平成22年度要求額:1,510百万円
(平成21年度予算額: ‐
百万円)
事業開始年度:平成22年度
事業達成年度:平成31年度
研究開発局地震・防災研究課(鈴木 良典)
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将来、東南海地震と連動して発生する可能性が高いとされる南海地震の想定震源域において、地震・津波・地殻変動に関する詳細データをリアルタイムで観測する高密度海底ネットワークシステムを構築し、当該地域における高精度な地震・津波発生予測モデルの構築、地震発生直後の地震・津波発生状況の早期検知、さらに緊急地震速報、津波予測技術の高度化を実現する。
東海・東南海・南海地震については、地震調査研究推進本部(以下、地震本部)によると、今後30年以内の発生確率がそれぞれ、87%(M8程度)、60~70%(M8.1程度)、50~60%(M8.4)と非常に高く、また、中央防災会議によると、東海・東南海・南海地震の同時発生による最大被害想定は、死者2万5千人、経済的被害81兆円との予測がなされている。このように、東海・東南海・南海地震は、極めて切迫性が高く、推定される被害も甚大であり、これらの地震に備え、震源域と想定される海域における観測システムの整備が喫緊の課題である。
このような中、文部科学省では平成18~21年度に、地震計、水圧計等を組み込んだマルチセンサー20基を備えたリアルタイム観測可能な高密度海底ネットワークシステムの技術開発を実施し、東南海地震の想定震源域である紀伊半島熊野灘沖にシステムを構築する「地震・津波観測監視システム(第1期)」を実施してきたところであり、平成22年度からはシステムの本格稼働を予定している。
一方、過去の記録や最新の研究成果によると、これら3つの地震は将来連動して発生する可能性が高いとされており、南海トラフの巨大地震の連動性評価を行うためには、南海地震の想定震源域におけるモニタリングが必要不可欠である。このため、平成21年度には、想定震源域が広い南海地震に対応可能な次世代システムに必要となる要素技術について、先行して技術開発を実施してきたところである。
南海地震の想定震源域における地震・津波・地殻変動に関する詳細データをリアルタイムで入手することを目的として、地震計、水圧計等の観測機器を組み込んだセンサーを備えた稠密な海底ネットワークシステムを開発し、南海地震の想定震源域である紀伊半島潮岬沖に敷設する(第1フェーズ)。さらに、第2フェーズでは、第1フェーズで構築したシステムから室戸岬沖まで拡張したシステムを整備する。
なお、今回開発するシステムは、東南海地震の想定震源域である、熊野灘沖に整備中の地震・津波観測監視システム(第1.期)で開発した機能(安定性:ケーブルや観測機器の一部が故障してもシステムの機能は維持、置換性:高性能な観測機器が開発された際に交換可能、拡張性:観測機器を合計100基まで追加可能)に加え、想定震源域が広い南海地震に対応させるため、ケーブル長1000㎞まで延伸が可能な高電圧システムとする。
○事業の進捗状況(基幹ケーブル・観測装置等の設置状況)を用いる。
○観測装置の敷設後は、関連施策である「東海・東南海・南海地震の連動性評価研究」へのデータの活用状況及び緊急地震速報、津波予報警報への活用状況についても検証する。
○第1フェーズの終了する平成26年度までに、稠密な海底ネットワークシステムを開発し、南海地震の想定震源域である紀伊半島潮岬沖に整備し、データ取得を開始する。
○第2フェーズでは、第1フェーズで構築したシステムから室戸岬沖まで拡張したシステムを整備し、データ取得可能な範囲を拡大する。
○効果の把握方法としては、定期的に事業の実施状況について報告を受け、地震本部で策定した各種報告書の内容や、地震本部における議論等を踏まえた上で、事業の進捗を把握する。
達成目標10‐8‐1「主な政策手段」において、地震・津波観測監視システム(第1期)については「想定通り順調に進捗」と判断しており、本事業(第2期)はこれを引き継ぐものである。
また、達成目標10‐8‐1「必要性・有効性・効率性分析」(事業アウトプット)においても、東南海地震の想定震源域である紀伊半島熊野灘沖において、地震・津波発生の早期検知が可能となる、地震計・津波計等を備えたリアルタイム海底ネットワークシステムの整備が進捗したことが示されており、本事業(第2期)においては、引き続き、南海地震の想定震源域にネットワークシステムの整備を拡張する。
東海・東南海・南海地震の今後30年以内の地震発生確率は極めて高く、これらが同時発生した場合、国民の生命・財産への甚大な被害が生じる恐れが指摘されている。これまで、陸域については地震本部の方針に基づき、世界的にも類を見ない高密度かつ高精度なリアルタイム観測網を整備してきているが、海域については陸域と比較して十分な観測機器が整備されておらず、地震発生予測に必要となる観測データが不足している。また、人的被害の軽減に非常に有効であると考えられる緊急地震速報や津波予警報の精度低下の原因となっている。
そのような状況を踏まえ、文部科学省では、平成18年度より4ヵ年計画で、東南海地震の想定震源域である紀伊半島熊野灘沖にリアルタイム観測可能な海底ネットワークシステムの整備を進めている。一方、過去の記録や最新の研究成果によると、東海・東南海・南海地震は将来連動して発生する可能性が高いとされており、文部科学省では、平成20年度より5ヵ年計画で、「東海・東南海・南海地震の連動性評価研究」を実施し、連動性評価のための地震発生予測モデルの構築等を進めている。発生予測モデルを高度化し、南海トラフ巨大地震の高精度な連動性評価を行うためには、東南海地震の想定震源域におけるモニタリングとほぼ同一時期かつ長期にわたる南海地震の震源域におけるモニタリングが必要不可欠である。
東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法(平成14年7月26日法律第92号)において「国は、東南海・南海地震に関する観測及び測量のための施設等の整備に努めなければならない」とされているところであり、かつ、3つの地震が同時発生した場合に、我が国の存立を揺るがしかねない事態になる恐れがあるため、南海トラフにおける調査観測・研究を国が主体となって実施する必要性は極めて高い。さらに、本事業については、緊急地震速報を実施している気象庁からも期待されている他、毎年度、多くの地方公共団体から国が推進すべき事業として要望を受けている。
○ 東海・東南海・南海地震の連動性評価研究(地震・防災研究課)
東海・東南海・南海地震の想定震源等における稠密な海底地震・津波・地殻変動観測や、シミュレーション研究等を行い、これら3つの地震の発生についての時間的及び空間的な連動性評価を行うために必要な知見を獲得し、将来的な東海・東南海・南海地震等の短期発生予測の実現のための科学的基盤を構築するとともに、強震動予測、津波予測、被害想定研究等を総合的に推進する。
(事業開始年度:平成20年度)
本事業により得られる南海地震の想定震源域のリアルタイムの地震・津波データを、関連施策である「東海・東南海・南海地震の連動性評価研究」において活用することにより、高精度な地震発生予測モデルの構築が可能となるとともに、データ同化技術により、連動発生シミュレーションの高度化が図られるなど、両事業が密に連携することが所期の成果を挙げるために必要不可欠である。
我が国の地震調査研究は、地震本部の設立以降、全国稠密な基盤観測網の整備、基礎研究の推進による知見の獲得、全国地震動予測地図の作成、緊急地震速報の開始等、多くの成果が上がっている。また、地震本部の方針の下、文部科学省が平成18年度から委託事業として実施している「地震・津波観測監視システム(第1.期)」については、平成21年度中にはシステムを敷設し、平成22年度以降、システム本格稼動開始を予定しているところである。
このような我が国のこれまでの地震調査研究に関する研究開発の実績と経験、さらには他の事業の進捗状況等を考慮すると、得ようとする効果は確実に達成されるものと見込まれる。
なお、地震本部政策委員会や、科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会防災分野の研究開発に関する委員会においても本事業の評価を行い、有効性を確認するとともに事業の進捗を把握する。
本事業の推進により、南海地震の想定震源域における高精度な地震・津波発生予測モデルの構築、地震発生直後の地震・津波発生状況の早期検知、さらに緊急地震速報、津波予測技術の高度化を実現するとともに、連動性評価を含む東南海・南海地震についての短期発生予測、効果的・効率的な防災・減災対策に寄与することから、環境・海洋分野の研究開発の推進により国民生活の安全を図ることを掲げた上位目標10‐3の達成のために必要な効果が得られるものと判断する。
第1フェーズ(平成22~26年度)においては、約58億円(地震計、水圧計等の観測機器を組み込んだセンサーを備えた稠密な海底ネットワークシステムを開発し、南海地震の想定震源域である紀伊半島潮岬沖に敷設)、第2フェーズ(平成27~31年度)では、約47億円(第1フェーズで構築したシステムから室戸岬沖まで拡張したシステムを整備)程度の予算規模を見込んでいる。
東南海地震と連動して発生する可能性が高いとされる南海地震の想定震源域において、地震・津波・地殻変動に関する詳細データをリアルタイムで観測する高密度海底ネットワークシステムを構築し、当該地域における高精度な地震・津波発生予測モデルの構築、地震発生直後の地震・津波発生状況の早期検知、さらに緊急地震速報、津波予測技術の高度化を実現する。
前述のとおり、中央防災会議の試算によると、東海・東南海・南海地震の同時発生による最大被害想定は、死者2万5千人、経済的被害81兆円との予測がなされている。本事業のアウトプットは、地震防災対策の強化に大きく寄与し、上記地震による国民の生命・財産への甚大な被害を軽減する上で、その効果は計り知れない。このため、事業スキームの効率性は妥当であるといえる。
平成18年から進めてきた地震・津波観測監視システム(第1.期)は、文部科学省の委託事業として独立行政法人海洋研究開発機構が整備を行ってきたところであり、これまでの実績から、当該法人が当該事業を実施できる唯一の機関であると評価できる。さらに、柔軟な事業の実施及び敷設されたシステムの効率的な保守運用等を考慮すると、海洋研究開発機構が事業主体としてシステムの開発・整備・保守を実施することが効率的かつ効果的であると考えられる。
一方、当該海域において、地震・津波の被害軽減に資する観測データを取得できる体制を構築することは、国が取り組むべき重要な責務である。従って、今後開発を進めるシステムについても、独立行政法人である海洋研究開発機構の裁量に委ねることなく、今後とも、国が政策的にコントロールを行っていく必要がある。
以上から、地震・津波観測監視システム(第2.期)の開発については、運営費交付金等による自主事業ではなく、文部科学本省の補助金により、独立行政法人海洋研究開発機構が実施することとしている。
我が国の地震調査研究を一元的に推進する地震本部が策定した新総合基本施策や、「今後の重点的調査観測について」等に基づき実施される事業であり、また、東海・東南海・南海地震が発生した場合、我が国全体の社会・経済活動に深刻な影響を及ぼす可能性が高いため、政策効果は公平に配分されると判断する。
上述のとおり、本事業が対象としている海域を含む、東海・東南海・南海地震については、今後30年以内の発生確率が極めて高く、発生した場合の被害は国家予算規模に匹敵するとの予測がなされていることから、新総合基本施策において、今後10年間に取り組むべき基本目標として、「東海・東南海・南海地震を中心とした海溝型地震の連動発生の可能性評価を含めた地震発生予測及び地震動・津波予測の高精度化」が掲げられ、また、計画全体の中でも東海・東南海・南海地震が10年の主たるターゲットとなっているところ。本事業では、東南海地震のみが発生した後に南海地震がどのように発生するのか、という地震の詳細な切迫度の情報提供や、緊急地震速報や津波警報の迅速化・高度化に寄与することを目的としており、優先性は極めて高い。
当該評価結果を踏まえ、22年度概算要求を行う。
地震本部政策委員会や、科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会防災分野の研究開発に関する委員会において、本事業の評価を行う。
特になし
特になし
特になし
大臣官房政策課評価室
-- 登録:平成22年02月 --