1-10.文化芸術による日本元気復活プラン【施策目標12-1、12-2、12-3】
平成23年度「元気な日本復活特別枠」要望額:15,800百万円
(平成22年度予算額:―百万円)
事業開始年度:平成23年度
事業達成年度または定期評価実施年度:平成27年度
主管課(課長名)
文化庁長官官房政策課(大木 高仁)
関係課(課長名)
文化庁文化部芸術文化課(山崎 秀保)、文化庁文化財部伝統文化課(白間 竜一郎)、文化庁長官官房国際課(大路 正浩)
事業の概要等
1.事業目的
『文化芸術による日本元気復活プラン』
創造的な人材育成による産業育成・雇用創出、貴重な文化遺産の活用による観光振興・地域活性化や我が国の優れた文化芸術の海外への発信など、我が国の強みである文化芸術を経済成長のために最大限活用することで、「元気な日本」の復活を図る。
- 「文化芸術による次世代人材育成プロジェクト」
文化芸術は新たな付加価値を生み出す源泉であり、若手クリエイターや新進芸術家、創造性豊かな子どもの育成など、クールジャパン戦略の推進や未来への先行投資により「強い人材」の実現を図り、文化芸術による創造的な産業育成と新たな雇用の創出を通じて、元気な日本を復活させる。
- 「文化遺産を活かした観光振興・地域活性化事業」
新成長戦略、観光連携コンソーシアム及び文化審議会文化政策部会で、地域資源としての文化遺産の活用が謳われている。これらを受け、本物の文化遺産としての価値を高めつつ、それらを活用した取組を進めることで、観光振興・地域活性化を推進するものである。
- 「クリエイティブ・ニッポン発信!プロジェクト」
新成長戦略や「民主党マニュフェスト2010」に則し、東アジア諸国の文化人、芸術家、学術経験者等が一堂に会する会議の開催等により東アジアの人的交流や文化交流の拡大に向けた機運醸成を図るとともに、アート・フェスティバルや国際映画祭、アーティスト・イン・レジデンス等により、我が国からの文化芸術の海外発信を強化する。
2.事業に至る経緯・今までの実績
- 「文化芸術による次世代人材育成プロジェクト」
文化芸術は、国民が心豊かな生活を実現していく上で不可欠なものであり、経済発展や国際協力の円滑化の基盤ともなるものであって、我が国の国力を高めるものとして重要である。我が国の文化芸術の水準の向上を図るとともに、優れた文化芸術を継承・発展させ、創造していくためには、その担い手となる優秀な人材を輩出することが必要である。
このため、従来、芸術団体等への支援事業として実施していた人材育成に係る事業を戦略的に行うとともに、特に民間だけでは困難な先端映像技術を習得するための取組みの導入などにより、世界に比肩する人材を育成する。
- 「文化遺産を活かした観光振興・地域活性化事業」
文化審議会文化政策部会「審議会経過報告」(平成22年6月7日文化審議会文化政策部会)において、文化財建造物、史跡、博物館や各地に所在する文化芸術資源を、その価値を適切に継承しつつ、観光振興、地域振興等に活用するための取組を進めるよう求められている。
- 「クリエイティブ・ニッポン発信!プロジェクト」
新成長戦略、「民主党マニュフェスト2010」や文化審議会文化政策部会「審議会経過報告」(平成22年6月7日文化審議会文化政策部会)において、我が国からの文化芸術の海外発信の強化や国際文化交流の充実が求められている。
3.事業概要
- 「文化芸術による次世代人材育成プロジェクト」
- 先端的メディア芸術競争力強化事業
3DCGなどの先端映像技術に対応できる若手クリエイター等の育成を図るため、 先端映像技術を習得できる環境を整備し、制作現場と教育現場が連携したOJT等を実施する。
- 次代の文化を創造する新進芸術家育成事業
優れた能力を有しながら発表の機会が乏しい新進芸術家を対象とする公演・展覧会、分野の枠を超えた若手芸術家のためのワークショップ・セミナー、伝統芸能に係る次世代の人材の確保に資する事業、その他新進芸術家の育成に資する事業を実施する。
- 次代を担う子どもの文化芸術体験事業
国、地域のNPOや劇場、学校等が連携し、芸術団体や芸術家による優れた舞台芸術の鑑賞や実技指導・ワークショップ等を行う。これにより、我が国の将来を担う子どもたちの感性や優れた才能の芽を育て、豊かな情操や創造性を養うとともに、将来の芸術家や観客層を育成する。
- 「文化遺産を活かした観光振興・地域活性化事業」
- 地域の伝統文化を活かした観光振興・地域活性化事業 及び
- 史跡の復元・公開活用による観光振興・地域活性化事業
地方公共団体等が、地域に伝わる伝統芸能等支援事業、地域の美術館・博物館支援事業、重要文化財(建造物)等の公開活用支援事業、史跡等の復元・公開活用支援事業のメニューを使って策定した、文化遺産を活用した観光振興・地域活性化プロジェクトに対して、文化庁が支援を行う。
- 「クリエイティブ・ニッポン発信!プロジェクト」
- 東アジア文化芸術会議の開催
「東アジア文化芸術会議」(東アジア諸国の文化人、芸術家、学識経験者、ジャーナリストその他の文化に関する者が一堂に会する会議)を開催。また、会議の開催に併せて各種文化行事を集中的に実施するなど、東アジア諸国の文化・芸術の普及に係るキャンペーンを実施する。
- 国際芸術フェスティバル支援事業
我が国を代表する2つの国際芸術フェスティバル(現代美術及び映画)に対し、開催に必要な経費を継続的に支援する。
- 文化芸術の海外発信拠点形成事業
アーティスト・イン・レジデンスの強力な推進や、東アジア芸術創造都市(仮称)の形成、地域の特色ある国際文化交流事業等、日本各地から文化芸術を海外に発信する様々な取組に対し支援する。

4.指標と目標
指標
- 「文化芸術による次世代人材育成プロジェクト」
- 先端的メディア芸術競争力強化事業
本事業により育成されたクリエイター・エンジニア等の人数
- 次代の文化を創造する新進芸術家育成事業
本事業により発表・研修の機会を得た新進芸術家の人数
- 次代を担う子どもの文化芸術体験事業
目標巡回公演数及び派遣事業実施箇所数に対する達成状況
本事業を通じて豊かな感性と創造性を育んだ子どもの割合
- 「文化遺産を活かした観光振興・地域活性化事業」
- 地域の伝統文化を活かした観光振興・地域活性化事業 及び
- 史跡の復元・公開活用による観光振興・地域活性化事業
各市町村における本事業のメニュー化された事業の実施数
文化財の公開活用整備を行った市町村における観光客数
- 「クリエイティブ・ニッポン発信!プロジェクト」
- 東アジア文化芸術会議の開催、
- 国際芸術フェスティバル支援事業 及び
- 文化芸術の海外発信拠点形成事業
事業への参加者数(国内外の芸術家・文化人等及び一般の来場者を含む)
目標
- 「文化芸術による次世代人材育成プロジェクト」
- 先端的メディア芸術競争力強化事業
2020年度までに長編3DCG映像作品が年間5本制作されることを目指し、2014年度までにその制作の先端技術工程に必要な人材を750人育成する。
- 次代の文化を創造する新進芸術家育成事業
芸術を永続的に発展・充実させていくために必要な次代の芸術文化の担い手となる優れた新進芸術家を絶え間なく輩出するため、毎年延べ2,500人程度の新進芸術家の発表機会・研修を確保する。
- 次代を担う子どもの文化芸術体験事業
巡回公演事業と派遣事業を合わせて、2020年度までに義務教育期間中に2回体験できる機会を提供することを目指す。
- 「文化遺産を活かした観光振興・地域活性化事業」
- 地域の伝統文化を活かした観光振興・地域活性化事業 及び
- 史跡の復元・公開活用による観光振興・地域活性化事業
重要文化財等の公開活用、史跡等の復元・公開、地域に伝わる伝統芸能の継承・公開など、地域の特色ある総合的な取組を積極的に支援し、地域の文化遺産を活かした観光振興・地域活性化を推進することを目標としている。
5年間に全ての市町村において本事業のメニュー化された事業が実施されることを目標とする。
- 「クリエイティブ・ニッポン発信!プロジェクト」
- 東アジア文化芸術会議の開催
東アジア諸国中、毎年3カ国を対象国として、5年間で全ての東アジア諸国を対象に会議を開催することにより、将来的な東アジア共同体の構築に向け、会議参加者間での「東アジア文化圏」構築の重要性を共有するとともにオピニオン・リーダーの育成を図る。また、会議や関連イベントへの1500人以上の参加者を得ることにより、東アジアの文化・芸術に関する我が国国民の関心を高め、東アジア諸国との人的交流や文化交流の拡大に向けた機運を醸成する。
- 国際芸術フェスティバル支援事業
入場者数が60万人以上の現代美術及び15万人以上の映画の国際芸術フェスティバルを育成していくことを通じて自国の芸術水準や対外的イメージの向上を図るとともに、文化情報の海外発信の強化を図る。
- 文化芸術の海外発信拠点形成事業
各地で取り組まれている特色ある国際文化交流や日本文化の発信に係る事業を支援し、日本各地に文化創造と国際的発信の拠点を形成し、関連事業への年間20万人以上の参加者を得ることにより、日本全体で日本文化発信を推進する。
事業の事前評価結果
A.必要性の観点
1.要望パッケージ全体としての必要性
- 「文化芸術による次世代人材育成プロジェクト」
文化芸術は、国民が心豊かな生活を実現していく上で不可欠なものであり、経済発展や国際協力の円滑化の基盤ともなるものである。先端映像技術に対応できる若手クリエイター等の育成を図るための環境整備、次代の文化を創造する新進芸術家を養成するための発表機会の提供、次代の文化の担い手である子どもたちの豊かな心や感性を育むための文化芸術に触れる機会の提供は、我が国の文化芸術の担い手である人材を育成するものであり、文化芸術の振興を図る上で必要であると考える。
- 「文化遺産を活かした観光振興・地域活性化事業」
本事業の実施により、各地域の貴重な文化財を確実に継承するとともに、各地域の文化遺産を積極的に活かした地域の観光振興や地域活性化を推進し、地域経済の活性化や雇用機会の増大に資することとなる。
- 「クリエイティブ・ニッポン発信!プロジェクト」
新成長戦略における「アジアを主とした文化の交流・協力の促進」、民主党マニフェストにおける「戦略的な文化の海外への情報発信の強化」及び「『東アジア共同体』の実現を目指したアジア諸国との信頼関係の構築」に則し、将来的な東アジア共同体の構築に向けた事業や、日本のコンテンツやメディア芸術等、我が国各地からの文化芸術の海外への情報発信を強化し、日本のブランド力の向上を図る事業を実施していく必要がある。
2.行政・国の関与の必要性
- 「文化芸術による次世代人材育成プロジェクト」
「文化芸術の振興に関する基本的な方針(第2次基本方針)」(平成19年2月閣議決定)において、文化芸術振興に当たって重点的に取り組むべき事項の一つとして、「日本の文化芸術の継承、発展、創造を担う人材の育成」「子どもの文化芸術活動の充実」があげられている等、各種の提言等において、国が行うべき重要な施策である旨が述べられている。
また、「元気な日本」の復活のためには、それを担う「強い人材」を実現することが必要不可欠である。本施策は、新たな付加価値を生み出す源泉である文化芸術について、若手クリエイターや新進芸術家、創造性豊かな子どもの育成など、クールジャパン戦略の推進や未来への先行投資を行うことで、創造的な産業の育成と新たな雇用の創出を図るものであり、世界に誇れる「元気な日本」の復活にとって必要不可欠である。
- 「文化遺産を活かした観光振興・地域活性化事業」
「新成長戦略」(平成22年6月18日閣議決定)では、「我が国独自の文化財・伝統芸能等の文化遺産の活用は、地域経済の活性化や雇用機会の増大の切り札」とされており、観光連携コンソーシアム(国土交通省観光立国推進本部)においても、文化遺産を活用した観光振興は国が率先して取り組むべきこととして挙げられている。「元気な日本」の復活にとって本施策は必要不可欠。
- 「クリエイティブ・ニッポン発信!プロジェクト」
我が国を東アジアの中心的な文化芸術拠点とし、我が国の優れた文化芸術を世界に発信していくためには、国の関与が必要。「元気な日本」の復活にとって本施策は必要不可欠。
3.関係する施政方針演説、審議会の答申等
- 「文化芸術による次世代人材育成プロジェクト」
- 文化芸術基本方針(第2次) P6 23行目~P7 3行目、P9 8~15行目
- 教育振興基本計画 第3章 p22 23~31行目
- 日本文化への理解と関心を高めるための文化発信の取組について(報告)(平成21年3月 文化発信戦略に関する懇談会) P11 23~25行目
- 文化政策部会「審議経過報告」(平成22年6月 文化審議会文化政策部会) P4 7~11行目、19~20行目
- 「文化遺産を活かした観光振興・地域活性化事業」
- 「文化芸術の振興に関する基本的な方針(第2次基本方針)」(平成19年2月9日閣議決定)P9 4~6行目
- 文化政策部会「審議経過報告」(平成22年6月7日文化審議会文化政策部会)P5 12~13行目
- 新成長戦略(平成22年6月18日) P23 20~21行目
- 「クリエイティブ・ニッポン発信!プロジェクト」
- 「東アジア共同体」構想に関する今後の取組について(平成22年6月1日) P12 8~11行目、16~17行目
- 文化審議会文化政策部会「審議経過報告」(平成22年6月7日)P5(6)文化発信・国際文化交流の充実
- 菅内閣総理大臣所信表明演説(平成22年6月11日) 四 責任感に立脚した外交・安全保障政策(外交・安全保障政策の考え方)
- 民主党マニュフェスト2010 P5 11~12行目(クールジャパン)、P11 11~12行目(「3/外交・安全保障」の4つ目の項目)
- 新成長戦略(平成22年6月18日) P22 22~24行目、29~31行目
B.有効性の観点
目標の達成見込み
- 「文化芸術による次世代人材育成プロジェクト」
- 先端的メディア芸術競争力強化事業 及び
- 次代の文化を創造する新進芸術家育成事業
事業を的確に実施することで、若手クリエイターや新進芸術家など、未来への先行投資により「強い人材」が育成される。
- 次代を担う子どもの文化芸術体験事業
平成19年度の実施状況に関する調査である「学校における鑑賞教室等に関する実態調査(社団法人日本芸能実演家団体協議会)」では、鑑賞教室が児童・生徒に与える効果の回答としては、「舞台芸術への関心を高められた」が85.1パーセント、「豊かな心や感性・創造性をはぐくめた」が82.0パーセントとなっている(本調査結果は「本物の舞台芸術体験事業」を含む、学校における舞台芸術の鑑賞教室全般に関するデータである)。また、「文部科学省政策評価に関する調査研究(株式会社三菱総合研究所)」では、「当該事業をきっかけに文化・芸術活動を実施したくなった児童生徒の割合」が81.1パーセント、「豊かな心や感性、創造性を育てるきっかけになったと思う保護者・教職員の割合」が保護者78.0パーセント、教職員78.2パーセントとなっており(本調査結果は、「本物の舞台芸術体験事業」を対象としたデータである。)、児童・生徒に与える効果は高いという結果が出た。このため、引き続き事業を充実することで、子どもたちに豊かな感性や創造性を育むことができる。
- 「文化遺産を活かした観光振興・地域活性化事業」
- 地域の伝統文化を活かした観光振興・地域活性化事業 及び
- 史跡の復元・公開活用による観光振興・地域活性化事業
事業を実施した市町村へアンケート調査を実施し、前年度事業の効果を測り、次年度事業に活かすこととする。(地域からの申請に基づく事業の為、予めアンケート項目等を確定することは困難であり、地域の事業内容を踏まえ適切に作成。)
- 「クリエイティブ・ニッポン発信!プロジェクト」
- 東アジア文化芸術会議の開催
「国際文化フォーラム」での経験を活かし、各国から著名な文化人、芸術家を招へいし、ニュースバリューのある会議とするとともに、関係省庁や民間団体との連携によるキャンペーンを実施することにより、目標の達成を図る。
- 国際芸術フェスティバル支援事業
我が国を代表する2つの国際芸術フェスティバルを支援することにより、目標の達成を図る。
- 文化芸術の海外発信拠点形成事業
日本各地で進められているアーティスト・イン・レジデンス事業や「文化芸術創造都市」への取組をもとに、事業の強化を図ることにより、目標の達成を図る。
C.効率性の観点
1.インプット
- 「文化芸術による次世代人材育成プロジェクト」
本事業の予算規模は、6,747百万円である。
(内訳)
- 先端的メディア芸術競争力強化事業(383百万円)
- 次代の文化を創造する新進芸術家育成事業(1,095百万円)
- 次代を担う子どもの文化芸術体験事業(5,270百万円)
- 「文化遺産を活かした観光振興・地域活性化事業」
本事業の予算規模は、8,502百万円である。
(内訳)
- 地域の伝統文化を活かした観光振興・地域活性化事業(3,874百万円)
- 史跡の復元・公開活用による観光振興・地域活性化事業(4,600百万円)
- 審査経費等(28百万円)
- 「クリエイティブ・ニッポン発信!プロジェクト」
本事業の予算規模は552百万円である。
(内訳)
- 東アジア文化芸術会議の開催 51百万円
- 国際芸術フェスティバル支援事業 300百万円
- 文化芸術の海外発信拠点形成事業 201百万円
2.アウトプット
- 「文化芸術による次世代人材育成プロジェクト」
若手クリエイターや新進芸術家、創造性豊かな子どもの育成など、「強い人材」の実現を図り、文化芸術による創造的な産業育成と新たな雇用の創出を通じて、元気な日本を復活させる。
- 「文化遺産を活かした観光振興・地域活性化事業」
各地域の文化財が確実に継承されるとともに、各地域の文化遺産を積極的に活かした観光振興や地域活性化が推進され、地域経済の活性化や雇用機会が増大される。
- 「クリエイティブ・ニッポン発信!プロジェクト」
本事業により、我が国国内に文化芸術発信の国際的な拠点が形成される。
今後の方針及び外部評価・有識者委員からの指摘等
計画のとおり実施していくことが適当。