平成30年度男女共同参画のための学び・キャリア形成に関する有識者会議(第4回)議事要旨

1. 日時

平成31年2月28日(木曜日)10時00分~12時00分


2. 場所

文部科学省総合教育政策局会議室


3. 議題

(1)平成30年度「男女共同参画推進のための学び・キャリア形成支援事業」の報告について
(2)その他

4. 出席者

委員
大槻座長、小山内委員、櫻田委員、笹井委員、竹原委員、矢島委員

文部科学省
三好男女共同参画共生社会学習・安全課長、高見男女共同参画学習室長、毛利女性政策調整官 ほか


5. 議事要旨

(1)平成30年度「男女共同参画推進のための学び・キャリア形成支援事業」の報告について


(研究協議会について)
 事務局より参考資料1に基づき研究協議会の報告が行われた。協議会に参加した委員からの主な意見は以下のとおり。

  • 今回の研究協議会のテーマは、女性の「学ぶ」、「働く」、「生きる」と3つのキーワードを表している。これは、働いていないことを個人の問題として捉えるのではなく、社会の問題なんだということを皆さんに知っていただくきっかけになったのではないかと思う。働く、生きるというのは、働いてただ単にお金を得て経済力を付けるというだけではなくて、女性の場合は、女性が抱える困難に気付いて、共有、共感しながら解決に導くところで自己肯定感が高まっていき、自分らしく生きるという意味も、この働く、生きるには含まれているのではないかと考える。
  • 実証事業に係り、富山大学の方から、大学は最初、地域貢献としてこの事業を捉えていたけれども、本事業を実施することで、地域の女性たちが抱えている様々な問題を知ることができたという御発言があったと思うが、それは非常に大きな意味があったと思う。そのような気付きがあったのも、男女センターやハローワーク等の色々な機関と連携して実施したからこそ気付きにつながったのではないかと思う。
  • 本事業は、単に女性の再就職支援ではなくて、全ての女性を対象とするべきであるし、学びによって、単なる就労支援につなげるのではなくて、女性が働くことで生きる糧を得て、生きる自信につながる、それが目的だったのではないかと改めて再確認した。

(調査研究について)
委託先の株式会社政策研究所から、調査の結果について報告が行われた後、質疑を行った。主な意見は以下のとおり。

  • 離職理由別の学びの内容はあるが、学びの動機別に、何を学んでいるかの方が、企業のヒアリング結果と突合しやすいと思う。すぐに就職することを想定して学んでいる人と、今後働いていくきっかけ作りのためにと思っている人で、学んでる内容も違うと思うので、そこが分かるようにしていただきたい。
  • アンケートのデータや調査票も載せてほしい。
  • 企業の方があまり学び直しに期待してないような回答もあることに触れた方がいいと思う。ギャップがまだあることはまとめに書いておいた方がいいと思う。
  • 男女センターで企画を組むときに、受講者が自分自身の棚卸しをする部分とスキルの部分ともちろん両方あれば良いが、限られた時間でどちらをどれだけ入れるかというのが迷うところだと思う。もしこの研究調査から、例えば棚卸しの部分が非常に男女センターで有効であったということがはっきり見えるのであればそれを書いても良いと思う。また、企業がブランクを特に気にしないとおっしゃったのは意外であるが、女性の側はブランクを非常に気にされているので、そこも明記すると良いと思う。
  • 出産により離職した人の再雇用に企業は積極的になっているのは間違いないので、そういう意味で、あまりブランクは気にしないと思って答えている企業の意見と、ブランクがあってもそこで学びをしているのであれば、なるべく表明してほしいという話は別だと思うので、そこはしっかりと仕切って書いた方が良い。
  • ブランクというときに、講座に出て学ぶだけではなくて、ボランティアベースでPTAに参画したり、子育てをする中で自主保育をしたり、それらのことでヒューマンスキルはかなり高くなると思う。企業に対する希望として、履歴書に、学歴、職歴以外に活動歴や経験等を書けるところがあると書きやすくなると思う。女性自身にとって、そこは単なる負のブランクではなく、プラスの時間であり、力を注いできたことであるというメッセージがどこかに出せるといいと思う。
  • 各企業のインタビューで、社会的な経験も評価しているという発言があるとすれば、そういうところも評価ポイントの中に入れてはどうか。
  • 社内でキャリアチェンジをしていくためのサポートに関する企業の回答を見ると、キャリアチェンジの対象になる人は、外部機関での研修を受けるよう勧めていくと記述がある企業が幾つかあるが、中途採用のときに求める要素と、内部から上げるときの要素がどうか、外部での研修は一体どういうものかを書き足していただきたい。
  • 我々がスキルや能力と考えているのは、知識やスキル、認知的能力といえると思うが、企業が求めているのはコンピテンシーレベルの話で、社会人基礎力、行動特性のレベルで、協調性や自立性、活用力のような特性を持っている人が欲しいことが伺えるので、その点に言及してほしい。スキルとしてやはり多いのは、情報処理、ICTを利活用する能力であると思うので、その点にも言及してほしいと思う。

(実証事業)
実証事業を受託したせんだい男女共同参画財団、富山大学、大阪市男女共同参画のまち創生協会、日本女子大学から事業について報告を行った後、質疑応答を行った。主な意見は以下のとおり。

  • 仙台の取組は非常に有意義であり、継続が重要である。富山大学の取組は、両立支援講座の満足度も高く、再就職にもつながったとのことであったので、育休中の方と1回離職して再就職希望の方との違いの分析、どのような状況の方がどの講座を受講してどのような成果につながったかというまとめの分析もしていただきたい。コーディネーターの役割は、受講生に対しての就職やキャリア相談に乗るだけでなく、入口部分のコーディネートをワンストップ化して行う役割が重要であると思う。また、大阪の取組は、様々なターゲット層に絞って、すばらしい内容の講座を提供していたと思う。総合的な支援体制の構築が必要との課題を示していたが、そのためにはコーディネーター役となる人、機関が必要と思う。
  • 地域や社会の課題を解決するために本事業を実施しているという前提に立つと、どのような対象層がどのようなニーズを持ち、地域にどれぐらいいるのかという認識と、取組の内容が合っていることがとても大事だと思う。そこが一番難しく、周知方法だけではなくて、その認識が合っていたのかということも多分問題であると思う。
  • そのような意味では、再就職ニーズは減っていると思われ、働きながら学ぶというニーズが結構強くなってきていると思う。その状況が地域や社会に広くある中で、どういったターゲットに何を提供するかということをもう少し明確にして新しい足元の状況でターゲットを見て、これからも進めていただきたい。
  • 仙台の話を聞き、小中学校、高校ぐらいとの連携をもっと密にしていくことで、そこから引き受けて、高校卒業はしたがどうしていいか分からない、早期に退職してしまう子供たちを引き受けるというルートもできるのではないか、と感じた。本事業の取組でも見られていたコミュニケーションスキルや自己肯定感を高める取組は、学校教育の現場でも課題になることであり、この観点でも連携ができると良いと思う。
  • 仙台から報告があったように、言葉の理解は、子供を育てていく上でとても重要なスキルである。そこで現実にこのような問題でつまずいているということが理解できたので、ここで学んだ後、どのように変わったかというところもフォローアップアンケートなどで共有してもらいたい。
  • 第一子出産後に就業状況が半減している、辞めているという状況から、出産後の就業継続の対策が必要となっている。もし半分が辞めてしまっているのであれば、辞めない対策が必要となるのではないかと思う。
  • 教育を提供している側のコンソーシアムがどのような課題を持っているか、今後の課題を抽出していく作業が大事だろう。
  • アファーマティブアクションによる雇用があるように、例えば大学として学びを提供するときに、女性に対して不利な条件があるとするのであれば、そこを取り除くような学習機会の提供の仕方もあるのではないかと思う。今後の課題として本事業から抽出できれば良いと思う。

(2)その他
事務局より参考資料2に基づき来年度の事業について説明。来年度の事業等に係る主な意見は以下のとおり。

  • 単年度事業は非常に難しく、長期的な視点で根付かせて自立につなげられる事業を組み立ててほしいと思う。
  • 離職した女性に再就職をするチャンスが与えられることは大変大切だと思うが、もう一つ、そもそも辞めないというところにアプローチすることも大変大切だと思う。辞めてしまうのは、本人が悪いわけではなく、環境が整ってないこともあるが、本人の中にも、子供が産まれたら辞めるべきという考えがある場合もあると思うので、その点を次世代のライフプランニング教育推進事業につなげ、若いときから両立が可能であること、男性も家事や育児をシェアしていくこと等の視点を入れていけたら大きな視点での事業になると思う。
  • 男女共同参画とは、パートナーシップという関係概念であるが、例えば女性が就労するのは、学習者の責任、あなたが変われば就労できるという、全部、学習者に焦点を当てて学習者の責任として、その力量形成が就労につながるという視点がすごく大きくなっているが、そうではないと思う。もともと男女共同参画社会というのは、個人も変わらなきゃいけないし、社会も変わらなきゃいけないという関係概念である。大学、企業はどう変わるのか、周りの共同主体、コラボレーションする主体にどうアプローチするかという点が乏しいと思うので、そこを取り組まないと男女共同参画所管課の事業にならないのではないかと思う。
  • 学校教育との連携はすごく大事だと思う。次世代のライフプランニング教育推進事業で、学校教育の中でプログラムの開発等を行うとあるがとてもよいと思う。私たちのところでは、家庭科の授業で赤ちゃんを春に抱っこして、またその子が歩くようになったらもう1回対面するという学びを提供している。中学3年生の感想文を全部読んでいると、男子生徒が深く、ピュアなコメントを出していることが多い。育児に対して、この段階でそれだけ学べると、自分が結婚して、子供を持ったときや、世の中に出て、部下が子供を持ったときの理解を深めると思う。早い時期にそういう男女共同参画的な学びをしていくと、当事者の努力だけではなく、環境を作ることになると思う。それが育休の取得への理解や職場のリーダーシップ、誰もがリーダーになれるという、そういう考え方にもつながるのではないかと思う。早い段階からバリアを外しておくというのはとても大事なことだと思う。
  • 来年度から取り組む学びの入口へ誘導するための広報の方法、内容等の検証という点はいよいよ大事であると思う。ここでは子育て等で離職中の女性がメインにはなっているが、辞めないというところも大事であるので、例えば妊娠して母子手帳をもらいに行ったところで、ライフプランニングに関する情報をもらって、辞めようかどうか迷ったときに、育休中も学びながら続けようと思うなど、そういうことが大事である。資料にあるように、動線に合わせた、自治体等とも連携した情報提供で、対象者に適切に情報が届くようにということと、広い意味では生涯学習やリカレントということを学びながら、大人になってもそのような学びをしながら自分のキャリアやライフプランを作っていくという文化を日本に根付かせること、その段階に至る1つの過程として、来年度事業は大事だと思う。
  • 事業を4年間継続させるのが難しいとすれば、単年度でも、前に実施したことの知見とか問題点を次に実施するところが引き継いでいくことがすごく重要だと思う。報告書を多く読むのは大変だと思うので、事業全体で分かったこと、知見、問題点や発見などについて、分かりやすい概要版があるとよい。

(以上)



お問合せ先

総合教育政策局男女共同参画学習・安全課

男女共同参画推進係
電話番号:03-5253-4111(2654)
メールアドレス:danjo@mext.go.jp

(総合教育政策局男女共同参画学習・安全課)