67.都市エリア産学官連携促進事業(拡充)【達成目標7-3-2】

平成21年度要求額:5,500百万円
  (平成20年度予算額:4,600百万円)
  事業開始年度:平成14年度
 事業達成年度:平成22年度

主管課(課長名)

  • 科学技術・学術政策局 科学技術・学術戦略官付(地域科学技術担当)(柳 孝)

関係課(課長名)

事業の概要等

1.事業目的

  地域の個性発揮を重視し、大学等の「知恵」を活用して新技術シーズを生み出し、新規事業の創出、研究開発型の地域産業の育成等を目指して、産学官の共同研究等を促進し、我が国全体の科学技術の多様化を図る。

2.事業に至る経緯・今までの実績

  第3期科学技術基本計画において、地域における科学技術振興は、地域イノベーション・システムの構築や活力ある地域づくりに貢献し、ひいては、我が国全体の科学技術の高度化・多様化やイノベーション・システムの競争力を強化するものであり、国として積極的に推進し、世界レベルのクラスター形成支援とともに、小規模でも地域の特色を活かした強みを持つクラスターを各地に育成することとされている。
  このような地域の特色を活かしたクラスター形成に対する支援として、平成14年度から「都市エリア産学官連携促進事業」を開始しており、これまでに69地域で事業を実施している。これまで事業を実施した各地域において、大学等の知恵を活用した新規事業の創出、製品の高機能化・高付加価値化等に繋がる成果が創出されている。なお、将来の展開に繋がる論文も多数提出されている。これらの成功事例を通じて、各地域における産学官の交流・ネットワーク形成が進んでおり、科学技術を活用した地域活性化の取組が根付きつつある。

成果実績

  • 事業化数:690件
  • 特許出願数:885件
  • 論文数:2,459件
  • 参加機関数:1,346機関
  • 参加研究者数:3,246人

3.事業概要

  都道府県等が、地域に存在する大学等の「知恵」を活用し、企業ニーズを踏まえた産学官共同研究を進め、地域イノベーション創出していくための事業計画を策定し、都道府県等が指定する中核機関が事業全体をマネジメントする。
  具体的な事業内容は以下の通り。

  • 大学等において、企業ニーズを踏まえた産学官共同研究を実施
  • 科学技術コーディネータや弁理士等のアドバイザーを配置
  • 企業ニーズと研究シーズをマッチングさせるための交流会を開催

  本事業は、「一般型」と一般型終了地域のうち、特に優れた成果を上げ、かつ、今後の発展が見込まれる地域において、更なる産学官連携活動の展開を可能とする「発展型」の2つのメニューを用意している。イノベーションを創出するクラスターの形成を実現するためには、継続的な取組が必要であることから、発展型については、地域の取組に応じて柔軟に対応するため、期間を3~5年間とする。なお、地域の自立性を高めるため、地域の資金負担が必要なマッチングファンド方式を採用している。また、一般型、発展型に提案があった地域のうち、採択には至らないものの、今後の展開が期待される地域において、調査研究事業を実施する。

申請者

  • 都道府県又は政令指定都市(共同提案も可)

採択地域数

  • 平成21新規採択
    • 一般型:5地域
    • 発展型:5地域

実施期間

  • 1地域当り
    • 一般型:3年間
    • 発展型:3~5年間(5年間の場合は3年目で中間評価)

事業費

  • 1地域当り
    • 一般型:年当り1億円
    • 発展型:年当り2億円
    (産学官共同研究費、研究会の開催など研究交流事業、コーディネータ人件費等)

事業スキーム

事業スキーム

4.指標と目標

  これまでの実績も踏まえ、都市エリア産学官連携促進事業実施地域のうち、平成19年度に終了した地域の事後評価において優れていると評価される地域割合を6割以上にするとともに、これまでに実施した事後評価の累積で、優れていると評価された地域割合を6割以上にする。事後評価にあたっては、クラスター施策や産学官連携に関する専門家等からなる有識者により、参加機関・研究者数、実用化・企業化数等の推移と共に、事業計画の妥当性、技術評価、小規模でも地域の特色を活かしたクラスター形成のための取組み、地域への波及効果、今後の発展可能性等の評価項目に分けて、総合的に評価する。

事業の事前評価結果

A.19年度実績評価結果との関係

  平成19年度は、平成18年度で事業が終了した9地域について事後評価を実施し、そのうち1地域については総合評価S、8地域については、総合評価Aの評価を受けている。また、これまでに実施した事後評価と合わせて、都市エリア産学官連携促進事業の実施37地域に対して、31地域が総合評価A以上の評価を受けており、高い成果をあげてきたことから、平成21年度においても引続き実施する。

B.必要性の観点

1.事業の必要性

  国際競争の激化や、人口減少・少子高齢化の急速な進展等、我が国の経済状況を取り巻く環境は厳しさを増しており、また、地域経済活動に目を向けても、生産拠点の海外流出や公共工事の削減等により、地域経済の地盤沈下が一層進んでいる状況にある。
  国際競争力・生産性向上の原動力となる科学技術の高度化・多様化や、科学技術駆動型の地域経済活性化の実現のためには、地域が有するポテンシャルを活用し、顔の見えるネットワークにおいて産学官の共同研究を進めること必要である。
  我が国には、特色ある技術を有する地域があり、その技術を核として小規模でも強みのあるクラスター形成を行うことにより、我が国全体の科学技術の多様化を図り、イノベーションの連鎖的創出に資することから、本事業を実施する必要がある。
  また、「経済財政改革の基本方針2008」、「科学技術による地域活性化戦略」等を踏まえ、産学官連携による地域科学技術拠点形成支援に資するものとして、本事業を実施する必要がある。

2.行政・国の関与の必要性(官民、国と地方の役割分担等)

  地域の活性化は国の最重要課題の一つであり、日本の活力は地域の活力の上に成り立っている。また、科学技術を活用した地域活性化は、同時に我が国の科学技術の高度化・多様化に繋がり、国際競争力の強化や生産性向上の原動力となり得る。「経済財政改革の基本方針2008」(平成20年6月27日閣議決定)や「科学技術による地域活性化戦略」(平成20年5月19日総合科学技術会議決定)等にも科学技術拠点群の形成支援について明記されており、本事業を国が行う必要性は極めて高い。
  併せて、地域の自立化を促進する観点から、地域にも一定の負担を求めることとしている。

3.関連施策との関係

1.主な関係施策

  ○知的クラスター創成事業(文部科学省)
  地方自治体の主体性を重視し、知的創造の拠点たる大学、公的研究機関等を核とし、関連研究機関、研究開発型企業等による技術革新のための集積による世界レベルのクラスター創成を目指す。

  ○地域イノベーション創出総合支援事業(文部科学省)
  全国に展開している科学技術振興機構(JST)プラザ、サテライトを拠点として、自治体、経済産業局、JSTの基礎研究や技術移転事業等との連携を図りつつ、シーズの発掘から実用化までの研究開発を切れ目なく行うことにより、地域におけるイノベーション創出を総合的に支援する。

  ○地域イノベーション協創プログラム(経済産業省)
  地域において新産業・新事業の創出を図るため、大学等の技術シーズや知見を活用した産学官の強固な共同研究体制の下で、実用化に向けた高度な研究開発を実施。

  ○産業クラスター計画(経済産業省)
  中堅中小企業、ベンチャー企業等が大学、研究機関、大企業、金融機関、商社等との人的なネットワークを構築することによるイノベーションの創出。

2.関連施策との関係

  当該事業は、知的クラスター創成事業のように、世界中から人・物・金を惹きつける世界レベルのクラスター形成を目指すものではなく、地域の地場産業や中堅・中小企業等の集積を活かした小規模でも地域の特色を活かした強みを持つクラスター形成を目指すものである。
  科学技術振興機構(JST)で実施している、地域イノベーション創出総合支援事業は、地域におけるクラスター形成を目的とするのではなく、地域の特色ある個別の研究テーマや企業ニーズを踏まえた研究開発支援プログラムであり、都市エリア産学官連携促進事業等の成果で有望な個別研究テーマについて、事業化支援を行うなど、連携をとりつつ、地域における科学技術振興に寄与するものである。
  また、本事業の実施にあたっては、各地域において地方公共団体の独自に用意している関連施策や、経済産業省等の関係府省事業の活用により、開発フェーズあるいはアプリケーションの異なる関連技術開発を並行して実施し、事業化の加速を図ることとしている。

4.関係する施政方針演説、審議会の答申等

「経済財政改革の基本方針2008」(平成20年6月27日閣議決定)第2章 2

  記載事項(抜粋)

  第2章 成長力の強化 2.地域活性化

  具体的手段 (5)科学技術による地域活性化
  「科学技術による地域活性化戦略」等を踏まえ、産学官連携による多様な地域科学技術拠点群及びグローバル科学技術拠点の形成支援等を行う。

「平成21年度の科学技術に関する予算等の全体の姿と資源配分の方針」(平成20年6月19日総合科学技術会議)

  記載事項(抜粋)

  2.科学技術が大きな役割を果たす喫緊の最重要政策課題への重点化
  地域活性化を図るため、多様性や国際競争力のある地域科学技術拠点群の形成、地域イノベーション人材力を強化

「科学技術による地域活性化戦略」(平成20年5月19日総合科学技術会議決定)

  記載事項(抜粋)

  地域科学技術施策の目指すビジョン‐地域拠点のエコシステムを目指して‐

  1.多様性強化戦略

  (2)地域の多様性強化

  1.地域の多様性を踏まえ、地域が主体的に策定する構想に柔軟に対応

  4.事業実施期間の柔軟化や府省間の連携により、地域科学技術施策間の継続性を高める

  2.グローバル拠点強化戦略

「地域科学技術の振興に向けて当面取り組むべき事項等について」(平成20年6月11日地域科学技術施策推進委員会提言)

  記載事項(抜粋)

  【当面取り組むべき事項等について】

  (1)長期的な視野と戦略に基づいた、地域クラスター形成等に向けた地域における持続的な取組の促進
  クラスター形成の進捗状況等に応じて、実施期間・予算規模等の柔軟な設定を可能とすることは、各地域が主体的に作成する構想を実現する上で有効であると思われる。

長期戦略指針「イノベーション25」(平成19年6月1日閣議決定)

  記載事項(抜粋)

  第5章1.(1) 1)8活力ある地域社会を可能にする取組の推進

  • 自治体が主体的に取り組む産業集積・クラスター形成等への支援
    • 地域における公的研究機関をはじめ、自治体、大学、企業等によるクラスター形成の支援、当該地域を越えた広域連携やネットワークの強化を推進する。
「地域再生総合プログラム」(平成19年2月28日地域再生本部決定)

  記載事項(抜粋)

  3.3‐5.地域の活性化プログラム (2)具体的な施策の推進

  8.地域イノベーションの推進

  地域の知的創造の拠点たる大学、公的研究機関等と関連研究機関、研究開発型企業等との産学官連携に基づくイノベーションの推進。

  • 地域クラスターの形成【文部科学省、経済産業省】
「経済成長戦略大綱」(平成18年7月6日財政・経済一体改革会議)

  記載事項(抜粋)

  第3 1.(6)地域の技術開発と産学官連携
  知的クラスターと産業クラスターの更なる連携を図りつつ、政府一体となって「地域科学技術クラスター」の形成を目指す。

「第3期科学技術基本計画」(平成18年3月28日閣議決定)

  記載事項(抜粋)

  第3章 2.(4)地域イノベーション・システムの構築と活力ある地域づくり

  1.地域クラスターの形成
  国は、地域のイニシアティブの元で行われているクラスター形成活動への競争的な支援を引き続き行う。その際、クラスター形成の進捗状況に応じ、各地域の国際優位性を評価し、世界レベルのクラスターとして発展可能な地域に重点的な支援を行うとともに、小規模でも地域の特色を活かした強みを持つクラスターを各地に育成する。

C.有効性の観点

1.目標の達成見込み

  これまで事業を実施してきた各地域の事後評価においては、クラスター施策や産学官連携に関する専門家等からなる有識者により、事業計画の妥当性、技術評価、クラスター形成のための取組み、地域への波及効果、今後の発展可能性等の評価項目に分けて、評価を行っており、その結果優れていると評価される地域の割合は6割以上であることから、今後も同様の水準であれば、十分達成可能である。

2.上位目標のために必要な効果が得られるか

  都道府県又は政令指定都市により、地域構想に基づく事業提案を行うこと及びマッチングファンド方式により事業を実施することで、地域の自立性を高め、クラスター形成が進められ、上位目標である「施策目標7‐3 地域における科学技術の振興」に資する効果が得られる。

D.効率性の観点

1.インプット

  1地域当り

  (国費)

  • 一般型:年当り1億円程度×3年間
  • 発展型:年当り2億円程度×3年間

  (地域資金)

  マッチングファンドとして下記の通り地域資金が必要

  • 一般型:国費の1/2以上
  • 発展型:国費と同額以上

2.アウトプット

  大学等の知恵を活用した新規事業の創出、製品の高機能化・高付加価値化等に繋がる成果の創出が見込まれる。また、それらの成功事例を通じて、各地域における産学官の交流・ネットワーク形成が進み、科学技術を活用した地域活性化の取組が地域に定着する。

3.事業スキームの効率性

  都道府県等地方自治体が提案主体となり、事業の実施は地域が指定する中核機関に担わせることで、地域構想に基づいた事業計画の下で、最適な体制を構築し、効率的な事業の実施が期待される。

4.代替手段との比較

  大学や企業の自主性に任せた産学官連携では、個別の研究開発に留まり、地域におけるイノベーションを連鎖的に創出するまでには至らないことが多い。また、地域が単独で行うよりも、国が競争的に支援することにより、優れた構想に対して重点的な投資をすることが可能となるとともに、競争的な環境の下で、地域の構想自体がより洗練されたものになる。我が国には、独自のポテンシャルを有する特色ある地域が多数あり、地域のイニシアティブの下で、地域内の大学や産業界との連携を進めるという当該事業は高い成果をあげていることから、有効な施策である。

E.公平性の観点

  地域(都道府県及び政令指定都市)からの提案に基づき、外部有識者による審査会を実施することで公平性を確保している。また、国費の他、地域の資金を求めるマッチングファンド方式とすることとし、地域側にも負担を求めている。

F.優先性の観点

  「経済財政改革の基本方針2008」(平成20年6月27日閣議決定)や、「科学技術による地域活性化戦略」(平成20年5月19日総合科学技術会議決定)においても、クラスター等拠点形成による地域科学技術振興の重要性が指摘されており、他の事業よりも優先して実施すべき事業である。また、本事業は知的クラスター創成事業や他省庁の関連施策と緊密に連携することで、我が国全体の科学技術の多様性を保ちつつ、高度化を図ることが可能となるため、これらの地域イノベーション事業を総合的に推進する必要がある。

G.総括評価と反映方針

  平成21年度概算要求に反映予定。

指摘事項と対応方針

指摘事項

1.事業に対する総合所見(官房にて記載)

  評価結果は妥当。ただし、より具体的かつ定量的な目標及び指標を定める必要がある。また、設定した各種指標を用い、中核機関が進めるクラスター形成が本事業の目標に向かって順調に進捗しているか、適切に評価・改善指導する必要がある。

2.外部評価、第三者評価等を行った場合のその概要等

  都市エリア産学官連携促進事業は、3年間の事業終了後に外部有識者による事後評価を実施している。評価にあたっては、事業計画の妥当性、技術評価、クラスター形成のための取組、地域への波及効果、今後の発展可能性等の評価項目に分けて、総合的に行っている。平成19年度は、平成18年度で事業が終了した9地域に対して事後評価を実施し、4段階評価(S、A、B、C)のうち1地域が総合評価S、残り8地域が総合評価Aの評価を受けている。

3.政策評価に関する有識者委員からの指摘・意見等

  「都市エリア産学官連携促進事業(拡充)」と「知的クラスター創成事業(グローバル拠点育成型)(新規)」や大学関係事業などに見られるように、国際化や地域などの観点から細分化されている事業があるが、トータルとしてどのように考えているのか、全体像を説明すべき。

指摘に対する対応方針

  外部評価の結果等を踏まえ、適切な評価指標等を検討する予定。

お問合せ先

大臣官房政策課評価室

-- 登録:平成21年以前 --