施策目標1‐5 ICTを活用した教育・学習の振興

 高度情報社会を担う人材を育成するための教育・学習を推進するとともに、ICTを効果的に活用した教育学習の機会を充実する。

施策期間

 目標達成年度:平成21年度(基準年度:平成17年度)

主管課(課長名)

 生涯学習政策局参事官(齋藤 晴加)

関係局課(課長名)

 ‐

施策の全体像

 急速に情報化が進展する中で、高度情報社会を担う人材の育成が重要課題であり、ICT(情報通信技術)は、時間的・空間的制約などを解消し、多様な学習機会を提供する手段である。インターネットや放送等を通じた学習やデジタルテレビ等を活用した学習、教員の指導力の向上などにより、高度情報社会を担う人材を育成するための教育・学習を推進するとともに、ICTを効果的に活用した教育学習の機会が充実しているのかを評価するために、以下の3つの達成目標及び2つの関連達成目標を設定して取り組む。

○達成目標1‐5‐1

 インターネットや放送等を通じた学習の基盤の充実を図る。エル・ネットは、誰もが気軽に国や地域の教育・学習情報にアクセスし、学習することが可能な環境の整備として、国の施策などの教育情報や、各地方自治体等で制作された学習用コンテンツなどを、インターネットを活用して提供する教育情報提供システムである。
また、メディアを通じた生涯学習コンテンツ普及事業については、より多くの国民が放送番組を視聴するで事業の成果が高まることとなる。
 これらの目標が達成されたかについては、以下の指標を用いて判断することとする。
・判断基準1‐5‐1イ:エル・ネット(教育情報通信ネットワーク)への年間アクセス件数
・判断基準1‐5‐1ロ:番組全国平均視聴率

○達成目標1‐5‐2

 我が国における教育・学習に関する情報を扱う中核的なWebサイトである教育情報ナショナルセンター(NICER)を運用することにより、学習者や教育関係者を支援するとともに、教育の情報化の推進を図る。NICERは、インターネット上に散在する教育・学習コンテンツの所在情報を提供するポータルサイトである。この目標が達成されたかについては、以下の指標を用いて判断することとする。
 ・判断基準1‐5‐2 :NICERへの年間アクセス数

○達成目標1‐5‐3

 学校におけるデジタルテレビ等を活用した先端的教育・学習の普及・促進を図る。
 本事業は、モデル事業の実施を通して、教育におけるデジタルテレビ等の活用方策について普及・促進のため、教育効果の高い活用方法を実践例として取りまとめ、成果発表会、報告書、ホームページやエルネットに公開することにより、多くの教育委員会や学校に周知する。
 この目標が達成されたかについては、以下の指標を用いて判断することとする。
 ・判断基準1‐5‐3 :「デジタルテレビ等を活用した先端的教育・学習に関する調査研究事業」モデル校全体の実践例の内容

達成状況と評価

全体評価 B

概ね順調に進捗していると判断できるが、関連達成目標である学校のICT環境の整備及び教員のICT活用指導力について想定どおりには達成できなかったため、B評価とする。
 判断基準1‐5‐1イ~判断基準1‐5‐3及び関連達成目標2‐1‐3、2‐1‐4(2‐6、2‐7頁参照)までの評価結果の平均から判断。

○判断基準1‐5‐1イ (S)

判断基準 エル・ネット(教育情報通信ネットワーク)への年間アクセス件数
S=240,000件以上
A=200,000件以上 240,000件未満
B=160,000件以上 200,000件未満
C=160,000件未満

 平成20年度からエル・ネット(教育情報通信ネットワーク)は、衛星による配信からインターネットによる配信へと完全移行したが、そのアクセス件数は281,562件(平成20年10月及び11月はエル・ネットについてのアンケートを実施したことにより、回答のための視聴等、エル・ネットの通常の視聴目的と異なるアクセス件数も含まれている可能性があるため、この期間はこれを除く当年度の期間の平均値とした)となっている。当初目標としていた年間200,000件を上回る結果となった。
 以上のことから、想定した以上に順調に進捗していると判断する。

(指標・参考指標)

  16 17 18 19 20
エル・ネット(教育情報通信ネットワーク)への年間アクセス件数 - - - - 281,562

○判断基準1‐5‐1ロ(A)

判断基準 番組全国平均視聴率
S=4.0%以上
A=2.0%~4.0%未満
B=1.0%~2.0%未満
C=1.0%未満

 メディアを通じた生涯学習コンテンツ普及事業は全国33の放送局で生涯学習番組を放送しており、平成20年度における番組の全国平均視聴率は2.5%であった。同番組に対して視聴者からの意見が多数寄せられていることからも関心の高さが伺われる。また、「テレビと生涯学習」をテーマとした地区別の研究協議会を全国5地区で開催しており、地域住民のメディアを通じた生涯学習の意欲向上に寄与している他、平成20年度からはインターネット上で番組の動画配信を行っており、より多くの国民が番組を視聴できるよう努めていることからも一定の成果を納めていると言える。
 以上のことから、概ね順調に進捗していると判断する。

(指標・参考指標)

  16 17 18 19 20
番組全国平均視聴率 - - - 2.5% 2.5%

○判断基準1‐5‐2 (S)

判断基準 NICERへの年間アクセス数
S=4,500,000件以上
A=3,500,000件~4,500,000件未満
B=2,500,000件~3,500,000件未満
C=2,500,000件未満

 平成20年度は、アクセス数は約503万件と1日約1万4千件のアクセス数を維持している。
 これは、情報コンテンツの収集や整備、教育関係のイベントでの広報活動を行うことで、利用者の拡大を図ることができたと考える。また、今後のアクセス数の増加や利便性の向上等を図るため、NICERシステムの機器の更新及び再開発を行った。
 以上のことから、概ね順調に進捗していると判断する。

(指標・参考指標)

年度 16 17 18 19 20
NICERへの年間アクセス件数 2,213,237 3,352,079 4,077,487 4,149,977 5,027,108

○判断基準1‐5‐3 (S)

判断基準 デジタルテレビ等を活用した先端的教育・学習に関する調査研究事業」モデル校全体の授業実践例の内容
 授業実践例
S=大変優れた実践例が報告された
A=優れた実践例が報告された
B=あまり優れた実践例が報告されなかった
C=優れた実践例が報告されなかった

 平成17年度から19年度までの3ヵ年にわたり「学校教育における地上デジタルテレビ放送の効果的な活用」を目的に実施された事業(6地区21校)の成果と課題を元に、平成20年度は、従来の事業で実施した6地区以外の地域(5地区12校)を選定し、「デジタルテレビ等を活用した先端的教育・学習に関する調査研究」を実施した。
 各学校において、研究を実施し、その中から優れた実践を選び、成果報告会にて発表し、報告書としてとりまとめた。より多くの学校にデジタルテレビ等の活用の普及・促進を図ために、授業で具体的にどのようなねらいを持って、どの場面で活用し、どのような効果が現れたかなど、写真や調査データ等により実践例として示した。
 具体的には、デジタルテレビの迫力ある美しい映像と、実物投影機、パソコンやデジタルカメラ等との連携により、わかりやすい授業が展開され、児童生徒の興味関心の向上に効果があらわれた。
 また、代表される授業においては、効果検証を行い、デジタルテレビによる、豊かで精細な映像イメージを提示することで、「知識の定着」「文章表現力」の向上に効果的であることが示され、報告書としてまとめ、大変優れた実践事例が報告された。
 以上を踏まえ、目標の達成に向け想定した以上に順調に進捗していると判断する。

必要性・有効性・効率性分析

【必要性の観点】
 ICTは、時間的・空間的制約などを解消し、多様な学習機会を提供する手段であり、全ての人が元気で豊かに活動できる社会を実現する上で極めて効果的な手段であるが、現状ではまだ十分効果的に活用されているとはいえない状況である。
 今後、ICTの発展により、学習機会の提供・支援方策についても様々な形態が考えられることから、例えば、携帯電話、インターネット配信、地上デジタルテレビ放送等の情報流通・配信手段に対応した社会のニーズが高い優れた教育・学習用コンテンツの視聴・利活用を促進するなど、ICTを活用した具体的方策の充実を図ることが重要である。
 また、急速に情報化が進展する中で、高度情報社会を担う人材の育成が重要課題であり、そのためには教員のコンピュータを使った指導力の向上などにより学校における情報教育の充実が必要不可欠である。
 以上のことから、高度情報社会を担う人材を育成するための教育・学習の推進や、ICTを効果的に活用した教育・学習の機会の充実のための施策を引き続き実施する必要性が極めて高い。

【有効性の観点】
 本事業の具体的な施策のうち、学校における地上デジタルテレビ等の活用方策等についての普及促進については、映像を効果的に活用することにより教育効果が生じているとのアンケート結果も出ており、本施策を通じて地上デジタルテレビの教育現場への普及も図られることが期待される。
 エル・ネットについては平成20年度からインターネットシステムの移行期に関わらず、20万件以上のアクセス数があった。また、教育情報ナショナルセンターへのアクセス数は、年間約503万件で1日約1万4千件のアクセス数があり、多くの国民が利用している実態があり、教育の情報化の推進が図られているものと判断できる。以上を踏まえこれらの事業の実施により、本施策目標が目指す効果が達成できると判断する。

【効率性の観点】
(主な事業インプット)
情報通信技術を活用した教育・学習の振興に必要な経費 293百万円(平成20年度予算額)
 1.デジタルテレビ等を活用した先端的教育・学習に関する調査研究 64百万円
 2.メディアを通じた生涯学習コンテンツ普及事業 184百万円
 3.教育用コンテンツ活用・奨励事業 44百万円
教育政策の基礎的な調査研究に必要な経費 2,322百万円の内数(平成20年度予算額)
 1.教育情報ナショナルセンター機能の運用に要する経費 155百万円
 2.教育研究情報センター事業経費 136百万円
(事業アウトプット)
 本事業の実施により、1.エル・ネットへのアクセス28万件。また、教育放送通信事業におけるテレビ等番組42本の制作・放送。2.NICERへの年間アクセス数は503万件。3.デジタルテレビ等を活用した先端的教育・学習に関する調査研究事業における大変優れた実践例の報告があった。
(事業アウトカム)
 上記事業を実施することにより、ICTを活用した多様な教育学習の機会の充実を図ることが期待される。

施策への反映(フォローアップ)

【予算要求への反映】
 これまでの取組を引き続き推進

【機構定員要求への反映】
 定員要求に反映

【具体的な反映内容について】
 ○ 予算要求への反映
 達成目標1‐5‐1については、エル・ネットの利用者の拡大を図るとともに、良質なコンテンツの収集に努める。また、放送番組については、これまでの施策の効果を維持しつつ、番組の広報活動の充実、生涯学習コンテンツの充実、質の向上を図る。
 達成目標1‐5‐2ついては、NICERの活用促進及び広報に努め、利用者の拡大を図る。
 達成目標1‐5‐3については、平成21年度補正予算により学校におけるICT環境の充実が図られることとなったこと等を踏まえ、より多くの効果検証を取り入れ、学校だけではなく地域との連携等も含めた学校におけるデジタルテレビ等の活用の導入スタイルや授業デザインを提案し、より多くのすぐれた実践例を蓄積し、普及できるよう検討する。

○ 機構定員要求への反映
 新学習指導要領及びi-Japan戦略2015等を踏まえ、新学習指導要領の円滑かつ確実な実施及び学校のICT環境を効果的に活用した学習活動を推進するため、学校教育の情報化推進のための体制の強化に伴う増員を要求する。

関連した行政活動(主なもの)

○下記のものを全国の都道府県教育委員会、政令指定都市及び市町村教育委員会に配布
・平成20年度委託事業「デジタルテレビ等を活用した先端的教育・学習に関する調査研究事業」報告書
 (HPでの広報)
・平成20年度委託事業「デジタルテレビ等を利用した番組活用・促進に関する調査研究事業」報告書及びDVD
(エルネットでの配信)
・エル・ネット(教育情報通信ネットワーク)の運用について(通知)(平成20年5月27日付け文科生第140号文部科学省生涯学習政策局参事官(学習情報政策担当)通知)

○国立教育政策研究所等文部科学省関係機関、都道府県、都道府県教育委員会、文部科学省所管の独立行政法人、大学等教育機関に対して、平成20年4月から運用開始したエル・ネット(教育情報通信ネットワーク)を周知し、コンテンツ等の配信について検討とメールマガジンへの登録を促した。

備考

 特になし

具体的な達成手段

 ※【22年度の予算要求への考え方】には、実績を踏まえ、より効率化に努める内容についても記入している。

【事業概要等】 【20年度の実績】 【22年度予算要求への考え方】
メディアを通じた生涯学習コンテンツ普及事業(開始:平成20年度 終了:‐ 20年度予算額:184百万円)
情報通信技術の進展を踏まえ、メディア(テレビやインターネット)を有効に活用し、生涯学習コンテンツの質の向上・普及を図るための事業を実施する 番組放送回数42回
研究協議会の実施(5地区)
継続
引き続きインターネット上での動画配信を行う等、多くの国民が番組を視聴できるよう努める。
優れたIT活用教育実践の奨励(開始:平成12年度 終了:‐ 20年度予算額:15百万円)
地域社会や学校などで実施される様々な学習活動において、インターネットを有効に活用している優れた実践事例を表彰し、全国に広く紹介することを目的にインターネット活用教育実践コンクールを開催している。 平成20年9月1日より募集を開始し、平成20年10月21日の応募締め切りまでに、学校教育部門104件、社会教育部門24件、計128件の応募があった。 継続
教育の情報化推進の一環として、優れたIT活用教育実践を奨励するため、学校教育及び社会教育等の関係者を対象に、優れた実践を顕彰し、成果を共有し普及促進する。
情報リテラシー育成研究指導(開始:平成10年度 終了:平成20年度 20年度予算額:1百万円)
【平成20年度達成年度到来事業】
メディア教育に関する指導者の体系的、計画的な育成を図るため、学校教育及び社会教育におけるメディア教育の指導者的立場にある者に対し、情報化の進展に対応した指導力の向上を図るための研修を実施している。 開始年度以来、延べ約400人の受講者に対して研修を実施し、地域で実践的に活躍できる指導者を養成した。 所期の目的を達成することができたため、20年度をもって廃止した。
教育研究情報センター事業経費(364百万円の内数)(国立教育政策研究所)(開始:平成11年度 終了:‐ 20年度予算額:136百万円)
誰もが気軽に国や地域の教育・学習情報にアクセスし、学習することが可能な環境の整備として、国の施策などの教育情報や、各地方自治体等で制作された学習用コンテンツなどの提供を図るインターネットを活用した教育情報提供システムを運用する。 平成20年度のエル・ネット(平成20年10月及び11月はエル・ネットについてのアンケートを実施したことにより、回答のための視聴等、エル・ネットの通常の視聴目的と異なるアクセス件数も含まれている可能性があるため、この期間はこれを除く当年度の期間の平均値とした)への年間アクセス件数は、281,562件となっている。当初目標としていた年間200,000件を上回る結果となった。 継続
国の施策などの教育情報や、各地方自治体等で制作された学習用コンテンツなどの充実に努める。
教育情報ナショナルセンターの運用(155百万円)(国立教育政策研究所)(開始:平成13年度 終了:‐ 20年度予算額:155百万円)
我が国における教育・学習に関する情報を扱う中核的なWebサイトとして、インターネットで提供されている様々な教育情報を収集、整理して提供している。  情報コンテンツの収集や整備を行い、教育関係のイベントでの広報活動を実施した。
 平成20年度のNICERのアクセス数は年間約503万件(1日約1万4千件)となり、昨年度を上回る結果となった。
継続
NICERの利活用促進及び広報の充実に努める。
デジタルテレビ等を活用した先端的教育・学習に関する調査研究(開始:平成20年度 終了:平成22年度 20年度予算額:37百万円)
平成15年12月から三大都市圏において地上デジタルテレビ放送が開始されたことを受け、学校教育において地上デジタルテレビ放送を活用した効果的な活用方策を開発し、普及促進を図るため、「デジタルテレビ等を活用した先端的教育・学習に関する調査研究」を実施。 実践事例 12
コンテンツ 15
ホームページやエルネットでの公開 報告書の作成、コンテンツDVDの配布。全国(5地区12校)を選定し、「デジタルテレビ等を活用した先端的教育・学習に関する調査研究」を実施。各学校において、授業研究を実施し、その中から優れた実践を選び、成果報告会にて発表し、報告書としてまとめた。
具体的な実践例(写真や調査データ等)を示し、コンテンツの制作及びWEB上での公開、DVDの配布を実施。また、代表される授業の効果検証を実施。
継続
引き続き、地上デジタルテレビ放送等の普及・活用の促進に努める。

(参考)関連する独立行政法人の事業(なお、当該事業の評価は文部科学省独立行政法人評価委員会において行われている。評価結果については、独法評価書を参照のこと)

独法名 20年度予算額 事業概要 備考(その他関係する政策評価の番号)

○21年度に開始された事業の概要、予定指標

【事業概要等】 【目標・設定予定の指標】 【22年度予算要求への考え方】
学校ICT環境整備事業(終了:平成21年度 21年度補正予算額:206,700,000百万円)
学校等におけるICT環境の整備のため、「IT新改革戦略」「教育振興基本計画」に基づく政府の整備目標を踏まえ、学校等におけるICT環境の整備に必要な経費を補助する。 1.教育活用している全てのテレビのデジタル化
2.校務用コンピュータを教員1人1台整備
3.教育用コンピュータ児童生徒3.6人に1台整備4.全ての普通教室に校内LANを整備
一部継続
学校のICT環境(電子黒板等)を整備する地方公共団体に対する支援を行う。

官房部局の所見

・判断基準1-5-1イについては、将来的に増加し続けると必ずしも言えないことから、新たな指標について設定を検討すること。

お問合せ先

大臣官房政策課評価室

-- 登録:平成21年以前 --