92.地域スポーツ人材の活用実践支援事業(拡充)【達成目標11-1-4】

平成21年度要求額:1,064百万円
  (平成20年度予算額:515百万円)
  事業開始年度:平成20年度
  事業達成年度:平成24年度

主管課(課長名)

  • スポーツ・青少年局企画・体育課(鬼澤 佳弘)

関係課(課長名)

事業の概要等

1.事業目的

  児童生徒に対して、より高い技術的指導を受けさせることにより、スポーツに親しみ、体力の向上を図るとともに、教員の負担を減らし、多くの児童生徒と向き合う時間を確保する観点から、中学校運動部、小学校高学年体育授業を中心とした地域のスポーツ人材の活用を一層促進するため、人材活用上の課題の解決を目指し、学校支援地域本部とも連携しつつ、学校における地域のスポーツ人材活用の実践的な調査研究を実施する。

2.事業に至る経緯・今までの実績

  平成17年度から平成19年度まで、「運動部活動等における外部指導者の発掘・養成・活用の促進に関する調査研究」を実施し、運動部活動等への地域人材の活用に関して各都道府県が共通に抱える課題として、1.「指導者により指導日数や時間に制約がある」2.「指導者の協力を得る学校側に体制の整備」3.「保護者等との協力体制の確立」4.「指導者と顧問との良好な関係形成」などがあげられることが分かった。
  このことを踏まえ、平成20年度から、中学校運動部、小学校高学年体育授業を中心とした地域のスポーツ人材の活用を一層促進するため、上記のような課題解決を目指し、学校支援地域本部とも連携しつつ、学校における地域のスポーツ人材活用の実践的な調査研究を実施している。

3.事業概要

(1)地域スポーツ人材活用促進委員会の設置

  • 人材リストへの登録の促進及びリストの周知徹底等による地域のスポーツ人材の確保(地域内の元アスリート、体育系大学出身者及び学生等の確保)
  • 児童生徒への指導上の配慮事項を中心とした地域のスポーツ人材に対する講習会の開催
  • 地域のスポーツ人材や施設に関する情報提供及び斡旋
  • 学校支援地域本部との連携及び役割分担 等

(2)運動部活動等への指導者派遣実践

(実践校の指定)

  (20年度)実践校数2,500校区から(21年度)4,000校区、(1学校区あたり指導者数3名から4名)

  <実践研究例>

  • 学校が必要とする指導者情報の把握及び活用促進委員会との連携の在り方
  • 体育授業の年間指導計画、部活動計画での指導者の位置付け及び指導の在り方
  • 指導者活用に関する保護者会、OB会等との連携協力体制の在り方

スキーム図

4.指標と目標

指標

  学校における地域スポーツ人材の活用人数

目標

  すべての小・中学校に地域スポーツ人材の活用がすすむよう、社会総がかりで学校を支援する体制を構築する。

効果の把握手法

  本事業の効果は、指定された教育委員会における人材活用上の課題の解決が図られたかどうか、実際に活用された人材の人数の変化等について検証する。

事業の事前評価結果

A.19年度実績評価結果との関係

  達成目標11‐1‐4「今後の課題及び政策への反映方針」において、「地域のスポーツ指導者を体育の授業や運動部活動に積極的に活用していくためには、これまでの調査研究事業の成果の普及を図り外部指導者を活用しやすい土壌をつくっていく必要がある」と記述されており、平成20年度から本事業を実施しているところであるが、さらなる人材活用の促進を図るためには、本事業の拡充は不可欠である。

B.必要性の観点

1.事業の必要性

  多くの中学校では部活動の指導者不足が深刻な状況である。その要因として考えられるのは、教員数の減少や高齢化の進展、練習・引率及び大会運営等の負担が大きいこと、生徒の指導に対するニーズが高度で専門的になっていることなどである。また、平成18年度に行われた教員の勤務実態調査では、中学校の教員にとって部活動指導のための残業時間が長くなっていることが明らかになった。このような状況を改善するためには、学校外の地域のスポーツ人材を積極的に活用し、生徒の指導ニーズに応えるとともに、教員の負担を軽減することが必要である。
  また、学級担任が全ての教科を担当する小学校においては、特に、高学年で指導内容が高度化するために、個に応じた指導の必要性も高くなり、児童の関心・意欲にあった体育指導が困難と感じる教員が少なくない。児童生徒の体力が長期的な低下傾向にある中、児童生徒の運動する意欲をより一層培うためには、発達段階に応じて、教員の指導を補助できる地域のスポーツ人材とともに指導していくことも必要である。
  以上のことから、学校体育への地域スポーツ人材の活用を促進し、学校体育の活性化を図るためには、本事業の拡充が不可欠である。

2.行政・国の関与の必要性

  各地方自治体に共通して抱える地域スポーツ人材の活用に関する課題は、学校関係者に不安があったり、指導者を派遣するシステムが整備されてしなかったりするなど、ある程度共通しており、本事業を国の委託事業で行い、1つの地方自治体による効果的な手法を広く全国に周知し、他の地方自治体が同様の手法を実施することによって、波及効果を期待することができる。
  したがって、本事業は国による関与が必要である。また、国の委託事業として行うことにより、各都道府県が、全国連絡協議会での情報交換等を通じて、より一層の人材活用の促進という効果も期待できる。

3.関連施策との関係

1.主な関連施策 施策目標11‐1

  ○運動部活動等活性化推進事業(スポーツ・青少年局企画・体育課)
   複数校合同の運動部活動や地域スポーツクラブの連携など、1校の枠を超え、地域のあらゆる資源を活用して、地域社会と連携する運動部活動について実践的な研究を行う。(平成21年度要求額39百万円)

2.関連施策との関係(役割分担・連携状況)

  本事業が地域のスポーツ人材を体育の授業や運動部活動への活用を主眼とする事業であるのに対して、「運動部活動等活性化推進事業」は、複数校合同運動部や総合運動部など運動部活動に対象を絞りつつ、少子化・教員の高齢化の影響を受けている運動部活動を活性化するための指導体制や運営方法を実践研究する事業であり、「長期的に低下傾向にある子どもの体力を、スポーツの振興を通じ、上昇傾向に転じさせることを目指す」という共通の目標達成に寄与しているものである。

4.関係する施政方針演説、審議会の答申等

・「教育振興基本計画」(平成20年7月1日閣議決定)

  記載事項(抜粋)

  (3)基本的方向ごとの施策

  基本的方向2 個性を尊重しつつ能力を伸ばし、個人として、社会の一員として生きる基盤を育てる

  2.規範意識を養い,豊かな心と健やかな体をつくる

  ◇学校における体育及び運動部活動の推進

  • 学校体育及び運動部活動の充実を図るため,外部指導者の積極的な活用を促す。
・「社会総がかりで教育再生を‐第一次報告‐」(平成19年1月24日 教育再生会議決定)

  記載事項(抜粋)

  1.「ゆとり教育」を見直し、学力を向上する

  (3)伸びる子は伸ばし、理解に時間のかかる子には丁寧にきめ細やかな指導を行う

  学校は、優れたスポーツ選手やスポーツ指導者の協力も得て、学力向上の基礎となる体力を子供につけさせる努力を行う。

C.有効性の観点

1.目標の達成見込み

  都道府県教育委員会等が中心となり、域内の学校への地域スポーツ人材の活用の趣旨や効果を啓発していくことにより、地域スポーツ人材の活用する気運が高まり、すべての小・中学校において地域スポーツ人材の活用ができる体制を構築するという目標を達成することができると見込まれる。
  また、本事業の実施により、地方自治体が抱える地域スポーツ人材活用上の課題の解決が図られ、より一層の人材活用がなされることも期待される。

2.上位目標のために必要な効果が得られるか

  本事業は、各学校における地域スポーツ人材の活用を促進するものであることから、達成目標11‐1‐4にある地域のスポーツ指導者の活用という成果に結びつくものと考えられる。

D.効率性の観点

1.インプット

  本事業の予算規模は1,064百万円である。

  (内訳)

  • スポーツ振興事業委託費 1,064,320千円(指定を受ける教育委員会に委託する予定)

2.アウトプット

  平成21年度においては、4,000中学校区に地域スポーツ人材を派遣するとともに、派遣前の研修の在り方、顧問教員等との連携の在り方などの研究成果が期待できる。

3.事業スキームの効率性

  本事業の予算規模(1,064百万円)に対して、アウトプットとして、4,000中学校区に地域スポーツ人材を派遣することを通して、各都道府県における地域スポーツ人材活用上の課題の解決、優れた取組の実施が図られ、さらには派遣校以外の学校にも外部人材活用の効果が波及することを見込むと、本事業のインプットとアウトプットの関係は効果的と判断する。

4.代替手段との比較

  本事業を国が実施しない場合には、各地方自治体の財政状況や取組姿勢によって地域格差を生じたり、優れた成果を普及することができなかったりなど効率的な全国的な取組が期待できない。
  また、国の委託事業として行うことにより、各都道府県が全国連絡協議会や事例集等を通じて、より一層の人材活用の効率的な促進という効果も期待できる。

E.公平性の観点

  本事業は、すべての都道府県・指定都市教育委員会に対して公募し、当該教育委員会で派遣校を決定する予定であり、公平性は担保できると判断する。

F.優先性の観点

  体力は、人間の活動の源であり、健康の維持のほか意欲や気力といった精神面の充実に大きくかかわっており、「生きる力」の重要な要素である。子どもたちの体力の低下は、将来的に国民全体の体力低下につながり、社会全体の活力や文化を支える力が失われることにもなりかねない。子どもたちの心身の調和的発達を図るためには、運動することに興味をもち、望ましい運動を通じて体力を養うことが必要であることから、本事業は優先すべき政策と考えられる。

G.総括評価と反映方針

  教育振興基本計画等に基づき、児童生徒に対して、より高い技術的指導を受けさせることにより、スポーツに親しみ、体力の向上を図るとともに、教員の負担を減らし、多くの児童生徒と向き合う時間を確保する観点から、中学校運動部、小学校高学年体育授業を中心とした地域のスポーツ人材の活用を一層促進するためには、本事業を拡充し、各地域における地域スポーツ人材活用上の課題解決を図る必要があることから、事業を拡充することとする。

指摘事項と対応方針

指摘事項

1.事業に対する総合所見(官房にて記載)

  評価結果は妥当。ただし、より具体的な目標を設定できないか。

指摘に対する対応方針

  平成20年度事業の実績を踏まえ、検討することとする。

お問合せ先

大臣官房政策課評価室

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