施策目標1‐2 生涯を通じた学習機会の拡大

高度で体系的かつ継続的な学習機会を提供する高等教育機関等において、学習者の多様なニーズに対応し、生涯を通じた幅広い学習機会を提供する。

施策期間

目標達成年度:平成20年度(基準年度:平成19年度)

主管課(課長名)

生涯学習政策局生涯学習推進課(藤野 公之)

関係局課(課長名)

生涯学習政策局政策課(上月 正博)、高等教育局専門教育課(澤川 和宏)

施策の全体像

 高度で体系的かつ継続的な学習機会を提供する高等教育機関等において、学習者の多様なニーズに対応し、生涯を通じた幅広い学習機会を提供する。生涯学習の機会を必要とする者は、社会人から、再チャレンジを目指す者まで多岐に渡り、これらの者の学習ニーズも多様である。よって、これらの様々なニーズに対応した幅広い学習機会の提供を促進することが必要である。このため、以下の6つの達成目標を設定して取り組む。

○達成目標1‐2‐1

 放送大学を活用し、広く社会人等が大学教育を受ける機会を提供するとともに、教育内容の質的向上を図ることにより、生涯学習の充実に資する。この効果について、以下の基準で判断する。
・判断基準1‐2‐1:授業評価における理解度・満足度に加え、社会人等に対する教育機会の状況を勘案して判断

○達成目標1‐2‐2

 民間教育事業者等の協力を得つつ、地域における生涯学習概念の普及・啓発を図るとともに、民間教育事業者等の活動を支援することで生涯学習の機会を整備し、生涯学習の一層の振興を図る。この効果について、以下の基準で判断する。
・判断基準1‐2‐2イ:生涯学習フェスティバル開催県の人口に対する参加者数の割合
・判断基準1‐2‐2ロ:生涯学習フェスティバルの来場者アンケートの推移
・判断基準1‐2‐2ハ:文部科学省認定社会通信教育の受講者総数の推移 

○達成目標1‐2‐3

 専修学校において職業教育機能を活用した多様な学習機会の充実を図る。この効果について、以下の基準で判断する。
・判断基準1‐2‐3イ:専修学校における分野別開設学科数の推移
・判断基準1‐2‐3ロ:専修学校における総開設学科数の推移

○達成目標1‐2‐4 

 高等学校卒業程度認定試験等により学習機会の充実を図る。この効果について、以下の基準で判断する
・判断基準1‐2‐4:潜在的出願者層に対する出願者数の割合の指数 

○達成目標1‐2‐5

 学習機会の提供や学習相談を行う再チャレンジのための学習支援システムを構築するなど、生涯学習社会の充実を図る。この効果について、以下の基準で判断する。
・判断基準1‐2‐5:「再チャレンジのための学習支援システムの構築」事業で開発する講座の学習を経て、再チャレンジに成功した者を輩出した講座の割合

○達成目標1‐2‐6 

 大学・専修学校において社会人等が学ぶ機会の充実を図る。この効果について、以下の基準で判断する。
・判断基準1‐2‐6:学生以外の者を対象とした教育プログラムを提供する大学数、専修学校における社会人受入数及び受入学校数の伸び 

達成状況と評価

全体評価 A

 生涯学習の概念の普及・啓発及び民間教育事業者等の活動の支援による生涯学習の機会の整備については、設定した目標を十分に達成できなかったが、概ね十分な進捗が図られた。 

○ 判断基準1‐2‐1(A)

判断基準 授業評価における理解度・満足度に加え、社会人等に対する教育機会の状況を勘案して判断
S=幅広い年齢層や有職者等に対する教育機会が幅広く提供されており、かつ授業評価における理解度・満足度がいずれも80%以上である。
A=幅広い年齢層や有職者等に対する教育機会が幅広く提供されており、かつ授業評価における理解度・満足度がいずれも70%以上である。
B=幅広い年齢層や有職者等に対する教育機会が幅広く提供されており、かつ授業評価における理解度・満足度のいずれかが70%未満である。
C=幅広い年齢層や有職者等に対する教育機会が幅広く提供されており、かつ授業評価における理解度・満足度がともに70%未満である。

 放送大学の学生層は20代から50代の有職者を含む幅広い層で構成されており、これらの社会人等の学習ニーズに柔軟に対応できるよう、現代的課題に即した科目や、専門的知識・技能の習得ができる科目等の開設、様々な分野について体系的に学習することができる科目群履修認証制度(放送大学エキスパート)の活用促進等、その特性を活かし、社会人等がいつでもどこでも質の高い大学教育を受けられる機会の充実を図っている。
 また、平成20年度の授業評価において、学部・大学院科目を調査対象とし、放送授業、印刷教材、単位認定試験等について四段階で評価する選択肢回答方法と、授業科目のよかった点や改善点等について自由記述により評価する自由回答方法により実施した。本結果については、放送授業の主任講師や教育課程編成委員会等の関係会議への提供等により教育内容の充実に活用されている。
 理解度や満足度は年々向上しており、改善の効果が表れているといえる。
 このように、有職者を含めた様々な層の社会人等に高い満足度を保つことにより、授業内容の質的充実を図り、適切に学習機会の提供が行われていると考えられることから、想定どおり目標を達成したものと判断した。

(指標)

放送大学学生の有職者の割合
※平成20年度第2学期の在学生の状況
学部 72.0%
大学院 85.3%
学生の年齢別構成
※平成20年度第2学期の在学生の状況
学部 10代 5.2%
20代 15.2%
30代 25.0%
40代 23.1% 
50代 16.5%
60代以上 15.0%
大学院 10代
20代 6.0%
30代 19.7%
40代 30.0%
50代 26.4%
60代 17.9%
学生による授業評価
※理解度及び満足度は、全体評価として科目の内容に対して、理解できたか、満足しているか問う設問に対して「あてはまる」「ややあてはまる」と回答した学生の割合を示す。
  18年度 19年度 20年度
理解度 学部 65% 67% 75%
大学院 77% 78% 81%
満足度 学部 70% 73% 79%
大学院 80% 82% 84%

○ 判断基準1‐2‐2(B)(イB、ロB、ハC)

判断基準イ 生涯学習フェスティバル開催県の人口に対する参加者数の割合
S=生涯学習フェスティバル開催県の人口に対する参加者数の割合が40%以上
A=生涯学習フェスティバル開催県の人口に対する参加者数の割合が40~30%
B=生涯学習フェスティバル開催県の人口に対する参加者数の割合が30~20%
C=生涯学習フェスティバル開催県の人口に対する参加者数の割合が20%未満
判断基準ロ 生涯学習フェスティバルの来場者アンケートに占める「生涯学習」に“非常に興味がわいた”、“少し興味がわいた”の合計割合の推移
S=合計割合が、過去3ヵ年度の参加者割合の合計割合の平均と比較して、5%以上増加している
A=合計割合が、過去3ヵ年度の参加者割合の合計割合の平均と比較して、増加している
B=合計割合が、過去3ヵ年度の参加者割合の合計割合の平均と比較して、減少している
C=合計割合が、過去3ヵ年度の参加者割合の合計割合の平均と比較して、5%以上減少している
判断基準ハ 文部科学省認定社会通信教育の受講者総数の推移
S=平成20年度の受講者数の平均を過去3ヵ年度の受講者数の平均と比較し、5%以上増加している
A=平成20年度の受講者数の平均を過去3ヵ年度の受講者数の平均と比較し、増加している
B=平成20年度の受講者数の平均を過去3ヵ年度の受講者数の平均と比較し、減少している
C=平成20年度の受講者数の平均を過去3ヵ年度の受講者数の平均と比較し、5%以上減少している

 平成20年度に開催した生涯学習フェスティバルについては、開催県の人口に対する参加者数の割合が30%未満であり、また、来場者アンケートに占める「生涯学習」に“非常に興味がわいた”、“少し興味がわいた”の合計割合も過去3ヵ年度の参加者割合の合計割合の平均と比較して減少しているため、十分に目標を達成できなかったものと判断した。
 文部科学省認定社会通信教育については、平成20年度の受講者数と過去3ヵ年度の受講者数の平均を比較したところ、直近3ヵ年の数字に比較して5%以上減少しているため、十分に目標を達成できなかったものと判断した。

(指標) 

    16 17 18 19 20
指標イ 開催県人口に対する参加者数の割合〔%〕 31 46 27 41 27
指標ロ 来場者アンケートに占める「生涯学習」に“非常に興味がわいた”、“少し興味がわいた”の合計割合〔%〕 91.3 87.0 88.9 89.2 87.0
指標ハ 文部科学省認定社会通信教育の受講者総数〔千人〕 129 113 103 91 83

(参考指標)

  16 17 18 19 20
生涯学習フェスティバル参加者数〔千人〕 466 281 812 811 554

○ 判断基準1‐2‐3(A)(イA、ロA)

判断基準イ 専修学校における総開設学科数の推移
S=前年度に比べ増加(前年度比1%を超える増加)
A=前年度とほぼ同様(前年度比1%以内の変動)
B=前年度に比べ減少(前年度比1%を超える減少)
C=前年度に比べ大きく減少(前年度比3%を超える減少)
判断基準ロ 専修学校における分野別開設学科数の推移
S=前年度に比べすべての分野で学科数が増加
A=前年度に比べ半数以上の分野で学科数が増加
B=前年度に比べ半数未満の分野で学科数が減少
C=前年度に比べすべての分野で開設学科数が減少

 専修学校における、総開設学科数の推移については、前年度とほぼ同様であるが、半数以上の分野で開設数が増加したことで、専修学校における多様な社会ニーズに対応した学習機会の充実が図られたと考えられるため、想定どおり目標を達成したものと判断した。

(指標)

  16 17 18 19 20
イ 専修学校における総開設学科数 9,632 9,706 9,715 9,703 9,641
ロ 専修学校における開設学科分野別内訳 工業分野 1,684 1,607 1,588 1,547 1,531
農業分野 56 71 88 92 101
医療分野 2,001 2,009 2,037 2,037 2,054
衛生分野 927 964 996 991 1003
教育・社会福祉分野 710 711 732 758 738
商業実務分野 1,240 1,301 1,264 1,269 1,234
服飾・家政分野 1,154 1,100 1,023 948 912
文化・教養分野 1,860 1,943 1,987 2,061 2,068

(参考指標)

事業の委託件数 16 17 18 19 20
専修学校教育重点支援プラン
(申請件数)
40
(66)
47
(69)
30
(68)
30
(79)
専修学校・高等学校連携等職業教育推進プラン
(申請件数)
36
(44)
21
(38)
専修学校を活用した再チャレンジ支援事業
(申請件数)
85
(117)
74
(109)

○ 判断基準1-2-4(A)

判断基準 潜在的出願者数に対する出願者数の割合の指数
S=潜在的出願者数に対する当該年度出願者の割合について、平成19年度を100としたときの指数が、前年度より10ポイント以上増加。
A=潜在的出願者数に対する当該年度出願者の割合について、平成19年度を100としたときの指数が、前年度より増加。
B=潜在的出願者数に対する当該年度出願者の割合について、平成19年度を100としたときの指数が、前年度より減少。
C=潜在的出願者数に対する当該年度出願者の割合について、平成19年度を100としたときの指数が、前年度より10ポイント以上減少。
※潜在的出願者数とは、過去3年間の高校中退者等を平均した数を指す。

 高卒認定は年2回実施されており、平成20年度は第1回、第2回合わせて、33,264人が出願、29,776人が受験した。
 判断基準より、潜在的出願者数に対する各年度の出願者数の割合を算出し、平成19年度を100としたときの、平成20年度の指数が109.1と上昇しているため、高卒認定による学習機会の充実が想定どおり順調に進捗しているものと判断した。

(指標)

  16 17 18 19 20
潜在的出願者数に対する出願者数の割合について、平成19年度を100としたときの当該年度の指数 98.9 100.0 102.6 100.0(基準年) 109.1

(参考指標)

  16 17 18 19 20
潜在的出願者数(※)に対する出願者数の割合(%)
※高校等中退から高卒認定受験までの時間差等をかんがみ、当該年度評価においては、母数となる中退者等の数について、高卒認定受験時の1~3年度前の中退者等の数を平均したものとしている。
27.1 27.4 28.1 27.4 29.9
出願者数(人)
※平成16年度は大学入学資格検定
24,960 26,631 29,619 31,796 33,264

【参考】
○「『高等学校卒業程度認定試験』合格者の進路状況調査の結果について」(平成19年5月)
高卒認定合格後の進路「大学・短大・専門学校に入学」

13年度 18年度
39.1% 50.1%

※調査対象:
平成18年度:平成18年度合格者8,954名(18年度に受験実績のない者、4月1日時点で17歳以下の者及び3月3日以降合格の手続きを行った者を除く)のうち、回答のあった2,760人。
平成13年度:平成12年度大学入学資格検定出願者21,288人から無作為抽出した5,000人。

○「『高等学校卒業程度認定試験(高卒認定)』に関する調査報告」(平成18年4月)
 採用試験における高卒認定合格者の扱い「高卒と同等」

  13年度 18年度
企業 13.8% 21.2%
地方公共団体 20.8% 38.3%

※調査対象:
企業:全国523商工会議所について1商工会議所当たり5企業を抽出し、調査票を送付
(配布数2,615件)したうち、回答のあった970企業。
地方自治体:平成18年2月1日現在の都道府県、政令指定都市、市(区)町村の全て(2,090自治体)のうち、回答のあった1,386自治体。

(指標に用いたデータ・資料等)
・「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」(平成16~19年度)
・文部科学省調べ

○ 判断基準1-2-5(A)

判断基準 「再チャレンジのための学習支援システムの構築」事業で開発する講座の学習を経て、再チャレンジ(※)に成功した者を出した講座の割合
※就業、企業、NPOの立ち上げ、ボランティアへの参加等につながった者を成功者とみなし、単なる意識・意欲の向上は含まない。
S=80%以上
A=60%~80%
B=40%~60%
C=40%以下

「再チャレンジのための学習支援システムの構築」事業は、大学等高等教育機関・企業・地方公共団体・NPO等で構成する協議会において、地域社会や企業等が求める人材の資質や能力を調査・把握し、社会参加や就業、起業等の新たなチャレンジをしようとする者に対する学習相談や学習講座等の再チャレンジするために必要となる学習機会を、社会教育施設等において提供する学習支援システムを構築するものであり、平成19年度より実施している。

本事業による委託を受け、平成20年度における再チャレンジに成功(就業・起業・社会参加)した者を出した講座の割合は74%であることから、再チャレンジを希望していた者の社会参加を促進するという目標は想定どおり順調に進捗している、と判断した。

(指標)

  19 20
再チャレンジに成功(就業・起業・社会参加)した者を出した講座の割合 講座数 136 254
再チャレンジに成功した者を輩出した講座数(%) 90
(66%)
189
(74%)

(指標に用いたデータ・資料等)
・平成19年度及び平成20年度「再チャレンジのための学習支援システムの構築」事業実績報告書

○ 判断基準1-2-6(A)

判断基準 指標の数値の対前年度比
S=前年度に比べ指標イからハのすべての数値が増加。
A=前年度に比べ指標イからハのうち2つの数値が増加。
B=前年度に比べ指標イからハのうち2つの数値が減少。
C=前年度に比べ指標イからハのすべての数値が減少。

 大学においては、平成19年度において213大学が学生以外を対象とした教育プログラムを提供している。また、平成19年度から、大学等の教育研究資源を活用し、社会人の再就職やキャリアアップに資する優れた社会人の学び直しニーズに対応した教育プログラムの開発・普及を行っている。これらの取組を通して、学生以外を対象とした教育プログラムの一層の提供が期待され、社会人等が学ぶ機会の充実が図られている。
 専修学校では、社会人の受入人数、受入学校数ともに増加している。平成19~20年度に実施した「専修学校を活用した再チャレンジ支援推進プログラム」においては、各地域において受講者それぞれの特性に応じた職業能力向上のための学習機会の提供が図られ、その講座開設のノウハウ等の成果が普及し、各学校が独自に地域ニーズに応じた講座開設を行なうなど、社会人等の学習環境の拡充が図られた。
 以上より、想定どおり順調に進捗したものと判断した。

(指標)

  16 17 18 19 20
イ.学生以外の者を対象とした教育プログラムを提供する大学数(校) 221 213 ※未調査
ロ.私立専修学校における社会人受入数(人) 58,823 56,812 51,364 77,250 77,792
ハ.私立専修学校における社会人受入学校数(校) 1,450 816 1,296 1,382

(参考指標)

    16 17 18 19 20
社会人特別選抜実施大学数 選定件数 467 475 483 495 511
社会人の学び直しニーズ対応教育推進事業 選定件数(申請件数) 126(315) 160(465)
「専修学校を活用した再チャレンジ支援推進プログラム」 選定件数(申請件数) 85(117) 74(109)

(指標に用いたデータ・資料等)
指標
大学における教育内容改革状況調査(文部科学省)
私立学校等実態調査(文部科学省)

参考指標
大学における教育内容改革状況調査(文部科学省)
「社会人の学び直しニーズ対応教育推進事業」選定件数
「専修学校を活用した再チャレンジ支援推進事業」選定件数

必要性・有効性・効率性分析

【必要性の観点】
 経済の発展に加え、科学技術の高度化、情報化、少子高齢化等の進行を背景として、人々は、物質的な豊かさに加え、精神的な面での豊かさを求め、生涯を通じて健康で生きがいのある人生を過ごし、その中でそれぞれの自己実現を図ることを求めている。人々は自己の充実・啓発や生活の向上のため、多様な学習機会を求めており、国民一人一人がその生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、また、その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が求められている。
 学習には各個人がその興味や関心に基づき、自らを深めるために行う個人的な活動としての側面があるが、このような国民の学習活動を促進することは、国民一人一人が、充実した心豊かな生活を送り、また、職業生活に必要な知識・情報・技術等を習得・更新することにより経済的にも豊かな生活を送ることを可能とするものである。また、同時に、このことは社会を支え発展させることができる国民一人一人の能力を向上させることにつながるものであり、これは、ひいては社会全体の活性化を図り、我が国の持続的発展に資するものである。我が国の現状及び将来を見据えると、教育機関等において学習者の多様なニーズに対応した生涯を通じた幅広い学習機会の提供を行い、生涯学習社会を実現する必要性・重要性がますます高まっているといえる。

【有効性の観点】
 放送大学、専修学校、大学や民間教育事業者等による取組の支援は、各主体による自主的な取組を支援することで、多様な主体による生涯学習の機会の提供や生涯学習概念の普及・啓発に資するものである。例えば、放送大学において、昭和60年の学生受け入れ開始以来、約110万人が学び、平成20年度までに約5万人を超える卒業生を輩出するなど、社会一般に対して幅広く学習機会を提供してきた。また、高等学校卒業程度認定試験等については、その実施により、次の学校種での教育を受けることが可能になるなど、学習機会の充実等の効果が見込まれ、大学入学資格検定時代の受験者数も併せると、これまでに延べ約53万人が受験した。
 以上を踏まえて、目指す効果を達成できると判断した。

【効率性の観点】
 (事業インプット)
生涯を通じた学習機会の拡大に必要な経費  9,266百万円(平成20年度予算額)
放送大学学園補助 8,162百万円
生涯学習フェスティバル 113百万円
生涯学習施策に関する調査研究 21百万円
生涯学習の学習成果の評価等の在り方の調査研究 12百万円
社会通信教育の振興 5百万円
専修学校教育等の運営改善に関する調査指導 21百万円
専修学校教育重点支援プラン 417百万円
専修学校・高等学校連携等職業教育推進プラン 147百万円
専修学校を活用した再チャレンジ支援推進プログラム 728百万円
高等学校卒業程度認定試験等 258百万円
再チャレンジのための学習支援システム構築 195百万円
生涯学習施策の総合的推進 1百万円
社会人の学び直しニーズ対応教育推進事業 1,960百万円 

(事業アウトプット)
 上記のような生涯を通じた幅広い学習機会を提供する、あるいは様々な学習活動の成果が適切に評価されるようにするための諸施策の実施により、
1.放送大学に対する支援を通じて有職者を含めた様々な層の社会人等に学習機会が提供された。
2.民間教育事業者への支援を通じて学習機会が提供された。また民間教育事業者との連携を通じて生涯学習概念が普及・啓発された。
3.職業教育機会の充実を図り、社会的要請に応える即戦力となる人材が輩出されることにより、日本の産業振興につながる。また、社会人等への多様な学習機会の提供により、職業能力等のスキルアップが図られ、再就職につながるなどの効果が期待される。
4.高等学校卒業程度認定試験の実施により、高等学校等を卒業できなかった者の約3割(推計)に対して高等教育を受ける機会及び高等学校卒業を条件とする職業への就職や資格取得のきっかけを付与することができた。
5.再チャレンジを目指す者に対して、地域社会や企業等が求める人材ニーズとの整合性を持たせた学習相談から学習機会の提供まで一貫した支援を行うことにより、就職や起業等の社会参加を促すことができた。
6.産学業界等との連携により社会等の様々なニーズを踏まえた職業能力形成に資する教育プログラムが開発され、より多くの社会人に対し学び直しができる学習機会の提供ができた。また、社会人等への多様な学習機会の提供により、職業能力等のスキルアップが図られ、再就職につながるなどの効果が期待される。

(事業アウトカム)
 上記のような諸施策を着実に実施していくことにより、学習者の多様なニーズに対応した生涯を通じた幅広い学習機会を提供するとともに、様々な学習活動の成果が適切に評価されるようにすることができた。

施策への反映(フォローアップ)

【予算要求への反映】
 評価対象政策の改善・見直し(評価対象政策の一部の廃止、休止又は中止)

【機構定員要求への反映】
 特になし

【具体的な反映内容について】
 経済の発展、科学技術の高度化、情報化、少子高齢化等の進行を背景として、人々は自己の実現を図ることを求めていることから、生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、また、その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が求められている。また、人々の自己の実現を図ることは同時に、社会を支え発展させることができる国民一人一人の能力の向上につながるものであり、ひいては社会全体の活性化を図り、我が国の持続的発展に資するものである。
 以上に鑑みると、生涯を通じた幅広い学習機会の提供を行い、生涯学習社会を実現する必要性・重要性がますます高まっているといえることから、今回の評価を以下の通り施策へ反映し、引き続き生涯を通じた学習機会の実現を推進していく。

 達成目標1‐2‐1については、放送大学において、今後も質の高い大学教育の機会を提供していくため、引き続き多様なニーズに対応した教育内容の充実を図ることや、授業評価を継続して実施し、カリキュラム編成や授業科目の制作等に活用・反映していくとともに、南関東地域以外の学生に対するハイビジョン放送、字幕放送、データ放送、マルチチャンネル放送等の多様なサービスの提供等、放送のデジタル化を活かした学習環境の整備を推進していく。

 達成目標1‐2‐2については、生涯学習フェスティバルが事業開始から20年を経過し、「生涯学習の啓発」という当初の目的はある程度達成できたと考えられることから、今後、より社会や時代の変化に対応した事業としていくため、現状の見直し及び今後の在り方に関する検討を行い、平成22年度以降の取組に反映させていく。

 達成目標1‐2‐3については、専修学校教育の振興を図るため、従来の教育プログラムの開発に重点をおいた事業を見直し、教育プログラムとともにその実施を支える教員や組織の質の向上等システム面の開発を行う事業を実施する。また若者や社会人等の離職者向けの講座提供を主とした事業についても見直し、より就業に目的をおいた事業を展開するため、平成21年度からは「専修学校を活用した就業能力向上支援事業」として、履修証明制度やジョブカード制度等を活用した取組を実施している。なお、これらの取組については、平成22年度においても内容の見直しを図りつつ継続して実施する予定である。

 達成目標1‐2‐4については、高卒認定について、大学入学資格付与の機能を維持すること、受験対象者を拡大しより多くの方々の受験が可能な試験にすること、就職等においても活用されるよう社会的通用性を高めることなどを基本的な考え方として、平成17年度にそれまでの大学入学資格検定からの制度改正を行っている。これまでも、都道府県教育委員会、関係省庁、経済団体への制度の周知に努めてきたところであるが、より多くの受験対象者に本制度が活用されるようにするとともに、社会的通用性を一層高めるため、本制度の一層の周知に努めていくこととし、これまでの取組を引き続き推進していく。

 達成目標1‐2‐5については出産・育児後の女性や、若者、高齢者及び障がいをお持ちの方等、再チャレンジを目指す人々に、地域社会や企業の求める人材ニーズに対応した学習相談、学習講座を提供するほか、同時に女性メンター支援講座やITを活用した講座を提供することにより、幅広い地域住民の社会参加を推進してきた。平成21年度は再チャレンジする方に限らず、全ての地域住民が活用できるシステムに見直し、2年間の実績を踏まえ地域の実情に沿ったより有効な学習支援システムを提供していく。
 委託事業終了後にシステム構築状況についての調査を行い、有効性について検証していく。

 達成目標1‐2‐6については、今後も社会人の「学び直し」のニーズに対応するため、大学、短期大学、高等専門学校における幅広い教育研究資源を活かした学修プログラムの開発・実施を引き続き継続していくとともに、より多くの社会人に対し学び直しができる学習機会の提供を推進していく。

関連した行政活動(主なもの)

  • 放送のデジタル化を活かした学習環境の整備を推進し、授業内容の質的充実や学生の受講機会の拡大を図るため、放送大学における今後の放送メディアの在り方について有識者会議において検討。(平成20年度)
  • 生涯学習フェスティバルの在り方に関する検討委員会(平成21年4月~)
    生涯学習フェスティバルについて、生涯学習社会の形成を通じて地域の再生を図る具体的実証の場への転換を図るため、現状の見直し及び今後の在り方に関する検討を行う。
  • 検定試験の評価の在り方に関する有識者会議における検討(平成20年5月~平成21年3月)
    有識者からなる協力者会議を設置し、多様な生涯学習の機会の実態や学習成果の評価の在り方について総合的な検討を実施。
  • 検定試験に関する実態調査の実施(平成20年12月~平成21年3月)
    検定試験に関する実態調査を実施し、その結果を分析。

備考

 特になし

具体的な達成手段

※  【22年度予算要求への考え方】には、実績を踏まえ、より効率化に努める内奥についても記入している。

【事業概要等】 【20年度の実績】 【22年度予算要求への考え方】
放送大学の充実・整備(開始:平成15年度 終了:- 20年度予算額:8,162百万円)
社会人の多様化する生涯学習ニーズに対応するため、わが国の生涯学習の中核的機関である放送大学に対し、学習環境の充実・整備のために必要な経費の補助を行っている。 放送大学では、平成20年度開講科目の一部を対象として、学部・大学院科目に対して学生等による授業評価を実施するとともに、教育支援の充実を図るための新教務情報システムの整備等を行った。 継続
一層の効率的運営のための見直しを図りつつ、放送大学が生涯学習の中核的機関としての役割を果たせるよう支援。
生涯学習フェスティバル(開始:平成元年度 終了:- 20年度予算額:113百万円)
生涯学習活動を実践する場を全国的な規模で提供することにより、国民一人ひとりの生涯学習への参加意欲を促進し、今後の学習活動の進展に資する。 10月11日から15日の5日間に渡り、福島県内の9市町において開催し、約55万人が参加した。 廃止
(改組充実)
開・閉会式の簡素化、実施期間の短縮、内容の見直し等により効率的な予算執行がなされるよう検討中。
社会通信教育の振興(開始:昭和24年度 終了:- 20年度予算額:5百万円)
学校又は一般社団法人若しくは一般財団法人の行う通信教育で、社会教育上奨励すべきものを認定し、その普及を図る。 ・受講者総数:8万3千人
・表彰式の実施:77名(対象:優れた成績で修了した者)
継続
社会人等に対する学習機会の提供を図るため、引き続き、社会通信教育の充実及び普及・啓発を図る。
専修学校教育の運営改善に関する調査指導(開始:昭和60年度 終了:- 20年度予算額:21百万円)
専修学校教育の課題についての調査及び研究協議等を実施するとともに、専修学校に関する最新の情報を提供するためのガイドブックを作成・配布。 ガイドブックの作成・配付及び実態調査を1件実施 継続
専修学校教育の課題等に対応するための調査研究の実施やガイドブックの作成等を引き続き実施する。
専修学校教育重点支援プラン(開始:平成17年度 終了:平成21年度 20年度予算額:459百万円)
社会的要請の高い課題に対応する教育内容や方法等についての重点的な研究開発を「研究指定校」として指定した専修学校に委託し、その成果を全国に普及する。 平成20年度の委託件数は30件 廃止
(改組充実)
他の事業と統合することでより効率的な実施を図る。
専修学校・高等学校連携等職業教育推進プラン(開始:平成19年度 終了:- 20年度予算額:147百万円)
高校生の自主的な進路選択など、若年者の職業意識の涵養を図るため、高等学校と連携した意識啓発のための職業教育等を実施する。 平成20年度の委託件数は21件 拡充
より波及効果の高い執行となるよう経費の見直しを図るとともに、事業効果を高めるため、対象者の拡大を図る。
専修学校を活用した再チャレンジ支援推進プログラム(開始:平成19年度 終了:平成20年度 20年度予算額:728百万円)
【平成20年度達成年度到来事業】
新たなチャレンジを目指す若者、中高年、女性、ニート等を支援するため、専修学校の持つ職業教育機能を活用して、それぞれの特性等に応じた職業能力向上のための学習機会の提供を行う。 平成20年度の委託件数は74件であり、多様な学習機会の提供が図られた。
【事業期間全体の総括】
各地域において、受講者それぞれの特性に応じた職業能力向上のための学習機会の提供が図られた。
廃止
(平成20年度で予定どおり終了)
高等学校卒業程度認定試験等(開始:平成17年度(中卒認定試験:昭和42年度) 終了:- 20年度予算額:258百万円)
高等学校あるいは中学校を卒業できなかった者等の学習成果を適切に評価し、広く高等教育及び後期中等教育を受ける機会を付与する。 高等学校卒業程度認定試験については、第1回試験を平成20年8月6日(水)・7日(木)に、第2回試験を11月15日(土)・16日(日)に実施した。 中学校卒業程度認定試験については、平成19年11月4日(火)に実施した。 継続
高等学校、中学校を卒業できなかった者等が、この試験を活用して学習機会の充実を図るため、引き続き実施。
再チャレンジのための学習支援システム構築(開始:平成19年度 終了:平成21年度 20年度予算額:194百万円)
社会参加や就職・起業等の新たなチャレンジをしようとする者に対して学習相談を行うとともに、必要な学習機会を身近な社会教育施設等において提供する等、再チャレンジに資する学習支援システムを構築する。 全国13カ所に大学等高等教育機関・企業・地方公共団体・NPO等で構成する再チャレンジ学習支援協議会を設置し、再チャレンジを目指す者に対し、企業が求める人材ニーズとの整合性を持たせた学習相談や学習機会の情報提供等を行った。また、女性に対する学び支援事業として出産・育児後の女性を対象とした身近な場所での講座等を実施したほか、再チャレンジ者がライフスタイルに合わせて学習しやすい方法で効果的に利用できるようにITを活用した学習支援システムを構築した。 廃止
(平成21年度で予定どおり終了)
社会人の学び直しニーズ対応教育推進事業(開始:平成19年度 終了:平成22年度 20年度予算額:1,960百万円)
社会人の学び直しのニーズに対応するため、大学、短期大学、高等専門学校における幅広い教育研究資源を活かした優れた学習プログラムを開発・実施することにより、学び直しに資する良質な教育プログラムの普及を図り、再チャレンジを可能とする柔軟で多様な社会の実現を目指す。 平成19年度に選定された126プログラムにおいては、昨年度開発したプログラムの実施が行われた。また、平成20年度に新たに選定された34プログラムにおいても、社会人の学び直し教育プログラムの開発・実施が行われた。 継続
ニート・フリーター等を対象とした社会人の学び直しニーズに対応するため、引き続き、大学等における幅広い教育研究資源を活かした優れた学習プログラムを開発・実施を支援する。

(参考)関連する独立行政法人の事業(なお、当該事業の評価は文部科学省独立行政法人評価委員会において行われている。評価結果については、独法評価書を参照のこと)

独法名 20年度予算額 事業概要 備考(その他関係する政策評価の番号)

○21年度に開始された事業の概要、予定指標(※これらは20年度実績評価の結果に関係するものではない)

【事業概要等】 【目標・設定予定の指標】 【22年度予算要求への考え方】
専修学校を活用した就業能力向上支援事業(終了:平成23年度 21年度予算額: 540百万円)
専修学校を活用し、若者の早期離職者や社会人、女性等を対象とした就業に必要な能力を向上するための講座を提供し、そのノウハウを普及することで、同様の取組みが全国に普及する。 【目標】
若者の早期離職者やニート・フリーター、定年退職をむかえる社会人、子育てにより仕事を中断した女性等を対象にした講座提供の充実が図られることを目標とする。
【設定予定の指標】
・専修学校における社会人受入者数
・専修学校における社会人受入講座数
専修学校は全国に約3,000校が存在し、各地域における社会人を対象とした学習機会の提供を行なう重要な機関となっている。雇用情勢の悪化やニート・フリーターの年長化などの社会問題は一層深刻化しており、離職者等の就職を支援する本事業は社会的ニーズが高いものである。
以上より、本事業を継続して実施するよう、平成22年度においても、今年度と同額要求を行う。

官房部局の所見

・判断基準1-2-3については、より学習機会の多様性をはかることのできる指標の設定を検討すること。

お問合せ先

大臣官房政策課評価室

-- 登録:平成21年以前 --