68.サービス科学・工学研究の推進(新規)【達成目標7-4-5】

平成21年度要求額:504百万円
  (平成20年度予算額:‐百万円)
  事業開始年度:平成21年度
  事業達成年度:平成25年度
  中間評価実施年度:平成23年度

主管課(課長名)

  • 科学技術・学術政策局計画官(柿田 恭良)

関係課(課長名)

  • 科学技術・学術政策局調査調整課(近藤 秀樹)

事業の概要等

1.事業目的

  経済において大きな比重を占めるサービスの分野(例えば、医療・福祉、金融、運輸・物流等)を対象に、その高度化等を目的として、数学やIT等複数分野の知の連携とともに産学の協働による基礎的段階からの研究を公募により実施する。

2.事業に至る経緯・今までの実績

  サービス産業は日本経済の7割近くを占め、我が国にとって非常に重要であるとともに、今後も一層の市場拡大が見込まれる産業であるが、サービス産業の生産性の伸びが海外と比べ相対的に低いことが指摘されており、経済財政諮問会議等においても振興が求められている。
  我が国のサービスにおいては、これまで経験の蓄積や勘に頼ってサービスを向上させる手法が一般的であった。このためサービスの品質管理やその向上に抜本的な改善を図ることが難しく、国際競争力の点で後れをとっている。
  一方、我が国においてこれまでも伝統的に高い品質のサービスを実施しているところもあり、国際競争の中では、こうした品質の高いサービスを永続的に生み出し、かつ生産性を向上させる方法を、個人の能力や偶然に頼らず構築することが求められる。
  これまで、文部科学省では、サービスに関して高いレベルの専門性を持った人材を育成することを目指し、経済学などの社会科学、工学などの自然科学等の融合による新たな知識の体系化を通じた、大学院レベルの教育プログラムの開発を行う「サービス・イノベーション人材育成推進プログラム」を平成19年度より実施しているが、さらにサービス科学・工学の体系化を図りつつ、現場への実装を促進させるため、サービス科学・工学研究の推進が求められている。

3.事業概要

  数学やIT等のサービスに資する科学及びその応用分野で実績をもつ大学等研究機関(大学、大学共同利用機関、国立試験研究機関及び独立行政法人)が中心となって、その成果を実現する意欲のある企業と研究開発の当初から協力し、サービス科学・工学研究を推進するとともに、実社会においてインパクトのあるサービスを開発することを目指した研究開発を行う。
  平成21年度は、大学等研究機関から20程度の課題を公募し、1つの課題について年間2千5百万円程度、最長5年間の委託を行う。

スキーム図

4.指標と目標

指標

  本事業により開発されたサービスの最適化・高度化を実現する方法論が企業、公共サービス機関(以下、企業等)により活用された件数

参考指標

  成果報告会等に参加した企業等の数、本事業に関連して報告された論文数

目標

  本事業により開発された方法論が企業等により活用された件数として、10件以上を目指す。

効果の把握手法

  企業等のサービスに係る売上高の伸びやサービスの生産性の向上等を通じ、開発された方法論の活用状況を検証する。

事業の事前評価結果

A.19年度実績評価結果との関係

  特になし

B.必要性の観点

1.事業の必要性

  サービスは、経済活動において大きな比重を占めるなど、国際競争力の観点から一層重要となる分野であるが、その最適化・高度化等は経験や勘に頼るのが一般的で、抜本的な対策を講じることが困難である。このため、これまでの経験的手法のみならず、サービスを体系化し、高度化へ結びつける科学的・工学的手法が必要である。

2.行政・国の関与の必要性(官民、国と地方の役割分担等)

  国際的な市場では、科学的・工学的手法を取り入れてサービスの生産性や利便性の向上を図り、成功したケースが見られ、ベンチャー企業が世界的な企業に成長した例もある。こうした中、米国を始め、ドイツ、フィンランド、韓国といった国々においてもサービスにおける研究開発を国として推進する動きがある。
  一方、我が国ではサービスを提供する第三次産業においては研究開発部門を持たない中小企業等が多く、こうした企業では科学的・工学的手法を用いたサービスの開発や効率化の進展は期待できないので、サービス産業の生産性の伸びが他国に比べますます相対的に低くなってしまう恐れがある。
  このため、我が国においても可及的速やかに基盤となるサービス科学・工学を確立・促進し、他国に先駆け国際的な市場での優位性を確保するために、国が研究開発を推進することが求められる。
  また、「研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律」において、サービス科学・工学研究に係る国の関与を規定しており、国が積極的に関与する必要がある。

3.関連施策との関係

1.主な関連施策

  ○サービス・イノベーション人材育成推進プログラム(文部科学省)
  ビジネス知識、IT知識、人間系知識等の分野融合的な知識を兼ね備え、サービスに関して高いレベルの知識と専門性を有するとともに、サービスにおいて生産性の向上やイノベーション創出に寄与しうる資質をもった人材を育成するための教育プログラムの開発を委託する。(事業開始年度:19年度)

  ○サービス研究センター基盤整備事業(経済産業省)
  産業技術総合研究所において「サービス工学研究センター」を設立し、産学連携を通じて科学的・工学的手法を用いた生産性向上の方法論を開発する。(事業開始年度:20年度)

2.関連施策との関係(役割分担・連携状況)

  本施策は、数学・IT等の知の連携により、社会への実装を見据えた基礎的段階からのサービス科学・工学研究を推進することを目的としている。上記1の各関連施策については、以下の観点で本施策と役割が異なる。

  • サービス・イノベーション人材育成推進プログラムは、サービスに係る高度な人材を育成するための教育プログラムの開発を目的としたものである。本施策の「研究開発」に対して、当該プログラムは「人材育成」で目的・対象が異なっている。
  • サービス研究センター基盤整備事業は、サービス工学研究センターにおいて、サービス産業の生産性向上に資する研究開発を行うものである。本施策がサービス科学・工学の基礎的段階からの研究開発を担い、そうした成果を産業界で活用する方法論の構築を当該事業が担うことで、その役割分担及び連携が為される。

4.関係する施政方針演説、審議会の答申等

「研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律」

  記載事項(抜粋)

  第47条  社会科学又は経営管理方法への自然科学の応用に関する研究開発の推進の在り方について、調査研究を行い、その結果を研究開発システム及び国の資金により行われる研究開発等の推進の在り方に反映させるものとする。

「経済財政改革の基本方針2008 ‐開かれた国、全員参加の成長、環境との共生‐」(平成20年6月27日閣議決定)

  記載事項(抜粋)

  1. サービス産業・中小企業の生産性向上
「長期戦略方針「イノベーション25」について」(平成19年6月1日閣議決定)

  記載事項(抜粋)

  1. サービス・イノベーションを促す規制の見直しを含めた環境整備
  2. 生活者の視点に立脚したサービス分野の生産性向上に向けた取組の強化

C.有効性の観点

1.目標の達成見込み

  本事業は、サービスについて、数学やIT等複数分野の知の融合と産学の協働により、成果の実社会への実装を見据えた基礎的段階からの研究を行うことを目的として研究公募を行うものであり、大学等研究機関(大学、大学共同利用機関、国立試験研究機関及び独立行政法人、以下同じ)が中心となって、その成果を実現する意欲のある企業等と研究開発の当初から協力し、実社会に適用可能なサービスの最適化・高度化を実現する方法論を確立することを目指している。
  このためには、対象とする分野において広く普及することが重要であることから、本事業により開発された方法論を協力企業等により利用、あるいは応用研究の基礎として活用された数について、10件以上を目標としている。
  本事業の実施に当たっては、サービスを実社会に実装する企業等と一体となって研究を推進するのみならず、その成果が特定の企業等の利益ではなく我が国の産業や官公庁のサービスの向上に全体として資するよう、その知的財産の在り方や研究成果の公表の仕方に留意しつつ実施することとする。さらに、成果の活用が期待される機関へのコンサルティング等を通じた浸透を図ることにより、達成年度である平成25年度には、目標である10件以上における成果の活用を達成することができると見込まれる。

2.上位目標のために必要な効果が得られるか

  達成目標 7‐4‐5 「「異分野の融合・連携を伴うような新たな研究開発課題について、それに相応しい効果的・効率的な推進方策の構築を促進し、優れた研究成果の創出・活用を推進する。」

  本事業では、「サービス」の各分野(医療・福祉、金融、運輸・物流、観光、災害対応)について、数学やIT等複数分野の知の連携と産学の協同により研究開発を実施し、その成果が特定の企業等の利益ではなく我が国の産業や官公庁のサービスの向上に全体として資するよう取組むとともに、知的財産の在り方や研究成果の公表の仕方に留意しつつ実施することとしていることから、必要な効果が得られると判断。

D.効率性の観点

1.インプット

  本事業の予算規模は504百万円である。

  (内訳)

  • サービス科学・工学研究委託費 500,000千円(25百万円かける20課題)
  • 非常勤職員手当 1,050千円
  • 諸謝金 676千円
  • 委員等旅費 1,808千円
  • 職員旅費 449千円
  • 庁費 44千円

2.アウトプット

  本事業は、平成21年度に20課題の採択を予定している。各課題とも最長5年間とし、平成25年度までに実社会での10件以上のサービスの活用を目指す。

3.事業スキームの効率性

  本事業は、産学協働によってサービスの社会への実装を見据えた研究を行うものであり、その事業のスキームとして提案公募型ファンドを立ち上げ、1機関あたり年間25百万円の委託費により研究開発を行うこととしている。研究開発部門を持たない中小企業が多い第三次産業では、産学の協働によらなければ科学的・工学的手法を用いたサービスの最適化・高度化は実現しにくく、この事業スキームは効果的と判断できる。

4.代替手段との比較

  本事業は国の委託事業により行うが、民間等の自立的活動に任せた場合には、我が国のサービス業は研究開発部門を持たない中小企業等が多いことから、科学的・工学的手法を用いたサービスの開発や効率化の進展は期待できない。そこで、国が先鞭をつけ実施することにより、研究機関、民間等の関心を高め、相乗的にサービス科学・工学研究が推進されることが期待される。
  また、基盤となるサービス科学・工学を確立するためには、個々のビジネスモデルの形成で充足する民間等に対し、自由発想型研究を推進する大学等機関が連携する基礎段階からの研究開発が有効であり、こうした研究の推進は、企業の研究開発を促進するための税制改正等によっては実現できないものである。

E.公平性の観点

  本事業は大学等研究機関に対して公募し、専門家による審査を経て、実施機関を決定する予定であり、公平性は担保できると判断する。

F.優先性の観点

  米国を始め、ドイツ、フィンランド、韓国といった国々においてもサービスにおける研究開発を国として推進する動きがあり、我が国においても可及的速やかにサービスの研究開発を推進し、各国の先鞭をつけることが求められる。

G.総括評価と反映方針

  平成21年度概算要求に反映。
  平成21年度機構定員については、サービス科学・工学研究についての企画・立案、関係機関等との連絡調整、公募・採択及び評価等を担当する新領域推進係長を新規要求する。

指摘事項と対応方針

指摘事項

1.事業に対する総合所見(官房にて記載)

  評価結果は妥当。ただし、産学の協働が十分に機能するよう、適切な研究マネジメント体制を構築する必要がある。また、定量的な指標を設定するとともに、関連施策とも緊密に連携して進める必要がある。

指摘に対する対応方針

  本事業では、文部科学省に研究総括を配し、各種の支援やサービスの体系化に向けた全体管理を行うこととしており、さらに産学の協働が十分に機能するよう配慮する。
  関連施策を推進する関係部局とは連絡をとりつつ推進しており、今後も連携して取り組む。また、サービス科学・工学研究の進め方については局内の検討会等で定量的な指標の設定を含め検討を行う。

お問合せ先

大臣官房政策課評価室

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