成年被後見人等に係る欠格条項の見直し

法律又は政令の名称

 成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律案(文部科学省関係部分) 

規制の名称

 成年被後見人等に係る欠格条項の見直し

規制の区分

 改正(緩和)

担当部局

 (学校教育法の改正部分)初等中等教育局初等中等教育企画課
 (教育職員免許法の改正部分)初等中等教育局教職員課
 (私立学校法の改正部分)高等教育局私学部私学行政課
 (宗教法人法の改正部分)文化庁文化部宗務課
 (義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律の改正部分)初等中等教育局教科書課
 (技術士法の改正部分)科学技術・学術政策局人材政策課
 (著作権等管理事業法の改正部分)文化庁長官官房著作権課

評価実施時期

 平成30年3月

1 規制の目的、内容及び必要性

(1) 規制を実施しない場合の将来予測(ベースライン)  

 これまで、各法律において規制を設けてきた趣旨は、それぞれ以下のとおりである。

【学校教育法】
 学校教育法において、校長又は教員の欠格条項として、いくつかの要件を設けているが、そのうちの一つとして学校の教育水準を維持するため、従前、成年被後見人及び被保佐人を欠格事由としてきたものである。

【教育職員免許法】
 教育職員免許法において、教員免許授与の欠格条項として、いくつかの要件を設けているが、そのうちの一つとして教員の資質の保持と向上を図るため、従前、成年被後見人及び被保佐人を欠格事由としてきたものである。

【私立学校法】
 私立学校法において、学校法人の役員の欠格条項として、いくつかの要件を設けているが、そのうちの一つとして、学校法人運営を適切に行わせるとともに、学校法人の運営が教育的に行われるようにするため、従前、成年被後見人及び被保佐人を欠格事由としてきたものである。

【宗教法人法】
 宗教法人法において、役員の欠格条項として、幾つかの要件を設けているが、そのうちの一つとして、そもそも自己の財産についての管理能力が不完全である者に法人の財産の維持運用について重要な判断を認めることとなり背理である上、取引の安全を害するという理由により、従前、成年被後見人及び被保佐人を欠格事由としてきたものである。

【義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律】
 義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律(以下「無償措置法」という。)において、教科用図書(以下「教科書」という。)の発行者の指定制度は、教科書が公共性の高いものであり、特に義務教育段階においては本法により無償措置の対象とし公費をもって賄われるため健全な企業等のみが発行を担当すべきであることから設けられているもの。現在、この教科書の発行者の指定の欠格条項として、幾つかの要件を設けているが、そのうちの一つとして成年被後見人は、その法定代理人が本人を代表して法律行為を行うため、法定代理人が教科書発行者の指定を受けることができない者であるような場合には、本人について教科書の発行の事業を行うに足ると認められる一般的信用性がないのと同様に評価し、従前より法定代理人の資格も欠格事由としてきたものである。

【技術士法】
 技術士法において、我が国の科学技術の向上と国民経済の発展に資するため、科学技術に関する高度な知識・応用能力と高い技術者倫理を持つことが求められる技術士及び技術士補の資格要件を定めるという目的の下に設けられている。現在、技術士及び技術士補資格の欠格条項として幾つかの要件を設けているが、そのうちの一つとして技術士及び技術士補の社会的信用を保持することを目的とし、従前、成年被後見人及び被保佐人を欠格事由としてきたものである。

【著作権等管理事業法】
 著作権等管理事業法における著作権等管理事業の登録は、登録制度を実施してその業務の適正な運営を確保するための措置を講ずることにより、著作権等の管理を委託する者を保護するとともに、著作物等の利用を円滑にすることで文化の発展に寄与するという目的の下に設けられているもの。現在、この著作権等管理事業の登録の欠格条項として、幾つかの要件を設けているが、そのうちの一つとして、従前、成年被後見人及び被保佐人を役員とする法人を欠格事由としてきたものである。これは、行為能力が制限されている者を役員とする法人の管理事業者としての登録を認めることは、そもそも自己の財産についての管理能力が不完全であるものに他人の著作権等の管理業務についての重要な判断を認めることとなり背理である上、取引の安全を害することになるという観点から登録を受けることができないものとしたものである。

 一方、このような成年被後見人等の権利に係る制限が設けられている制度(いわゆる欠格条項)が数多く存在していることが、成年後見制度の利用を躊躇させる要因の一つになっていると指摘されており、本改正を行わない場合、その状況が続くこととなる。

(2) 課題、課題発生の原因、課題解決手段の検討(新設にあっては、非規制手段との比較により規制手段を選択することの妥当性)  

【課題及びその発生原因】
 成年後見制度の利用の促進に関する法律第11条第2号において、成年後見制度の利用促進に関する施策の基本方針として、「成年被後見人等の人権が尊重され、成年被後見人等であることを理由に不当に差別されないよう、成年被後見人等の権利に係る制限が設けられている制度について検討を加え、必要な見直しを行うこと」とされている。
また、成年後見制度利用促進基本計画(平成29年3月24日閣議決定)において、現在、成年被後見人等の権利に係る制限が設けられている制度(いわゆる欠格条項)が数多く存在していることが、成年後見制度の利用を躊躇(ちゅうちょ)させる要因の一つになっているとの指摘を踏まえ、これらの見直しを速やかに進めることとされている。
 これを踏まえ、内閣府成年後見制度利用促進委員会における議論を経て、「成年被後見人等の権利に係る制限が設けられている制度の見直しについて(議論の整理)」(平成29年12月1日第9回内閣府成年後見制度利用促進委員会)において権利の制限に係る措置を見直すこととされている。

【規制緩和の内容】
 今回、成年後見制度の利用の促進に関する法律に基づく成年被後見人等に係る欠格事由の見直しにより以下を実施する。

≪成年被後見人等の欠格事由を単純に削除するものについて≫
・学校教育法の改正関係:校長又は教員の制度自体は見直さないものの、欠格事由から成年被後見人及び被保佐人を削除する。
・教育職員免許法の改正関係:教員免許制度自体は見直さないものの、欠格事由から成年被後見人及び被保佐人を削除する。
・無償措置法の改正関係:教科用図書の発行者の指定制度自体は見直さないものの、欠格事由から成年被後見人を削除する。

≪成年被後見人等の欠格事由を削除し、個別審査規定を設置するものについて≫
・私立学校法の改正関係:個別審査規定(心身の故障がある者の適格性に対する個別的、実質的な審査によって学校法人の役員の業務を適正に行うために必要となる能力の有無を判断する規定)を新設する。
・宗教法人法の改正関係:個別審査規定(心身の故障がある者の適格性に対する個別的、実質的な審査によって宗教法人の役員の業務を適切に行うために必要となる能力の有無を判断する規定)を新設する。
・技術士法の改正関係:個別審査規定(心身の故障(精神の機能の障害)がある者の適格性に対する個別的、実質的な審査によって技術士及び技術士補の業務を適正に行うために必要となる認知、判断及び意思疎通等の能力の有無を判断する規定)を新設する。
・著作権等管理事業法の改正関係:個別審査規定(心身の故障がある者の適格性に対する個別的な審査によって著作権等管理事業の役員の業務の特性に応じて必要となる能力の有無を判断する規定)を新設する。

【代替案の有無】
 今回の改正は、成年後見制度の利用の促進に関する法律、成年後見制度利用促進基本計画及び「成年被後見人等の権利に係る制限が設けられている制度の見直しについて(議論の整理)」に示された方針に基づく措置として、成年被後見人及び被保佐人の人権が尊重され、成年被後見人又は被保佐人であることを理由に不当に差別されないよう、政府全体として、欠格条項の見直しを行うものであり、当該欠格事由を削除し、又は個別審査規定(心身の故障がある者の適格性に対する個別的、実質的な審査によって各資格・業務等の特性に応じて必要となる能力の有無を判断する規定)を新設する以外の方法は想定できない。
 以上より、同様の政策目的を達成し得る代替案は想定できない。

2 直接的な費用の把握

(3) 「遵守費用」は金銭価値化(少なくとも定量化は必須)

≪成年被後見人等の欠格事由を単純に削除するもの(学校教育法、教育職員免許法、無償措置法関係。以下同じ。)について≫
 特段発生しない。

≪成年被後見人等の欠格事由を削除し、個別審査規定を設置するもの(私立学校法、宗教法人法、技術士法、著作権等管理事業法関係。以下同じ。)について≫
・私立学校法の改正関係:私立学校法の役員については、申請者一人当たり申請の際に準備する医師の診断書等の書類に係る数千円程度の遵守費用が発生すると見込まれる。また、各学校法人において個別審査を行う必要が生じるが、現在でも各学校法人において行っている役員としての適切性を確認する作業の一部として行われるに過ぎないため、追加的な遵守費用はほとんど発生しない。
・宗教法人法の改正関係:宗教法人法の役員については、各宗教法人において個別審査を行う必要が生じるが、現在でも各宗教法人において行っている役員としての適切性を確認する作業の一部として行われるにすぎないため、追加的な遵守費用はほとんど発生しない。
・技術士法の改正関係:技術士法の登録については、申請者一人当たり申請の際に準備する医師の診断書等の書類に係る数千円程度の遵守費用、また、個別審査を行う公益社団法人日本技術士会における人件費や時間費用の事務コストが発生すると見込まれるところ、希望する成年被後見人等についての予測は現時点では困難であるが、額は軽微であると考えられる。
・著作権等管理事業法の改正関係:著作権等管理事業法の登録については、希望する成年被後見人等についての予測は現時点では困難であるが、申請の際に必要な欠格条項に該当しない旨の誓約書の準備の費用(用紙1枚とその印刷代程度)や、本人の申告等の相談があり審査のために必要となった場合の医師の診断書等の書類に係る数千円程度の遵守費用が見込まれる。しかし、前者については従前より求められている書類であり、本改正により新たに発生する費用ではない。

(4) 規制緩和の場合、モニタリングの必要性など、「行政費用」の増加の可能性に留意

≪成年被後見人等の欠格事由を単純に削除するものについて≫
 特段発生しない。

≪成年被後見人等の欠格事由を削除し、個別審査規定を設置するものについて≫ 
・私立学校法の改正関係:私立学校法の役員については、その選任に当たり行政庁が審査するものではないため、通知等周知に係る費用を除き、行政費用はほとんど発生しない。
・宗教法人法の改正関係:宗教法人法の役員については、その選任に当たり行政庁が審査するものではないため、通知等周知に係る費用を除き、行政費用はほとんど発生しない。
・技術士法の改正関係:新たな個別審査規程の設置に伴う審査は、実際の登録事務を行う指定試験・登録機関である公益社団法人日本技術士会が行うことになるため、通知等周知に係る費用を除き、行政費用はほとんど発生しない。
・著作権等管理事業法の改正関係:1時間(a.審査に必要な提出書類等の審査に要する平均所要時間)×1,620円/時間(b.賃金単価)×0.6人/年(仮に、各事業者に一人該当の役員がいると仮定し、c.申請することが見込まれる事業数(下記)を算出)=972円/年。

※なお、算定の各要素については、今回の見直しによる変動の有無・程度を図ることは現時点においては困難であるため、現行の審査過程を参考に記載することとする。
a.欠格条項に関する提出書類の審査に要する平均所要時間を記載
b.月間現金給与額272,145円(原単位データ等資料P.5)÷(21日×8時間)=1,620円/時間)
c.過去5年間で申請者数は3件であるため、平均0.6件/年間

      

3 直接的な効果(便益)の把握

(5) 効果の項目の把握と主要な項目の定量化は可能な限り必要

≪成年被後見人等の欠格事由を単純に削除するものについて≫
 当該規制において、成年被後見人(及び被保佐人)に係る欠格条項が削除されることから、成年被後見人(及び被保佐人)という理由のみで一律に排除されることがなくなり、法の目的である成年被後見人(及び被保佐人)の人権の尊重、成年被後見人(又は被保佐人)であることを理由とした不当な差別の解消及び成年後見制度の利用促進が図られる。

≪成年被後見人等の欠格事由を削除し、個別審査規定を設置するものについて≫
 当該規制において、成年被後見人(及び被保佐人)の欠格条項を削除し、個別審査規定(心身の故障がある者の適格性に対する個別的、実質的な審査によって各資格・業務等の特性に応じて必要となる能力の有無を判断する規定)が設置されるため、今後は、成年被後見人(及び被保佐人)という理由のみで一律に排除されることがなくなり、法の目的である成年被後見人(及び被保佐人)の人権の尊重、成年被後見人(又は被保佐人)であることを理由とした不当な差別の解消及び成年後見制度の利用促進が図られる。

4 副次的な影響及び波及的な影響の把握

(6) 当該規制による負の影響も含めた「副次的な影響及び波及的な影響」を把握することが必要

≪成年被後見人等の欠格事由を単純に削除するものについて≫
・学校教育法の改正関係:欠格事由を削除するものの、現行の任命権者による選考等の個別審査により校長又は教員に必要な能力の有無を判断するため、特段の影響は想定されない。
・教育職員免許法の改正関係:欠格事由を削除するものの、現行の大学における単位認定や任命権者による選考等の個別審査により教員に必要な能力の有無を判断するため、特段の影響は想定されない。
・無償措置法の改正関係:欠格事由を削除するものの、適当な行政指導や申請者が欠格事由に該当する法定代理人に教科書の発行に係る事業を代理させないことその他の必要な条件を付すること等によって、引き続き、代理人の権限の濫用を防ぐことができ、現在の状態は維持されることから、特段の影響は想定されない。

≪成年被後見人等の欠格事由を削除し、個別審査規定を設置するものについて≫
 特段想定されない。

5 費用と効果(便益)の関係

(7) 明らかとなった費用と効果(便益)の関係を分析し、効果(便益)が費用を正当化できるか検証

≪成年被後見人等の欠格事由を単純に削除するものについて≫
 本改正案においては、特段遵守費用及び行政費用が特段発生するものではなく、当該欠格条項の見直しにより、成年被後見人(及び被保佐人)を一律に排除することがなくなり、法の目的である成年被後見人(及び被保佐人)の人権の尊重、成年被後見人(又は被保佐人)であることを理由とした不当な差別の解消及び成年後見制度の利用促進が可能となることに鑑みれば、本対策案により得られる効果(人権問題の解消)が非常に大きいと考えられる。

≪成年被後見人等の欠格事由を削除し、個別審査規定を設置するものについて≫
 本改正案の結果として、遵守費用及び行政費用が一定程度発生する。しかし、当該欠格条項の見直しにより、成年被後見人(及び被保佐人)を一律に排除することがなくなり、法の目的である成年被後見人(及び被保佐人)の人権の尊重、成年被後見人(又は被保佐人)であることを理由とした不当な差別の解消及び成年後見制度の利用促進が可能となることに鑑みれば、本対策案により得られる効果(人権問題の解消)が非常に大きいのに対し、必要な費用は社会的に受忍されるべき程度のものであると考えられる。

6 代替案との比較

(8) 代替案は規制のオプション比較であり、各規制案を費用・効果(便益)の観点から比較考量し、採用案の妥当性を説明

 上記(2)に記載のとおり、代替案は想定されない。

7 その他の関連事項

(9) 評価の活用状況等の明記

 成年後見制度利用促進委員会において、成年被後見人等の権利に係る制限が設けられている制度の見直しについて議論の整理がなされた(平成29年12月1日)。

 成年被後見人等の権利に係る制限が設けられている制度の見直しについて(議論の整理)(抄)
 『成年後見制度の利用の促進に関する法律第11条において、成年後見制度の利用促進に関する施策の基本方針として、「成年被後見人等の人権が尊重され、成年被後見人等であることを理由に不当に差別されないよう、成年被後見人等の権利に係る制限が設けられている制度について検討を加え、必要な見直しを行うこと」とされている。
 また、成年後見制度利用促進基本計画(平成29年3月24日閣議決定)において、現在、成年被後見人等の権利に係る制限が設けられている制度(いわゆる欠格条項)が数多く存在していることが、成年後見制度の利用を躊躇(ちゅうちょ)させる要因の一つになっているとの指摘を踏まえ、これらの見直しを速やかに進めることとされている。
 成年後見制度利用促進委員会(以下「促進委員会」という。)では、成年被後見人等の権利に係る制限が設けられている制度の見直しについて、平成29年9月11日、9月27日、12月1日の3回にわたり検討を行った結果、これまでの議論の整理として以下のとおり取りまとめた。
 内閣府においては、法制上、実務上の論点を踏まえ、引き続き各府省と調整を進めるとともに、各府省においては、必要に応じて関係審議会や調査会等での審議を進めるなど、政府全体で次期通常国会への見直し一括整備法案の提出に向けて速やかに検討を進めるべきである。』

8 事後評価の実施時期等

(10) 事後評価の実施時期の明記

≪成年被後見人等の欠格事由を単純に削除するものについて≫
 -
≪成年被後見人等の欠格事由を削除し、個別審査規定を設置するものについて≫
 5年

(11) 事後評価の際、費用、効果(便益)及び間接的な影響を把握するための指標等をあらかじめ明確にする。

≪成年被後見人等の欠格事由を単純に削除するものについて≫
 -
≪成年被後見人等の欠格事由を削除し、個別審査規定を設置するものについて≫
 個別審査規定の適正性等について判断。

お問合せ先

初等中等教育局初等中等教育企画課、教職員課、教科書課、高等教育局私学行政課

科学技術・学術政策局人材政策課、文化庁長官官房著作権課、文化部宗務課

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