クリアランス制度の導入に関する規制項目

主管課(課長名)

文部科学省科学技術・学術政策局原子力安全課 課長:明野 吉成

施策目標及び達成目標

施策目標10-8 安全・安心な社会の構築に資する科学技術の推進
達成目標10-8-3 放射性同位元素等に係る事故・トラブル及び放射線障害の発生を防止し、放射性同位元素等を防護する。

規制の概要

放射性同位元素を使用する施設等から発生する放射性廃棄物の中には、その放射能濃度が十分に低く、放射性廃棄物として取り扱う必要のないものが存在する。これらについて、国又は登録機関の確認を受けたうえで放射性廃棄物としての規制を免除(クリアランス)する制度を導入する。
制度の詳細は以下の通りである。

1 事業者がクリアランス対象物の測定・評価方法を設定し、国が認可
2 事業者が、認可された方法に基づいてクリアランス対象物の測定・評価を行う
3 国又は登録機関が、測定・評価結果を確認
4 確認後、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律137号)等に基づく適正処分や再利用が可能となる

クリアランス制度は、従来から放射性廃棄物としての規制を受けている廃棄物のうち、放射線による障害の防止のための措置の必要がないものについて、放射性廃棄物としての規制を免除する制度であるため、規制の緩和となる。クリアランス制度に係る事業者が行う手続としては、国による測定・評価方法の認可及び国又は登録機関による測定・評価結果の確認を新設する。

規制の必要性

放射性同位元素を使用する施設等から発生する放射性廃棄物は、200リットルドラム缶換算で約25万本存在する(平成21年3月末)が、そのうち約5割は放射能濃度が十分に低く、年間0.01ミリシーベルト(自然放射線量の約240分の1)以下という十分に低い被ばくしか与えないため、放射性廃棄物として規制する必要のないものである。これらについて放射性廃棄物としての規制を免除することにより、処分コストが低減され、医療、産業、研究等におけるより合理的な放射線利用が可能となる。
また、平成20年、研究施設等廃棄物の埋設処分を本来業務として行うべく独立行政法人日本原子力研究開発機構法が改正されたところ、埋設する放射性廃棄物の物量の見込みは埋設施設の規模や総事業費用の見積りに影響を及ぼすため、放射線障害防止法における放射能濃度が十分に低い物の規制上の取扱いについて明らかにする必要がある。
なお、新たに測定・評価方法の認可及び国又は登録機関による測定・評価結果の確認手続きを新設することとなるが、これらはクリアランス制度を確実に実施し、一般公衆に対する放射線障害を防止するために不可欠な規制である。クリアランス制度の導入により、放射性廃棄物の安全かつ合理的な規制を行うことができるため、これは上述の達成目標の達成にも資するものである。

規制の便益分析

規制を強化・緩和することによって得られると見込まれる便益

直接便益

放射能濃度が十分に低い放射性廃棄物について放射性廃棄物としての規制を免除することにより、処分コストが低減される。
(受益者:放射性廃棄物が発生する可能性のある事業所約1,670事業所)

(処分コストの見積り)
200リットルドラム缶20本分の放射性廃棄物についてクリアランスを行う場合の費用は、90万円程度(短半減期核種の場合の試算)と見込まれる。同量の放射性廃棄物をクリアランスせずに放射性廃棄物として処分した場合、数百万円~1,000万円程度の費用がかかるため、クリアランス制度の活用により数分の1~10分の1へのコストの低減が見込まれる。

社会便益

医療、産業、研究等におけるより円滑かつ合理的な放射線利用が可能となることにより、放射線によるガンの診断、治療や、放射線を利用した研究開発の促進などが期待される。また、クリアランスされた物については再利用することも可能となり、資源の有効活用にもつながる。

規制を強化・緩和することによって想定されるリスク

クリアランスの対象となるのは、自然放射線量の約240分の1以下という十分に低い被ばくしか与えない放射性廃棄物であり、国又は登録機関の確認を受けたうえでクリアランスされるため、規制が緩和されることによるリスクは安全上問題とはならない(クリアランス対象物がそれ以外の放射性廃棄物と混じらないようにするため、クリアランスの測定・評価方法の認可時や測定・評価結果の確認の際、国や登録機関の職員が、事業者の管理体制について確認をすることとしており、必要に応じて立入検査も行うこととしている)。

規制の費用分析

遵守費用

200リットルドラム缶20本分の放射性廃棄物についてクリアランスを行う場合の費用は、90万円程度(短半減期核種の場合の試算)と見込まれる。

行政費用

測定・評価方法の認可及び測定・評価結果の確認を行うための人件費が発生するが、これらの費用は基本的に事業者より徴収する申請手数料により賄うため、新たな行政費用は発生しない。

社会的費用

クリアランスされた物については、廃棄物処理法に基づき適正処分されるか、資源として有効活用されることとなり、社会的な負担は生じない。

評価結果

上記の便益分析及び費用分析を踏まえ、今回の放射線障害防止法の改正によるクリアランス制度の導入に関する規制の新設は適切である。

想定できる代替手段との比較考量

代替手段としては、クリアランス制度を導入するのではなく、廃棄の基準の一部として、放射能濃度等が一定の基準に合致する放射性廃棄物については、規制機関による認可・確認等を要しなくても事業者は放射性廃棄物として扱わないことができる旨を規定するという方法があるが、この方法では放射能濃度が十分に低いことの判断を事業者のみに委ねることとなり、社会的な理解が得られないものと考えられるため、困難である。

審議会等における検討結果及び有識者等の意見

原子力委員会 原子力バックエンド対策専門部会

平成10年5月28日 RI・研究所等廃棄物処理処分の基本的考え方について

「廃棄物の放射能濃度に応じた安全かつ合理的な処分・再利用を実施するため、RI・研究所等廃棄物についてクリアランス制度を導入することが望まれる。」

文部科学省放射線安全規制検討会

平成18年6月 放射線障害防止法におけるクリアランス制度の整備に係る技術的検討について(中間報告書)
平成22年1月 放射線障害防止法へのクリアランス制度の導入に向けた技術的検討結果について(第二次中間報告書)

現在、放射線障害防止法におけるクリアランス制度の導入に関して、引き続き技術的検討を行っているところ。

文部科学省放射線安全規制検討会(※審議会情報へリンク)は、放射線安全規制のあり方等について専門家による具体的な検討を行うための会議である。検討会の構成員は大学教授等の原子力、放射線分野の専門家からなる。

文部科学省政策評価に関する有識者会議委員の意見

・意見聴取期間:平成22年1月29日~平成22年2月5日

・評価結果はおおむね妥当。

(主な意見)
・修辞的な表現ではなく、具体的でわかりやすい表現にすること。
・「国又は登録機関の確認を受けたうえでクリアランスされるため、規制が緩和されることによるリスクは安全上問題とはならない」とあるが、事業者がクリアランス対象物の測定・評価について、その結果を偽装することがあり得ることから、このような場合の対応方策についても言及すべきである。
→意見を踏まえ、評価票を修正。

レビューを行う時期

法律の施行後5年以内に、その時点における科学的知見、施行状況等を勘案して見直しを行う。

お問合せ先

大臣官房政策課評価室

-- 登録:平成22年04月 --