平成30年度男女共同参画推進のための学び・キャリア形成に関する有識者会議(第3回)議事要旨

1.日時

平成30年12月6日(金曜日)13時30分~15時30分


2.場所

文部科学省総合教育政策局会議室


3.議題

(1)平成30年度「男女共同参画推進のための学び・キャリア形成支援事業」について
(株式会社政策研究所 報告)
(2)ヒアリング:学校教育段階におけるキャリア形成に係る学びについて
・富山県教育委員会、富山県立砺波高等学校(高等学校)
・スリール株式会社(大学)
(3)その他


4.出席者

委員
大槻座長、小山内委員、櫻田委員、笹井委員、竹原委員、矢島委員

文部科学省
三好男女共同参画共生社会学習・安全課長、高見男女共同参画学習室長、毛利女性政策調整官 ほか


5.議事要旨

(1)今後の有識者会議の進め方について、平成30年度「男女共同参画推進のための学び・キャリア形成支援事業」について、資料1に基づき、調査研究の委託先の株式会社政策研究所からアンケート調査の結果等について説明が行われた。委員からの主な質疑は以下のとおりであり、可能な範囲で今後の集計や分析に反映することとした。
 (女性用アンケート)

  • 図表の作表の問題であるが、複数回答のものを単純集計している場合は、N値を入れない方がよい。逆に、クロス集計の場合は、N値を入れた方がよい。このように、全体的にN値の扱いについて整理してみてはどうか。また、選択肢にも数値が入っているところがあり、混乱を招くので、外した方がよい。
  • このアンケートに回答している人は何らか受講していることが前提であり、回答していない人は、「非該当者」ではなく「無回答者」ということになる。よって、N値は総数に揃えておくべきではないか。
  • パートナーの転勤により離職した人の回答数について、集計間違いではと思うほど数値が高いが、このような方々は、色々な目的があって受講していることが伺え、例えば離職理由別の回答傾向について、クロス集計の前に示してみてはどうか。
  • 問8-2の回答については、説明内容がよく分からない。
  • 学び直しに20万円もかける人が多くいることに驚いた。一方で、男女共同参画センター等でやっているような無料の講座を受講している人も一定数いる。特に関心があるのは、「0~2才」で5万円~20万円ぐらいのお金をかけて学びをしている人の実態であり、クロス集計等により、受講セミナーの分野や内容等の傾向を明らかにしてほしい。
  • 育休中というわけではなく、無職の期間にお金をかけている実態の要因についてもう少し分析が必要。
  • 離職した理由について分析を深める必要がある。婚姻の有無、子供の有無、受講の動機等との関係性について分析するためのクロス集計をやってみてはどうか。
  • パートナーの転勤によって離職した女性が多いようだが、これらの女性は、喪失感とか孤立感とか渇望感が強く、転勤先ですぐに動き出したり、学び出したりする傾向があり、実際に地域活動でも活躍していることが多い。これらの女性の就職等について分析を深めてほしい。

(企業用アンケート)

  • 複数回答と単数回答の項目について、選択肢の表現について気を付けないと、意味が取り違えられる場合もあるので、注意が必要。
  • 合計して100%にならないといけない項目について、100%を超えているものについては再度精査する必要あり。
  • 「女性及び企業からの講座への期待」について、N値(150)の意味が不明。女性、企業それぞれのN値を入れるべきでは。また、男女共同参画センター等での講座に対する女性及び企業の期待については、自分の経験上、男女センターに講座を受けに来られる方は、何に悩んでいるのかもよく分からない、つまりもやもや感を抱えている方が多い。こういう方に対しては、資格実務につながるような講座にプラスして生き方や社会保障に関するメニューを加えて一つの講座として提供することが多い。よって、実務、資格に関する学びが多いからといって、イコールそれが必要とされているわけではないことを留意していただきたい。


(女性、企業へのヒアリングについて)

  • 女性へのヒアリングについては、年齢、所在地、経済状況、学びを始めた時の子供の年齢等を考慮し、偏りがないように留意していただきたい。
  • 企業と女性の双方の講座への期待のずれについて、特に企業の方の詳細を聞いてみたい。「働くにあたっての社会性を取り戻すための学び」というのが、企業側が必要としている学びとして割合が高いが、「社会を取り戻す」とは、具体的に女性に何を期待しているのか、その辺りをヒアリングによって明らかにしていただきたい。

(2)ヒアリング:来年度の国の委託事業に係る参考とするため、学校教育段階におけるキャリア形成に係る学びについて、ヒアリングを行った。富山県教育委員会及び富山県立砺波高等学校から高校におけるライフプランニング教育について資料2に基づき説明が行われたとともに、スリール株式会社から大学におけるライフプランニング教育について、資料3-1・資料3-2に基づき説明が行われた。委員からの主な意見や質疑は以下のとおり。
  (富山県の報告に対する主な意見等)

  • ライフプランニング教育は、子供たちに自分のキャリアというものを将来にわたって考えさせられるようにすることが大事。主には家庭科での実施となると思うが、評価が難しいものでもあり、教科から外して、例えば特別活動のようなところでの実施も考えらえる。
  • 地域の情報や人材とつながらなければ実現しない学び。社会に開かれた教育課程、これからの学びそのものである。現在、家庭科で学ぶことが大変充実していることを考えると、他の教科との接続等、カリキュラムマネジメントが重要になってくる。その場合、様々な意味でコーディネートをする人材が重要となり、持続可能な仕組みを構築する上でも配置が必要。
  • 15年位前にライフプランニング支援を提示したときには男女の役割や、女性のライフプランの選択肢が増えてきている状況等を伝えることの意味が大きかった。今後、文部科学省で作ろうとしているプログラムでは、男女ともに新しい関係性の中で、社会も企業組織も変わっていくという状況を伝えて、将来の選択をライフイベントに応じて行っていくというところに焦点を絞ることも必要ではないか。
  • (富山県への意見・質問)丸1 普通科における「家庭科」の年間授業時数やライフプランニングの授業を行う時期は。丸2 定期的に行っている指導事例の追加について教えてほしい(誰がどのように作成しているのか等)。丸3 作成したプログラムをデジタルデータで共有しているとあるが、教員が応用して使えるので有効であると思う。どのように行っているのか。
  • (富山県の回答)丸1 共通教科「家庭科」は2単位と4単位のものがあり、2単位の場合は週2時間、年間70時間になる。普通科の学校の場合、この年間70時間という大変短い時間数の中で、ライフプランニング教育を行っており、授業を行う時期は9月~11月頃である。しかし、例えば、調理実習などをやった場合は、そこで自然と男女共同参画が行われ、また、温かいものを皆で食べる中で感じる家族的な雰囲気等はライフプランにつながっている部分もある。直接ライフプランニングを扱っていない時も、男女共同参画やライフプランニングが根底にあると考えている。丸2 先生方の研究会において継続的に研究を行っており、授業を研究しながら、互いに批判し合いながら、新しいプログラムを検討している。また、家庭科も幅広いので、例えば「住生活」や「高齢者」、「消費生活」での扱い等も検討し、様々な場面で使える新しいものを追加している。丸3 追加するプログラムはCD化して配布している(ファイルの形式はワード)。先生方は自分の授業スタイルに合わせてアレンジすることもできるので、大変好評を得ている。

(スリール株式会社の報告に対する主な意見等)

  • 「子育て」と「両立」にテーマを絞った実践的な活動という印象。問題意識が明確であり、それに合わせたプログラムであることが、効果が出ている要因だと思う。
  • 最近の状況では、正社員は妊娠・出産で辞めていないので、状況は変わってきているかと思うが、一方で非正規社員の問題があり、学生に向けてはその辺りもポイントになるだろう。
  • (スリール株式会社への質問丸1 )子育てインターン(子育て中の家庭に受け入れてもらい、仕事と子育ての両立を実際に体験)を実施した後の行動の変化のところで、会社に制度を求めるのではなく、自分にスキルを付けていくことが大事であるとあったが、このスキルというのは、仕事と家庭の両立に向けてのスキルか。
  •  (スリール株式会社の回答丸1 )例えば、将来子育てで時短勤務になった場合でも成果をあげていけるように、社会人1年目から自分のキャリアを考えながら働くことが重要である。また、一度辞めたとしても、働き続ける上で求められる人材になっていくために必要なスキルを身に付けることができる環境のある会社を1社目として選ぶことが大事。要は、制度が整っていて何となく続けられる会社よりも、自分にスキルを付けられるような会社を選択するように学生たちの意識も変わっていくと考えている。
  •  (スリール株式会社への質問丸2 )男子学生と女子学生が両方いたときに、女子学生だけでやるプログラムと男子学生だけでやるプログラムと両方やるプログラムはそれぞれ違いがあるのか。その内容は、男子学生に対するアプローチと女子学生に対するアプローチは全く同じなのか、それとも違いはあるのか。
  •  (スリール株式会社の回答丸2 )全く同じである。男子学生の参加の方が多いプログラムも結構あるが、内容は変わらない。社会人になってからよりも、学生のうちの方が、自分の彼女が長期的にどうなっていくのかなどの想像につながり、当事者意識を持ってもらえる。出産の年齢などは会社に入ってしまうと言いづらくなる話であるが、逆に少し先のことである学生時代だからこそ話していく必要があると、男子学生も感じているようである。
  •  (スリール株式会社への質問丸3 )子育てインターンの中で1日の終わりに行う家庭でのヒアリングは、何時頃行うのか。
  • (スリール株式会社の回答丸3 )大体20時~20時半が多い。家庭との相談によって決めている。


(自由討議)
資料4を参照し、今後の学校教育段階からのキャリア形成に係る学びの充実に向けた課題として、新しいプログラム開発に必要な視点等について意見交換を行った。主な意見は下記のとおり。

  • 現在のライフプランニング教材はやや総花的になっているのでテーマを絞ること、事例を蓄積できること、外部講師を選ぶ視点を示すことなどが必要ではないか。成果物としては副教材、手引き、授業への組みこみ方があると良いのでは。
  • ライフイベントや就職を考える際に、高校生より大学生の方が具体的にイメージしやすいため、まず大学生プログラムに絞って検討してはどうか。
  • 今後、文部科学省で作ろうとしているモデルプログラムには、固定的性別役割分担意識の是正についてしっかりと盛り込んだ方が良いと思う。また、良い教材を作っても教える教員のスキルがなければ使うことができない。男女センターの職員に講師として来てもらうなども一つのやり方であると思う。色々な人の話を聞いて、色々な出会いをすることが学生の将来の選択肢を広げるのではないかと思う。学校で使いやすいような、短めの授業例などを示してもよいのではないか。
  • ライフプランニング教育の中では、学生自身がキャリアをリサーチし、探求するような観点を含めると良いと思う。また、個人が自立して、自立した人間同士のパートナーシップが形成されていくという観点も必要だと思う。
  • 女性のライフイベントが就業継続や10年後、20年後の生き方にどう影響しているかわからない学生が男女ともに多く、ライフプランニング教育の中では知識だけでなく、自身の生き方や生活にどのような影響があるか考えるきっかけとなるよう学生が当事者意識を持てるようにすることが大事。
  • 具体的な事例を通して学生に考えさせる内容が盛り込まれることが重要。モデルプログラムの時間数については、授業の中に盛り込むことができる大学は現状では少ないかもしれないが、自身の気づきを得ることと、気づきを共有し議論することができる時間数は最低限必要ではないか。また、モデルプログラムの成果物としてウェブサイトで事例紹介をする等、実際に取り組む大学にとって応用が利くような紹介の仕方が必要だと思う。
  • 中学校での赤ちゃんふれあい体験等を提供してきたが、予想以上に男子学生が関心を持ち、将来の役割をイメージできるようになっている。男女共に早い段階からのライフプランニング教育が必要。一方で、大学生は既に目の前の育児や就職が見えてきているので、よりリアルなプログラムが必要ではないか。
  • 大学生に対しては、理念的なことより、先輩の話を聞くキャリアトークの効果が高く、実際に育児休暇を取ったり、子育てをしたり、地域で活躍している男性の先輩の話を聞くことが効果的だと感じている。
  • 大学のキャリア教育の授業の中にライフプランニングの要素を入れて授業をしている例もあり、小学校から大学まで行っているキャリア教育の中にライフプランニング教育をどう落とし込むかなど、キャリア教育とライフプランニング教育の兼ね合いを示すことで使いやすいプログラムとなるのではないか。

(3)事務局から次回の日程について説明し、会議を終了。


(以上)

お問合せ先

総合教育政策局男女共同参画学習・安全課

男女共同参画推進係
電話番号:03-5253-4111(2654)
メールアドレス:danjo@mext.go.jp

(総合教育政策局男女共同参画学習・安全課)