施策目標10‐7 新興・融合領域の研究開発の推進

 幅広い応用可能性を有する新たな先端的融合領域を積極的に発掘し推進することにより、わが国の科学技術・学術の高度化・多様化、ひいては社会ニーズへの対応と経済社会の発展を図る。

施策期間

 目標達成年度:平成22年度(基準年度:平成20年度)

主管課(課長名)

 研究振興局基礎基盤研究課(課長:内丸 幸喜)

関係局課(課長名)

 研究振興局基礎基盤研究課ナノテクノロジー・材料開発推進室(室長:山下 洋)
 量子放射線研究推進室(室長:林孝浩)

施策の全体像

 幅広い応用可能性を有する新たな先端的融合領域を積極的に発掘し推進する取組は、各重点科学技術分野や社会経済における解決困難な課題に対応し、イノベーションの促進に資する可能性が向上することから、昨今、その重要性が高まってきている。そのため、我が国の科学技術・学術の高度化・多様化、ひいては社会のニーズへの対応と経済社会の発展を図るために、特に世界市場への拡大が予測される光・量子ビーム技術については、産業利用への観点から、汎用性の高い先進的・革新的な計測技術等として、要素技術開発を行う必要性がある。そのため、以下の達成目標を設定して、世界をリードする次世代光源・ビーム源や計測機器、ビーム制御技術等の研究開発の発展を促進するとともに、若手人材の育成を図る。

○達成目標10-7-1

 ネットワーク型の研究拠点の構築等を通じて、光・量子科学技術分野のシーズと各重点分野や産業界のニーズとを融合した研究開発を実施し、世界をリードする次世代光源・ビーム源や計測機器、ビーム制御技術等を開発するとともに、若手人材の育成を図る。この目標については、下位事業で行われている研究開発や若手人材育成の進捗、実施状況で達成度合いを評価することとする。

  • 判断基準10-7-1:最先端の光源、ビーム源、ビーム制御法、計測法等の研究開発の進捗状況、次世代の光科学技術・量子ビーム技術分野を担う若手人材育成の実施状況

達成状況と評価

全体評価 A

 本施策により行った事業「光・量子科学研究拠点形成に向けた基盤技術開発」は、以下のとおり、概ね順調に進捗したと判断された。

○ 判断基準10-7-1(A)

判断基準 最先端の光源、ビーム源、ビーム制御法、計測法等の研究開発の進捗状況
S=最先端の光源、ビーム源、ビーム制御法、計測法等の研究開発が当初の想定以上に進んだ場合
A=最先端の光源、ビーム源、ビーム制御法、計測法等の研究開発が当初の想定通りに進んだ場合
B=最先端の光源、ビーム源、ビーム制御法、計測法等の研究開発においてその一部が当初の想定より遅れが生じた場合
C=最先端の光源、ビーム源、ビーム制御法、計測法等の研究開発が当初の想定から相当な遅れが生じた場合
次世代の光科学技術・量子ビーム技術分野を担う若手人材育成の実施状況
S=次世代の光科学技術・量子ビーム技術分野を担う若手人材を育成するためのプログラム等の実施が想定以上に進んだ場合
A=次世代の光科学技術・量子ビーム技術分野を担う若手人材を育成するためのプログラム等の実施が当初の想定通りに進んだ場合
B=次世代の光科学技術・量子ビーム技術分野を担う若手人材を育成するためのプログラム等の実施においてその一部が当初の想定より遅れが生じた場合
C=次世代の光科学技術・量子ビーム技術分野を担う若手人材を育成するためのプログラム等の実施において当初の想定から相当な遅れが生じた場合

 光科学技術・量子ビーム技術は、ライフサイエンス、情報通信、ナノテクノロジー・材料等の重点科学技術分野を先導するキーテクノロジーであり、各重点科学技術分野や産業分野における解決困難な諸問題を解決する実現技術(EnablingTechnology)であり重要である。光産業の世界市場規模も、2010年以降、新たな光源技術の開花が見込まれるなど飛躍的に拡大すると言われている。このような状況を踏まえ、平成19年の「光科学技術の推進に関する懇談会」や、科学技術・学術審議会量子ビーム研究開発作業部会における報告書等を受け、平成20年度より、光科学技術に係るプログラムとして、「最先端の光の創成を目指したネットワーク研究拠点プログラム」、量子ビーム科学技術に係るプログラムとして、「量子ビーム基盤技術開発プログラム」からなるプログラム「光・量子科学技術研究拠点形成に向けた基盤技術開発」を開始した。
 「最先端の光の創成を目指したネットワーク研究拠点プログラム」においては、光科学技術の中で、特に、今後求められる新たな発想による最先端の光源や計測手法の研究開発を進めると同時に、このような先端的な研究開発の実施やその利用を行い得る光科学技術に関わる若手人材等の育成を図ることを目的とし、公募により平成20年度は2拠点を採択し、事業を開始した。
 また、「量子ビーム基盤技術開発プログラム」においては、基盤技術としての量子ビーム技術の発展と普及に資するべく、汎用性・革新性と応用性が広く、5年程度で実現可能な量子ビーム技術に係る研究テーマについて、オールジャパンの体制でネットワーク研究体制を構築しながら研究を行うことを目的として、1.「次世代ビーム技術開発課題」(将来的な加速器開発に役立つ基盤技術の構築に向けた革新的な加速器技術などの要素技術開発)、2.「高度化ビーム技術開発課題」(新たな量子ビーム利用の基盤技術の構築に向けた汎用性の高いビームライン技術等の要素技術開発)の2つのプログラムを開始した。平成20年度は公募により、1.「次世代ビーム技術開発課題」について1課題、2.「高度化ビーム技術開発課題」について4課題を採択した。
 事業の推進にあたっては、各分野の幅広い見識を有するプログラムディレクター(PD)及びプログラムオフィサー(PO)をそれぞれのプログラムにおいて選任し、各拠点の事業計画について事前に評価を行い当該年度の研究の方向性について助言を行うとともに、事業開始後においては、各拠点へのサイトビジットの実施や拠点が開催する合同シンポジウムを統括指揮するなど、効果的なネットワーク形成のための調整や必要な助言を行うなどの活動を行った。また、事業開始にあたっては、事前に各拠点の当該年度の事業計画において目標を定めさせ、適宜ヒアリングの実施や、拠点内で情報共有する場の定期的な開催等により、研究拠点毎にその進捗状況を把握するとともに、PD、POの評価結果も踏まえて総合的に達成状況を確認した。その結果、平成20年度については、「最先端の光の創成を目指したネットワーク研究拠点プログラム」においては、光源の要素技術の開発に必要な基盤の整備及び研究開発、拠点内の大学間におけるセミナーの実施や拠点合同のシンポジウムの開催、「量子ビーム基盤技術開発プログラム」においては、ビーム基盤技術開発に必要な装置の整備及び研究開発、課題ごとの研究報告会やプログラム全体の会合が実施される等、各プログラムとも、当初に計画していた研究開発及び人材育成等を着実に実施しており、順調に進捗していると判断された。

必要性・有効性・効率性分析

【必要性の観点】
 光科学技術及び量子ビーム技術は、ナノテクノロジー・材料、情報通信、ライフサイエンス等の重点科学技術分野を先導するキーテクノロジーであり、各分野における画期的なイノベーション創出の源泉である。このような観点から、欧米はもとより中国などでも、他に先駆けて新しい光源・ビーム源を実現し、これを革新的な方法によって活用することなどのために、凌ぎを削った研究開発を戦略的に推進しているところである。
 我が国においては、これまでSpring-8、JRR-3、TIARA等を利用した世界最先端の研究成果のほか、面発光型半導体素子、セラミクスレーザー素子、超伝導高周波加速空洞など光・量子ビームの要素技術においても、我が国独自開発で世界トップにたつ成果を輩出しており、光・量子科学技術分野のポテンシャルは極めて高いと言える。
 一方、光・量子科学技術を戦略的・積極的に推進するための光源・ビーム源開発プロジェクト等は、国家基幹技術としてのX線自由電子レーザーの開発などの特定の領域以外はほとんど存在していなかったことに加えて、我が国の光産業の現状をみると、近い将来、世界市場の主流を占めると予想されている高出力半導体レーザーに関しては、現時点における需要が低いことからその開発に消極的であり、将来的な国際競争力低下が懸念されていた。
 今後、先端科学技術分野や産業分野において国際競争力を強化していく観点からも、全国に散在する光・量子科学技術のポテンシャルを結集し、世界をリードする次世代光源・ビーム源や計測機器、ビーム制御技術等を研究開発を実施する本事業を引き続き継続する必要がある。また、今後、急速に世界市場規模が拡大すると予測されている光産業などにおいて、これらの要素技術開発等は産業応用への発展も期待され、このような汎用性の高い先進的・革新的な計測技術等を応用可能性や利用可能性の広い共通基盤技術として開発する意義は極めて高い。
 本事業の開始により、光・量子科学技術分野において、益々世界的にもポテンシャルの高い今、これらのポテンシャルの結集を図り、本分野を戦略的・積極的に推進することが引き続き必要であり、本事業を継続して行う必要がある。

【有効性の観点】
 本事業は、光科学技術・量子ビーム技術分野のポテンシャルを有する複数の研究機関を中核として、産業界や光・量子ビームの利用研究を行っている各分野の研究者等も参画したネットワーク研究拠点を、公募により選定し、次世代光源・ビーム源、計測手法、ビーム制御技術等の研究開発や若手人材育成等を実施するものである。本事業を行うネットワーク研究拠点には、光・量子科学技術分野での最先端の研究開発や人材育成のポテンシャルを有する機関が選定されており、このような優位性をいかして事業を推進することとしているため、本目標の達成が見込まれる。また、本事業の実施により、世界をリードする次世代光源・ビーム源や計測機器、ビーム制御技術等の研究開発を促進させるとともに、若手人材の育成が図られることが見込まれる。
 これにより、新興融合分野のひとつである光・量子ビーム技術分野において日本が優位に立つことが期待され、この優位性を活かし幅広い応用可能性を有する当該分野の発展に資することが見込まれる。

【効率性の観点】
 (事業インプット)
 平成20年度の本事業の予算規模は、1,500百万円である。
(内訳)
 科学技術試験研究委託費 1,492百万円
 事務費 8百万円
※光科学技術 1拠点あたり約400百万円(2課題)/年×10年間
※量子科学技術
 次世代ビーム技術開発課題(1課題):450百万円/年×5年間
 高度化ビーム技術開発課題(4課題):1課題あたり約100百万円/年×5年間

(事業アウトプット)
 平成20年度には、光科学技術について2拠点、量子ビーム技術について5題を採択・実施しているところである。各拠点においては、それぞれの特徴をいかし、世界をリードする最先端光源や画期的な量子ビームの利用技術、光・量子科学に係る汎用性の高い要素技術等の開発を行った。
 また、大学院生やポストドクター等を対象として、最先端の光源等の研究開発に参画しながら、基礎科学と産業技術応用の間が近接した当該分野の知識体系を実践的に習得する機会を提供する等、次世代の光科学技術、量子ビーム技術分野を担う若手人材の育成を開始した。
(事業アウトカム)
 本事業の実施により、光・量子科学技術に係る汎用性の高い要素技術の開発、最先端の光源等をネットワークに参加するユーザー研究者に提供するための基盤の整備が進み、これら先端研究資源を活用した融合研究が促進された。
 また、次世代の光科学技術・量子ビーム技術分野を担う若手人材育成の実施により、汎用性の高い基盤技術である光・量子ビーム技術の発展に寄与し、今後の我が国の科学技術・学術の高度化・多様化への貢献が期待される。

施策への反映(フォローアップ)

【予算要求への反映】
 これまでの取組を引き続き推進

【機構定員要求への反映】
 特になし

【具体的な反映内容について】
 平成22年度について、「光・量子科学研究拠点形成に向けた基盤技術開発」は、引き続き各事業の円滑な実施を進め、本事業の成果の社会への発信や各拠点同士の連携を促進するとともに、「量子ビーム基盤技術開発プログラム」においては、基礎科学・産業利用における量子ビーム利用の発展を目的とした「高度化ビーム技術開発課題」の課題数増設を検討している。また、新興・融合の新たな発展を目指し、我が国の優れたナノテクノロジーの研究ポテンシャルを環境技術のブレイクスルーに活用することとして、平成21年度より事業を開始した「ナノテクノロジーを活用した環境技術開発」については、平成21年度に採択された拠点における研究開発を充実させるために、経費の拡充を検討している。

関連した行政活動(主なもの)

○「ナノテクノロジーを活用した環境技術の開発に関する検討会」の実施(平成20年4月〜7月)
 ナノテクノロジーを活用した環境技術の研究開発の進め方について検討を行うため、有識者による検討会を開催し、報告書をとりまとめた。

○ 数学・数理科学と他分野との連携
 平成19年度に独立行政法人科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業の戦略目標として、「社会的ニーズの高い課題の解決へ向けた数学/数理科学研究によるブレークスルーの探索(幅広い科学技術の研究分野との協働を軸として)」を掲げ、研究領域「数学と諸分野の協働によるブレークスルーの探索」を設けて、公募により課題を選定し、研究を進めているところ。

備考

 特になし

具体的な達成手段

 ※【22年度の予算要求への考え方】には、実績を踏まえ、より効率化に努める内容についても記入している。

【事業概要等】 【20年度の実績】 【22年度予算要求への考え方】
光・量子科学研究拠点形成に向けた基盤技術開発(開始:平成20年度 終了:平成29年度 20年度予算額:1,500百万円)
全国に散在する光科学技術・量子ビーム技術のポテンシャルを結集し、光・量子科学技術分野の研究開発課題を国として戦略的・積極的に実施するとともに、次世代の光・量子科学技術を担う若手人材の育成等を図ることにより、先端科学技術分野や産業分野での革新的な成果を創出することを目指す。 公募により、「最先端の光の創成を目指したネットワーク研究拠点プログラム」について2拠点、「量子ビーム基盤技術開発プログラム」について5課題を採択し、事業を開始し、概ね当初の計画通りに実施した。 引き続き、各事業の円滑な実施を進め、本事業の成果の社会への発信や各拠点同士の連携を促進するとともに、さらなるイノベーションの創出につながる「量子ビーム基盤技術開発プログラム」の強化について検討を行う。

(参考)関連する独立行政法人の事業(なお、当該事業の評価は文部科学省独立行政法人評価委員会において行われている。評価結果については、独法評価書を参照のこと)

独法名 20年度予算額 事業概要 備考(その他関係する政策評価の番号)

○21年度に開始された事業の概要、予定指標(※これらは20年度実績評価の結果に関係するものではない) 

【事業概要等】 【目標・設定予定の指標】 【22年度予算要求への考え方】
ナノテクノロジーを活用した環境技術の研究開発(終了:平成30年度 21年度予算額:205百万円)
我が国の優れたナノテクノロジーの研究ポテンシャルを環境技術のブレークスルーに活用するため、産業界も巻き込んだ研究拠点により、新しい社会システムを実現する研究開発を推進する。このため、人材育成や施設・説日の共同利用などの機能を有する研究拠点を整備する。平成21年度は公募により、1件を採択予定。 【目標】
産業界も巻き込んだ研究拠点を構築することにより、従来個別に実施されてきた要素技術開発の成果を積み上げ、環境問題を抜本的に解決する新しい社会システムの実現に向けた新材料の研究開発を強力に推進することにより、環境技術にブレークスルーをもたらす。
【設定予定の指標】
○個別の要素技術開発の成果を積み上げることにより、新しい社会システムを実現するための融合研究体制(施設・設備の共用体制等を含む)が構築されているか
・拠点において参画している各研究グループの研究開発の進捗状況について研究交流会・情報共有等を実施した回数 等
○新しい社会システムの構築に向け、ナノテクノロジーを活用した環境技術開発の成果がでているか
・論文数、研究発表数 等
※この他、参画研究者へのアンケートを実施し、研究開発目標への意識の変化等についても評価を行う予定。
我が国の環境技術開発は、要素技術的な個別課題を追求する研究開発が多く、要素技術開発の成果を積み上げることにより、新しい社会システムの構築に向けて研究開発を推進することが必要である。22年度概算要求においては、21年度に採択された1拠点における研究開発を充実させるために、経費の拡充について検討中。

官房部局の所見

 今後とも、当該年度に各々のプロジェクトがどこまで進捗することが想定されていたのかについて、わかりやすく記述すること。

お問合せ先

大臣官房政策課評価室

-- 登録:平成21年以前 --