法科大学院の収容定員に係る学則変更の認可事項化

 法律又は政令の名称

 学校教育法施行令の一部を改正する政令案

 規制の名称

 法科大学院の収容定員に係る学則変更の認可事項化

 規制の区分

 新設

 担当部局

 高等教育局専門教育課専門職大学院室

 評価実施時期

 令和元年7月

 

1 規制の目的、内容及び必要性

(1) 規制を実施しない場合の将来予測(ベースライン)

 令和元年6月19日に法科大学院関連法(法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律等の一部を改正する法律(令和元年法律第四十四号))が成立したことを受けて、令和2年度からは、学部の早期卒業を前提に法科大学院と連携した教育を行う連携法曹基礎課程(法曹コース)が開設され、令和5年度の司法試験からは、法科大学院在学中受験資格に基づく同試験の受験が可能となる。このように、本法律に基づく改革により、法曹志望者減少の要因となっていた、法曹資格取得までの時間的・経済的負担が大きく軽減されることとなる。
 こうした中、本政令による規制を実施せず、本法律のみに基づく改革が目指す法曹志望者の回復が実現すれば、具体的な推計は困難であるが、下記(2)の1において述べるとおり、再び、法科大学院の定員規模が過大となる可能性は否定できない。


(2) 課題、課題発生の原因、課題解決手段の検討(新設にあっては、非規制手段との比較により規制手段を選択することの妥当性)

  1. 課題及びその発生原因
     法科大学院は、「プロセス」としての法曹養成制度の中核として、平成16年度から制度が開始したが、修了者の合格率は単年度で2~3割と低迷している。合格率が低迷している原因の一つとしては、法科大学院制度創設時、収容定員の総数の上限を定めずに基準を満たしたものを一律に認可し過大な定員規模(最大で平成18年度に5825人)となったことが指摘されている。
     こうした状況は法曹志望者の激減をも招き、解決すべき喫緊の課題となっているが、その解決のためには、法科大学院入学から司法試験合格までの予測可能性を担保することが不可欠である。
  2. 規制の内容
     以上のことを踏まえ、大学院のうち、特に法科大学院については、その収容定員に係る学則変更について文部科学大臣の認可を要することとし、適正な定員規模を国として管理する必要がある。
     ※ 本政令案では、私立の大学の大学院に係る学則変更について認可事項とした上で、文部科学大臣の定める分野に係るものを除き届出で足りることを規定する。当該分野として、文部科学省告示において、法曹の養成に関する分野を規定し、法科大学院の収容定員に係る学則変更を認可事項とする。
     ※ なお、本政令案では、法科大学院以外の大学院についても、収容定員に係る学則の変更を届出事項として規定するが、現状においても、通知に基づく事実上の届出として処理されており、実態としては、本政令案により新たな規制が新設されるものではない。
  3. 非規制の政策手段との比較
     法科大学院の収容定員に係る学則変更を希望する大学に対し、法曹の需要の動向等を踏まえ、その適否について行政指導を行うことが考えられるが、当該代替案についても一定の行政費用が発生する上、適正な定員規模の管理について実効性がなく、本規制の方が優れている。

2 直接的な費用の把握

(3) 「遵守費用」は金銭価値化(少なくとも定量化は必須)

【遵守費用】
 法科大学院の収容定員に係る学則変更に当たり、当該法科大学院を設置する大学が認可申請を行う必要があり、そのための事務負担が発生するが、具体的な費用は、収容定員に係る学則変更の意思の有無、担当職員の認可申請事務の経験の有無、必要な学内手続の内容等により左右されるため、算出は困難である。
※ 令和2年度入学者を募集する予定の法科大学院:35校
  (うち、本政令案により認可対象となる私立の法科大学院:18校)


【行政費用】
  文部科学省において、認可申請を受け付けた上で、「大学設置・学校法人審議会」への諮問及び同審議会の答申を経て、認可の可否を決定する事務が生じる。したがって、申請内容の精査や審議会の運営に係る事務負担が行政費用となるが、他の認可申請案件と併せて処理することが想定されるため、本規制の新設により新たに発生する行政費用を切り分けて算出することは困難である。


(4) 規制緩和の場合、モニタリングの必要性など、「行政費用」の増加の可能性に留意

 ―


3 直接的な効果(便益)の把握

(5) 効果の項目の把握と主要な項目の定量化は可能な限り必要

 本規制により、法科大学院について、法曹の需要の動向等を踏まえた適正な定員規模の管理が可能となる。これにより、法科大学院入学から司法試験合格までの予測可能性を担保し、もって、より多くの有為な人材が、安心して法科大学院に進学し法曹を目指すことが可能となる。


(6) 可能であれば便益(金銭価値化)を把握

 金銭価値化した便益の把握は困難である。


(7) 規制緩和の場合は、それにより削減される遵守費用額を便益として推計

 ―


4 副次的な影響及び波及的な影響の把握

(8) 当該規制による負の影響も含めた「副次的な影響及び波及的な影響」を把握することが必要

 特段の影響は想定されない。


5 費用と効果(便益)の関係

(9) 明らかとなった費用と効果(便益)の関係を分析し、効果(便益)が費用を正当化できるか検証

 本規制に関連する費用は、医学部・歯学部等、定員管理を実施している他の分野と同程度にとどまるものであって、ことさらに大きな負担を強いるものではない。他方、本規制によって得られる効果は、法曹養成制度への信頼と法曹志望者の回復であり、我が国司法の維持・発展に欠かせないものである。
 上記のことから、本規制により得られる効果は明らかに費用より大きいと言えるため、本規制を導入することは妥当である。


6 代替案との比較

(10) 代替案は規制のオプション比較であり、各規制案を費用・効果(便益)の観点から比較考量し、採用案の妥当性を説明

 実効性のある適正な定員規模の管理を行うことが可能な代替案は想定されない。


7 その他の関連事項

(11) 評価の活用状況等の明記

 本規制の検討段階やコンサルテーション段階で本事前評価を実施し、審議会や利害関係者からの情報収集などで当該評価を利用した実績はない。

8 事後評価の実施時期等

(12) 事後評価の実施時期の明記

 本政令案には見直し条項が設けられていないことから、規制改革実施計画(平成26年6月24日閣議決定)を踏まえ、施行の日から5年後に事後評価を実施することとする。


(13) 事後評価の際、費用、効果(便益)及び間接的な影響を把握するための指標等をあらかじめ明確にする。

 本規制の目的が法科大学院入学から司法試験合格までの予測可能性の担保であることを踏まえ、本規制の事後評価に際しては、法科大学院志願者数及び法科大学院修了者の司法試験合格率を指標として設定することを想定している。


以上
 

法科大学院の収容定員に係る学則変更の認可事項化(要旨)

 法律又は政令の名称

 学校教育法施行令の一部を改正する政令案

 規制の名称

 法科大学院の収容定員に係る学則変更の認可事項化

 規制の区分

 新設

 担当部局

 高等教育局専門教育課専門職大学院室

 評価実施時期

 令和元年7月

 規制の目的、内容及び必要性

 法科大学院は、「プロセス」としての法曹養成制度の中核として、平成16年度から制度が開始したが、修了者の合格率は単年度で2~3割と低迷している。合格率が低迷している原因の一つとしては、法科大学院制度創設時、収容定員の総数の上限を定めずに基準を満たしたものを一律に認可し過大な定員規模となったことが指摘されている。
こうした状況は法曹志望者の激減をも招き、解決すべき喫緊の課題となっているが、その解決のためには、法科大学院入学から司法試験合格までの予測可能性を担保することが不可欠である。したがって、大学院のうち、特に法科大学院については、その収容定員に係る学則変更について文部科学大臣の認可を要することとし、適正な定員規模を国として管理する必要がある。
※本政令案では、私立の大学の大学院に係る学則変更について認可事項とした上で、文部科学大臣の定める分野に係るものを除き届出で足りることを規定する。当該分野として、文部科学省告示において、法曹の養成に関する分野を規定し、法科大学院の収容定員に係る学則変更を認可事項とする。
※なお、本政令案では、法科大学院以外の大学院についても、収容定員に係る学則の変更を届出事項として規定するが、現状においても、通知に基づく事実上の届出として処理されており、実態としては、本政令案により新たな規制が新設されるものではない。

 直接的な費用

 遵守費用

 法科大学院の収容定員に係る学則変更に当たり、当該法科大学院を設置する大学が認可申請を行う必要があり、そのための事務負担が発生するが、具体的な費用は、収容定員に係る学則変更の意思の有無、担当職員の認可申請事務の経験の有無、必要な学内手続の内容等により左右されるため、算出は困難である。
※令和2年度入学者を募集する予定の法科大学院:35校
 (うち、本政令案により認可対象となる私立の法科大学院:18校)

 行政費用

 文部科学省において、認可申請を受け付けた上で、「大学設置・学校法人審議会」への諮問及び同審議会の答申を経て、認可の可否を決定する事務が生じる。したがって、申請内容の精査や審議会の運営に係る事務負担が行政費用となるが、他の認可申請案件と併せて処理することが想定されるため、本規制の新設により新たに発生する行政費用を切り分けて算出することは困難である。

 直接的な効果(便益)

 本規制により、法科大学院について、法曹の需要の動向等を踏まえた適正な定員規模の管理が可能となる。これにより、法科大学院入学から司法試験合格までの予測可能性を担保し、もって、より多くの有為な人材が、安心して法科大学院に進学し法曹を目指すことが可能となる。

 副次的な影響及び波及的な影響

 特段の影響は想定されない。

 費用と効果(便益)の関係

 本規制に関連する費用は、医学部・歯学部等、定員管理を実施している他の分野と同程度にとどまるものであって、ことさらに大きな負担を強いるものではない。他方、本規制によって得られる効果は、法曹養成制度への信頼と法曹志望者の回復であり、我が国司法の維持・発展に欠かせないものである。
 上記のことから、本規制により得られる効果は明らかに費用より大きいと言えるため、本規制を導入することは妥当である。

 代替案との比較

 実効性のある適正な定員規模の管理を行うことが可能な代替案は想定されない。

 その他の関連事項

 特になし。

 事後評価の実施時期等

 本政令案には見直し条項が設けられていないことから、規制改革実施計画(平成26年6月24日閣議決定)を踏まえ、施行の日から5年後に事後評価を実施することとする。

 

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