特定地域内の大学等の学生の収容定員の抑制

法律又は政令の名称

 地域における大学の振興及び若者の雇用機会の創出による若者の修学及び就業の促進に関する法律案 

規制の名称

 特定地域内の大学等の学生の収容定員の抑制

規制の区分

 新設

担当部局

 高等教育局高等教育企画課

評価実施時期

 平成30年2月

1 規制の目的、内容及び必要性

(1) 規制を実施しない場合の将来予測(ベースライン)  

 2000年から2015年で地方の若者が532万人(約3割)減少している。また、東京圏への転入超過数は近年10万人を超える規模で推移し、そのほとんどが若者である。
 今後18歳人口が大幅に減少(2016年約120万人が2040年には約88万人に減少)すると見込まれ、今後も条件の有利な東京23区の大学等の学生の収容定員増が進み続けると、東京一極集中がますます加速しかねず、東京の大学の収容力が拡大する一方で地方大学の中には経営悪化による撤退等が生じ、地域間で高等教育の就学機会の格差が拡大しかねない。

(2) 課題、課題発生の原因、課題解決手段の検討(新設にあっては、非規制手段との比較により規制手段を選択することの妥当性)  

 上記のとおり、地方で若者が減少しており、東京圏の転入超過数のほとんどが若者であること、今後18歳人口が大幅に減少すると見込まれ、今後も条件の有利な東京23区の大学等の学生の収容定員増が進み続けると、東京一極集中がますます加速しかねず、東京の大学の収容力が拡大する一方で地方大学の中には経営悪化による撤退等が生じ、地域間で高等教育の就学機会の格差が拡大しかねないことが課題である。
 この状況を踏まえ、本法律案において、地域における大学振興・若者雇用創出のための交付金制度や地域における若者の雇用機会の創出等の措置と併せて、大学等の設置者又は大学等を設置しようとする者は、特定地域内学部収容定員(特定地域内に校舎が所在する大学の学部の学生の収容定員のうち、当該校舎で授業を受ける学生に係るものとして政令で定めるところにより算出した収容定員をいう。以下同じ。)を増加させてはならない旨を規定する。
 なお、特定地域は、学生が既に相当程度集中している地域等として東京23区を政令で規定する予定である。また、これに関して、文部科学大臣の勧告、是正命令等の権限を規定する。これらは10年間の時限措置である。
 近年、東京23区の大学生は増加が著しく、学生の18%が集中している等の特殊な状況にある。地方大学の振興施策のみでこの傾向を大きく変えることは困難であり、本規制策を併せて講じることが妥当である。

2 直接的な費用の把握

(3) 「遵守費用」は金銭価値化(少なくとも定量化は必須)

 制度の詳細は政令で規定する予定であるが、大学の設置者等※が、特定地域内学部収容定員について文部科学省に届出等を行う遵守費用が発生し得る。
 行政においては、大学の設置者等が特定地域内学部収容定員を増加させてはならないとの規定に違反等している場合に勧告・命令を行う際の行政費用が発生する。

 ※文部科学大臣所轄学校法人数は、平成30年2月現在で665法人

(4) 規制緩和の場合、モニタリングの必要性など、「行政費用」の増加の可能性に留意

 (規制の新設のため該当せず)   

3 直接的な効果(便益)の把握

(5) 効果の項目の把握と主要な項目の定量化は可能な限り必要

 本法律案により、地域における大学振興・若者雇用創出のための交付金制度、地域における若者の雇用機会の創出等の措置と併せて本規制を講じることにより、地域における大学の振興、地域における中核的な産業の振興、当該産業に関する専門的な知識を有する人材の育成、地域における若者の雇用機会の創出等を行い、地域における若者の修学及び就業が促進される。

(6) 可能であれば便益(金銭価値化)を把握  

 -

(7) 規制緩和の場合は、それにより削減される遵守費用額を便益として推計

 (規制の新設のため該当せず)

4 副次的な影響及び波及的な影響の把握

(8) 当該規制による負の影響も含めた「副次的な影響及び波及的な影響」を把握することが必要

 地域における若者の修学及び就業が促進されることにより、地域全体の活力の向上及び持続的発展が図られることとなる。また、東京一極集中の是正に資するとともに、地域間における高等教育の就学機会の格差の拡大を防ぐことが見込まれる。

5 費用と効果(便益)の関係

(9) 明らかとなった費用と効果(便益)の関係を分析し、効果(便益)が費用を正当化できるか検証

 本措置により、文部科学省への届出等に係る遵守費用や規定に違反等している場合の勧告・命令に係る行政費用が一定程度発生し得るが、我が国における急速な少子化の振興及び地域の若者の著しい減少により地域の活力が低下している実情があり、本規制を講じることは、地域における若者の修学及び就業を促進し、地域の活力の向上及び持続的発展を実現することに寄与することに加え、東京一極集中の是正にも資するとともに地域間における高等教育の就学機会の格差の拡大の防止にもつながるものであり、大きな効果が期待できる。
 なお、本法律案には、他に地域における大学振興・若者雇用創出のための交付金制度、地域における若者の雇用機会の創出等の措置が盛り込まれており、本規制と併せて更なる効果が期待できる。

6 代替案との比較

(10) 代替案は規制のオプション比較であり、各規制案を費用・効果(便益)の観点から比較考量し、採用案の妥当性を説明

【代替案の内容】
・大学設置者等に対して、特定地域内学部収容定員を増加させないように要請を行う。

【費用】
遵守費用
・大学の設置者等が要請に従うか否かを検討する等の遵守費用が発生する。
行政費用
・特定地域内学部収容定員を増加させないようにする要請に係る行政費用が発生し得る

【効果(便益)】
・大学の設置者等が要請に従う限りにおいて、特定地域内学部収容定員を抑制することができ、その限りにおいて、規制案と同様の効果が得られることが見込まれる。
・ただし、大学の設置者等の任意の対応となるため、実効性は限定的である。

【規制案と代替案の比較】
・代替案においても規制案と同様に一定程度の遵守費用や行政費用が発生するとともに、大学の設置者等が要請に従う限りにおいて、規制案と同様に特定地域内学部収容定員を抑制することができ、その限りにおいて規制案と同様の効果が得られることが見込まれる。ただし、大学の設置者等の任意の対応となるため実効性が限定的となる。
・この点、規制案においては、大学設置者等は、特定地域内学部収容定員を増加させてはならないものとするとともに、これに違反し又は違反するおそれがあると認めるときは、その是正のために勧告、命令等を行うことも想定されることから、実効性が担保され、より効果的な措置を講ずることができることが考えられる。
・このため、代替案よりも、規制案の方が優れていると考えられる。

7 その他の関連事項

(11) 評価の活用状況等の明記

 本規制案については、「まち・ひと・しごと創生会議」や、まち・ひと・しごと創生担当大臣の下に置かれていた「地方大学の振興及び若者雇用等に関する有識者会議」での議論等を踏まえ、取りまとめられた。

○平成28年12月14日 第11回まち・ひと・しごと創生会議
「まち・ひと・しごと創生総合戦略(2016改訂版)(案)」について審議
(参考)「まち・ひと・しごと創生総合戦略(2016改訂版)」(平成28年12月22日閣議決定)抜粋
 地方を担う多様な人材を育成・確保し、東京一極集中の是正に資するよう、地方大学の振興、地方における雇用創出と若者の就業支援、東京における大学の新増設の抑制や地方移転の促進などについての緊急かつ抜本的な対策を、教育政策の観点も含め総合的に検討し、2017年夏を目途に方向性を取りまとめる。

○平成29年2月~5月 「地方大学の振興及び若者雇用等に関する有識者会議」において計6回会合を開催し、平成29年5月22日に中間報告を取りまとめ。

○平成29年5月29日 第12回まち・ひと・しごと創生会議
 「まち・ひと・しごと創生基本方針2017(案)」について審議
(参考)「まち・ひと・しごと創生基本方針2017」(平成29年6月9日閣議決定)抜粋
 今後、18歳人口が大幅に減少する中、学生の過度の東京への集中により、地方大学の経営悪化や東京圏周縁で大学が撤退した地域の衰退が懸念されることから、東京23区の大学の学部・学科の新増設を抑制することとし、具体的には、大学生の集中が進み続ける東京23区においては、大学の定員増は認めないことを原則とする。その際、総定員の範囲内で対応するのであれば、既存の学部等の改廃等により、社会のニーズに応じて新たな学部・学科を新設することを認められるものとするなど、スクラップ・アンド・ビルドを徹底する。これらについての具体的な制度や仕組みについて検討し、年内に成案を得る。また、本年度から、直ちに、こうした趣旨を踏まえた対応を行う。

○平成29年7月~平成29年12月 「地方大学の振興及び若者雇用等に関する有識者会議」において計8回会合を開催し、平成29年12月8日に最終報告を取りまとめ。

○平成29年11月17日 第13回まち・ひと・しごと創生会議 東京23区の大学の定員抑制を含む「まち・ひと・しごと創生総合戦略(2017改訂版)」の基本的方向(案)について審議

○平成29年12月18日 第14回まち・ひと・しごと創生会議 「まち・ひと・しごと創生総合戦略(2017改訂版)」について審議
(参考)「まち・ひと・しごと創生総合戦略(2017改訂版)」(平成29年12月22日閣議決定)抜粋
 東京の大学進学者の収容力は200%と突出している上に、近年、東京23区の大学生は増加傾向にある。とりわけ、東京圏への転入超過数の約12万人(2016年)のうち、大学進学時の転入超過は約7万人程度であり、特に東京23区には全国の学生の18%が集中している。
今後18歳人口が大幅に減少する中、他の地域と比べて優位性の高い東京23区の定員増が進み続けると、更に地域間の大学の偏在が進むとともに、地方大学の中には経営悪化による撤退等が生じ、高等教育の就学機会の格差が拡大していくことになりかねない。また、大学進学時の東京都への転入者は、就職時においても東京都への残留率が高いことから、20代の若者の東京圏への転入超過を助長しかねない。
 以上から、近年学生数の増加が著しい東京23区においては、学部・学科の所在地の移転等も含めて、原則として大学の定員増を認めないこととする。

8 事後評価の実施時期等

(12) 事後評価の実施時期の明記

 平成36年3月31日までの間に専門職大学等の設置の状況その他本法案の施行の状況について検討することとするとともに、平成40年3月31日までの間に、地域における若者の修学及び就業の状況その他本法案の施行の状況について検討を行うこととしている。
 なお、特定地域内学部収容定員の抑制に係る規定は平成40年3月31日に失効することとしている。

(13) 事後評価の際、費用、効果(便益)及び間接的な影響を把握するための指標等をあらかじめ明確にする。

 事後評価に向け、東京圏への転入超過数、東京23区の学生数等により効果等を把握する必要があると考える。

お問合せ先

高等教育局高等教育企画課

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