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84.ナノテクノロジーを活用した環境技術の研究開発(新規)【達成目標10-7―2】

平成21年度要求額:1,000百万円
  (平成20年度予算額:‐百万円)
  事業開始年度:平成21年度
  事業達成年度:平成30年度
  中間評価実施年度:平成26年度
  中間評価実施年度:平成25年度

主管課(課長名)

  • 研究振興局基礎基盤研究課ナノテクノロジー・材料開発推進室(高橋 雅之)

関係課(課長名)

事業の概要等

1.事業目的

  環境問題の抜本的な解決に向けて、我が国が国際的にも優位に立っている原子・分子レベルで物質を制御できるナノテクノロジーを活用した環境技術の研究により、これまで無かった機能性材料が開発されることに大きな期待が寄せられている。一方で、個別の要素技術課題を取り上げた研究課題が多く、個々の技術を実際のシステムとして組み上げていく観点が十分に取り入れられていなかった。従来の要素技術的な個別の課題を追求する研究開発の進め方から脱却するため、社会システムを抜本的に改善することを念頭に置き、基礎から応用までが一体となった研究拠点を構築して、強力に研究開発を推進する。

2.事業に至る経緯・今までの実績

  地球環境問題は、地球温暖化の問題、希少資源や水資源の確保の問題、生態系の問題等、多様な問題を包含する。特に地球温暖化問題は人類喫緊の課題であって、異常気象や気候変動という人類の持続可能な発展に対する直接的な驚異となっている。
  従来の環境問題に対する取組としては、シミュレーションによる気候変動の予測や、人工衛星による観測という技術が主流であり、環境問題を根本的に解決するための研究開発は行われてこなかった。
  このような問題意識の下、研究振興局は研究開発局と連名で、「ナノテクノロジーを活用した環境技術のあり方に関する検討会」(座長:東京大学 橋本 和仁 教授)を設置し、報告書を取りまとめた。
  ここでは、様々な社会システムのエネルギー利用効率化をナノテクノロジーを駆使して、抜本的に解決する方策が述べられ、ナノ粒子、ナノ薄膜、ナノ多孔体等のナノテクノロジーを駆使した原子・分子レベルの制御と微細加工に基づく新材料開発や、薄膜太陽電池、ナノ粒子発光体等のナノテクノロジーを活用した高機能材料を組み合わせた高効率エネルギーデバイスの開発、高効率でエネルギーを「創る」、「運ぶ」、「節約する」ための新しい社会システムの構築の重要性が指摘されている。
  例えば、世界のエネルギー供給システムからオフィスや住宅、自動車等の汎用システムに至るまで、要素技術を束ねてシステムの総体としてのエネルギー効率を向上させ、環境負荷を低減を実現させるため、技術的基盤を構築するための知的・人的・物的基盤となるための、人材の核、ハードの核、応用化の核としての機能を持つ拠点にファンドを集中させ、産業界の意見を取り入れた拠点運営と、柔軟で立体的なファンディングによる環境技術の研究開発を促進する。
  ナノテクノロジーを活用した環境技術の開発は、個別の技術を高度化して組み上げたシステムが、総体として環境問題に対して有効に働くことを目的として進めていくことが必要である。即ち、大学等の研究機関は、要素技術の追求のみに収れんせず、システムの総体としてのエネルギーや材料利用の効率化等の環境負荷の低減の限界に挑戦し、限界を突破していくことを目標として掲げることで、社会に対して新しいシステムを提案し、研究開発の方針を示していくことが求められており、このため、産学が連携し、基礎研究から応用研究までを一貫して行う研究拠点を形成し、強力な環境技術開発により環境問題を打開することを目指す。
  図1 「ナノテクノロジーを活用した環境技術のあり方に関する検討会」報告書の概要

  図1 「ナノテクノロジーを活用した環境技術のあり方に関する検討会」報告書の概要

図2 ナノテクノロジーを活用した環境技術による社会システムの例

  図2 ナノテクノロジーを活用した環境技術による社会システムの例

3.事業概要

  ナノテクノロジーを活用した環境技術による社会システムを10年で構築するためのロードマップを提示することを条件とし、大学や研究開発独立行政法人が産業界と連携して研究拠点単位で申請することを必須条件として、研究課題を公募する。
  研究拠点に求める機能としては、先端的な計測施設・装置等が共用化されていること、拠点の核となる機関が知と人材育成の機能を担うこと、出口意識の強い課題設定と産学連携の強化のため産業界のメンバーが拠点運営に参画すること、強力なリーダーシップを持つ研究者の下に人材が集中すること、等が求められる。研究拠点は、提案された社会システムの有用性や研究の達成目標等を審査の上、2件程度採択することを予定している。
  図3 産学が連携した研究拠点による研究推進体制のイメージ

  図3 産学が連携した研究拠点による研究推進体制のイメージ

4.指標と目標

指標

  各研究拠点における成果の指標として、定量的には論文数、特許出願数等、質的には論文被引用数、特許実施許諾数等を設定し、プレス発表やシンポジウムなどの成果公開の実績、企業との応用研究に発展した技術の量や質、関連研究の外部資金獲得額等を複合的に勘案して、課題提案の際の目標に対する達成率を評価する。

目標

  各課題について、応募時にロードマップの提出を求め、採択時に最終・中間・年度計画と目標を定める。中間目標の達成度を文部科学省科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会の下のナノテクノロジー・材料委員会の中間評価で判定し、またプロジェクト進捗会議を開催して年度毎の目標達成状況をPD、POおよびナノテクノロジー・材料開発推進室において評価する。
  例えば、次世代太陽電池の発電効率の抜本的な向上により、現状の一次エネルギー発電による電気料金に匹敵する安価な太陽電池や、超低消費電力のLED等を複合的に組み合わせることで、太陽光のみで自活できる住宅を作ったり、白金を使用しない燃料電池で置き換えたりすることにより、市販が可能な燃料電池車の実用化を目指す。

効果の把握手法

  文部科学省科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会の下のナノテクノロジー・材料委員会による評価の他、交付対象施設及び施設設置者に対する現地調査を実施する。
  また、評価の結果、進捗が思わしくない場合は、研究実施者の交代や契約からの除外等を行うなど、厳格な審査を実施する予定。

事業の事前評価結果

A.19年度実績評価結果との関係

  19年度実績評価書の施策目標10‐4「●今後の課題及び政策への反映方針」において、「ナノテクノロジー・材料分野発のイノベーション促進を図り、科学技術創造立国を実現するため、「第3期科学技術基本計画」、総合科学技術会議の「分野別推進戦略」、「革新的技術戦略」及び「環境エネルギー技術革新計画」等を反映しながら、引き続き各施策を着実に推進する必要がある。」との記述があるが、この中の「環境エネルギー技術革新計画」を着実に実行するためにも、従来の目的志向型の研究開発プロジェクトではなく、基礎研究から実用化までをつなげるため、大学等と企業が一体となった研究拠点を構築し、強力に研究開発を推進することが必要である。
  また、施策目標10‐7「●今後の課題及び政策への反映方針」においても、「平成21年度には、新興・融合分野の新たな発展を目指し、我が国の優れたナノテクノロジーの研究ポテンシャルを環境技術のブレイクスルーに活用するため、ナノテクノロジーを活用した環境技術開発を実施する」との記述がある。

B.必要性の観点

1.事業の必要性

  これまで環境問題を抜本的に解決する環境技術がなく、これには分子・原子レベルで物質を制御できるナノテクノロジーの活用や、要素技術に収れんせず、社会システムの構築までを見越した技術開発を、産学連携で推進することが極めて重要である。この問題意識は、「ナノテクノロジーを活用した環境技術のあり方に関する検討会 報告書」においても言及されており、従来の目的志向型のプロジェクト研究に加え、社会システムの革新を念頭においた産学連携の体制を構築することで、基礎から応用までが一体となった研究拠点により、強力に研究を推進する必要がある。

2.行政・国の関与の必要性(官民、国と地方の役割分担等)

  昨今の産業界の研究開発は、経済情勢の変化という背景もあって、従来よりは短期的な応用領域に偏っているのではないかとの指摘がある。環境問題の解決に貢献するアイディアとして、様々なものが提唱されているが、実用化と本格的な普及のためには解決されなければならない課題が多く、また、製品化されている技術についても、動作が安定しない等の不安定要因を含んでいるものも少なくない。これは即ち、経験的にモノは作れるが、それが真に最適なプロセスを経てできたものか定かでないままに、結果として製品化されている例も多い、ということを指している。
  京都議定書で掲げられた温暖化効果ガスの削減目標を達成するためには技術的に大きな飛躍が必要とされるが、従来の民間企業の取組だけでは実現は難しい。産業界が国や政府に期待していることは、企業が研究できる個別技術を追随的に研究することではなく、全く新しい観点で様々な分野に応用可能な基盤技術を蓄積し、次の世代に向けたブレークスルーの足場を固めることである。また、産業界からは、企業では手を出すことの難しい基礎基盤的な領域に政府が投資をして研究開発のレベルの底上げを図って欲しいとの意見が強く、大学等研究機関における中長期的な視点に立った基礎研究の成果に大きな期待が寄せられている。
  オールジャパンのシナリオを描き、その中で基礎研究を担う大学等の研究機関が何をやっていくべきなのか、確固たる考え方をもって進めていくことが重要であるというのは、従来から材料研究者から挙げられてきた意見であり、また、「ナノテクノロジーを活用した環境技術のあり方に関する検討会 報告書」においても、その課題に言及されており、国の関与が不可欠である。

3.関連施策との関係

1.主な関連施策

  ○ナノ環境機能触媒の開発(ナノテクノロジー・材料を中心とした融合新興分野研究開発(キーテクノロジー研究開発の推進)の一部
  研究振興局の競争的資金の一つであるキーテクノロジー研究開発の推進において、ナノスケールで構造設計・制御された革新的な触媒の研究開発を行うことで、環境調和型化学プロセス、環境浄化プロセス、有機合成創薬や水素製造などの新しい化学プロセスを創製することを目指している。
  (事業開始年度:平成18年度)

  ○21世紀気候変動予測革新プログラム
  「地球シミュレータ」の能力を最大限活用して、確度の高い温暖化予測情報を信頼度情報と併せて提供するとともに、温暖化の影響として近年特に社会関心が高い極端現象(台風、豪雨)に関する解析を行う。
  (事業開始年度:平成19年度)

2.関連施策との関係

  上記事業は触媒に関する研究について深く掘り下げた研究となっており、結果として環境問題の解決に貢献しているが、予算規模も大きくないことから、社会システム全体に変化を及ぼす研究開発とはなっていない。
  今回実施しようとしているナノテクノロジーを活用した環境技術開発においては、産学が連携して社会システムにインパクトを与える研究開発を、拠点を形成することで推進するものであり、上記の目的志向型のプロジェクト研究における触媒研究とは一線を画するものである。
  また、これまでの文部科学省の環境対策の事業としては、地球シミュレータによる気候変動予測や、人工衛星による地球環境の観測を実施してきたが、本研究開発は環境問題を正面から抜本的に解決する方法を構築するものであり、環境対策としてはより積極的な取組である。

4.関係する施政方針演説、審議会の答申等

・「環境エネルギー技術革新計画」(平成20年5月19日総合科学技術会議取りまとめ)

  記載事項(抜粋)

  1.低炭素社会実現に向けた我が国の技術戦略

  (2)中長期的対策(2030年以降)に必要な技術

   2.技術のブレークスルーを実現するための基盤技術
  新しい技術の芽を実用化するには、多くの技術的障害を乗り越える必要がある。これら障害のブレークスルーを実現するため、新しい触媒や材料(耐熱・高温材料、超電導材料、白金代替触媒等)などを開発する基礎・基盤的な技術の研究を推進する。
  これらの基盤的な研究開発については、革新的な技術開発につながる大学や公的研究機関等における原理・現象の解明の基礎研究と、排出削減という目標達成のため、我が国のみならず国際的規模の枠組みの下で関連する機関・研究組織などの連携を促し、効率的な研究・技術開発の実現を支援する。

・「今後のナノテクノロジーを活用した環境技術の研究開発の進め方」ナノテクノロジーを活用した環境技術の開発に関する検討会報告書(平成20年7月取りまとめ)

C.有効性の観点

1.目標の達成見込み

  我が国は、これまでのナノテクノロジー研究によって培われた高いポテンシャルを有しており、また、環境・エネルギー技術についても世界をリードする技術を有している。これらを融合することにより、例えば太陽光のみで自活できる住宅用電力供給システムや、省エネ自動車、高効率大規模発電プラントを構築することができると見込まれる。

2.上位目標のために必要な効果が得られるか

  ナノテクノロジーを活用した環境技術を、我が国が主導して実施することで、世界に先駆けた成果の創出が可能になるとともに、ナノテクノロジー・材料分野の研究が振興される。

D.効率性の観点

1.インプット

  本事業の予算規模は1,000百万円である。1拠点あたり約5,000百万円で、事務費として2百万円を予定している。
  本事業においては、有識者によるアドバイザリーボードを設置し、産業界のニーズや社会情勢などを迅速・的確に反映させる運営体制を取ることにより、効率的な事業推進を図ることが可能である。
  研究課題の公募にあたっては、複数の研究機関からなる拠点単位で応募することとし、各要素技術を組みあせて実現される新しい社会システム(省エネ住宅、省エネ自動車、省エネプラント等)の提案を目標とさせることで、応用を強く意識した研究推進を誘導する。

2.アウトプット

  研究拠点が上げた研究成果で、インパクトの大きなものはウェブサイトなどの公表媒体を用いて迅速に公開し、定期的に開催するシンポジウムにおいて詳細な内容を発信する。応用段階に達した研究課題は、企業などとの連携研究に推移させてさらに研究を加速させ、事業全体の効率化を図る。

3.事業スキームの効率性

  各研究分野でトップレベルの研究者を集めたドリームチームを結成し、研究者間の連携を促進するコーディネータを配置して連携関係を構築することによって、最も高いレベルで効率的に研究開発を推進することができる。中間評価を厳格に行い、課題を厳選するとともに、研究拠点を構成する研究者を柔軟に変更する等により、効率的な運営を行う。社会システムを抜本的に変える成果を求めるので、その波及効果はインプットである5億円に比較すると大きなものになると想定される。

4.代替手段との比較

  京都議定書で掲げられた温暖化効果ガスの削減目標を達成するためには技術的に大きな飛躍が必要とされるが、従来の民間企業の取組だけでは実現は難しく、国際的な戦略も必要であることから、政府によるトップダウンの政策推進が最も必要な分野である。

E.公平性の観点

  本事業は公募によって行い、専門家による審査を経て、採択先を決定する予定であり、公平性は担保できると判断する。

F.優先性の観点

  環境・エネルギー問題は、地球規模的に喫緊の課題である。我が国は、二酸化炭素の削減目標に関する約束期間に既に入っており、問題解決に一刻の猶予も許されない状況であるので、最優先で実施されることが必要である。一方、現状の技術では、環境問題の進行を若干遅らすことは出来ても、抜本的に解決する技術は未だ未確立である。これまで存在しなかった機能性材料を開発し、環境問題の根本からの解決に挑戦することで、我が国の持続可能な発展と環境との共生を目指すためにも、物質を原子・分子のレベルで操作できる科学技術の粋であるナノテクノロジーを活用していくことは環境・エネルギー問題を解決する上で不可欠である。

G.総括評価と反映方針

  環境問題の根本的な解決のため、基礎から応用までが一体となった産学連携の研究拠点を構築して、社会システムの更新を念頭においた環境技術の研究開発を強力に推進するため、21年度の概算要求に反映し、10億円の要求を行う予定。

指摘事項と対応方針

指摘事項

1.事業に対する総合所見(官房にて記載)

  評価結果は妥当。ただし、定量的な指標を設定して進める必要がある。

2.外部評価、第三者評価等を行った場合のその概要等

  本政策は、産学の有識者によって構成される検討会を計5回実施し、国内外の動向調査や技術課題の現状と見通しなどについて検討を行った。
  これまで企業等では主に応用研究を推進してきたが、その発展にも限界が見え始めたことから、基礎基盤に立ち返った研究開発の必要性が強く望まれるようになった。基礎研究に注力することは必要であるが、その基礎研究が環境問題にどのように役立つかの出口意識を強く持つための工夫が必要であり、要素技術の研究は、それらを束ねてシステム化されて初めて役に立つ事を念頭に置いた推進が必要である。

指摘に対する対応方針

  各研究拠点における成果の指標として、定量的には論文数、特許出願数等、質的には論文被引用数、特許実施許諾数等を設定し、プレス発表やシンポジウムなどの成果公開の実績、企業との応用研究に発展した技術の量や質、関連研究の外部資金獲得額等を複合的に勘案して、課題提案の際の目標に対する達成率を評価することとしており、今後、科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会ナノテクノロジー・材料委員会において、中間評価、事後評価を実施する際には、定量的な指標についても検討したい。

お問合せ先

大臣官房政策課評価室

-- 登録:平成21年以前 --