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特定非営利活動法人 NPOカタリバ

高校の授業に対話を持ちこみ、自信と進路意識の向上を!

所在地…〒166-0003 東京都杉並区高円寺南3-66-3高円寺コモンズ203
TEL…03-5327-5667 FAX…020-4665-3239
URL…http://www.katariba.net/ E-Mail…hello@katariba.net

東京都杉並区

1 団体の概要

代表者名…今村久美
設立年月…2001年11月 認証日…2006年9月21日
有給スタッフ数…常勤/11名、非常勤/11名
事業規模(09年度決算収入)…48,794,420円
(内訳:事業収入43,531,463円、会費・入会金3,097,452円、助成金1,537,650円、その他627,855円)

活動の目的・趣旨

 青少年期の人達と年上の世代の人達とのコミュニケーションおよび触れ合いの場を提供することにより、個人が、自らの生き方に主体性を持ち、積極的に社会参画していくことができる社会の実現に寄与することを目的とする。

団体の設立経緯

 NPOカタリバは、代表の今村久美氏が、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)在学中の4年生のときに立ち上げた。ほとんどの大学生は、就職活動の時期になってはじめて自分の将来に向き合う。「もっと早い段階で、将来について真剣に考えるきっかけがあれば、その後の生活をもっと充実させることができたかもしれない」。この思いは、まわりの大学生にも共通するものだった。
 今村氏が「大学生と話をすることで、ごく普通の高校生に学ぶ意味や生きる目的を考えさせ、心のどこかに火を点す機会を提供する事業を立ち上げたい」と考えはじめた頃、明治大学の齋藤孝教授のもとで教育学を学んでいた竹野優花氏と出会い、「できることから始めよう」と意気投合する。
 「自分も高校生までは何も考えていなかった。もっと大勢で将来について語る“場”みたいなものをつくれたらいいと思う」と、2人に共感する多くの大学生が加わって議論を続けるなかで、「ナナメの関係」「高校に社会を運ぶ」といった「カタリ場」のコンセプトが固まっていく。アドバイスを求めた鈴木寛助教授(現・文部科学省副大臣)からは、「そうした仕組みはこれから必ず求められる。頑張りなさい」と後押しされた。
 2001年11月、任意団体カタリバを設立。翌年7月、ベンチャー企業に就職していた竹野氏が会社を辞めて共同創設者となり、2人で事業活動を本格化させた。

主な活動内容

1.高校企画事業(キャリア学習支援等)

 高校生対象のキャリア学習プログラム「カタリ場」を実施

2.大学事業(初年次教育事業・大学連携事業)

 大学新入生を対象にした初年次教育プログラムを実施

3.法人事業

 高校企画事業を通して培ったノウハウを活用したイベント運営、企業研修、人材育成プログラム等

4.ファンドレイジング事業(講演事業等)

 大学生・保護者・経営者・教員など、様々な対象に向けた講演

5.地域支援事業

 地域での「カタリ場」立ち上げ支援

2 主な教育関連事業の紹介

事業名称 カタリ場

学校ごとにオーダーメイドでつくるプログラム

 「カタリ場」とは、高校生の進路意欲を高めることを目的とした「対話型動機付けキャリア学習プログラム」である。「キャスト」と呼ばれるボランティアスタッフ(大学生や専門学生、一部社会人(40~60名))が高校を訪問し、主に「進路」や「産業社会と人間」の授業枠を使って、100~150分程度で実施している。高校生は学年全員(240名程度)が参加する。
 一つの高校企画につき、プロジェクトマネジャー(以下、PM)1名、サブリーダー2~3名、キャスト40~60名前後から成るプロジェクトチームを結成する。「カタリ場」実施の約1カ月前に、担当職員とコーディネーター(NPOカタリバの学生職員)、PM、コアスタッフが学校を訪問して打合せをする。その学校の生徒が抱える問題を洗い出すために、先生へのヒアリング、生徒への事前アンケートを行い、プログラムをつくり込んでいく。キャストはWebやメールマガジン、人づての紹介等を通して募集し、当日までにキャストの研修(コミュニケーション練習や当日のシミュレーション)を行う。

オフィスで打ち合わせ中のスタッフ
オフィスで打ち合わせ中のスタッフ 

高校生の内発性を引き出す様々な仕掛け

 「カタリ場」の授業は、班づくりから始まる。生徒4~6人に対してキャスト1人が付いて班をつくる。班ごとに座談会を行ったり、別々に先輩の話を聞きに行ったり、ワークシートに書き込んだりしながら、授業が進行していく。ポイントになるのは、座談会(チェッキング)と先輩の話(サンプリング)である。

  • チェッキング(20分※):生徒が無意識に考えていることや漠然と感じている不安などを引き出しながら、生徒の自己理解を促すことを目的としている。キャストは、ほめて認めるコミュニケーションによって、生徒の自己肯定感を高めることを心がける。
  • サンプリング(15分※):紙芝居を使ったプレゼンテーション形式で行われる。生徒はキャストシート(先輩の顔写真とニックネーム、話のキーワードが並んでいる)を見て、興味を持った先輩のところに移動し、「自分は今までどんな生き方をしてきて、何を大切にしているのか」といった話を聞く。先輩は、あらかじめ8~10人程度が企画の意図に沿って選ばれる。

 チェッキングとサンプリングを繰り返し、最後にまとめの時間(30分※)がある。生徒は、授業で見えてきた自分の憧れや興味関心を行動につなげるために何をするのか、キャストと約束し、それを「約束カード」に書き込む。この「約束カード」を卒業まで持ち歩く生徒もいるという。
 これらの生徒の内発性を引き出すための様々な仕掛けは、「カタリ場」を実践しながら勉強し、アイデアを出し合って練り上げてきたものである。このキャリア学習プログラム「カタリ場」は、「社会的な関係的資産(ソーシャルキャピタル)を維持するためのサービスのデザインである。こういったサービスが次の日本の社会を支えていくのではないか」として、2010年度のグッドデザイン賞(身体領域‐個人向けのサービスシステム)を受賞した。
※分数は目安。プログラムの時間や生徒の層に応じて時間数は前後する。

カタリ場実施の様子
カタリ場実施の様子 

学生ボランティアにとっての「カタリ場」

 PM、サブリーダーを含め、「カタリ場」に参加するキャストはすべてボランティアである。多くを占めるのが大学生・専門学生であり、高校生と年齢が近く、しかも赤の他人という「ナナメの関係」が、特有の話しやすさをつくるのだという。「カタリ場」の授業自体は2時間程度だが、一つの高校企画が始まると、約1カ月前の打合せから、実施の1~2カ月後に行われるクロージング(事後アンケート、高校への報告、先生への引き継ぎなどを行う)まで、プロジェクトは2~3カ月続く。特にプロジェクトを率いるPMに課される責任の大きさは並大抵ではないが、志願者は増えている。
 その理由として、「カタリ場」が、彼らキャストにとっても内発性を引き出す場となっているということがある。彼らは、「カタリバに来ると、真面目に一生懸命になる自分を出せる」とよく言う。彼らがどのような動機から参加するのか、どういった面で成長したいと思っているのか、キャスト個人の思いを引き出すような話ができる機会を大切にしている。

3 事業の成果と課題

 全国の高校生に「カタリ場」を届けたい

 最初の「カタリ場」は2002年10月、私立敬愛学園高校の文化祭で行われた。大学生と会話する高校生の表情が元気になるのを見て、「カタリ場」には大きな意味があると確信するが、こういったイベントでの実施では、対象が自分からやってくる生徒だけに限られてしまう。ごく普通の高校生の心に火を点すためには、授業として「カタリ場」を実施したい。
 学校や先生に対して渉外活動を続けるなかで、課題として浮かび上がってきたのは、「自分たちに何ができるかをうまく説明できない」ということだった。そのため、学校現場の言葉や予算を理解して、その文脈で話をするようにした。人づてにつないでもらい、関心を持ってくれる先生を見つけることができた。しかし、学校には自由になる予算がほとんどない。そこで思いきって、「カタリ場」の無料実施を行った(2006年3月まで)。無料で学校に行っているうちに、先生から口コミで広がり、教育界に支援者が増えていく。その結果、2007年度から3年間、東京都教育委員会の「認定コーディネーター」として予算を獲得することができ、東京都の公立高校での実施数が一気に伸びた。
 2009年度は、首都圏を中心に全国で80校、100授業で「カタリ場」を実施、受講生徒数約2万人、学生・社会人ボランティア延べ約4,000人参加という実績をあげた。活動地域は、北海道、青森、岐阜、兵庫、徳島、愛媛、沖縄へと広がっている。

「カタリ場」実施数の推移
「カタリ場」実施数の推移 

メディアの注目と「カタリ場」としての成果

 「カタリ場」の目的は「高校生の内発性を点す」ことである。この目的からすると、成果は、「カタリ場」の授業を受けた生徒が何らかの第一歩を踏み出せたのか、「カタリ場」がその背中を押すことができたのか、ということになる。しかし、これを定量的に測ることは難しい。
 ただ、「カタリ場」への支持は確実に広がっており、マスコミからも注目されている。多くの新聞・雑誌で取り上げられ、『TIME』誌(アジア版・南太平洋版)では海外にも紹介された。また、2008年日経ウーマンオブザイヤー(キャリアクリエイト部門)、2009年内閣府・男女共同参画「女性のチャレンジ賞」を受賞、代表の今村氏は内閣府官房内閣総務官室専門調査員に任命された。2010年には、NPOカタリバを取材した『「カタリバ」という授業』(上阪徹著、英治出版)が出版された。
 さらに、「カタリ場」の授業を受けた高校生が大学生になり、今度はキャストとして参加するという好循環も生まれている。「カタリ場」を通してかかわった不登校生が大学に進学し、いまは高校生を励まそうとキャストに加わっている。「あのときカタリバに出会わなかったら、死んでいたかも……」と、Twitterでつぶやいたキャストもいる。

事業として軌道にのせるために

 NPOカタリバ設立当初からの課題は、「どうやってビジネスとして成立させるか」である。これについては、企業と連携して、「カタリ場」を企業の社会貢献活動に組み込んでもらうような提案を進めている。また、高校企画事業だけで十分な収益を確保することは難しいため、「カタリ場」で培ったノウハウを活用して、大学向け初年次教育プログラム、法人向け研修プログラムなどを開発した。たとえば、2009年に嘉悦大学と協働で実施した初年次教育プログラムでは、1年次退学率25%減少という効果をあげている。

4 今後の展望

NPOカタリバのミッションをさらに展開

 「自分が何かできる」という自信と内発性を引き出すようなプログラムは「カタリ場」に限らない。今後は生徒がどこに住んでいても、どのような家庭にいても受けられるように、いろいろな形のプログラムを考えていきたい。
 生徒の日常を支えているのは、やはり学校の先生である。先生との連携を深めて、点された内発性が回っていくような取り組みを広めていきたい。
 また、雇用創出はいまの日本にとって大きな問題である。NPO法人としての収益性を高め、事業基盤を整備して、NPOを仕事にする人が増えていくようなモデルに育てていきたいと考える。

(ヒアリング応対者:代表理事今村久美氏)

 起業するうえでは、わからないことがたくさんあったり、孤独になったりすることが多い。特定非営利活動法人エティック(ETIC.)の社会起業塾に参加することで、同じように何かを立ち上げようとしている若い人たちと励まし合ったり、事例を聞いたりして勉強することができた。

お問合せ先

生涯学習政策局生涯学習推進課民間教育事業振興室

(生涯学習政策局生涯学習推進課民間教育事業振興室)

-- 登録:平成24年02月 --