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75.脳科学研究戦略推進プログラム(拡充)【達成目標10-1-1】

平成21年度要求額:2,700百万円
  (平成20年度予算額:1,700百万円)
  事業開始年度:平成20年度
  事業達成年度:平成25年度
  中間評価実施年度:平成22年度

主管課(課長名)

  • 研究振興局ライフサイエンス課(菱山 豊)

関係課(課長名)

事業の概要等

1.事業目的

  高齢化、多様化、複雑化が進み、様々な課題に直面している現代社会において、科学的・社会的意義の高い脳科学に対する社会的な関心と期待が急速に高まっている。そのため、科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会/学術分科会学術研究推進部会 脳科学委員会(以下、「脳科学委員会」という。)における議論を踏まえ、重点的に推進すべき政策課題を設定し、その課題解決に向けて、研究開発拠点(中核となる代表機関と参画機関で構成)の整備等を実施し、社会への応用を明確に見据えた脳科学研究を戦略的に推進することにより、効率良く成果を社会に還元する「社会に貢献する脳科学」の実現を目指す。

2.事業に至る経緯・今までの実績

  科学技術・学術審議会においては、昨年10月に、渡海文部科学大臣より「長期的展望に立つ脳科学研究の基本的構想及び推進方策について」諮問が行われたことを受け、同年11月に研究計画・評価分科会及び学術分科会学術研究推進部会の合同により、脳科学委員会が設置された。
  同委員会においては、現在、その答申に向けた審議を行っているが、その一環として、平成21年度予算要求に向けて、「脳科学研究戦略推進プログラム」で取り組むべき研究課題に関する審議を進めるとともに、本年8月には、これまでの議論をまとめた「審議経過報告」を取りまとめた。
  当該審議経過報告においては、現代社会が直面する様々な課題の克服に向けた脳科学に対する社会からの要請に応えるため、「社会に貢献する脳科学の実現」を目指し、(1)脳と社会・教育(社会脳)、(2)脳と心身の健康(健康脳)、(3)脳と情報・産業(情報脳)の3つの重点的に推進すべき研究領域と、これらの脳科学研究を支える(4)基盤技術開発、及び各領域等における重点的に推進すべき研究課題が設定されている。
  そして、その中でも、明確に社会への応用を見据えた対応が急務とされる重点研究課題については、政策課題対応型研究開発プログラムによる戦略的な研究の推進が求められている。
  こうした審議経過報告の提言に基づき、本プログラムにおいては、様々な社会問題解決に対する期待に応えるためには脳科学のどの部分が未成熟で、どの側面を特に強化していくべきかを整理した上で、明確に社会への応用を見据えた研究として、平成20年度に整備した2つの研究開発拠点に加え、平成21年度から新たに3つの政策課題の解決に向けた研究開発拠点を整備し、「社会に貢献する脳科学」の実現を目指す。

3.事業概要

  社会への応用を明確に見据えた脳科学研究を戦略的に推進し、効率良く成果を社会に還元するために、脳科学委員会における議論を踏まえ、重点的に推進すべき政策課題を設定し、その課題解決に向けて、平成20年度に整備した2つの研究開発拠点に加え、平成21年度から新たに3つの政策課題の解決に向けた研究開発拠点の整備等を実施する。

(1)脳と社会・教育(社会脳):豊かな社会の実現に貢献する脳科学

  脳の活動は、個体としての認識、思考、行動を司るに留まらず、異なる個体との間にコミュニケーション等による相互作用を生み出し、社会集団を形成する上でも決定的な役割を果たしている。このようなコミュニケーション等を含む社会的行動やそれらの習得過程に関する研究については、従来は人文・社会科学的なアプローチが用いられてきたが、近年大きな社会問題となっている社会性障害など、その範ちゅうでは捉えられない側面が急速に拡大していることから、人文・社会科学と脳科学が融合したより広い視点からの新しいアプローチが求められている。こうした社会的背景のもと、脳科学研究が豊かな社会の実現に貢献するために、社会への応用を見据えた研究を戦略的に推進する。

  • 社会的行動を支える脳基盤の計測・支援技術の開発(新規拡充)

(2)脳と心身の健康(健康脳):健やかな人生を支える脳科学

  急速な高齢化社会の進行に伴い、QOL(生活の質)を損ない、介護を要する神経疾患が大きな社会問題となりつつある。また、現代人の心身の荒廃は著しく、疲労・ストレス・睡眠不足等が事故や疾患の誘因となり、膨大な経済的損失をもたらしている。こうした社会的背景のもと、現代人が健やかな人生を過ごす上で、脳科学研究が果たすべき役割は、過去に比して著しく高まっていることから、社会への応用を見据えた研究を戦略的に推進する。

  • 健康と生命を支える自律脳機能の研究(新規拡充)

(3)脳と情報・産業(情報脳):安全・安心・快適に役立つ脳科学

  脳は、複雑な情報処理を行うといった特異的な機能を担っている。特に、脳の情報処理と動作原理を解明するとともに、脳にとって本来的な情報処理の在り方を探ることは、人間自身を知るという知の追究に留まらず、脳の構造と機能に合った安全・安心・快適な情報社会をつくり、豊かな生活基盤の構築として大きく貢献すると考えられる。このような観点に基づき、脳科学研究が安全・安心・快適な情報社会の形成に資するためには、社会への応用を見据えた研究を戦略的に推進する。

  • ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)の開発(既存)

(4)基盤技術開発

  基盤技術開発は、脳科学研究の共通的な基盤として革新をもたらすのみならず、自然科学全体の共通財産として、他の研究分野にもイノベーションをもたらし得るものである。そのため、他の自然科学諸領域と緊密に連携しつつ、基盤技術開発を継続的かつ強力に推進する。

  • 光などを用いた脳機能モジュールの操作・抽出技術の開発(新規拡充)
  • 独創性の高いモデル動物の開発(既存)

スキーム図

4.指標と目標

指標

  脳の生物学的指標(ソーシャル・ブレイン・マーカー)の開発件数等

目標

  文部科学省が実施する他の関連施策と連携し、社会への応用を明確に見据えた脳科学研究を戦略的に推進することにより、先端的医療の実現に資する知見の蓄積、技術の開発、またそれに必要な環境の整備を図る。

事業の事前評価結果

A.19年度実績評価結果との関係

  20年度においては、(3)脳と情報・産業(情報脳)及び(4)基盤技術開発に向けた研究開発拠点を整備するとともに、個別課題を支援し、効率良く成果を社会に還元するために脳科学研究を戦略的に推進しているところであり、21年度においては、新たな拠点の整備を実施する予定。

B.必要性の観点

1.事業の必要性

  脳は、人間が人間らしく生きるための根幹をなす「心」の基盤であり、その研究は、人文・社会科学と融合した新しい人間の科学を創出し、これまでの科学の枠組みを変える可能性を秘めている科学的意義の高い取組である。
  また、現在の脳科学研究は、脳の発達障害・老化の制御や、精神神経疾患の病因解明、予防・治療法の開発を可能にするとともに、脳機能や身体機能の回復・補完を可能とする技術開発等をもたらすことから、医療・福祉の向上に最も貢献できる研究分野の一つであるとともに、記憶・学習のメカニズムや脳の感受性期(臨界期)の解明等により、教育等における活用も期待されるなど社会的意義も大変高い取組である。
  このため、高齢化、多様化、複雑化が進み、様々な課題に直面している現代社会において、脳科学に対する社会的な関心と期待が急速に高まっており、このような状況を踏まえ、「社会に貢献する脳科学」の実現を目指し、社会への応用を明確に見据えた脳科学研究を戦略的に推進する必要がある。

2.行政・国の関与の必要性(官民、国と地方の役割分担等)

  脳科学に対する高い社会的な期待や関心に応えるため、「社会に貢献する脳科学」の実現を目指して、社会への応用を明確に見据えた脳科学研究の戦略的な推進が必要であるが、脳科学は、学際性・融合性の高い学問であり、包括的・全体的・融合的なアプローチが必要なことから、国が積極的に関与して全体をコーディネートする必要がある。また、脳科学は未だ萌芽的な段階に留まっている研究領域も多くあることから、自然科学としての基盤がぜい弱なまま、拙速な社会への応用を行うことのないよう、社会への応用を明確に見据えた研究に取り組んでいくため、国が責任を持って主導的に関与する必要がある。

3.関連施策との関係

1.主な関連施策

  ○脳科学総合研究事業費(独立行政法人理化学研究所脳科学総合研究センター)
  脳科学総合研究センターは、我が国の脳神経科学研究の中核的研究機関として、我が国の脳科学を総合的に牽引する役割を果たすとともに、現代の社会的、国民的課題である脳における諸問題を解明することを目的として、計画的に研究を進めるために平成9年10月に設置された。
  平成20年度から5年間の目標として、「分子から回路を経て心に至る脳の仕組みを解読する」とともに、「脳の健やかな発達を促す養育・教育原理を示す」、「脳の発達異常と病の予防・治療原理を作り出す」、「脳の仕組みを工学応用するための設計図を書く」といったイノベーション創出のための研究に取り組むことを目標として、「心と知性への挑戦コア」、「回路機能メカニズムコア」、「発達異常・疾患メカニズムコア」、「先端基盤技術コア」の4つのコアを編成している。

2.関連施策との関係(役割分担・連携状況)

  脳科学総合研究センターは、その規模や柔軟かつ戦略的な人事制度の特徴をいかし、異なる分野をバックグラウンドに持った研究者を機動的に集め、主要な研究手法をカバーして「集約型・戦略的研究」を進めていることから、脳科学委員会における議論を踏まえつつ、本プログラムと連携を図りながら研究を推進することにより、効率良く成果を社会に還元する「社会に貢献する脳科学」の実現を目指す。

4.関係する施政方針演説、審議会の答申等

  脳科学研究については、以下の文書等においてその推進の必要性が示されている。

  • 長期的展望に立つ脳科学研究の基本的構想及び推進方策について(審議経過報告)(平成20年8月 脳科学委員会)
  • 経済財政改革の基本方針2008(平成20年6月 閣議決定)
  • 革新的技術戦略(平成20年5月 総合科学技術会議決定)
  • 社会総がかりで教育再生を(最終報告)(平成20年1月 教育再生会議決定)
  • 自殺総合対策大綱(平成19年6月 閣議決定)
  • 長期戦略指針「イノベーション25」(平成19年6月 閣議決定)
  • 新健康フロンティア戦略(平成19年4月 新健康フロンティア戦略賢人会議決定)
  • 第3期科学技術基本計画 分野別推進戦略(平成18年3月 総合科学技術会議決定)

C.有効性の観点

1.目標の達成見込み

  本事業は、脳科学研究に対する社会からの大きな期待や関心に応えるため、効率良く成果を社会に還元する「社会に貢献する脳科学」の実現を目標とし、明確に社会への応用を明確に見据えて、戦略的な推進を行っていることから、研究開発拠点のポテンシャルや事業の手法等を勘案すると、設定した目標を達成できる見込みである。

2.上位目標のために必要な効果が得られるか

  本事業においては、脳科学委員会における議論を踏まえ、重点的に推進すべき政策課題ごとに研究開発拠点の整備等を実施し、社会への応用を明確に見据えた脳科学研究を戦略的に推進することにより、上位目標である「国民への成果還元を抜本的に強化する」ことが促進される。

D.効率性の観点

1.インプット

  平成21年度要求額:2,700百万円(平成20年度予算額:1,700百万円)

2.アウトプット

  「社会に貢献する脳科学」の実現を目指し、脳科学研究を戦略的に推進するため、優れた実績や他機関を支援する能力を有する大学等を対象に、重点研究課題ごとに中核となる代表機関と参画機関で構成される研究開発拠点の整備等を実施する。

3.事業スキームの効率性

  本事業については、脳科学委員会における議論を踏まえ、他の関連施策との役割分担を明確にしつつ、社会への応用を明確に見据えた戦略的な研究の推進体制を構築することから、事業スキームの効率性は担保される。

4.代替手段との比較

  脳科学研究においては、社会への応用を明確に見据えた政策課題対応型研究開発は他に存在しない。

E.公平性の観点

  本事業は競争的資金制度に基づき実施し、全国の大学、研究機関等を対象として、公募により研究開発拠点を選定する予定であるため、公平性は担保できると判断する。

F.優先性の観点

  文部科学省においては、少子高齢化を迎える我が国の持続的発展に向けて、科学的・社会的意義が非常に高い脳科学研究を戦略的に推進し、成果を社会に還元することが重要であると考え、平成19年10月に、科学技術・学術審議会に対して、渡海文部科学大臣より「長期的展望に立つ脳科学研究の基本的構想及び推進方策について」諮問を行った。
  現在、脳科学委員会において、答申に向けた審議を行っているところであるが、本事業は、同委員会における議論を踏まえて重点的に推進すべき政策課題を設定しており、また、高齢化、多様化、複雑化が進み、様々な課題に直面している我が国において、医療・福祉の向上や社会経済の発展に貢献するなど、社会への応用を明確に見据えた政策課題対応型研究開発として、他の事業に比べて優先度は極めて高い。

G.総括評価と反映方針

  平成21年度概算要求に反映。

指摘事項と対応方針

指摘事項

1.事業に対する総合所見(官房にて記載)

  評価結果は妥当。ただし、定量的な指標を設定して進める必要がある。また、関連施策と連携し、効果的・効率的に研究開発を推進する必要がある。

2.外部評価、第三者評価等を行った場合のその概要等

  脳科学委員会において事前評価を実施し、事業内容については概ね妥当であると判断された。

指摘に対する対応方針

  1.については「指標と目標」及び「関連施策との関係」において対応済み。また、指標については、本事業の性質も十分考慮した上で、定量的な指標を検討していく予定。

お問合せ先

大臣官房政策課評価室

-- 登録:平成21年以前 --