民のための、より豊かな環境および共生の文化を創出することを目的とする。

団体の設立経緯

 アサザ基金は、1981年に設立された茨城県・霞ヶ浦北浦流域のネットワーク組織「霞ヶ浦・北浦をよくする市民連絡会議」(現在、14団体と約50名の会員で構成。以下、「市民会議」)の一事業部門として設立された。
 1984年頃から「市民会議」では、霞ヶ浦の水質調査等を継続して行ってきた。しかし、90年代に入り、流域の水質悪化や生態系の破壊が深刻さを増し、調査だけの活動に行き詰まりも感じていた。また、行政の縦割り組織の壁や、研究者の個別的専門的知識内だけでの活動にも限界があった。
 そうしたなか、調査結果を市民に伝えていく啓蒙的な活動だけでなく、具体的な解決策につながる環境学習が必要だという機運が高まっていった。そして、1995年に、湖の水辺に群生する水草「アサザ」を守ろうという学校での取り組みから始まったアサザ基金の活動「アサザプロジェクト」は、学校をはじめ、市民団体、企業、農林水産業や行政が協働する、霞ヶ浦北浦流域全体をカバーするダイナミックな活動へと発展していった。

主な活動内容

 教育を軸に地域の活性化と環境保全を一体化してすすめていく霞ヶ浦再生事業「アサザプロジェクト」として、以下のような多様な活動を展開している。

1.湖や水源地の自然再生事業

 湖岸植生帯の復元事業、企業と連携した水源地保全の復田と酒米づくり

2.環境教育に関する事業

 学校出前授業、学校ビオトープネットワーク、子どもと大人の協働によるまちづくり

3.科学技術の振興や脱温暖化・循環型社会形成を進める事業

 なたねの栽培から廃食の回収、軽油代替燃料化、利用までを地域で行うバイオマスタウン構想、ITを利用した流域環境モニタリングシステム、農業・漁業・流通業との連携による魚粉(外来魚)を活用した新しいビジネスモデルの展開

4.その他の事業

 常陸川水門の柔軟運用等の政策提言、講演活動、インターン教育等

2 主な教育関連事業の紹介

事業名称 アサザプロジェクト

出前授業を中心に地域に展開する環境教育

 「アサザプロジェクト」とは、アサザ基金が進める多様なプロジェクトの総称であり、環境教育を軸として、地域の活性化と環境保全を一体化して進めていく事業である。
 アサザ基金の環境教育は、個々の学校の教育、主に総合学習の時間での出前授業を起点とする。出前授業を進めていくなかで、地域の住民の協力を得ていき、地域とのつながりをつくっていく。学校での子どもたちの学習を通して、地域で失われたつながりを取り戻していくことができるのである。さらに、そのつながりは、広く霞ヶ浦北浦流域全体へ、そして行政や企業等との協働へと発展する。
 加えて、アサザ基金が取り組む、教育のためのネットワークを地域や環境保全、社会のネットワークとして生かしていく試みは、子どもたちが地域とのつながりを持つことで広い視野を持った学びができるという利点をもたらしている。子どもたちも地域も環境も、共に育つことが、アサザプロジェクトの大きな特徴である。

環境教育を軸に、地域の活性化と環境保全を一体化して進めていくアサザプロジェクトの全体像
 環境教育を軸に、地域の活性化と環境保全を一体化して進めていくアサザプロジェクトの全体像

ビオトープは装置に過ぎない

 出前授業の進め方は、その地域の自然の特性や学校の状況等により、学校ごとに異なるが、大まかには次のように進められる。

1.つかむ――生きもの(他者)の視点に立つ

 生きものの「体のつくり」「くらし」「すみか」を学び、生きものの視点に立つ方法や科学的な視点の基本を学ぶ。

2.深める――生きもの(他者)の視点で課題発見

 学校にビオトープ(池などの野生生物の生息する空間)を作り、野外観察を通して、生きものを観察する。生きものの視点に立って観察することで、生きものたちを取り巻く課題に気づき、解決策を考えることができる。

3.はたらきかける――課題解決のための行動

 2.で発見した課題の解決のために、生きものの視点と人間の視点で提案をする。参加や行動を伴った学習ができる。まちづくりの提案への展開もできる。

4.つながる、ひろがる――交流から協働へ

 学習成果を他校と発表しあい、共有し、意見を交わしあう。子どもたちのネットワークが広がることにより、地域のネットワークも広がっていく。

生きものの観察をする子どもたち
生きものの観察をする子どもたち 

 このように、アサザプロジェクトの環境教育は、ものの考え方から最終的には地域の課題解決に実際に取り組むところまで広がり、深まるという特徴がある。出前授業では、学校に子どもたちが作ったビオトープは学びのためのひとつの装置に過ぎない。練られたプログラムのなかで、ビオトープを活用した総合学習が展開できる。

大人の仕事のプロセスを経る

 アサザ基金の環境教育なかでは、子どもたちは、学校内だけでは経験できない貴重な体験をすることができる。一つの事例として、2005年に牛久市立神谷小学校で始められた谷津田(やつだ)再生事業がある。
 「谷津田」とは、谷地にある田んぼであり、大型の流入河川のない霞ヶ浦・北浦では、この谷津田の一つひとつが大切な水源となっている。しかし、現在、谷津田は耕作放棄が増えて荒れている。
 2005年、アサザ基金が出前事業を行った神谷小学校の4年生は、生きものの視点で学校付近の環境を観察するなかで、谷津田の荒廃が生きものたちの道を閉ざしていることに気づいた。そこで、子どもたちは生きものの道をつくるために、土地を所有する牛久市への提案、地元への計画説明、測量や生物調査に基づいた設計図の作成、工事という実際の公共事業の段取りを踏んで、大人や専門家の意見も聞きながら、3年がかりで谷津田の再生を実現させた。まさに、アサザ基金の提唱する「市民型公共事業」を子どもたちが実現したのである。
 小学校の高学年の子どもたちが、数日の職場体験などではなく、大人の仕事のプロセスを体験する機会は、滅多にない。貴重な経験をした子どもたちは、環境についてだけでなく、地域、社会の仕組み、コミュニケーションの大切さ、仕事の大変さとやりがいなど多くのことを学ぶとともに、将来の仕事に対する夢を膨らますことであろう。
 その後、神谷小の事例をモデルケースとして多くの谷津田が再生され、企業との協働事業にも発展している。

地元の人々に計画を提案する子どもたち
地元の人々に計画を提案する子どもたち 

3 事業の成果と課題

真の理解につながるプログラムと教える技術

 アサザ基金の出前授業による環境教育は、牛久市だけでなく、現在は霞ヶ浦流域の28市町村、約200校、年間延べ10,000人に及ぶ。また、秋田、東京、千葉、三重、京都、九州、沖縄等など全国でその地域の環境に合わせたプログラムを展開しており、現在も依頼が絶えない。
 このように、アサザ基金に多くの出前授業の依頼が舞い込む理由の一つが、体系的なプログラムと教える技術の高さである。
 学校の教育に関わる以上は、顧客、つまり子どもたちの満足が大前提であると飯島氏は言う。ただ面白いではなく、内容があって楽しい授業をやらなければならない。子どもたちに分かりやすく、腑に落ちるように、自分の中で消化できるように組み立てて提供するのが教育であり、表面的な面白さや知識を教え込むだけでは、真に深い理解や、学び、知るということにつながらない。そして、内容があり、かつ楽しい授業を提供するには、教える技術、および学習プログラムに組み立てていく技術が必要不可欠である。

教える技術を持つ人材の育成が重要

 学校へ入っていくNPOは、教える技術などの教育の力をつけることが大切であるとアサザ基金は考えており、いま最も重要だと感じているのは、人材の育成である。
 授業の進め方、子どもたちとのコミュニケーションのとり方など、教える技術を持つ人材が育つためには、座学の研修というよりも、現場を踏むことが欠かせない。現場を数多く踏むことでだんだん力がついていくが、独り立ちできるまでにはかなり時間がかかる。
 現在、全国各地からアサザ基金に研修に来たいという若者が増えており、意欲ある若者を受け入れ、研修を充実できるような体制を今後とりたいと考えている。

子どもたちを引き込む飯島氏の出前授業
子どもたちを引き込む飯島氏の出前授業 

学校、教育委員会との綿密な打合せが成功のカギ

 学校現場での活動である以上、先生や学校の方針、指導要綱等に合っていることも重要である。アサザ基金では、先生や学校のスケジュール、年間の学習の中での位置づけ等に合わせて、学校ごとにプログラムを組む。また、成果発表の場をつくるなどして、最終的に先生が評価できるようにしている。例えば先生方は「年間を通した学習が体系化できるか」、「ストーリーを持った学習に組み立てられるか」ということに苦慮しており、そこに的確に応えられるような学習プログラムの提供が必要である。
 また、牛久市では13の学校の先生や教育委員会、市の関係部局の担当者も参加して、定期的に委員会を開いている。先生の「こういう学習をやっているが、今後どのように展開していけばいいか分からない」という声に応えるほか、「子どもたちの計画を実現するために市のどの部署との連携が必要か」など、総合学習とまちづくりの調整や情報の共有を行っている。

子どもたちに合わせてコーディネートする

 学校・行政・地域をつないでコーディネートし、学校だけではできないことを実現できるのは、NPOならではであり、コーディネートはNPOの重要な役割である。
 ただし、コーディネートが主眼となって、子どもたちの学習がそれをなぞるだけになってはならない。コーディネートと学校の子どもたちの学習の内容がうまくかみ合っているからこそ、アサザ基金の環境教育は、これだけ多くの支持を得ているといえる。
 子どもたちには、様々な選択肢・可能性があり、大人が考えた方向とは違う方向に進むこともある。子どもを無理やり型にはめるのではなく、子どもに合わせて大人たちも方向を組み替えていくという柔軟性も、コーディネートの際には必要である。

企業との協働は本業とリンクが課題

 アサザ基金では、日本電気株式会社(NEC)、三井物産株式会社、UBS証券会社、株式会社損保ジャパンなど、多くの企業と協働プロジェクトを推進している。
 行政ほどではないが、企業にも縦割り的な部分がある。NPOとの協働が、社会貢献や環境推進、CSRといった専門の部署での事業にとどまり、企業の本業となかなかリンクしないことが課題である。本来なら企業の本業とリンクできるような内容でも、NPOとの協働の窓口が固定化しており、本業から得られた利益の一部を、その窓口を通して社会に還元するという発想から抜け出せない企業が多い。
 今後は、企業の競争力や発展につながるような要素としてNPOと組むという新しいビジネスモデルがほしい。企業が事業の一部にもっと環境や地域づくりの要素を入れていき、企業の戦略として新しい市場やマーケットを創出する部分に直接につながるような展開が必要であるといえる。
 そうしたなかで、NECとの協働で行ったネットワークセンサによる霞ヶ浦北浦流域環境のモニタリング事業は、本業とつなげられた事例である。なかなか実現はしないが、会社の本業とどうつなげていくかを模索する企業の担当者も増えている。

地域にまたがる課題には国が支援を

 現在アサザ基金が行っている出前授業には、牛久市以外では、教育予算がほとんどついていない。片道50kmにも及ぶ移動の経費や人件費は、他の事業の収入をまわしたり、助成金で何とか賄っている。2008年12月には「霞ケ浦ゆめ基金」を立ち上げて、環境学習支援のための寄付を呼びかけている。
 広域的な水系流域の環境学習への支援は、個々の市町村だけでは対応が難しい。アサザプロジェクトは、今まで文部科学省や環境省でモデル事業とされたほか、自然再生推進法(2003年施行)のモデルケースにもなっている。今後、アサザプロジェクトをモデルとして確立し、全国に広げていくためには、国の広域的な支援が必要である。

霞ヶ浦全域に広がる出前授業実施校
霞ヶ浦全域に広がる出前授業実施校 

4 今後の展望

100年後を見据えたプロジェクト

 アサザ基金では、「100年後にトキの舞う霞ヶ浦・北浦を」を目標に据えて、今後も、湖の再生と持続可能な社会を実現する事業に取り組んでいく。
 企業もアサザ基金と協働することにより、10年先、20年先の展望を共有してくれるようになってきた。例えば、参加者の社員が企業を退職した後も、あるいは企業がなくなっても続くようなプロジェクトにしてほしいという企業の担当者が出てきている。また、目先の成果でなく、100年先を見据えた取り組みにひかれて協働を申し出る企業も増えている。

出前授業からの人材の輩出に期待

 100年後を見据えた事業では、その将来を担う人材こそがその成果の行方を握る。
 現在のプロジェクトを日本全体に社会システムとして根づかせるためには、広い視野と、目先の利益にとらわれない物事の本当の価値が分かる人材、多様な分野を総合化していくことのできる人材が不可欠である。将来、そうした人材が、出前授業を体験した子どもたちの中から出てくることに、おおいに期待している。子どものころの実体験を通して得た深い知識や知見を持った人材が増えていけば、100年後の目標も実現できる。
 結局「アサザプロジェクト」とは、これからの社会・世界に必要な人材を生み出していく人づくりのプロジェクトであるといえる。これだけ多くの人を育てているプロジェクトは世界的にも少なく、それがアサザ基金の最大の強みである。息の長い活動ではあるが、活動の積み重ねが将来必ず効果を出していくと考えている。

(ヒアリング応対者:理事長 飯島 博氏)

 企業との協働では、何よりも事業の企画がしっかりしていることが重要である。企業にとってのメリットや効果があるから、企業はお金を出す。継続性や発展性、自立の見通し等を具体的に示すことが必要である。
 行政との協働では、団体のポリシーと違うことは拒否できるように、NPO自身が力をつけることが重要である。行政の枠組みに合わせて活動しようとすると、NPO自身が萎縮してしまい、NPO全体がダメになってしまうことにもつながる。

お問合せ先

生涯学習政策局生涯学習推進課民間教育事業振興室

(生涯学習政策局生涯学習推進課民間教育事業振興室)

-- 登録:平成24年03月 --