1-6.大学発新産業創出拠点プロジェクト(仮称)(新規)【施策目標7-2】

 平成24年度要求額:1,510百万円

主管課(課長名)

科学技術・学術政策局産業連携・地域支援課(池田 貴城)

関係局課(課長名)

なし

事業の概要等

 1.事業目的・概要

 日本経済の復興・再生に当たっては、革新的技術の事業化を通じた新産業・新規マーケットの創出が不可欠である。このため、ベンチャーキャピタル等の民間の事業化ノウハウを活用し、大学の革新的技術の研究開発と事業戦略・知財戦略等に基づく事業育成を、発明(特許)の段階から一体的に推進する。これにより、国際市場を目指す大学発ベンチャー等の育成し、もって、新産業・新規マーケット創出のための大学発日本型イノベーションモデルを構築する。
 この事業においては、シーズの発掘・育成に重要な役割を担う事業プローモーター(仮称)を公募した上で、専門分野や地域性を考慮して選定するとともに、発明(特許)の段階から、事業プロモーターを通じて、産業界の人材や知財専門家等の専門人材をコーディネートし、大学等に起業に必要な専門チームを結集させる。また、事業プロモーターのマネジメントのもと、大学等研究者が到達目標を設定しながら、大学等の革新的技術の研究開発を実施し、シーズの事業化を目指す。また、シーズの支援に当たっては、事業プロモーターが地域性を踏まえた各ポートフォリオを形成・管理しながら、リスクが高いがポテンシャルの高い大学等の革新的技術シーズを支援するとともに、全国各地において大学発ベンチャー等による新産業・新規マーケットの創出を目指す。

2.事業に至る経緯・今までの実績

 「日本再生のための戦略に向けて」(平成23年8月5日閣議決定)等においては、「新産業の芽を育てるため、産官学連携や起業・創業への支援、ベンチャー起業の成長促進に向けた環境整備」の必要性が示されているのに加え、第4期科学技術基本計画においては、その支援の考え方として、研究開発支援だけでなく、「マネジメントチームの組成とこれに携わる人材の育成、マーケティング、資本戦略、知的財産戦略を含む総合的ビジネス戦略の構築など、経営戦略面に十分留意した支援を行う」ことが示されている。
 また、上記基本計画を受けて、科学技術・学術審議会産業連携・地域支援部会産学官連携推進委員会においては、「科学技術イノベーションに資する産学官連携体制の構築」(平成23年9月16日)をとりまとめており、この中で、リスクの高い新規マーケットへの事業化展開が日本では十分に行われていないことが指摘されている。大学発ベンチャーは、大企業ではリスクの取れない技術を活用し、ラディカルイノベーションの担い手となりうる存在でありながら、技術がアーリーステージゆえにリスクが高い上、実用化されるまで長い時間を要するため、大学発ベンチャーに対する投資は、日本経済の停滞も踏まえ、より敬遠される傾向にある。現在の状況を打破するため、大学発ベンチャーの起業前段階から、政府資金と民間の事業化ノウハウ等を組み合わせることにより、リスクは高いがポテンシャルの高いシーズに関して、事業戦略・知財戦略を構築し、市場や出口を見据えて事業化を目指す日本版のイノベーションシステムを構築することが必要であるとされているところである。

3.目標と指標

成果目標及び成果指標(アウトカム)

  • 国際市場を目指す大学発ベンチャーの創出とそれによる雇用創出数
  • 社会的意義のある(リスクの高い)シーズを育成した件数 等
    (上記指標の定量的数値については、当該事業の有識者委員会において具体的に設定する予定。)

活動目標及び活動指標(アウトプット)

  • 革新的技術シーズ(特許・発明)に関する支援数。
    (上記指標の定量的数値については、当該事業の有識者委員会において具体的に設定する予定。)

事業の事前評価結果

A.必要性の観点

1.事業の必要性

 現在、我が国では起業の廃業率が開業率を上回る等、産業構造の代謝が停滞している一方、日本の優れた基礎研究の成果が十分に実用化されているとはいえず、科学技術イノベーションが十分に機能しているとはいいがたい状況である。加えて、日本においては、既存産業や既存マーケットにおける技術の事業化のためのベンチャーキャピタル及び既存企業は存在するが、新産業・新規マーケットを開拓するための牽引エンジンやシステムが存在していない。
 そのような状況において、大学発ベンチャーは、大企業が負えないリスクにチャレンジし、新産業・新規マーケットを開拓するなど産業の代謝のドライビングフォースとなるため、我が国の経済の再生には必要不可欠な存在である。一方、これまでの大学発ベンチャー支援は、競争的研究資金制度を活用した研究開発支援が中心であり、最適な事業化構想や知財戦略が構築できず、販路・市場の開拓や収益確保の課題が、事業実施段階で顕在化するなどの問題があるだけでなく、シーズがアーリーな段階でありリスクが高いため、民間のリスクマネーの十分な確保が見込めない等の問題が指摘されていた。
 本事業は、研究開発支援と事業育成を発明(特許)の段階から一体的に推進することで、起業前段階の支援の最適化を目指すものであり、大学等の革新的技術による新産業・新規マーケットの開拓及び産官学連携による大学発の日本型イノベーションモデルの構築の観点から必要な事業である。

2.行政・国の関与の必要性

 新産業創出や新規マーケットの開拓に必要な大学等の基礎研究の成果の実用化に当たっては、リスクが極めて高いため、大企業等が担うことは難しく、大学発ベンチャー等が重要な役割を担う。
 諸外国においては、新産業創出におけるイノベーション牽引エンジンとして、米国ではベンチャーキャピタル等のプライベートセクター、韓国では財閥系企業投資、中国等では国家予算等によって担われているが、我が国においては、それらの新産業・新規マーケットを開拓するためのシステムが存在しないのが現状である。
 日本経済の再生のため、リスクは高いが、社会へのインパクトが大きく、ポテンシャルのある大学等の優れた基礎研究の成果について、技術移転の手段としての大学発ベンチャー等を通じて研究成果を社会に還元していくシステムの構築が必要であり、特に日本型のシステムとして、国が、研究成果=価値、実用化研究資金、事業化のための人材等を提供して、政策誘導によりリスクマネーを呼び込む仕組みを構築する必要があるため、国の関与は必要である。

3.関係する施政方針演説、審議会の答申等

  • 日本再生のための戦略に向けて(平成23年8月5日閣議決定)
    (産業・市場構造の転換、活力のある中小企業の育成・強化)
     新産業の芽を育てるため、産官学連携や起業・創業への支援、ベンチャー企業の成長促進に向けた環境整備を図る。
  • (産業競争力向上のためのイノベーション、情報通信技術の利活用、規制改革)
     中長期的な産業競争力、付加価値生産性向上、経済社会システム変革の観点から、グリーン・イノベーション、ライフ・イノベーション等の戦略的イノベーションとそのためのシステム改革、それを支える基礎研究と科学技術人材育成を強化し、技術と新産業創出のフロンティアの拡大を図る。  
  • 新成長戦略(平成22年6月18日閣議決定)
    (研究環境・イノベーション創出条件の整備、推進体制の強化)
     科学・技術力を核とするベンチャー創出や、産学連携など大学・研究機関における研究成果を地域の活性化につなげる取組を進める。
  • 第4期科学技術基本計画(平成23年8月19日閣議決定)
     5.科学技術イノベーションの推進に向けたシステム改革
       (2)科学技術イノベーションに関する新たなシステムの構築
    • 1 事業化支援の強化に向けた環境整備
       先端的な科学技術の成果を有効に活用した創業活動の活性化は、産業の創成や雇用の創出、経済の活性化において極めて重要である。しかし、近年、大学発ベンチャーの設立数が、人材確保や資金確保の問題を一因として急激に減少していることにもみられるように、創業を取り巻く環境は厳しさを増している。このため、研究開発の初期段階から事業化まで、切れ目無い支援の充実を図ることにより、先端的な科学技術を基にしたベンチャー創業等の支援を強化するための環境整備を行う。
      <推進方策>
      国は、起業家精神の涵養、起業体験教育等の人材養成、専門家による法務、知的財産、資本戦略に関する支援を行うネットワークの構築など、総合活動の基盤を整備する。また、大学発ベンチャーに対して、マネジメントチームの組成とこれに携わる人材の育成、マーケティング、資本戦略、知的財産戦略を含む総合的ビジネス戦略の構築など、経営戦略面に十分留意した支援を行う。

B.有効性の観点

 本事業においては、発明(特許)の段階から、大学の革新的技術の研究開発支援とのチームアップにより事業戦略・知財戦略を構築するなど、チームによる事業育成を一体的に実施し、新産業・新規マーケットのための大学発日本型イノベーションモデルを構築することを目指しているだけでなく、シーズの支援に当たっては、ポートフォリオの概念を導入し、全国(各地域)において大学発ベンチャーの創出拠点の育成をめざすため、本事業により、イノベーション創出に向けた産業連携の推進及び地域科学技術の振興が図られるものと考える。

C.効率性の観点

1.インプット

本事業の予算規模は、1,510百万円である。
(内訳)

  • 支援対象課題のポートフォリオ形成 158百万円×9ポートフォリオ
  • 審査・事務経費 88百万円

2.アウトプット

 本事業により形成される全国9拠点(ポートフォリオ)において、大学等、研究開発独法、企業、金融機関等の各々のプレーヤーが相互に関与して、イノベーション創出を加速するシステムを構築できるとともに、東京以外の地域から、世界の新規市場・新規マーケットを開拓する大学発ベンチャー等が創出される。

有識者委員からの指摘等

 成果目標について、大学発ベンチャーを創出した後に、どの程度の割合でそれらの事業が生き残っていくことを想定しているのかという視点を入れて検討するべきである。

お問合せ先

大臣官房政策課評価室

-- 登録:平成23年10月 --