1-6.成長を牽引する若手研究人材の総合育成・支援イニシアティブ【施策目標7-1】
平成23年度「元気な日本復活特別枠」要望額:48,400百万円
(平成22年度予算額:34,790百万円)
事業開始年度:平成23年度
事業達成年度または定期評価実施年度:平成23年度
主管課(課長名)
科学技術・学術政策局基盤政策課(板倉 周一郎)
関係課(課長名)
研究振興局学術研究助成課(渡邊 淳平)
科学技術・学術政策局国際交流官(匂坂 克久)
研究振興局研究環境・産業連携課 (池田 貴城)
事業の概要等
1.事業目的
成長の原動力である若手研究人材に対し、挑戦の原資と取り巻く環境の両面からサポートをすることで、新しい視点と柔軟な発想を生み出す若手研究人材を最大限活かし、世界に誇る「元気な日本」の復活を導く。
2.事業に至る経緯・今までの実績
人類共通の課題を解決し、世界の反映を切り拓き、新たな技術や産業のフロンティアを生み出すのは科学技術の力。その意味で、元気な日本の復活には科学技術の力による成長が不可欠である。そして、科学技術を担うのは、研究者を中心とする「人(ヒューマン)」に他ならない。
特に、次世代の新技術や人類の絶えない叡智を創出する若手研究人材は、持続的な経済成長をもたらす経済力の基盤であるとともに、ノーベル賞受賞につながる研究などを行う担い手であるなど我が国の知的プレゼンスの向上にも貢献することから、まさに「成長の原動力」であり、「元気な日本の源」である。
したがって、こうした若手研究人材が十分に活かされていない現在の課題解決に向けて、挑戦の原資と取り巻く環境の2軸から総合的・体系的な政策パッケージを提案する。
3.事業概要
成長の原動力である若手研究人材が諸外国に比べて活かされていない現状((1)量の先細り問題、(2)内向き思考、(3)劣悪な環境)の打開に向けて、若手研究人材を挑戦の原資と取り巻く環境の2軸から総合的・体系的にサポートする。
- 若手研究人材に挑戦の原資をサポート
- 「量の先細り問題」の解決
若手研究人材の数、研究費の規模の先細りを解消すべく、若手研究者のチャレンジ機会を拡充する「科学研究費補助金(以下、科研費という)」や優れた研究能力を有する博士課程修了者を支援する「特別研究員事業(PD)」の制度改善や規模の拡充を図るとともに、特に優れた若手研究者に対し自由度の高い奨励金を年一括で給付する「特別奨励研究員事業」を新たに創設。
さらに、明日の若手研究者である優秀な理系学生の意欲向上、才能伸長に向けて、学部段階における理数系人材育成に特化した取組の支援(「理数学生育成支援事業」)や全国の理系学部生が研究成果を発表し、競い合う場(サイエンス・インカレ)を構築(これらを包括するプログラムとして、「理数学生育成プログラム」を創設。)。
- 「内向き思考」の打開
若手研究者の内向き思考を打開すべく、「戦略的国際科学技術協力推進プログラム(重点共同研究型)」における国際共同研究支援の拡充を図るとともに、若手研究者の組織的・戦略的な海外派遣を行う「頭脳循環を加速する若手研究者戦略的海外派遣事業」を新たに創設する。
- 若手研究人材を取り巻く環境をサポート
若手研究者が思う存分研究に専念できるよう、自らの発想を生かした研究に挑戦し、ステップアップしていくため、キャリアパス整備を促進する「テニュアトラック普及・定着事業」及び、女性研究者が、ライフイベントと研究活動を両立していくため、出産・子育て等と研究の両立を目指す女性研究者のための環境整備「女性研究者研究活動支援事業」を新たに創設する。
さらに、若手研究者の事務負担軽減等に向けて、研究マネジメント人材(リサーチアドミニストレーター)を雇用・育成する大学等の支援、スキル標準の策定、全国的な研修プログラム、及びネットワーク構築など全国的なシステムを整備するとともに、研究者の負担を軽減するため、基金化など「研究費の複数年度執行」の仕組みの導入を検討する。

4.指標と目標
指標
- 若手研究人材に挑戦の原資をサポート
- 「量の先細り問題」の解決
- 科学研究費補助金(若手の「チャレンジ」支援):採択率
- 特別研究員事業(PD):大学や研究機関への就職率
- 特別奨励研究員事業:大学や研究機関への就職率
- 理数学生育成プログラム:学部学生の研究発表数(理数学生育成支援事業での支援対象コース等における学部学生の学会等発表数、サイエンス・インカレへの参加学生数)
- 「内向き思考」の打開
- 戦略的国際科学技術協力推進プログラム(重点共同研究型):論文発表件数、海外派遣者数、国際ワークショップ開催件数
- 頭脳循環を加速する若手研究者戦略的海外派遣事業:海外派遣者数
- 若手研究人材を取り巻く環境をサポート
- テニュアトラック普及・定着事業:テニュアトラック教員数
- 女性研究者研究活動支援事業:事業実施大学等の女性研究者の採用割合
- リサーチ・アドミニストレーターを育成・確保するシステムの整備:支援対象の大学等における、リサーチ・アドミニストレーターの配置状況(リサーチ・アドミニストレーターの雇用数、リサーチ・アドミニストレーターを雇用している機関数など)を含む研究マネジメント体制の構築状況
目標
- 若手研究人材に挑戦の原資をサポート
- 「量の先細り問題」の解決
平成23年度に若手研究者向け科学研究費補助金の採択率の3割実現、同年度にポストドクターの約1割が研究に専念出来るよう人件費を確保することなどにより、諸外国に比して活かされない現在の「量の先細り問題」を解決する。
- 「内向き思考」の打開
若手研究者が長期間海外で武者修行する機会を10年で倍増させるとともに、若手研究者の海外派遣後の不安感を解消することなどにより、諸外国に比して顕著な現在の「内向き思考」を打開する。
- 若手研究人材を取り巻く環境をサポート
若手研究者が活かされない現在の劣悪な研究環境を改善するため、平成29年度までに研究活動時間(教育活動時間除く)を現状の3割増やすとともに、平成27年度までに自然科学系女性研究者の採用割合目標25パーセントを達成し、さらに同年度までに若手新規採用教員のうち約2割が透明性の高い選抜を経た採用を実現する。
事業の事前評価結果
A.必要性の観点
1.事業の必要性
「新成長戦略」(平成22年6月18日閣議決定)において、「若者が希望を持って科学の道を選べるように、自立的研究環境と多様なキャリアパスを整備」、「理工系博士課程修了者の完全雇用を達成することを目指す」、「安心して子どもを産み育てられる環境を実現することは、女性が働き続けることを可能にするのみならず、女性の能力を発揮する機会を飛躍的に増加」、「研究資金、研究支援体制、生活条件などを含め、世界中から優れた研究者を惹きつける魅力的な環境を用意」、「科学・技術人材の育成を進め、彼らが活躍する道を社会に広げていく」こと等が掲げられており、本事業は、その実現に資するものであり、文部科学省として本事業を行う必要性は高い。
2.行政・国の関与の必要性
若手研究者の研究環境を整え、政策目的を達成するためには、大規模なシステム改革や大きな財源が必要であるため、国の積極的な関与が必要。また、大学等の自主的な取組に頼るだけでは規模等について限界があり政策目的が達成できないため、国として大学等の優れた取組を支援し、加速することが必要。
また、持続的な経済成長と共に知的プレゼンスの向上は、若手研究者人材の新しい発想・柔軟な発想に基づいた次世代の新技術・人類の絶えない叡智を抜きには成し遂げられないため、世界に誇れる「元気な日本」の復活にとって、国のイニシアティブのもとに行う人材育成に資する事業は必要不可欠。
3.関係する施政方針演説、審議会の答申等
- 若手研究人材に挑戦の原資をサポート
- 「量の先細り問題」の解決
- 科学研究費補助金(若手の「チャレンジ」支援)
- 教育振興基本計画 第3章 p.33 17~20行目、p.41 4行目
- 科学技術基本計画(第3期) 第3章 p.23 17~21行目、革新的技術戦略 p.6、8~19行目
- 事業仕分け(第1弾)、事業仕分け(第2弾)
- 新成長戦略 p.29、p.48~49、科学技術基本政策策定の基本方針 p.23~24
- 特別研究員事業(PD)
- 我が国の中長期を展望した科学技術の総合戦略に向けて(中間報告)P25 15~17行目
- 新成長戦略~「元気な日本」復活のシナリオ~ P29 14~17行目、P48 6~7行目
- 科学技術基本計画策定の基本方針 P30 4行目~8行目
- 特別奨励研究員事業
- 我が国の中長期を展望した科学技術の総合戦略に向けて(中間報告)P25 15~17行目
- 新成長戦略~「元気な日本」復活のシナリオ~ P29 14~17行目、P48 6~7行目、P47 26行目~P48 3行目、(別表)成長戦略実行計画(工程表)
- 科学技術基本計画策定の基本方針 P30 4行目~8行目
- 理数学生育成プログラム
- 我が国の中長期を展望した科学技術の総合戦略に向けて(中間報告)P28 19~22行目
- 新成長戦略~「元気な日本」復活のシナリオ~ P29 14~17行目、(別表)成長戦略実行計画(工程表)
- 科学技術基本計画策定の基本方針 P30 34行目~P31 9行目
- 「内向き思考」の打開
- 戦略的国際科学技術協力推進プログラム(重点共同研究型)
- 新成長戦略~「元気な日本」復活のシナリオ~ P21 28~31行目、P22 23~25行目、P29 29~30行目、P29 33行目~P30 3行目、P58 低炭素技術分野での世界シェア・トップレベルを目指したプロジェクト構築支援等の官民連携体制の強化、P72 「トップレベル頭脳循環システム(仮称)」の構築、P72 東アジア・サイエンス&イノベーション・エリアの構築
- 科学技術基本計画策定の基本方針 P33 3行目~P34 3行目
- 第3期科学技術基本計画 P40 22行目~P41 13行目
- 頭脳循環を加速する若手研究者戦略的海外派遣事業
- 新成長戦略~「元気な日本」復活のシナリオ~ P22 23~25行目、P29 29~30行目、P72 「トップレベル頭脳循環システム(仮称)」の構築、P72 東アジア・サイエンス&イノベーション・エリアの構築
- 科学技術基本計画策定の基本方針 P33 3行目~P34 3行目
- 第3期科学技術基本計画 P40 22行目~P41 13行目
- 若手研究人材を取り巻く環境をサポート
- テニュアトラック普及・定着事業
- 我が国の中長期を展望した科学技術の総合戦略に向けて(中間報告)P25 19~31行目、P26 12~28行目
- 新成長戦略~「元気な日本」復活のシナリオ~ P29 14~16行目、P47 26行目~P48 3行目、(別表)成長戦略実行計画(工程表)
- 科学技術基本計画策定の基本方針 P29 30行目~P30 3行目
- 女性研究者研究活動支援事業
- 我が国の中長期を展望した科学技術の総合戦略に向けて(中間報告)P23 3~7行目、P23 23~33行目
- 新成長戦略~「元気な日本」復活のシナリオ~ P34 7~11行目、P34 17~21行目
- 科学技術基本計画策定の基本方針 P30 28行目~33行目
- リサーチ・アドミニストレーターを育成・確保するシステムの整備
- 第3期科学技術基本計画 P33 1~10行目、P34 9~21行目、P34 20行目~P35 20行目
- 新成長戦略~「元気な日本」復活のシナリオ~ P29 14~18、(別表)成長戦略実行計画(工程表)
- 科学技術基本政策策定の基本方針 P27 18~26行目
- 平成23年度の科学・技術に関する予算等の資源配分の方針 P2 32行目、33行目
B.有効性の観点
目標の達成見込み
成長の原動力である若手研究人材を活かすべく、現在の3つの課題((1)量の先細り、(2)内向き思考、(3)劣悪環境)の解決に向けた取組を総合的・体系的に行うことで効率的な目標達成が可能。既存事業において効果が高いとされた取組に重点化すると共に、さらなる若手研究人材の支援強化のための新規事業を加えてより目標達成に対して効率的な施策パッケージとなっている。
C.効率性の観点
1.インプット
本事業の予算規模は48,400百万円。
(内訳)
- 若手研究人材に挑戦の原資をサポート
- 「量の先細り問題」の解決
「科学研究費補助金(若手の「チャレンジ」支援)」(35,000百万円)
「特別研究員事業(PD)」(6,400百万円)
「特別奨励研究員事業」(529百万円)
「理数学生育成支援プログラム」(185百万円)
- 「内向き思考」の打開
「戦略的国際科学技術協力推進プログラム(重点共同研究型)」 (801百万円)
「頭脳循環を加速する若手研究者戦略的海外派遣事業」(2,000百万円)
- 若手研究人材を取り巻く環境をサポート
「テニュアトラック普及・定着事業」(2,673百万円)
「女性研究者研究活動支援事業」(311百万円)
「リサーチ・アドミニストレーターを育成・確保するシステムの整備 」(500百万円)
2.アウトプット
- 若手研究人材に挑戦の原資をサポート
- 「量の先細り問題」の解決
- 科学研究費補助金(若手の「チャレンジ」支援):若手研究(B)の採択率の向上。
- 特別研究員事業(PD):大学や研究機関への就職率の増。
- 特別奨励研究員事業:大学や研究機関への就職率の増。
- 理数学生育成プログラム:学部学生の研究発表数の増(理数学生育成支援事業での支援対象コース等における学部学生の学会等発表数増、サイエンス・インカレへの参加学生数増)。
- 「内向き思考」の打開
- 戦略的国際科学技術協力推進プログラム(重点共同研究型):論文発表件数の増、海外派遣者数の増、国際ワークショップ開催件数の増。
- 頭脳循環を加速する若手研究者戦略的海外派遣事業:海外派遣者数の増。
- 若手研究人材を取り巻く環境をサポート
- テニュアトラック普及・定着事業:大学の自然科学系において若手のテニュアトラック教員が増加し、全国的なテニュアトラックの普及・定着につながる。
- 女性研究者研究活動支援事業:事業実施大学等の女性研究者の採用割合の増。
- リサーチ・アドミニストレーターを育成・確保するシステムの整備:30機関の大学等において、リサーチ・アドミニストレーターを中心とした新たな研究マネジメント体制が整備され、全国的なリサーチ・アドミニストレーターの育成・支援システムが構築される。
今後の方針及び外部評価・有識者委員からの指摘等
計画通り実施。特に、科研費の一部基金化など「研究費の複数年度執行」の仕組みの導入の検討や研究マネジメント人材の大学等における養成・定着の支援等、研究活動時間の確保に資する政策の実施が重要。