1-1.研究大学強化促進費(新規)【施策目標9-1、行政事業レビューシート番号:平成25年度0025】

平成25年度要求額:10,000百万円

主管課(課長名)

 研究振興局振興企画課(菱山 豊)

関係局課(課長名)

 研究振興局学術研究助成課(袖山 禎之)

事業の概要等

1.事業目的・概要

 世界基準に照らして、高い水準で研究力の進展が期待できる大学に対し、エビデンスに基づき、国際的に通用する研究体制・環境の整備改善など、学長のリーダーシップによる研究力強化策を支援することにより、「世界に顔の見える」研究大学を増強することを目的とする。

2.事業に至る経緯・今までの実績

 論文数や被引用回数の多い論文数のシェア等を国際的に比較すると我が国全体の国際プレゼンスが上位層を含め相対的に低下している傾向にある。その要因として、大学・研究機関等の研究体制・環境の継続的な改善に課題があること、我が国の論文生産の約7割を担う大学の研究力に課題があること、世界で戦える「リサーチ・ユニバーシティ」としての国際競争力とその層の薄さに課題があることが挙げられている。

3.目標と指標 

【成果目標及び成果指標(アウトカム)】

(成果目標)
 我が国の論文数増加率(2000年比)を5年後に倍増させる。

【参考】
 2010年の我が国の論文数増加率(2000年比)は3%。

(成果指標)
 我が国の論文数増加率(2000年比)

【活動目標及び活動指標(アウトプット)】

(活動目標)
 支援大学における研究力を質・量ともに充実させる。

(活動指標)
 科研費の獲得状況、国際共著論文比率

事業の事前評価結果

A.必要性の観点

1.事業の必要性

 上述のように、大学の研究力を強化するには、大学における研究体制・環境の戦略的・継続的な課題解決を促していく必要があり、国際的に通用する体制づくりに向けた各大学独自改革を重点的に支援することが急務である。

2.行政・国の関与の必要性

 イノベーションの源泉となる基礎研究の国際的な地位の低下が指摘されている等、我が国において研究力の強化が必要とされている。大学は、我が国の研究の重要な担い手であり、国際競争力を高めていくためには国として積極的に支援する必要がある。

3.関係する施政方針演説、審議会の答申等

日本再生戦略(平成24年7月31日閣議決定)(抄)

(1)ローマ数字1 環境の変化に対応した新産業・新市場の創出~科学技術イノベーション・情報通信戦略~

(81ページ)

平成25年度 科学技術に関する予算等の資源配分方針(平成24年7月30日総合科学技術会議(第103回)決定)(抄)

 我が国は、イノベーションの源泉たるシーズを生み出すものとして、また、広く新しい知的・文化的価値を創造するものとして、基礎研究を強化するとともに、科学技術イノベーションの推進を担う多様な人材を、長期的な視点から、戦略的に育成、支援していく。そして、このような基礎の上に立って、科学技術イノベーション政策を強力に推進していく。

ローマ数字2.基礎研究及び人材育成の強化

 イノベーションの基盤を成す基礎研究の推進と、科学技術イノベーションを担う人材の育成は、科学技術イノベーションを支える基盤を形成するものである。近年、我が国の基礎研究の国際的な地位の低下、若手人材の育成の重要性が指摘されている中、基礎研究及び人材育成については、国家戦略として長期的視野に立って強化していくことが益々必要となっている。このため、科学技術イノベーションを担う人材の育成強化に関するポイント(参考3-1)、産学官の幅広い関係者が連携・協働する場を新たに設定し、そこでの意見を集約した、基礎研究及び人材育成の強化についての取りまとめ(参考3-2)等を踏まえつつ、運営費交付金による取組等を効果的・効率的に推進する。

(資料3-2)基礎研究及び人材育成の強化

1.危機的な現状
 基礎研究と人材育成は、科学技術イノベーションを支える基盤であるが、近年、論文生産の国際比較分析等において、我が国の基礎研究の国際的な地位の低下を強く危惧させる傾向が見られており、また大学等における若手研究者のポストの減少は、今後の我が国の科学技術の活力の減退を深刻に懸念させる状況となっている。このような危機的な現状にあって、国家戦略としての長期的視野に基づき、基礎研究と人材育成の強化を図ることが必要である。

2.政策課題
 基礎研究・人材育成に関して取り組むべき政策課題は多いが、現状においては、我が国の研究の国際的な地位低下を食い止め、競争力の回復を図ることが最優先に掲げられる。またそのためにも、若手研究者をはじめとする人材の育成・活用に関わる取組を強化すべきである。

3.重点的取組み
 礎研究と人材育成の強化を図る上で、限られた資源を有効に活用し、持続的に成果を挙げるために、相互の競争を促しつつ、大学等が本来持つ力を最大限に引き出すアプローチを取ることが重要である。また成果の検証に関しては、客観的に検証可能で国際的に意味を持つ指標によって行うことが重要である。こうした観点の下に講じられるべき主要な取組として、以下の3つを掲げる。
・国際的な水準で教育研究活動を展開する力を有する大学等を対象とした重点的な強化を図るため、世界トップレベルの研究拠点及び国際的な水準で研究活動、教育活動を展開する大学群の形成に向けて取り組む。

 4.取組みにおいて留意すべき視点
・大学等に対する支援は、範囲を絞った中で力のある大学間の競争を促すとともに、客観的に検証可能でかつ国際的に意味を持つ指標に照らして、成果を出すことのできる大学等に対して、重点的な支援を行うこと
・国は、研究力強化のための各大学の改革を促すことが重要であり、各大学等においては、内部の部局間や世代間の資源配分の見直し等に自律的かつ積極的に取り組むこととし、こうした大学等に対して重点的な支援を行うこと

科学研究費助成事業(科研費)の在り方について(審議のまとめ その2)(平成24年7月25日)(抄)

1 大学における研究力強化のための支援

(中略)

(大学における研究力強化の支援)
 大学等における学術研究を効果的に行うためには、教育研究活動をしっかりと支える基盤的経費と、優れた研究を優先的・重点的に助成する科研費等競争的資金の双方による支援(デュアル・サポート)が必要である。基盤的経費により教育研究環境が確実に整備され、幅広い学術分野での研究の芽が育てられてこそ、競争的資金による学術研究をより効果的に展開することができ、それによって、社会の発展を支える真の原動力となる、たゆまぬ知の創出と還元が可能となる。このため、公的財政支出において基盤的経費から競争的資金への単純なシフトを進めることは適切とはいえず、これについては、従前から本部会においても指摘してきたところである。
 一方、論文数や被引用回数の多い論文数のシェア等を国際的に比較すると、我が国全体の国際プレゼンスが上位層を含め相対的に低下する傾向にある。また、例えば英国の大学と比較しても、論文発表の一定割合以上を担う大学数が少ないという傾向が見られる。むろん、国によって大学の規模やファンディングの在り方が異なるため、単純なデータの比較には注意を要するものの、科研費の配分状況を英米の競争的資金の配分状況と比べると、上位10大学に続く中位層の大学層への配分割合が非常に小さいという傾向も見受けられる。こうしたことは、我が国において、研究面において国際競争力を有するような大学の層をより厚くすべきであることを示しており、現状のままでは、研究者が一部上位層の大学間以外に異動しにくくなるなど、人材流動性の面での問題も指摘されている。
 また、大学の教育研究活動を支える基盤的経費である国立大学運営費交付金や、私学への経常費補助が削減されたため、科研費等の競争的資金獲得に至る前の研究の芽を育てることや、長期的視点に立った高度な研究人材を育成することに著しい支障が生じ、あわせて、競争的資金による研究を行う上でも、研究設備の維持や研究支援者の措置等、先端的な研究活動を支えるインフラストラクチャーを適切に確保できなくなっているなど、大学の研究体制・環境に大きな課題が生じている。
 さらに、国立大学法人化によって全体としては大学の自由度が高まったにも関わらず、それを有効活用できる体制が充分に整っていないという状況があり、その要因として、研究体制・環境に関する全学的・継続的な解決を図るための学長の裁量権とそれを発揮するための資源が不足していることが指摘されている。
 このままの状況が続けば、科研費等競争的資金による研究を行うための前提となる学術研究基盤の脆弱化及び機関間の格差の拡大により、人材の流動性や研究の多様性が失われ、ひいては我が国の学術・科学技術全体としての活力が低下していくことが強く懸念される。
 本年6月に公表された文部科学省「大学改革実行プラン」においても、こうした問題意識の下、学長のリーダーシップ発揮による独自の研究力強化策を支援することにより、世界で戦える「リサーチ・ユニバーシティ」群を形成・強化していくことが必要であるとされている。
 本部会としても、このような状況に鑑み、科研費等による学術研究のより効果的な支援方策を検討した結果、大学が長期的視点に立ち、継続的な研究に取り組めるよう、それぞれの研究戦略に基づく魅力ある研究環境の構築を図ることにより、科研費を含めた競争的資金による研究活動がより一層効果的に行われるという好循環をつくり出すことが必要であると考える。このような認識に基づき、学術研究を巡って大学が抱えている様々な課題を解決していくため、従来のデュアル・サポート体制の維持を基本としながらも、大学の研究力を強化するために新たな追加支援方策が必要であると考える。

B.有効性の観点

 本事業はエビデンスに基づき、研究力の進展が期待できる大学に重点的に支援を行うこととしている。我が国の研究大学を増強するために、国として、大学が自ら取り組む必要があると考える中長期的戦略を支援していくが、その内容については学長レベルでのヒアリングや毎年の報告を実施することで、質を担保する。したがって、当該施策は有効である。

C.効率性の観点

 本事業はエビデンスに基づき、研究力の進展が期待できる大学に重点的に支援を行うこととしている。評価・見直しの段階において、大学の取組について著しく不十分なところがある場合は当該大学に対し、補助金の減額・中止を通告することも考えられる。また、5年後にレーティングの見直し・入替えを検討する。したがって、当該施策は効率的といえる。

有識者委員からの指摘等

大学の研究力は日本の科学技術の根幹であるため、その状況について、検証を行い、海外の大学との競争にも伍するべく、大学等の研究力を向上させていくことが必要である。

お問合せ先

大臣官房政策課評価室

-- 登録:平成24年10月 --