65.地域産業の担い手育成プロジェクト(拡充)【達成目標7-1-2】

平成21年度要求額:504百万円
  (平成20年度予算額:390百万円)
  事業開始年度:平成19年度
  事業達成年度:平成23年度

主管課(課長名)

  • 初等中等教育局参事官(産業教育・情報教育担当)(斎藤 尚樹)

関係課(課長名)

事業の概要等

1.事業目的

  専門高校と地域産業界が連携(協働)して、ものづくりや食・くらしを支え、地域産業を担う専門的職業人を育成するための先導的な取組を支援し、専門高校の活性化を図る。また、地域産業界のニーズを踏まえた、地域産業を担う専門的職業人育成プログラムを開発し、全国へ普及させるとともに、学習指導要領の見直し等に繋げることを目的とする。

2.事業に至る経緯・今までの実績

  近年、産業社会の技術革新が急速に進む中で、専門高校生に対する高度な実践力習得のニーズが高まっている。加えて、少子高齢化等に伴う労働力人口の減少が進展し、若年者の職業意識の希薄化が深刻化する中で、技術の継承や若手の専門的職業人の育成が喫緊の課題となっている。
  このため、専門高校と地域産業界が連携(協働)して、ものづくりや食・くらしを支え、地域産業を担う専門的職業人を育成するための先導的な取組を支援し、専門高校の活性化を図ることが必要不可欠であることから本事業が開始された。
  平成19年度は経済産業省との連携で工業分野の専門的職業人の育成の取組を実施し、平成20年度はこれに加え、国土交通省との連携で建築・建設分野の専門的職業人の育成の取組、農林水産省との連携で農業分野の専門的職業人の育成の取組、水産庁との連携で漁業・水産分野の専門的職業人の育成の取組を実施している。
  現在、工業分野の採択件数は29地域(19年度採択分23地域と20年度採択分6地域)と比較的充実しているものの、農業分野は7地域、水産分野は5地域、建設分野は2地域と未だ少なく、産業界のニーズも高いことから当該分野における支援の更なる充実が必要である。

平成19年度指定地域

  23地域

平成20年度指定地域

  43地域(新規20地域、前年度からの継続23地域)

3.事業概要

  各分野の産業を所管する省庁と連携し、専門高校と地域産業界が連携(協働)して地域産業の担い手を育成するための取組を支援する。具体的には、連携方策等について地域ぐるみで検討する人材育成連携推進委員会(仮称)を設けた上で、生徒の企業実習や企業技術者による学校での実践的指導、教員の高度技術習得、専門高校と企業の共同研究等を盛り込んだ、地域産業の担い手の育成プログラムの検証・開発と先導的かつ効果的であると認められた教育プログラムの普及を目指す事業である。
  平成21年度は、現在まで採択した地域における取組を着実に支援するとともに、産業界のニーズが高い、国土交通省との連携による建築・建設分野の専門的職業人の育成の取組、農林水産省との連携による農業分野の専門的職業人の育成の取組、および水産庁との連携による漁業・水産分野の専門的職業人の育成の取組に関して支援対象地域を拡充する。また、平成19年度指定地域における事業が平成21年度中に終了することを踏まえ、当該支援対象地域で効果的であると認められた先導的かつ効果的な教育プログラムを成功事例としてとりまとめ、全国の教育・産業界関係者への公表・周知等を通じて本プログラムの全国展開を図る。

スキーム図

4.指標と目標

指標

  モデル事業において生徒の実践力の習得や勤労観・職業観の醸成が図られたと回答した学校の割合
  モデル事業における1学校あたりの連携協力機関数の対前年度比

目標

  モデル事業において生徒の実践力の習得や勤労観・職業観の醸成が図られたと回答した学校の割合を80パーセント以上とする(平成19年度実績は76.1パーセント)。
  モデル事業における1学校あたりの連携協力機関数の対前年度比を115パーセント以上とする(平成19年度開始事業のため2年目以降に実績を算出予定)。

効果の把握手法

  本事業の効果は、指定された地域において、生徒の実践力の習得や勤労観・職業観の醸成が図られたかや、連携協力機関数等について調査を実施し、生徒の意識の変化や企業の協力姿勢の変化等について検証する。

事業の事前評価結果

A.19年度実績評価結果との関係

  達成目標7‐1‐2「今後の課題及び政策への反映方針」において、「技術の継承や若手の専門的職業人の育成が喫緊の課題となっていることから、専門高校と地域産業界が連携し、産業界のニーズも踏まえつつ、生徒の現場実習、技術者等による学校での実践的指導、教員の現場研修等を通した取組を一層強化していくことが必要」と記述されており、本事業の拡充は不可欠である。

B.必要性の観点

1.事業の必要性

  近年、急速な産業構造の変化、科学技術の進歩等の情勢の変化に対応した実践力の向上や職業人としての就業観や規範意識の育成等が求められており、専門高校の教育の質の向上が不可欠となっている。このためには、実社会や職業の関わりの中で職業人としての実践力や就業観、規範意識の向上を図ることが効果的で、専門高校と産業界との連携強化の実践が必要と考える。
  専門高校の進路意識が多様化している中、学校内での座学や実習が多く、現在のところ産業界との連携は十分とは言えない状況であり、産業界との連携のあり方については、先進的な実践事例を積み重ね、広く普及を図る必要がある。産業界との連携のあり方は多様であると考えられ、連携を図る上で研究すべき課題は多く、本事業の実践が不可欠である。

2.行政・国の関与の必要性(官民、国と地方の役割分担等)

  本事業は、急速な社会の変化に対応し、我が国全体の専門高校の教育の質を向上させ、適正な水準に引き上げる観点から、先導的かつ効果的な教育システム(内容や方法)を検証・開発し、全国への普及を狙いとしていること、また、この実践を通じて学習指導要領等(教育内容・手法等を規定)を見直し、産業教育の適切な実践のための教育用施設・設備の内容の見直しに繋げることを目的としていることから、国による実施が不可欠である。
  なお、教育委員会や学校においては、国の定める学習指導要領等に沿って教育を遂行するほか、教育に必要な施設・設備は国が示す内容を踏まえて、標準的な施設・設備を整備し、教育を行っている。

3.関連施策との関係

1.主な関連施策 施策目標7‐1

  ○目指せスペシャリスト事業(初等中等教育局参事官(産業教育・情報教育担当))
  近年の産業構造の変化、技術革新やニート・フリーター問題に見られる若者の職業意識の希薄化、高校生の進学意識の高まり等、専門高校を取り巻く社会状況が大きく変化している。このような中で、将来のスペシャリストの育成の観点から、専門分野の基礎的・基本的な知識・技術、実践力を身につけるための職業教育の充実が求められおり、社会や地域のニーズに応じたスペシャリストの育成に向けた専門高校の意欲的な取組を支援し、専門高校の活性化を図る事業を行う。

2.関連施策との関係

  本事業は、地域産業を担う専門的職業人を育成するための“専門高校と地域産業界が連携した教育への取組を支援”することとしているが、「目指せスペシャリスト事業」は、地域の産業界、大学、研究機関等との連携、先端的な技術等を取り入れた教育など“先導的かつ独創的な教育への取組を支援”することとしている。両事業を「車の両輪」として総合的に推進することにより、専門高校における社会や地域のニーズに応じた優秀な専門的職業人の育成を図る。

4.関係する施政方針演説、審議会の答申等

「教育振興基本計画」(平成20年7月1日閣議決定)

  記載事項(抜粋)

  第3章 今後5年間に総合的かつ計画的に取り組むべき施策

  (3)基本的方向ごとの施策

  基本的方向1 社会全体で教育の向上に取り組む

  3.人材育成に関する社会の要請に応える

  【施策】

  ◇地域の人材や民間の力も活用したキャリア教育・職業教育,ものづくりなど実践的教育の推進
  ・・・専門高校等における地域産業や経済界と連携したものづくり教育をはじめ,産業,職業への理解を図る。

  ◇専門高校等における職業教育の推進
  ・・・特に,産学連携による専門的職業人を養成するための実践的教育を関係府省と連携して促す。

  基本的方向2 個性を尊重しつつ能力を伸ばし,個人として,社会の一員として生きる基盤を育てる

  2.規範意識を養い、豊かな心と健やかな体をつくる

  【施策】

  ◇勤労観・職業観や知識・技能をはぐくむ教育(キャリア教育・職業教育)の推進
  ・・・専門高校等が地域社会等と連携して行う特色ある職業教育の取組を促す・・・専門高校等における地域産業や経済界と連携したものづくり教育をはじめ,産業,職業への理解を図る。

  (4)特に重点的に取組むべき事項

  ◎キャリア教育・職業教育の推進と生涯を通じた学び直しの機会の提供の推進

  ○キャリア教育や専門高校における職業教育の推進
  ・・・すべての専門高校において,地域社会との連携強化等を重視するなど,職業教育の活性化を促す。

「経済成長戦略大綱」(平成20年6月27日経済財政諮問会議報告)

  記載事項(抜粋)

  第5.生産性向上型の5つの制度インフラ

  1.ヒト:「人材立国」の実現

  (2)産学連携による人材育成の強化

  2.産業界との連携による実践的教育・訓練の導入

  専門職大学院を始めとする大学、高等専門学校、工業高校などの専門高校、公共職業能力開発施設等において、産学連携により、高度な職業人材を養成するための実践的教育・訓練(企業実習、長期インターンシップ等)を促進するとともに、地域の産業戦略を踏まえた、地域、地元産業・誘致産業、教育機関、職業訓練校等が連携した実践的人材育成など、地域の中小企業の人材確保・定着にも資する地域密着型の職業訓練等を実施する。

「社会総がかりで教育再生を‐第三次報告‐」(平成19年12月25日教育再生会議決定)

  記載事項(抜粋)

  各論

  1 学力の向上に徹底的に取組む‐未来を切り拓く学力の育成‐

  (3)英語教育を抜本的に改革する、今の時代に求められる教育を充実させる

  ○環境教育、「ものづくり」教育などの充実を図る

  ・専門高校の魅力を高める学校作りなど、職業教育を積極的に支援する。
  ・・・専門高校などにおける地域産業や経済界と連携した「ものづくり」教育をはじめ、産業、職業への理解を図る。その際、あらゆることを学校で教えるのではなく、学校外での実践も重視する。

「経済財政改革の基本方針2007」(平成19年6月19日閣議決定)

  記載事項(抜粋)

  第4章 持続的で安心できる社会の実現

  2 教育再生

  【具体的な手段】

  (2)心と体の調和の取れた人間形成

  2.体験活動の推進
  ・・・専門高校や専修学校等が地域社会と連携して行う特色のある職業教育の取組の積極的支援。

「長期戦略指針「イノベーション25」について」(平成19年6月1日閣議決定)

  記載事項(抜粋)

  第5章 「イノベーション立国」に向けた政策ロードマップ

  1.社会システムの改革戦略

  (1)早急に取組むべき課題

  3)大学改革

  3.地域の大学等を活用した新たなチャレンジにつながる生涯学習システムの構築
  ・・・地域の大学、高等専門学校や専門高校と産業界の連携により、学校の有する設備や教員を活用し、企業のベテラン技術者等の協力の下、地域や中小企業のニーズに応じた講義と実習を実施することにより、中小企業の若手技術者等地域産業を担う人材の育成・活用支援。

「食料・農業・農村基本計画」(平成17年3月25日閣議決定)

  記載事項(抜粋)

  第3 食料、農業及び農村に関し総合的かつ計画的に講ずべき施策

  2.農業の持続的な発展に関する施策

  (2)人材の育成・確保等

  ア.新たな人材の育成・確保
  ・・・将来の担い手となり得る農業者を育成するため、農業高校や農業大学校等における農業技術や経営管理に関する高度な知識・技術に関する研修教育の充実を図る。

「水産基本計画」(平成19年3月20日閣議決定)

  記載事項(抜粋)

  第3 水産に関し総合的かつ計画的に講ずべき施策

  2 国際競争力のある経営体の育成・確保と活力ある漁業就業構造の確立

  (5)活力ある漁業就業構造の確立

  エ 水産における教育の充実
  次代の水産業を担う幅広い見識と技術を身に付けた人材を育成するため、水産に関する高校・大学等を通じた実践的な専門教育の充実を図るとともに、専門知識を生かした雇用や就業の機会の確保を図る。また、国民の水産に対する理解と関心を深めるため、学校教育や社会教育における水産に関する学習機会や漁業体験の機会の充実を図る。

C.有効性の観点

1.目標の達成見込み

  本事業は専門高校と地域産業界が連携(協働)して、ものづくりや食・くらしを支え、地域産業を担う専門的職業人を育成することを目的としている。
  この目的達成の指標として、本事業を通じて生徒の実践力の向上や勤労観・職業観の醸成が図られたと回答した学校の割合が80パーセント以上となることを目指すとともに、1学校あたりの大学や企業などの連携機関数が前年度比115パーセント以上となることを目指している。
  平成19年度において、生徒の実践力の向上や勤労観・職業観の醸成が図られたと回答した学校の割合は76.1パーセント(62校中46校)となっている。今後、各地域で実施している生徒の実践力の向上や勤労観・職業観の醸成を図る効果的な教育プログラム事例の吸い上げ、フィードバックを行うことで80パーセント以上を達成することができると見込まれる。また、1学校あたりの受入企業数は24.4社(総受入企業数1,930社)であり、平成20年はさらに幅広い機関と長期実習などで連携を実施するよう啓発することにより、115パーセント以上を達成することができると見込まれる。

2.上位目標のために必要な効果が得られるか

  本事業を実施することにより、産業界ニーズを踏まえた人材育成プログラムを通して、実践的な職業に関する知識や技術・技能の育成及び勤労観・職業観の育成が一層図られるようになり、ひいては達成目標7‐1‐2にある「専門高校において、地域社会との連携強化等により、産業社会のニーズに対応した人材養成を行う」ことに結びつくものと考えられる。

D.効率性の観点

1.インプット

  平成21年度予算要求額(504百万円)

  (内訳)

  • 諸謝金 1,825千円
  • 職員旅費 1,525千円
  • 委員等旅費 6,647千円
  • 庁費(消耗品、会場借料等) 4,790千円
  • 科学技術試験研究委託費 489,400千円

2.アウトプット

  本事業により、地域において専門高校と地域産業界の連携体制が構築・強化されるとともに、地域産業界のニーズを踏まえた人材育成プログラムの開発に効果があると判断される。本事業は、平成19年度に23地域、平成20年度に20地域を指定し、各地域において原則3年間実施することとしている。

3.事業スキームの効率性

  本事業は、先導的な教育システム(内容や方法)を開発してその全国への普及を図ることを狙いとしていること、また、長期的には、この実践を通じて学習指導要領等(教育内容・手法等を規定)を見直すとともに、産業教育の適切な実践のための教育用施設・設備の内容の見直し等に繋げられ、さらに、将来的に地域産業の担い手たり得る実践力のある優れた人材の効果的・効率的な育成を図ることが可能となることから、本事業の予算規模(504百万円)に対して投資効率は高いと言える。

4.代替手段との比較

  本事業を地方自治体の事業としての実施することとした場合、先導的な教育システム(内容や方法)を開発し、全国への普及を行うこと、また、この実践を通じて学習指導要領等(教育内容・手法等を規定)の見直しに繋げることができないため、国による実施が必要不可欠である。

E.公平性の観点

  本事業は、全国の都道府県・政令指定都市の教育委員会に対して、国公私立を問わず専門高校と地域産業界によるコンソーシアムを形成させた上で、地域産業界のニーズを踏まえた人材育成プログラムの提案を募り、外部有識者による審査を経て実施地域を決定する予定であり、公平性を担保していると判断する。

F.優先性の観点

  地域の人材や民間の力も活用したキャリア教育・職業教育,ものづくりなど実践的教育の推進は、「教育振興基本計画」において、今後5年間に総合的かつ計画的に取り組むべき施策として位置付けられているとともに、「経済財政改革の基本方針2007」、「社会総がかりで教育再生を‐第三次報告‐」(教育再生会議決定)等において事業の推進が求められている。産業社会における技術の継承や後継者育成は喫緊の課題であり、速やかな対応が必要不可欠であると言える。

G.総括評価と反映方針

  現在までに採択した地域においては、当初の目標通り着実に生徒の実践力の向上や勤労観・職業観の醸成が図られている。このことを踏まえ、今後は本事業の狙いとする政策効果が確実に達成されるよう、現在までに採択した地域における取組を着実に支援するとともに、産業界のニーズが高い、国土交通省との連携による建築・建設分野の専門的職業人の育成の取組、農林水産省との連携による農業分野の専門的職業人の育成の取組、及び水産庁との連携による漁業・水産分野の専門的職業人の育成の取組に関して支援対象地域を拡充する。また、平成19年度指定地域においては事業が平成21年度中に終了することを踏まえ、当該支援対象地域で効果的であると認められた先導的な教育プログラムを成功事例としてとりまとめ、全国の教育・産業界関係者への公表・周知等を通じて本プログラムの全国展開を目指す。

指摘事項と対応方針

指摘事項

1.事業に対する総合所見(官房にて記載)

  評価結果は妥当。ただし、目標を数値化するよう検討をする。

指摘に対する対応方針

  指摘を踏まえ、対応済み。

お問合せ先

大臣官房政策課評価室

-- 登録:平成21年以前 --