41.発達障害等に対応した教材等の在り方に関する調査研究(新規)【達成目標2-11-1】

平成21年度要求額:159百万円
  (平成20年度予算額:‐百万円)
  事業開始年度:平成21年度
  事業達成年度:平成22年度

主管課(課長名)

  • 初等中等教育局特別支援教育課(永山 裕二)

関係課(課長名)

事業の概要等

1.事業目的

  発達障害等のある児童生徒の障害特性に応じた教科用検定図書等の在り方及びそれらを利用した効果的な指導方法や教育的効果等についての実証研究を行い、発達障害等のある児童生徒の困難の改善を図る。

2.事業に至る経緯・今までの実績

  発達障害等のある児童生徒については、個々によって様々な認知特性・行動特性(「書く」「読む」「計算する」等の学習に必要な能力の習得における困難さ、発達段階に不釣り合いな注意力の欠陥、多動性・衝動性など)を抱えており、それが原因で国語や算数等の教科学習に遅れが生じたり、日常生活に大きな困難を抱えている。
  また、弱視の児童生徒は、視力や視野、色覚、光覚の状態は様々であり、文字等も見え方が一人一人異なっていることから、ルーペ等の視覚補助具を活用しても、教科学習等を行うことが困難となっている。
  本年6月に、「障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律」が公布され、障害の有無にかかわらず、児童及び生徒が十分な教育を受けることができる学校教育を推進することとされ、第7条には、「国は、発達障害その他の障害のある児童及び生徒であって検定教科用図書等において一般的に使用される文字、図形等を認識することが困難なものが使用する教科用特定図書等の整備及び充実を図るため、必要な調査研究等を推進するものとする。」と規定されたことを踏まえ、当事業を実施するものである。

3.事業概要

  発達障害等のある児童生徒については、個々によって様々な認知特性・行動特性(「書く」「読む」「計算する」等の学習に必要な能力の習得における困難さ、発達段階に不釣り合いな注意力の欠陥、多動性・衝動性など)を抱えており、それが原因で国語や算数等の教科学習に遅れが生じたり、日常生活に大きな困難を抱えている。
  そこで、小・中・高等学校及び特別支援学校において、発達障害等のある児童生徒の障害特性、発達段階、教科の特性などに応じた教科用特定図書等の在り方、及びそれらを利用した効果的な指導方法や教育的効果、通常学級において使用する際の配慮等について実証的な研究を実施し、教科学習等における困難の改善を図るものである。
  当事業では、21、22年度に教材等の在り方に関する基礎研究及び実証研究を実施し、その調査研究結果を広く普及させることにより、全国の学校における障害特性等に応じた教科学習等の改善を図る。

スキーム図

4.指標と目標

指標

  当事業の協力校における発達障害等のある児童生徒の教科学習等における困難さの改善。

目標

  21年度までにすべての委託団体において教科用特定図書等の試作を完成させる。達成年度までに、教科用特定図書等を使用した実践研究を実施し、当事業の協力校における発達障害等のある児童生徒の約70パーセントについて、教科学習等における困難さの改善が見られることを目標とする。

効果の把握手法

  本事業の効果は、委託団体において研究した教科用特定図書等を、協力校(1団体当たり5校程度)において実際に活用し、児童生徒に対する教材等を使用する前後の理解度や満足度、教員に対する教材の活用しやすさ等を、アンケート等を通じて把握する。

事業の事前評価結果

A.19年度実績評価結果との関係

  達成目標2‐11‐1の「今後の課題及び反映の方針」において、「小・中学校においても、児童生徒一人一人のニーズに応じた支援の充実がもとめられている」と記述されており、当事業はまさに児童生徒一人一人のニーズに応じた教科用特定図書等の在り方を研究するものであり、必要な事業である。

B.必要性の観点

1.事業の必要性

  発達障害については、外見からは判断が難しい障害であるため、読む、書く、計算する、集中力を持続させるといった学校での学習に必要な基礎的な能力が備わっていない発達障害等の児童生徒は、本人の努力不足や親のしつけが悪いなどと叱責を受けることが多く、自己肯定感を持ちにくく、適切な教育的支援がされない場合、いじめや不登校などにつながるケースもあると言われている。
  また、弱視については、同じ視力であっても、見え方が個々に異なっており、ルーペ・拡大読書器等の視覚補助具を活用しても、十分な支援ができているとは言い難い。
  このため、発達障害等の児童生徒の障害特性、発達段階、教科の特性などに応じた教科用特定図書等や教材の在り方、それらを利用した効果的な指導方法や教育的効果等を研究し、障害のある児童生徒の教科学習等における困難の改善を図ることにより、基礎学力の確実な習得と、学校生活や社会にうまく適応できるようにする必要がある。
  よって、当事業の実施は不可欠である。

2.行政・国の関与の必要性(官民、国と地方の役割分担等)

  当事業は、学校教育において必要不可欠である検定教科用図書等の代わりに使用する教科用特定図書等を研究対象としている。そのような教科用特定図書等について、発達障害等の様々な認知特性に対応可能なものを研究するには、研究所のみならず、大学、教材会社、教科書会社、親の会等の様々な関係機関が、様々な視点より研究しなければ開発できないものであり、仮に特定の研究所等で実施することとした場合は、既存の教材の実証研究のみにとどまり、将来の発達障害等の児童生徒への教育に資する革新的な教材を提供するという可能性を失ってしまうと考える。
  よって、教科学習に必要不可欠な教科用特定図書等の在り方については、国が責任を持って研究を行うべきである。

3.関連施策との関係

1.主な関連施策(施策目標2‐11‐1)
  • 発達障害等支援・特別支援教育総合推進事業(初等中等教育特別支援教育課)
    • 発達障害を含む全ての障害のある幼児児童生徒の支援のため、各種教員研修、外部専門家の巡回・派遣などを実施することにより学校(幼小中高特)の特別支援教育を総合的に推進する。
  • 発達障害早期総合支援モデル事業(初等中等教育局特別支援教育課)
    • 発達障害のある幼児への早期発見・早期支援を実施するための効果的な手法や関係機関との連携方策等を実践研究する。
  • 高等学校における発達障害支援モデル事業(初等中等教育局特別支援教育課)
    • 高等学校における発達障害のある生徒に対する効果的な支援策について、実践研究を行う。
2.関連施策との関係

  当事業と上記の事業は、発達障害のある児童生徒を対象としている点で共通するが、上記の事業については、支援体制整備を推進する事業である一方、当事業は発達障害のある児童生徒の障害特性に応じた教材等について研究するものであり、事業目的が異なる。

4.関係する施政方針演説、審議会の答申等(主なもの)

教育振興基本計画について(平成20年4月18日中央教育審議会答申)

  記載事項(抜粋)

  第3章 今後5年間に総合的かつ計画的に取り組むべき施策

  (3)基本的方向ごとの施策

  基本的方向2 個性を尊重しつつ能力を伸ばし、個人として,社会の一員として生きる基盤を育てる

  6 特別なニーズに対応した教育を推進する
  改正教育基本法第4条第2項において、障害のある者への教育上の支援について新たに規定された。障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち、幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するため、適切な指導及び必要な支援を行う特別支援教育を推進する。あわせて、外国人児童生徒など、特別なニーズを有する者に対応した教育を推進する。

  【施策】

  ◇特別支援教育の推進
  幼稚園から高等学校までを通じて、発達障害を含む障害のある子ども一人一人の教育的ニーズを把握し適切な支援を行うため、特に、特別支援教育支援員の配置を促すとともに、小・中学校に在籍する障害のある児童生徒に対して「個別の指導計画」等が作成されるよう促すなど、体制整備を推進する。
  また、特別支援学校については、外部専門家の活用を含めた教員の専門性の向上や就職率の改善のための取組への支援を推進する。あわせて、障害のある子どもと障害のない子どもとの相互理解を深めるための活動を推進する。
  特別支援学校の在籍児童生徒等の増加に伴う大規模化等に対する地方公共団体等の取組を支援する。

第169回国会における福田内閣総理大臣施政方針演説(平成20年1月18日)

  記載事項(抜粋)

  (特別支援教育、幼児教育の振興等)
   発達障害を含む障害のある子どもたち一人ひとりの教育的ニーズに応じた特別支援教育や、海外子女、外国人児童生徒の教育を推進します。

重点施策実施5か年計画(平成19年12月25日障害者施策推進本部決定)

  記載事項(抜粋)

  4 教育・育成

  ○ 基本方針
  発達障害を含む障害のある子ども一人一人のニーズに応じた一貫した支援を行うために、各関係機関等の連携によりすべての学校における特別支援教育の体制整備を進めるとともに、特別支援教育に携わる教員の専門性の向上等により、特別支援教育の更なる充実を推進する。
  また、障害のある社会人等に対しても、ニーズに応じた学習の機会を提供していくことにより、着実な支援の推進を図る。(以下略)

経済財政改革の基本方針2007(平成19年6月19日閣議決定)

  記載事項(抜粋)

  第4章 持続的で安心できる社会の実現

  2.教育再生

  【具体的な手段】

  (1)学力向上の取組

  2.分かりやすく、魅力のある授業
  教科書の質量両面での充実、国語、英語などの充実、社会の要請に対応した教育内容・教科再編、全教室でITを授業に活用、発達障害児など特別な支援の必要な子どものための教員・支援員の適正配置や外部専門家の活用などすべての子ども一人ひとりに応じた教育。

経済財政改革の基本方針2008(平成20年6月27日閣議決定)

  記載事項(抜粋)

  第5章 安心できる社会保障制度、質の高い国民生活の構築

  1.国民生活を支える社会保障制度の在り方等

  【具体的な手段】

  (2)重要課題への対応

  4 福祉施策や健康対策等の推進
  障害者の生活支援や就労支援・雇用促進等を進めるとともに、障害者自立支援法について、障害児支援の在り方など制度全般にわたる抜本的な見直しを行う。
  また、発達障害児・者に対する支援や精神障害者の地域移行を推進する。

社会総がかりで教育再生を-第2次報告-(平成19年6月1日教育再生会議)

  記載事項(抜粋)

  1.学力向上にあらゆる手立てで取り組む‐ゆとり教育見直しの具体策‐

  提言2 全ての子供にとって分かりやすく、魅力ある授業にする

  ■全ての子供一人ひとりに応じた教育

  • 国、地方自治体は、発達障害など特別支援の必要な子供のニーズに対応したきめ細かな支援を行うため、教員や支援員の配置、外部専門家の活用、全教員に対する研修の実施などにより、小・中学校、特別支援学校、更に幼稚園、高等学校における特別支援教育体制の強化に努める。
  • 国は、発達障害など特別支援教育に関する総合的なプロジェクトのモデル地区での実施や、教育指導方法や支援機器、ソフトの活用に関する研究、成果の普及を行う。
新健康フロンティア戦略(平成19年4月18日新健康フロンティア戦略賢人会議)

  記載事項(抜粋)

  3.戦略の具体的内容

  第1部.国民自らがそれぞれの立場に応じて行う健康国家

  1.子どもを守り育てる健康対策(子どもの健康力)

  (2)発達障害児等を支援する体制の構築

  1. 発達障害児等に対する包括的な支援体制の構築
    • 早期療育から教育、就労への切れ目のない継続的支援、連携体制の構築
  2. 発達障害児等に関する国民全体の理解の促進
    • 発達障害児等に関する国民の理解を高めるための普及啓発や情報発信
  3. 発達障害児等を含む障害のある子どもへの特別支援教育の充実
    • 発達障害のある児童生徒を指導する教員の専門性の向上
    • 特別支援教育への応用を目指した発達障害の子どもの脳とこころの発達に関する研究の推進

C.有効性の観点

1.目標の達成見込み

  本事業では、小・中・高等学校等における発達障害等の障害のある児童生徒の教科用特定図書等や教材の在り方について実践研究を行い、適切な支援が図られることを目指すものである。
  各分野の専門性を有する団体に委託して実践研究を行うことや、研究成果について、研究報告書の作成・配付、文部科学省ホームページへの掲載などを通じて、広く普及を図ることで、目標は達成できると見込まれる。

2.上位目標のために必要な効果が得られるか

  小・中・高等学校においては、障害のある児童生徒等に対し、適切な指導及び必要な支援を行うことが求められている。また、特別支援学校においては、障害の重度・重複化、多様化が進んでいることから、一人一人に応じたきめ細かな指導の一層の充実が求められている。
  こうした状況を踏まえ、小・中・高等学校や特別支援学校における発達障害等の障害のある児童生徒に対応した教材等について実践研究することは、すべての学校における障害のある児童生徒一人一人に応じた適切な指導や必要な支援を行うことに結び付くものと考える。

D.効率性の観点

1.インプット

  • 本事業の予算規模は、159百万円である。
    • (初等中等教育調査研究等委託費)156百万円
    • (その他)3百万円

2.アウトプット

  発達障害等は障害の状態や程度が様々であり、それらの障害に応じた教科用特定図書等や教材の在り方、指導方法についての研究が十分であるとはいえないため、先般、「障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律」にも必要な調査研究を推進するものと規定されたところである。
  そのため、平成21年度は障害特性に応じた教科用特定図書等の在り方に関する基礎研究及び教材の試作を目標として実施し、達成年度である平成22年度において、学校現場における教育的効果の検証や効果的な指導法等の実践研究を実施する。
  本事業で、それぞれの障害特性に応じた教材等の在り方を示すことは、障害のある児童生徒の教育を改善し、自立と社会参加に大きく寄与する可能性があることを勘案すると、当事業の効果は大きいと考えられる。

3.事業スキームの効率性

  本事業の予算規模(159百万円)に対して、アウトプットとして、複数の指定先による研究が行われることを通し、各種障害に応じた教材等や指導方法の在り方が示され、それに基づいた適切な指導や支援が行われることを見込むと、本事業のインプットとアウトプットの関係は効果的と判断する。

4.代替手段との比較

  本事業は国の委託事業により行うが、地方自治体の事業として実施することとした場合は、当該自治体における研究のみであり、障害の状態が極めて多様である発達障害や弱視の子どもの実態等を踏まえた評価や成果の活用が困難であり、本事業における十分な効果が期待できない。
  国の委託事業として行うことにより、地域や学校、児童生徒の発達段階や障害の状態等に応じた研究を行い、その成果についてきめ細かな評価・分析が可能となるなど、より効果的な取組が期待できる。

E.公平性の観点

  本事業は全国の大学や研究機関等に対して公募し、専門家による審査を経て委託団体を決定する予定であり、公平性は担保できると判断する。

F.優先性の観点

  当事業は、本年6月に「障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律」が公布され、障害の有無にかかわらず、児童及び生徒が十分な教育を受けることができる学校教育を推進することとされ、第7条には、「国は、発達障害その他の障害のある児童及び生徒であって検定教科用図書等において一般的に使用される文字、図形等を認識することが困難なものが使用する教科用特定図書等の整備及び充実を図るため、必要な調査研究等を推進するものとする。」と規定されたことを受けて実施するものであり、優先すべき政策と考えられる。

G.総括評価と反映方針

  21年度概算要求に反映する。

指摘事項と対応方針

指摘事項

1.事業に対する総合所見(官房にて記載)

  評価結果は妥当。ただし、行政・国の関与の必要性についての記述を充実させる。

2.外部評価、第三者評価等を行った場合のその概要等

  21年度に当事業における企画評価委員会を設けて、事業の方向性や評価等について検討する予定。

指摘に対する対応方針

  指摘を踏まえ、対応済み。

お問合せ先

大臣官房政策課評価室

-- 登録:平成21年以前 --