政策目標4 個性が輝く高等教育の振興

●概要

 「知識基盤社会」において、我が国が活力ある発展を続けていくために、高等教育を時代の牽引役として社会の負託に十分応えるものへと変革する一方、社会の側がこれを積極的に支援するという双方向の関係を構築する。

●主管課(課長名)

 高等教育局高等教育企画課(浅田 和伸)、大臣官房文教施設企画部計画課(山下 治)

●評価

 大学などにおける教育研究の質の向上については、国公私立大学を通じた競争的な環境下で、大学の組織的な教育改革に関する新たな取組や社会的要請に対応した取組を支援することにより、教育の質の向上・保証を促すための重要な役割・機能が果たされており、産業界等と連携した研究、国際的な経験を積む機会の充実等についても、有意義な改革が進み、多くの大学院において、教育の実質化に向けた取組が推進されている。
 また、グローバル化の進展に伴い、世界の多くの国・地域と学生等の交流が推進されていること等により、我が国の大学の国際化が促進されている。
 さらに公的な質保証システム(設置基準、設置認可審査、認証評価)は、制度が浸透し、順調に進捗している。
 大学などにおける教育研究基盤の整備については、国立大学法人等施設を計画的・重点的に整備した結果、安全な教育研究環境の確保を図るとともに、卓越した教育研究拠点の形成等に寄与している。
 以上のことを総合的に勘案し、本政策目標に係る取組は概ね想定どおり達成された。

●23年度実施施策の取組状況

○ 大学などにおける教育研究の質の向上(施策目標4-1)

 大学等の教育研究を支える基盤を強化しつつ、特色ある発展に向けた取組などを支援することや、事前・事後の評価の適切な役割分担と強調を確保すること等により、大学等の国際化や教育研究の質の向上・保証を推進することが重要である。
 大学生の就職率(全国)は2.6%(H22→H23)上昇しており、要因として大学等の就職相談員とハローワークの連携がこれまで以上に進んだことなどがあげられる。これらの取組を通じて、学部段階を中心とした大学教育の質の保証等について一定の成果を上げている。
 高度医療人材の養成と大学病院の機能強化については、がんプロフェッショナル養成プランでは毎年度600人を超える学生を受け入れ、がん専門医療人の養成が着実に図られており、また、複数の大学病院が連携し、得意分野の相互補完を図ることで、質の高い専門医や、周産期医療に関わる専門的スタッフ等が養成されており、国民が安心できる医療提供体制の構築が図られている。
 社会の要請に応じた人材育成の体制構築については、産業動物診療、感染症対策を担う獣医師の養成・確保のため、外部の高度専門機関との連携により全国の獣医系学生が利用可能な実習システムを構築した。同システムには全国の獣医系16大学すべてが参加しており、実習先となる高度専門機関としては、厚生労働省関係の4機関、農林水産省関係の1機関、国際獣疫事務局(OIE)アジア太平洋地域事務所、全国農業共済協会(NOSAI)の協力を得ている。
 グローバルCOEプログラム採択拠点所属の博士課程修了者の就職率や博士課程(後期)学生のレフェリー付論文の発表数、また、拠点が実施する共同研究数などの成果指標や活動指標における実績値は、事業の開始前と比べ、おおむね伸びつつあり、優れた若手研究者の育成機能の強化や国内外の大学・機関との連携の強化に向けた取組が各大学において実施され始めたといえる。
 大学の国際競争力の強化と国際的に活躍できる人材の育成について、「大学の国際化のためのネットワーク形成推進事業」選定13大学において開講した英語による授業のみで学位が取得できるコースの数が、平成21年度の7コースから、平成22年度には86コース、平成23年度については調査中であるが増加傾向であり、順調に増加している。また、同事業において設立した我が国の大学が共同で利用できる海外大学共同利用事務所が平成23年度までに8カ所開設されるなど、取組が順調に進展している。
 全ての国公私立の大学に7年に1回実施することを義務づけている認証評価(第三者評価)について、平成23年度は、第2サイクルの初年度として51校が認証評価を実施しており、第一サイクル初年度の平成16年度と比較すると150%増(平成16年度 34校)となっていることから、制度が浸透し、順調に進捗しているといえる。
 大学における教育内容・方法等の改善・充実については、学生や社会から期待されるニーズの多様化に積極的に対応しつつ、教育研究の質を確実に向上・保証させていく取組を推進するとともに、それらの取組を積極的に発信していく必要がある。
 グローバル化を始めとする激しく変化する社会に対応できるグローバル人材の育成については、拠点大学の形成や海外の大学との協働教育形成への支援などに引き続き取り組んでいく。
 認証評価をより大学の改善に資するものとするため、現在の法令適合性などの最低基準の確認が中心となる評価から、多様な大学の状況に応じた評価を行うための機能別評価の導入、大学の強みを伸ばす客観的評価指標の開発や、学習成果を重視した評価を検討する必要がある。

○ 大学などにおける教育研究基盤の整備(施策目標4-2)

 個性が輝く高等教育の振興のために、国立大学法人等施設を重点的・計画的に整備し、大学などにおける教育研究基盤の整備を図ることが重要である。
 「第3次国立大学法人等施設整備5か年計画」に基づき、予算の範囲内で計画的・重点的に整備を推進した結果、狭隘解消整備と大学附属病院の再生については、概ね目標に近い整備を行うことが出来たが、老朽改善整備については、進捗に遅れが見られる。
 本施策を通して、安全な教育研究環境の確保(耐震化率:87.9%(平成22年度)→89.3%(推計)(平成23年度))を図るとともに、卓越した教育研究拠点の形成等に寄与した。

●24年度以降の政策への反映方針

○ 大学などにおける教育研究の質の向上(施策目標4-1)

・達成目標1

 各種プログラムについて一層社会の負託に応えるものとするとともに、特に教育の外部評価体制等の構築を推進しつつ大学間で連携して行う取組等を中心に、教育研究の質の向上・保証を実践する大学等の特色ある多様で自主的な取組の推進を継続していく。また、社会からの大学に対する理解を深めるため、地域の課題解決へつながる大学等の取組の強化など推進することで、学生の学修意欲も刺激され、教育研究活動の充実につなげる。

・達成目標2

 着実に進捗しているが、今後の更なる充実が求められるため、達成手段に掲げる事業のフォローアップや評価等を行いつつ、RA経費の補助やコースワークから研究指導へ有機的につながりを持った体系的な博士課程教育の構築支援等の取組を通じ、国際的に卓越した教育研究拠点を形成していくとともに大学院教育の実施化を推進する。

・達成目標3

 順調に推移しているが、一層の事業の充実のため、本件事業の採択大学や産業界等、関連機関と緊密に連携をし、目標の達成に資する取組を行っていく。なお、平成24年度からは日本人学生のグローバル化を進める取組を中心に、大学の国際化を強化するグローバル人材育成推進事業を開始。

・達成目標4

 順調に進捗しているが、更なる教育研究の質の向上を目指し、制度改正の効果や認証評価を受けた大学等について検証し、引き続き事業を実施する。なお、新しく設置された大学などが最初に卒業生を送り出す年度(完成年度)まで、設置計画履行状況調査(アフターケア)として、毎年授業科目の開設状況や教員組織の整備状況などの報告を求め、書面、面接又は実地により調査を行うことにより、特に課題が見られる大学に対しては、各大学の教育水準の維持・向上に資するよう、留意事項を付したり、助言を行ったりして、大学に対して主体的な改善を促している。また、「大学ポートレート(仮称)」(平成26年度から本格実施)を活用することで認証評価を簡素化し、大学における評価業務の効率化を図る。

・達成目標5

 被災した学生に対する修学支援や、被災地域の復興のための関係大学の取組への支援等、関係事業の推進に引き続き取り組んでいく。

○ 大学などにおける教育研究基盤の整備(施策目標4-2)

 今年度の評価結果を踏まえ、引き続き、有効性、効率性の観点にも留意しながら、「第3次5か年計画」に掲げた成果目標の達成に向け、必要な予算を確保し、国立大学法人等施設の計画的・重点的な施設整備を推進することで、個性が輝く高等教育の振興に資する。
 一方、施設整備費補助金による整備を基本としつつ、各法人における寄付金等の多様な財源を活用した施設整備の一層の取組を促すため、関係者が集まる各種会議等において周知徹底を図っていく。
 また、国立大学法人等がより一層社会の期待に応え、高い教育研究成果を生み出し続けていくためには、その礎となる施設整備の必要性が広く社会に理解され、継続的・安定的に整備されることが不可欠であることから、施設整備に関する成果・効果に関する事例集を作成し配布するなど、関係者はもとより、国民一般に対する理解を求めていく。

お問合せ先

大臣官房政策課評価室

-- 登録:平成24年10月 --