平成21年度要求額:6,251百万円
(平成20年度予算額:6,184百万円)
事業開始年度:平成18年度
事業達成年度:平成22年度
国際学力調査の結果において学力が低下傾向にあり、各国と比較して学習状況にも課題が見られるなど、学校教育の現状や課題について十分に把握する必要性が増すとともに、義務教育の質を保証する仕組みの構築の要請が高まっている。
このような状況の中、全国的な学力調査については、平成17年6月21日に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2005について」において、「児童生徒の学力状況の把握・分析、これに基づく指導方法の改善・向上を図るため、全国的な学力調査の実施など適切な方策について、速やかに検討を進め、実施する」とされた。
その後、平成17年10月26日の中央教育審議会答申における「子どもたちの学習到達度についての全国的な調査を実施することが適当である」との指摘を受け、全国的な学力調査の実施方法等に関する専門家検討会議において検討を行い、平成18年4月の報告を踏まえ、6月に調査の目的、方法、日時、体制等を示した実施要領を定め、各都道府県教育委員会等に通知し、参加を要請した。
小学校第6学年、中学校第3学年の原則として全児童生徒を対象に、国語、算数・数学について、平成19年4月に第1回となる全国学力・学習状況調査を実施し、その結果については10月に公表を行い、翌年1月に学校質問紙調査を中心とした追加分析の結果について公表を行った。さらに「全国学力・学習状況調査の分析・活用の推進に関する専門家検討会議」を設置し、専門家を交えた検討を行い、分析結果を8月に公表した。第2回となる調査については、平成20年4月に円滑に実施を行い、結果については現在集計中である。
全国学力・学習状況調査については、調査の実施だけでなく、調査結果の検証と活用についても非常に重要であることから、平成19年度は、「学力調査の結果に基づく検証改善サイクルの確立に向けた実践研究」として、各都道府県・指定都市ごとに設けられた検証改善委員会において、調査結果等を活用・分析し、教育委員会や学校における効果的な取組や課題を明らかにし、改善につなげる実証研究を行い、学校等における改善の取組に対する支援策を含む「学校改善支援プラン」を作成するなどの取組を行った。また、国としては、学習指導要領の改訂をはじめとする教育施策への反映を図っているところである。
平成20年度については、平成19年度事業で作成された「学校改善支援プラン」を元に、学校における取組により焦点を当てた「全国学力・学習状況調査等を活用した学校改善の推進に係る実践研究」(以下「学校改善推進事業」という。)を実施し、地域における検証改善サイクルの確立に向けた取組を着実に進めている。
義務教育における機会均等や全国的な教育水準の維持向上の観点から、すべての児童生徒の学力や学習状況を把握するための全国学力・学習状況調査を継続的に実施するとともに、調査結果の徹底的な検証・分析を行い、国の教育施策の改善に活用する。また、課題が見られる学校の改善への支援方策の研究など、調査結果を検証・活用するための実践研究を一層進め、調査結果の効果的な活用を促すとともに、優れた改善策の普及を図るための取組を進める。
平成21年度については、1.全国学力・学習状況調査、2.学校改善推進事業については、昨年度に引き続き着実に実施するとともに、3.国の教育施策等の一層の改善を図るため、大学等の研究機関を対象に、
国の重要な政策課題に関し、高い専門性が求められる分析・検証や関連する調査研究である「学力調査を活用した専門的な課題分析に関する調査研究」、4.全国的な状況から見られる課題の解決を図ろうとする地域を対象に、全国学力・学習状況調査を活用して域内の学校における教育施策等の改善策を定めたアクションプランを推進する実践研究である「学力調査活用アクションプラン推進事業」を新たに実施することとしている。
なお、上記事業の推進にあたっては、全国学力・学習状況調査の問題作成や主に教科や指導法に関する分析を中心に既に国立教育政策研究所と連携して実施しているが、上記3や4の新規事業の実施に関しても、国立教育政策研究所の研究機能を活用しつつ事業を行うこととしている。
本事業は、全国学力・学習状況調査を円滑かつ確実に実施し、調査結果について分析・検討を行うほか、教育委員会、学校等における調査結果の活用を促すなど、国・地方における検証改善サイクルの確立に向けた取組を進めることを目的としている。
全国学力・学習状況調査の実施については、国、教育委員会、学校等において調査結果を活用して教育施策や教育指導等の改善が進められているかどうかについて、本調査の質問紙調査等により測定・把握する。また、円滑かつ確実に実施されたかどうかについては、1所定の日に調査を実施し、調査結果の提供が遅滞なく行われたか、2問題冊子の発送や答案の回収、調査結果の提供がトラブルなく行えたかなどにより、判断することとなる。
学校改善推進事業の効果については、全国学力・学習状況調査の質問紙調査等を通じて、全国学力・学習状況調査を活用した学校改善への取組の状況について把握を行うとともに、実践研究の研究対象となった学校において設定した課題について改善が図られ、成果の普及が行われたか把握を行う。
学力調査活用アクションプラン推進事業の効果については、全国学力・学習状況調査の教科に関する調査や質問紙調査等の結果などにより、設定したテーマについて改善が図られたか把握を行う。
達成目標2‐1‐1「今後の課題及び政策への反映方針」において、『「確かな学力」の向上のため、今後も「全国的な学力調査の実施」をはじめとした事業を引き続き実施する』旨が記載されている。
我が国の児童生徒の学力については、平成19年度全国学力・学習状況調査において知識・技能を活用する力等に課題が見られた。また、国際的な学力調査(PISA調査、TIMMS調査)の結果においても、読解力や記述式問題に課題があるとともに、数学的リテラシーの得点の低下が見られるなどの状況にあり、児童生徒の学力向上を図ることが強く求められている。このため、教育振興基本計画においても、世界トップの学力水準を目指すこと等が目標として示されている。
また、国の責務として果たすべき義務教育の機会均等や教育水準が確保されているかどうかをきめ細かく把握・分析し、国における教育の成果と課題などの結果を検証し、施策等の改善につなげるとともに、教育委員会や学校等における教育に関する検証改善サイクルを確立することを通じて、義務教育の質を保証する仕組みを構築していくことが求められている。
このため、教育に関するPDCAサイクルを国・教育委員会・学校の各段階においてしっかり行い、さらに、児童生徒一人ひとりの学習改善や学習意欲の向上に資するために、特に悉皆規模で毎年継続した学力・学習状況に関するする調査を行うことが必要である。
なお、得られた調査結果についても、その最大限の活用を図ることが重要であり、優れた改善の取組の普及等により調査結果の積極的な活用を推進していく必要がある。
「1.事業の必要性」で述べたとおり、国の責務として果たすべき義務教育の機会均等や教育水準が確保されているかどうかをきめ細かく把握・分析するとともに、国における教育の成果と課題などの結果を検証し、その改善につなげるためには、国において全国学力・学習状況調査を実施し、その調査結果の検証・活用を図る必要がある。
全国で約230万人を対象とした悉皆調査であるため、問題の配送・解答用紙の回収・採点・データ集計・結果の提供等について、膨大な労力や経験・ノウハウが必要となる。こうした特性を踏まえ、調査の円滑かつ確実な実施や、教育委員会及び学校の負担軽減のため外部委託を行っている。
また、調査結果等を検証・活用し、課題の見られる学校改善への取組の実践的な研究等を行うことにより、地域や学校の実情に応じた優れた改善策を全国に普及し、国として、地域における検証改善サイクルの確立に向けた取組を支援する必要がある。さらに、地域だけでなく、国においても、我が国の教育施策の一層の改善に資するため、大学等の研究機関の高度な知見を活用し、専門的視点から調査結果を分析することで、全国の悉皆データという貴重なデータを有効に活用することが求められている。
○学習指導要領の編集改訂(学習指導要領全体の見直し) 施策目標2‐1(初等中等教育局教育課程課)
中央教育審議会の審議を踏まえ、学習指導要領を改訂。
○学力・学習意欲の向上、国語教育の改善推進等(学力向上アクションプランの実施) 施策目標2‐1(初等中等教育局教育課程課)
1.個に応じた指導の充実、2.学力の質の向上、3.個性・能力の伸長(スーパーサイエンスハイスクールなど)、4.英語力・国語力の向上を柱とした学力向上アクションプランを実施。
上記事業は達成目標2‐1‐1「学習指導要領の目標・内容に照らした児童生徒の学習状況の改善を図り、知識・技能はもとより、学ぶ意欲、思考力、判断力、表現力等まで含めた「確かな学力」を育成する。」における関連施策として全国的な学力調査の実施と合わせて示している事業である。両事業は、学習指導要領の周知及びそのねらいの実現の観点から実施する事業であり、学力調査を用いた検証改善サイクルの確立を目指す本事業とは目的が異なるものである。ただし、調査結果の活用及び改善の取組については、教育指導の在り方と密接に関係するため、特に学力向上推進事業については、上記事業と連携を図りつつ実施している。
第1章 教育の目標を明確にして結果を検証し質を保証する
‐義務教育の使命の明確化及び教育内容の改善‐
(2)教育内容の改善
ウ 学習到達度・理解度の把握のための全国的な学力調査の実施
各教科の到達目標を明確にし、その確実な修得のための指導を充実していく上で、子どもたちの学習の到達度・理解度を把握し検証することは極めて重要である。客観的なデータを得ることにより、指導方法の改善に向けた手がかりを得ることが可能となり、子どもたちの学習に還元できることとなる。このような観点から、子どもたちの学習到達度・理解度についての全国的な学力調査を実施することが適当である。なお、実施に当たっては、子どもたちに学習意欲の向上に向けた動機付けを与える観点も考慮しながら、学校間の序列化や過度な競争等につながらないよう十分な配慮が必要である。
具体的な実施の方法、実施体制、結果の扱い等について更に検討する必要がある。その際には、自治体や学校が全国的な学力状況との関係でそれぞれの学力状況を把握することにより、教育の充実への取組の動機付けとなることが重要な視点であると考えられる。
また、併せて、収集・把握する調査データの取扱いに慎重な配慮をしつつ地域性、指導方法・指導形態などによる学力状況との関係が分析可能となる方法を検討する必要がある。なお、学力調査の調査内容に関しては、知識・技能を実生活の様々な場面などに活用するために必要な思考力・判断力・表現力などを含めた幅広い学力を対象とすることが重要である。
2.教育再生のための当面の取組
<教育内容の改革>
1.「ゆとり教育」を見直し、学力を向上する
(2)全国学力調査を新たにスタート、学力の把握・向上に生かす
教育の機会均等を保障し、確実に教育の質を向上させるには、教育成果をはかる「ものさし」が必要です。文部科学省・教育委員会・学校は、学力の現状把握・分析・評価・改善・検証という一連の流れを確固たるものにするため、今回、スタートする新しい「全国学力調査」を継続的に行い、教育内容の改善に生かす必要があります。
1.学力向上にあらゆる手立てで取り組む‐ゆとり教育見直しの具体策‐
提言4 学校が抱える課題に機動的に対処する
【学校の危機管理体制の整備、学校問題解決支援チームの創設、学校、教育委員会の説明責任、全国学力調査の結果を徹底的に検証・活用し、教員定数や予算面で支援】
1.学力の向上に徹底的に取り組む‐未来を切り拓く学力の育成‐
(1)全国学力調査、PISA調査の結果を徹底的に検証し、学力向上に取り組む
第3章今後5年間に総合的かつ計画的に取り組むべき施策
(3)基本的方向ごとの施策
◇全国学力・学習状況調査の継続実施とその結果を活用した学校改善への支援等
児童生徒の学力や学習状況を把握し,教育施策や指導の改善に活用するため,全国学力・学習状況調査を継続的に実施する。あわせて,その結果から児童生徒の学力,学力と学習状況の関係等を分析・検証し,課題が見られる学校の改善に向けた取組への支援や,優れた取組の普及等を行う。また,すべての教育委員会,学校等において,保護者への説明責任を果たしつつ調査結果を活用し改善に向けて取り組む検証改善サイクルが確立されるよう促す。その際に,学校ごとの教育施策や教育指導の改善に向けて取り組むよう促す。(略)
(4)特に重点的に取り組むべき事項
○学力調査による検証
教育における検証・改善サイクルの確立に向け,児童生徒の学力・学習状況を把握するため,全国学力・学習状況調査を継続的に実施する。(略)
平成19年度の全国学力・学習状況調査については、小学校第6学年、中学校第3学年の237万4千人(小学校調査:117万7千人、中学校調査:119万7千人)を調査対象に調査を実施し、平成19年10月にその調査結果について公表した。また、「学力調査の結果に基づく検証改善サイクルの確立に向けた実践研究」を実施し、すべての都道府県・指定都市において「学校改善支援プラン」を策定した。
平成20年度については、2回目となる全国学力・学習状況調査を、小学校第6学年、中学校第3学年の232万3千人(小学校調査:118万7千人、中学校調査113万6千人)を調査対象に円滑に実施し、公表に向けた採点・集計等の作業を進めているところである。また、「学校改善支援プラン」等を踏まえた、調査結果を活用し、学力や学習状況調査等に課題の見られる学校の改善に向けた具体的な取組に関する実践研究である「全国学力・学習状況調査等を活用した学校改善の推進に係る実践研究」を順調に進めているところである平成21年度拡充事業と合わせた取組の一層の推進により、目標については十分に達成可能であると考えられる。
全国学力・学習状況調査の実施と、その調査結果の検証・活用することで、国、教育委員会、学校において各自の課題の把握と改善を進めることは、「政策目標2 確かな学力の向上、豊かな心と健やかな体の育成と信頼される学校づくり」における「確かな学力の向上」に資すると考えられる。
本事業の予算規模は 6,251百万円である。(※学校改善推進事業は教育課程課において計上)
全国学力・学習状況調査については、記述式問題を含めた出題としており、教育現場への負担軽減の観点から、民間の力を活用し、効率的に採点・集計を行っている。さらに、調査結果については、個々の児童生徒の学習改善に資するため、調査結果を記した個人票を作成・提供することとしている。
また、調査結果については、徹底的な活用を図ることが効率性の観点から重要であり、全国的な課題の改善に関する委託研究や学校改善推進事業等において徹底的な活用を図り、その成果については、成果報告会や全体を取りまとめた報告書の作成、各地域における普及・啓発活動等により、広く周知を図ることとしていている。
本調査の1国が、全国的な義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から、全国学力・学習状況調査を実施して、各地域における児童生徒の学力・学習状況をきめ細かく把握・分析することにより、教育及び教育施策の成果と課題を検証し、その改善を図ること、2各教育委員会、学校等が、全国的な状況との関係において自らの教育及び教育施策の成果と課題を把握し、その改善を図るとともに、そのような取組を通じて、教育に関する継続的な検証改善サイクルを確立すること、3各学校が、各児童生徒の学力や学習状況を把握し、児童生徒への教育指導や学習状況の改善等に役立てること、という目的を達成するためには、対象学年のすべての児童生徒を対象とした調査を毎年実施する必要があり、現行の方式以外では達成できない。
全国学力・学習状況調査は小学校第6学年、中学校第3学年の原則として全児童生徒を対象に実施するものであり、また、学校改善推進事業については全都道府県・政令指定都市を対象に実施し、全国的な課題についての調査研究についても公募を予定していることから、公平性は担保されている。また、調査実施に係る委託事業についても、一般競争入札により委託先の選定を行っている。
「2.事業に至る経緯・今までの実績」で述べたように、国際学力調査の結果において学力や学習状況に課題が見られ、学校教育の現状や課題について十分に把握する必要性が増すとともに、義務教育の質を保証する仕組みの構築の要請が高まっていることからも本事業は優先すべきものである。
評価結果は妥当。ただし、国立教育政策研究所との役割分担についても検討すべき。
指摘を踏まえ、既に協力を得ている全国学力・学習状況調査の実施に加え、新たに実施する「学力調査を活用した専門的な課題分析に関する調査研究」「学力調査活用アクションプラン推進事業」の実施に際しても国立教育政策研究所の研究機能の活用することとし、その旨を事業概要に追記。
大臣官房政策課評価室
-- 登録:平成21年以前 --