57.組織的な大学院教育改革推進プログラム(拡充)【達成目標4-1-2】

平成21年度要求額:9,024百万円
  (平成20年度予算額:5,070百万円)
  事業開始年度:平成19年度
 事業達成年度:平成23年度

主管課(課長名)

  • 高等教育局大学振興課(義本 博司)

関係課(課長名)

事業の概要等

1.事業目的

  研究者のみならず、産業界をはじめ社会の様々な分野で幅広く活躍する高度な人材を育成する大学院博士課程、修士課程を対象として、各大学院が設定した目標の達成に向けたコースワークの充実等の優れた組織的・体系的な教育取組に対して、厳格な評価を行いつつ重点的な支援を行うことにより、大学院教育の実質化を推進することを目的とする。

2.事業に至る経緯・今までの実績

  高度に科学技術が発展するとともに、知の専門化、細分化が進み、国際競争が激化する現代社会においては、新たな学問分野や急速な技術革新に対応できる深い専門知識と幅広い応用力をもつ人材の育成が緊迫の課題であり、その人材育成に中核的な役割を果たす大学院への期待が増大しているところである。
  このような状況を踏まえ、「新時代の大学院教育」(平成17年9月中央教育審議会答申)等において、大学院教育の実質化(教育の課程の組織的展開の強化)を図るため、制度改正を行うとともに、大学院における優れた教育の取組を支援することが提言された。制度改正として各大学院の人材養成目的の明確化、FD実施の義務化、成績評価基準の明示等について大学院設置基準を改正(平成19年4月施行)し、これらを踏まえ、優れた教育の取組を支援する事業として平成19年度より本事業を実施している。
  平成19年度には61大学126件(申請:154大学355件)を採択し、優れた組織的・体系的な教育取組に対して重点支援を行った。平成20年度は161大学から273件の申請があり、60拠点程度を採択する予定としている。

3.事業概要

  国公私立大学における大学院研究科専攻(博士課程、修士課程)の人材養成目的及びこれまで実施してきた教育取組を踏まえた教育プログラムを対象とし、全ての学問分野(「人社系」・「理工農系」・「医療系」)を範囲として公募を実施する。学内における組織的な検討体制の下、申請者を学長として申請を行い、日本学術振興会を中心に運営される専門家、有識者からなる審査・評価委員会(大学院教育改革支援プログラム委員会)において、公平・公正な第三者評価を実施する。
  平成21年度においては、20年度までに採択された拠点に対し継続して支援を行うとともに、新規公募については、各大学における人材養成目的の明確化、組織的な研修・研究(FD)の実施など教員組織体制の見直し、円滑な博士の学位授与の促進などの取組を踏まえ、各大学院が設定した目標の達成に向けた組織的・体系的な教育の展開を図る優れた取組の実施を厳格な評価を行いつつ促進する。

スキーム図

4.指標と目標

指標

  • 例えば、他機関(企業等)における教育の実施状況、就職状況、学会発表・論文発表数など特色ある優れた取組の展開状況

目標

  • 国公私を通じた競争的環境の下、各大学院において自主性・自律性に基づく特色ある優れた取組が展開され、人材育成機能の強化が図られることを目標とする。

効果の把握方法

  • 選定を行った取組を対象に、取組の財政支援期間終了後に状況調査を行い、各取組の進捗状況や得られた成果を把握する。あわせて各種調査の結果等も勘案して、本事業の効果を把握する。

事業の事前評価結果

A.19年度実績評価結果との関係

  達成目標4‐1‐1「今後の課題及び政策への反映方針」において、本事業を含む国公私立大学を通じて教育改革を支援する各プログラムについては、各大学等からの申請状況、アンケート結果、フォーラム実施への社会的反響等から判断し、各大学等における積極的な教育改革の取組に役立っていると判断できることから、大学教育改革の進捗状況を踏まえつつ、一層の社会的ニーズを踏まえるなど必要な見直しを行い、引き続き、継続的に事業を実施することが重要であり、関連予算の充実に努めることとされている。

B.必要性の観点

1.事業の必要性

  資源に乏しい我が国を、人材立国として発展させ、国際競争力を向上させるためには、科学技術の急速な発展による知の専門化・細分化に対応できる深い専門性、新たな学問分野や急速な技術革新に対応できる幅広い応用力を持つ人材を養成することが重要であり、大学院の人材養成機能への期待が増大しているところである。一方、現状では、大学院の量的整備や制度の柔軟化は行われてきたものの、産業界をはじめとする社会の幅広い分野で活躍する人材の養成機能が十分でない状況にある。
  そのような状況を踏まえ、「新時代の大学院教育」(平成17年9月中央教育審議会答申)等において、大学院教育の実質化(教育の課程の組織的展開の強化)を図ることが提言され、これまで各大学院の人材養成目的の明確化、FD実施の義務化等についての大学院設置基準の改正などの取組が行われてきたが、さらに大学院教育の改革を推進するために、産業界をはじめ社会の様々な分野で幅広く活躍する高度な人材を育成する各大学院が設定した目標の達成に向けた優れた組織的・体系的な教育取組に対して厳格な評価を行いつつ重点的な支援をすることが重要であり、本事業の拡充が不可欠である。

2.行政・国の関与の必要性(官民、国と地方の役割分担等)

  本事業は、各大学などにおける大学改革の取組が一層推進されるよう、国公私立大学を通じた競争的環境の下で、特色・個性ある優れた取組を選定するものであり、具体的には、産業界をはじめ社会の様々な分野で幅広く活躍する高度な人材を育成する大学院博士課程、修士課程を対象として、各大学院が設定した目標の達成に向けた優れた組織的・体系的な教育取組に対して厳格な評価を行いつつ重点的な支援することを目的としていることから、国として積極的に事業を推進することが必要不可欠である。また、本事業を地方公共団体や民間団体の事業として実施した場合、支援対象が全国の国公私立大学であることや、大学院教育の実質化を図る政策目的の下で、公平・公正な第三者評価を行い優れた取組を支援する本事業の内容を考慮すると、効率的に目的を達成することはできないと考えられる。

3.関連施策との関係

1.1主な関連施策 達成目標4‐1‐2

  ○グローバルCOEプログラム
  我が国の大学院の教育研究機能を一層充実・強化し、世界最高水準の研究基盤の下で世界をリードする創造的な人材育成を図るため、「21世紀COEプログラム」の成果(大学改革・教育・研究)を踏まえ、これまでの基本的な考え方を継承し、国際的に卓越した教育研究拠点の形成を重点的に支援することによって、国際競争力のある大学づくりを推進する。(平成21年度要求額34,488百万円、事業開始年度:平成19年度、事業達成年度:平成23年度)

2.関連施策との関係(役割分担・連携状況)

  本事業と同様に大学院を対象とした事業として、「グローバルCOEプログラム」を実施している。本事業が大学院(博士課程・修士課程)における優れた組織的・体系的な教育の取組を支援することに対して、国際的に卓越した教育研究拠点に対する重点的支援を行うという面で役割は異なるものの、大学院の教育研究の質の向上という共通の目標達成に寄与している。

2.1主な関連施策 達成目標4‐1‐1

  ○国際化拠点整備事業(新規)
  国公私立大学を対象に、当該大学の機能に応じた質の高い教育の提供と、海外の学生が我が国に留学しやすい環境を提供する構想から、30大学を選定して支援を行い、もって、我が国高等教育の国際競争力の強化、留学生等に魅力的な水準の教育等の提供及び留学生と切磋琢磨する環境の中で国際的に活躍できる高度な人材の養成を図るものである。(平成21年度要求額15,000百万円、事業開始年度:平成21年度、事業達成年度:平成25年度)

2.関連施策との関係(役割分担・連携状況)

  新たに公募を実施する「国際化拠点整備事業」は、本事業と同様に大学を対象としているが、大学全体として留学生の受入や学生派遣など国際化拠点形成のためのインフラを整備するものであり、大学院(博士課程・修士課程)における優れた組織的・体系的な教育の取組を支援する本事業とは役割が異なっている。

4.関係する施政方針演説、審議会の答申等

「新時代の大学院教育 ‐国際的に魅力ある大学院教育の構築に向けて‐」(平成17年9月5日中央教育審議会答申)

  記載事項(抜粋)

  第2章 新時代の大学院教育の展開方策

  1 大学院教育の実質化(教育の課程の組織的展開の強化)のための方策

  (1)課程制大学院制度の趣旨に沿った教育の課程と研究指導の確立

  1. コースワークの充実・強化
  • グローバル化や科学技術の進展など社会の激しい変化に対応し得る人材の養成を行うためには、課程制大学院制度の趣旨に沿って大学院教育の組織的展開の強化を図ることが大切である。
「第3期科学技術基本計画」(平成18年3月28日閣議決定)

  記載事項(抜粋)

  第3章 科学技術システム改革

  1.人材の育成、確保、活躍の促進

  (2)大学における人材育成機能の強化

  1. 大学院教育の抜本的強化
  • 国は、魅力ある大学院教育の組織的取組への競争的・重点的な支援制度を本格的に展開するとともに、優れた取組の事例を広く社会に情報提供し大学院教育の改善に供する。
「教育再生会議‐第二次報告‐」(平成19年6月1日教育再生会議)

  記載事項(抜粋)

  3.地域、世界に貢献する大学・大学院の再生

  提言3 世界トップレベルの教育水準を目指す大学院教育の改革

  ■大学院教育制度の改革

  • 大学院は、学部の延長ではない体系的・組織的な教育を徹底し実施する。博士前期(修士)課程はコースワークの確実な修了と個別研究指導で充実させる。
「教育振興基本計画」(平成20年7月1日閣議決定)

  記載事項(抜粋)

  第3章 今後5年間に総合的かつ計画的に取り組むべき施策

  (3)基本的方向ごとの施策

  基本的方向3 教養と専門性を備えた知性豊かな人間を養成し、社会の発展を支える

  1. 世界最高水準の卓越した教育研究拠点を形成するとともに、大学院教育を抜本的に強化する
    • 大学院教育の組織的展開の強化
  • 産業界をはじめ社会の様々な分野で幅広く活躍する高度な人材を養成するため、コースワークの充実等、大学院における組織的・体系的な優れた教育の取組を促す。

C.有効性の観点

1.目標の達成見込み

  平成19年度より実施している本事業は、産業界をはじめ社会の様々な分野で幅広く活躍する高度な人材を育成する大学院博士課程、修士課程を対象として、各大学院が設定した目標の達成に向けた優れた組織的・体系的な教育取組を厳格な評価を行いつつ重点的に支援するものであるが、各大学などにおける大学改革の取組が一層推進されるよう、国公私立大学を通じた競争的環境の下で、特色・個性ある優れた取組を選定するものである。特に人社系の取組に配慮することとしている。
  本事業の実施及び情報提供を通じて、採択拠点はもとより、それ以外の大学においても、大学教育改革への取組が一層積極的に行われるなど、国公私立大学を通じた大学間の競争的環境の醸成等が期待されるところであり、ひいては大学院の人材育成機能の強化という成果に結びつくものと考えられる。
  また、本事業の前身として、現代社会の新たなニーズに応えられる創造性豊かな若手研究者の養成機能の強化を図るため、大学院における意欲的かつ創造的な教育の取組を支援することを目的として、平成17年度及び平成18年度に採択を行った「『魅力ある大学院教育』イニシアティブ」事業について、2年間の事業期間終了後となる平成19年度に事後評価を実施した。その結果、各大学において、5年一貫カリキュラム、研究科共通コア科目の設定等によるコースワークの強化や成績評価基準の明確化・厳格化など大学院教育の実質化の推進が図られるとともに、平成16年度から平成18年度の大学院学生の動向等について、他機関への学生の派遣の増加(インターンシップ約60パーセント増(322人から515人)、公的研究機関約60パーセント増(320人から500人)、他大学約80パーセント増(355人から645人))、企業の研究開発部門への就職者数増加(約20パーセント増(254人から294人))など教育上の成果が確認されており、本事業においても同様の成果が期待される。

2.上位目標のために必要な効果が得られるか

  1大学院の各課程の目的に沿った、魅力ある教育プログラムの先導的な展開を促し、大学院教育の実質化を図る、2社会の様々な分野で幅広く活躍する高度な人材養成を図る、3プログラム申請に向けて学内で積極的な議論をすることが教育研究活動に組織的に取り組む契機となり、このことを通じて大学の活性化及び意識改革を図るといった本事業における効果により、達成目標4‐1‐2にある大学院教育の実質化を推進するという成果に結びつくものと考えられる。

D.効率性の観点

1.インプット

  本事業の予算規模は9,024百万円である。

  (内訳)

  • 研究拠点形成費等補助金 9,024,069千円

2.アウトプット

  本事業では、平成19年度に61大学126件(申請:154大学355件)を採択し、平成20年度は161大学から273件の申請があり、60件程度を採択する予定である。平成21年度以降も新規公募・採択する計画である。

3.事業スキームの効率性

  本事業の予算規模(9,024百万円)に対して、アウトプットとして、大学院における優れた組織的・体系的な教育取組に対して重点的に支援することを通し、大学院教育の実質化が推進されるとともに、採択された取組を広く社会に情報提供することで、今後の大学院教育の改善に活用されることも見込まれ、本事業のインプットとアウトプットの関係は効果的と判断する。

4.代替手段との比較

  本事業は、各大学などにおける大学改革の取組が一層推進されるよう、国公私立大学を通じた競争的環境の下で、特色・個性ある優れた取組を選定するものであり、具体的には、産業界をはじめ社会の様々な分野で幅広く活躍する高度な人材を育成する大学院博士課程、修士課程を対象として、各大学院が設定した目標の達成に向けた優れた組織的・体系的な教育取組に対して厳格な評価を行いつつ重点的な支援することを目的としていることから、国として積極的に事業を推進することが必要不可欠である。また、本事業を地方公共団体や民間団体の事業として実施した場合、支援対象が全国の国公私立大学であることや、大学院教育の実質化を図る政策目的の下で、公平・公正な第三者評価を行い優れた取組を支援する本事業の内容を考慮すると、効率的に目的を達成することはできないと考えられる。

E.公平性の観点

  本事業は、文部科学省外に置かれた専門家・有識者等からなる「大学院教育改革支援プログラム委員会」(石弘光委員長・日本学術振興会を中心に運営)により、公平・公正な第三者評価を実施している。

F.優先性の観点

  グローバル化が一層進展し、国際競争が激化する現代の社会において、国際競争力のある大学づくりを推進し、世界に伍する教育研究を展開することは喫緊の課題である。このような社会においては、高度な人材の養成の中核を担う機関として、国際的に魅力ある大学院づくりを推進することは、国家社会を左右する重要な課題となっており、本事業は優先すべき政策と考えられる。

G.総括評価と反映方針

  21年度は引き続き財政支援を行っていくとともに、本事業の取組状況について指標設定も含め調査、検証を実施する。

指摘事項と対応方針

指摘事項

1.事業に対する総合所見(官房にて記載)

  評価結果は妥当。ただし、より具体的な指標を設定できないか。

2.外部評価、第三者評価等を行った場合のその概要等

  本事業は総合科学技術会議による「平成19年度概算要求における科学技術関係施策の優先順位付けについて」において、積極的に実施すべき事業として最高位の「S」の評価を得ている。

指摘に対する対応方針

  今後、例示した指標も含め具体的な指標の設定について検討する。

お問合せ先

大臣官房政策課評価室

-- 登録:平成21年以前 --