施策目標10-2 情報通信分野の研究開発の重点的推進

(基準年度:14年度・達成年度:23年度)

  先端的な情報科学技術の研究開発及び研究開発に関する情報化を推進する。

主管課(課長名)

  • 研究振興局情報課(舟橋 徹)

関係課(課長名)

   

評価の判断基準

  各達成目標の平均から判断(S=4、A=3、B=2、C=1として計算)。

  • S=3.4~4.0
  • A=2.6~3.3
  • B=1.8~2.5
  • C=1.0~1.7

平成19年度の状況と総合評価結果

達成目標10‐2‐1 A

  将来のスーパーコンピューティングのための要素技術研究開発プロジェクト及び革新的シミュレーションソフトウェアの研究開発プロジェクトについては、各課題について目標を達成し、平成19年度をもってプロジェクトは終了した。
  従来の学術情報ネットワークSINETと、先端的学術情報基盤スーパーSINETを統合し、平成19年6月からSINET3の本格運用を開始した。SINET3では、最大40Gbps(ギガビットパーセカンド)の基幹回線によって、先端研究分野の多様なニーズへの対応が可能な革新的なネットワークを実現し、新たに先端的研究開発における研究拠点間通信の安全性を確保したマルチVPNサービスを提供する等、学術情報ネットワークの高度化が計画通りに進捗している。
  独立行政法人科学技術振興機構において、文献情報・研究者・研究成果等のデータベース整備や活用促進、科学技術情報発信・流通総合システム事業等を実施し、科学技術情報の流通や科学技術の振興のための基盤の整備は順調に行われている。

達成目標10‐2‐2 A

  高機能・超低消費電力コンピューティングのためのデバイス・システム基盤技術の研究及び革新的実行原理に基づく超高性能データベース基盤ソフトウェアの開発については、目標を達成しており、平成19年度は順調に進捗している。
  e-Society基盤ソフトウェアの総合開発については、平成19年度をもって、当初予定である5年間のプロジェクトが完了した。全研究開発において、当初目標は達成しており、成果を上げた。

達成目標10‐2‐3 A

  安全なユビキタス社会を支える基盤技術の研究開発プロジェクトについては、高性能耐タンパセキュアチップと、それと連動するリアルタイム組込みOSの開発を行うとともに、実証を行い、目標を達成し、平成19年度をもって3年間のプロジェクトは終了した。
  ソフトウェア構築状況の可視化技術の開発普及プロジェクトについては、ソフトウェア開発に関する実証的データを収集し「ソフトウェアタグ」としてソフトウェア製品に添付して提供する技術の開発を目指し、ソフトウェアタグの設計案を作成するとともに、ソースコードファイルにソフトウェアタグを搭載するシステムの試作を行う等、計画通り進捗した。
  知的資産の電子的な保存・活用を支援するソフトウェア技術の構築に関して、「文化財のデジタル・アーカイブ化」、「教育機関向けデジタル・アーカイブ利用システム」などの各課題において、計画通りに進捗した。

  各達成目標の評価はA、A、Aとなり、施策目標10‐2は「想定どおり順調に進捗」と判断。

評価結果

  A

必要性・有効性・効率性分析

必要性の観点

  情報通信分野は、科学技術立国を目指す我が国にとって、研究開発の成果が社会、経済に比較的短期間で還元されるとともに、様々な他分野の研究開発を効果的・効率的に進めていくための研究基盤となることから研究開発推進の意義は大きく、第3期科学技術基本計画においても、特に重点的に研究開発を推進すべき重点推進4分野とされている。
  民間における基礎的研究開発活動が従前ほど活発に行われなくなってきており、国による基礎的・萌芽的研究と民間による実用化研究との橋渡しが従前のようにうまく機能していない状況にあることから、大学等を中心とする基礎基盤的領域の研究ポテンシャルを積極的に発掘し、民間企業がそれを活用できる段階にまで育成し、その成果を社会へ貢献できるように国が関与することが重要である。
  また、世界的な知の大競争時代の中、情報科学技術分野の研究はもちろんのこと、他分野において高度な研究を行っていくための情報科学技術を活用した研究基盤の重要性が高まっており、文部科学省としても研究情報基盤の高度化、高機能化へ役割を果たしていくことが重要である。
  以上のことから、情報科学技術分野の研究開発の重点的な推進を行うことは必要だと考えられる。

有効性の観点

  将来のスーパーコンピューティングのための要素技術の研究開発、革新的シミュレーションソフトウェアの研究開発、e-Society基盤ソフトウェアの総合開発、安全なユビキタス社会を支える基盤技術の研究開発については平成19年度で事業終了年度を迎えたが、それぞれの事業において目標を達成するとともに研究成果の公開等を通じた成果の社会への普及を行った。また、その他の事業においても順調に進捗しており、各事業の実施により先端的な情報科学技術の推進につながると判断した。
  従来の学術情報ネットワークSINETと、先端的学術情報基盤スーパーSINETを統合し、平成19年6月からSINET3の本格運用を開始しており、先端研究分野の多様なニーズへの対応が可能な革新的なネットワークを実現し、新たなサービスを提供する等、学術情報ネットワークの高度化を通じて、研究開発に関する情報化を推進していると判断した。

効率性の観点

  各事業の実施にあたってはトップダウン的に重点領域を定めるだけでなく、関連する研究機関でどのような技術シーズが育ちつつあるか見極め、それらを最大限活用し、また研究機関間での役割分担を明確にすることにより、効率的・効果的な計画の実施を図っている。

事業インプット

  • 情報通信分野の研究開発の推進に必要な経費 3,685百万円(平成19年度予算額)
    次世代IT基盤構築のための研究開発 2,695百万円
    知的資産の電子的な保存・活用を支援するソフトウェア技術基盤の構築 315百万円
    e-Society基盤ソフトウェアの総合開発 671百万円 等

事業アウトプット

  • 本施策に係る各事業は順調に進捗しており、1.継続的なイノベーションを具体化するための科学技術の研究開発基盤を実現、2.産業の持続的な発展の実現に資する革新的ITの実現に向けた研究開発の推進、3.すべての国民がITの恩恵を実感できる社会の実現に向けた研究開発の推進を図るといった効果が見込まれる。

事業アウトカム

  • 本施策を推進することで、先端的な情報科学技術の研究開発及び研究開発に関する情報化の推進に大きく貢献することが期待される。

今後の課題及び政策への反映方針

予算要求への反映

  これまでの取組を引き続き推進

具体的な反映内容について

達成目標10‐2‐1

  学術情報基盤については、これまでの最先端学術情報基盤(サイバー・サイエンス・インフラストラクチャ)の構築に向けた取り組みを踏まえ、引き続き、研究者のニーズに対応した様々なネットワーク機能を提供することにより、整備充実を図る。
  また、革新的シュミレーションソフトウェアの研究開発プロジェクトでは、大学が有するソフトウェア技術を活用し、産学官連携による研究開発により数多くの戦略的ソフトウェアを開発してきた。これらの大学等の有するソフトウェアは、イノベーションを起こす種として産業界等からの期待が依然強いことから、平成20年度からは「イノベーション創出の基盤となるシュミレーションソフトウェアの研究開発」において、イノベーション創出に直結するものづくり分野を中心に、大学等が有するソフトウェア資産を活用し、シュミレーションソフトウェアの開発・活用基盤の強化を図る。

達成目標10‐2‐2

  高機能・超低消費電力コンピューティングのためのデバイス・システム基盤技術の研究及び革新的実行原理に基づく超高性能データベース基盤ソフトウェアの開発については、平成19年度は順調に進捗しており、また、これら課題は連携施策群や革新的技術に位置づけられるなど、重要性が認められているため、更に目標達成に向けて研究開発を推進する。
  e-Society基盤ソフトウェアの総合開発については目標としていた成果を得ており、各課題については必要に応じて引き続き施策として進めていくべきである。

達成目標10‐2‐3

  ソフトウェア構築状況の可視化技術の開発普及に関して、平成19年度は順調に進捗しており、今後はソフトウェアタグの規格や、開発プロセスのデータ収集方法等の策定・評価を実施するとともに、現行法との関係の検討を実施する。

  その他の施策についても、今まで順調に研究が進捗しており、引き続き計画通りの成果達成を目指し研究開発を推進する。

関係する施政方針演説等内閣の重要施策(主なもの)

第3期科学技術基本計画(平成18年3月28日閣議決定)

第2章科学技術の戦略的重点化

  2.政策課題対応型研究開発における重点化

第3章科学技術システム改革

   3.科学技術振興のための基盤の強化

関連達成目標

  9‐3‐4

達成目標10‐2‐1

  継続的なイノベーションを具体化するための科学技術の研究開発基盤を実現する。

(基準年度:18年度・達成年度:23年度)

1.評価の判断基準

  各判断基準の平均から判断する(S=4、A=3、B=2、C=1と換算する。)

判断基準1 我が国発のスーパーコンピューティング技術が世界のトップであり続けるための基盤技術の確立を目指す。
  • S=優れた研究成果を挙げる一方で、産学官の強固な連携が確立されている。
  • A=目標が適切に設定され、優れた成果が得られている。
  • B=妥当な目標を立てて研究開発を実施しているが、研究開発テーマ間の連携等が不十分である。
  • C=目標が適切に設定されておらず、達成目標の実現性に疑問がある。
判断基準2 最先端学術情報基盤(サイバー・サイエンス・インフラストラクチャ)を構築するために、学術情報ネットワークの機能の高度化を推進し、学術情報基盤の整備充実を図る。
  • S=学術情報ネットワークの機能の高度化が、計画以上に進捗している。
  • A=学術情報ネットワークの機能の高度化が、計画通りに進捗している。
  • B=学術情報ネットワークの機能の高度化が、計画より遅れている。
  • C=学術情報ネットワークの機能の高度化が、計画より大幅に遅れている。
判断基準3 独立行政法人評価委員会による「科学技術情報の流通促進」の評価結果を基に判断。
  • S=全ての評価が「A」以上で、かつ1/3以上の項目において「S」評価
  • A=全ての項目の評価が「A」以上。
  • B=一部の項目において評価「B」。
  • C=一部の項目において評価「C」または「F」。

2.平成19年度の状況

  「将来のスーパーコンピューティングのための要素技術研究開発プロジェクト」に関しては、研究開発課題「低電力高速デバイス・回路技術・論理方式の研究開発」において、LSI消費電力を2005年比で1/10クラスに低消費電力化する技術を開発するという目標に対して、消費電力を2005年比で1/18に低減する見通しを得るなど、低消費電力化に成功した。また、研究開発課題「ペタスケール・インターコネクト技術の開発」についても、CPUとメモリ間の信号を1信号当たり20Gbps(ギガビットパーセカンド)超でかつLSI当たり1,000信号程度を目指すという目標に対して、1信号当たり25Gbps(ギガビットパーセカンド)でLSI当たり1,000信号程度からなる高密度・高速の光伝送技術を実現するなど成果を上げており、「将来のスーパーコンピューティングのための要素技術研究開発プロジェクト」を通じてペタフロップス超級のスーパーコンピューティングの実現に向けて有用な要素技術が開発された。

  また、「革新的シミュレーションソフトウェアの研究開発プロジェクト」に関して、産学官の強固な連携体制の下、革新的な機能を有するソフトウェア49本を開発・公開し、ソフトウェアのダウンロード件数4万6千件以上など成果を上げ、事業を完了した。

  国立情報学研究所において、従来の学術情報ネットワークSINETと、先端的学術情報基盤スーパーSINETを統合し、平成19年6月からSINET3の本格運用を開始した。SINET3では、最大40Gbps(ギガビットパーセカンド)の基幹回線によって、先端研究分野の多様なニーズへの対応が可能な革新的なネットワークを実現した。また、SINET3では従来実現できなかった新たなネットワーク機能が提供可能となり、先端的研究開発における研究拠点間通信の秘匿性を確保したマルチVPNサービスを提供する等、学術情報ネットワークの高度化が計画通りに進捗している。

  独立行政法人科学技術振興機構において、中期目標、中期計画及び年度計画に基づいて、文献情報・研究者・研究成果等のデータベース整備や活用促進、科学技術情報発信・流通総合システム事業等を実施し、科学技術情報の流通や科学技術の振興のための基盤の整備を行った。

参考指標

  平成15年度 平成16年度 平成17年度 平成18年度 平成19年度
スーパーSINETのノード(接続拠点)数 28 30 33 36 75(注)

   (注)SINET3の本格運用開始に伴い、スーパーSINETノードが統合されたため、平成19年度の値は、SINET3のノード数を表す。

参考指標に用いたデータ・資料等

  • 文部科学省調べ

参考指標の設定根拠

  学術情報基盤の整備・充実を図るためには、スーパーSINET及びSINET3の整備を着実に実施することが必要なため。

3.評価結果

  A

判断理由

  各判断基準に照らした結果、A、A、Aとなり、達成目標10‐2‐1は「想定どおり順調に進捗」と判断。

4.今後の課題及び政策への反映方針

  将来のスーパーコンピューティングのための要素技術研究開発プロジェクト及び革新的シミュレーションソフトウェアの研究開発プロジェクトに関しては、これまでに研究が順調に成果を上げており、当初の目的を果たしたといえることから、平成19年度で事業を終了する。革新的シュミレーションソフトウェアの研究開発プロジェクトでは、大学が有するソフトウェア技術を活用し、産学官連携による研究開発により数多くの戦略的ソフトウェアを開発してきた。これらの大学等の有するソフトウェアは、イノベーションを起こす種として産業界等からの期待が依然強いことから、平成20年度からは「イノベーション創出の基盤となるシュミレーションソフトウェアの研究開発」において、イノベーション創出に直結するものづくり分野を中心に、大学等が有するソフトウェア資産を活用し、シュミレーションソフトウェアの開発・活用基盤の強化を図る。
  これまでの最先端学術情報基盤(サイバー・サイエンス・インフラストラクチャ)の構築に向けた取り組みを踏まえ、引き続き、研究者のニーズに対応した様々なネットワーク機能を提供することにより、学術情報基盤の整備充実を図る。

5.主な政策手段

政策手段の名称
[19年度予算額(百万円)]
概要 19年度の実績 21年度予算要求への考え方
将来のスーパーコンピューティングのための要素技術の研究開発
(次世代IT基盤構築のための研究開発)
(682百万円)
我が国発のスーパーコンピューティング技術が世界のトップであり続けるための基盤技術の確立を目指し、「将来のスーパーコンピューティングのための要素技術の研究開発」、を実施している。 研究開発課題「低電力高速デバイス・回路技術・論理方式の研究開発」において、LSI消費電力を2005年比で1/10クラスに低消費電力化する技術を開発するという目標に対して、消費電力を2005年比で1/18に低減する見通しを得るなど、低消費電力化に成功した。また、研究開発課題「ペタスケール・インターコネクト技術の開発」についても、CPUとメモリ間の信号を1信号当たり20Gbps(ギガビットパーセカンド)超でかつLSI当たり1,000信号程度を目指すという目標に対して、1信号当たり25Gbps(ギガビットパーセカンド)でLSI当たり1,000信号程度からなる高密度・高速の光伝送技術を実現するなど成果を上げた。 平成19年度
廃止
革新的シミュレーションソフトウェアの研究開発
(次世代IT基盤構築のための研究開発)
(1,000百万円)
我が国発のスーパーコンピューティング技術が世界のトップであり続けるための基盤技術の確立を目指し、「革新的シミュレーションソフトウェアの研究開発」、を実施している。 産学官の強固な連携体制の下、革新的な機能を有するソフトウェア49本を開発・公開し、ソフトウェアのダウンロード件数4万6千件以上など成果を上げた。 平成19年度
廃止
学術情報ネットワークの整備
(運営費交付金6,796百万円の内数)
最先端学術情報基盤(サイバー・サイエンス・インフラストラクチャ)の構築に向けて、大学等の学術情報基盤であるSINETと、先端的研究拠点を超高速回線で接続した先端的学術情報基盤であるスーパーSINETを統合し、より信頼性・安定性が高く、柔軟かつ効率的な回線利用が可能な次世代学術情報ネットワーク(SINET3)の運用を開始。 SINET3の運用が開始され、中継ノード12拠点間を最大40Gbps(ギガビットパーセカンド)、一般ノード62拠点間を最大20Gbps(ギガビットパーセカンド)の回線で接続した。基幹回線はループ構造をとり、障害時の高速迂回機能を実現し、安定的な運用を図っている。
また、マルチVPNサービス等、従来の学術情報ネットワークでは提供していなかったサービスが可能となった。
継続
独立行政法人科学技術振興機構による事業
(運営費交付金103,462百万円等の内数)
独立行政法人科学技術振興機構において、科学技術情報の流通促進を図るため、研究開発に係わる情報(文献情報、研究者・研究機関情報等)を総合的に活用するための基盤整備を実施している。 中期目標、中期計画及び年度計画に基づいて、文献情報・研究者・研究成果等のデータベース整備や活用促進、科学技術情報発信・流通総合システム事業等を実施し、科学技術情報の流通や科学技術の振興のための基盤の整備を行った。 継続

達成目標10‐2‐2

  産業の持続的な発展の実現に資する革新的ITの実現に向けた研究開発の推進を図る。

(基準年度:14年度・達成年度:23年度)

1.評価の判断基準

  各判断基準の結果の平均から判断する(S=4、A=3、B=2、C=1と換算する。)

判断基準1 高機能・低消費電力コンピューティングを実現し、国際競争力の強化に必要となる技術を開発し、デバイス分野における産業の持続的な発展に資する。
  • S=国際的にも優位な成果を実用化への道筋をつけつつ当初の目標から前倒しで実現しており、今後ともインパクトのある成果が生み出されることが期待できる。
  • A=実用化を含む目標達成に不可欠な開発項目において成果が達成され、今後は製品化を視野に入れた研究開発を進めることが期待できる。
  • B=実用化に不可欠な一部の項目について現状を考慮すると、実用化を含む目標達成の見通しが明らかになっていない。
  • C=適用現場とのすり合わせが不十分である等、実施体制が適切とは言えず、実用化に向けての達成度も適切に説明されておらず、達成目標の実現性に疑問がある。

判断基準2 データベースの処理性能を飛躍的に向上させる革新的な実行原理に基づくデータベース基盤ソフトウェアを開発することにより、我が国のIT産業だけでなく、データベースを用いる様々な分野への波及効果の持続的な発展に資する。
  • S=優れた研究成果を挙げる一方で、産学官の強固な連携が確立されている。
  • A=目標が適切に設定され、優れた成果が得られている。
  • B=妥当な目標を立てて研究開発を実施しているが、研究開発テーマ間の連携等が不十分である。
  • C=目標が適切に設定されておらず、達成目標の実現性に疑問がある。

判断基準3 世界最高水準の高度情報通信システム形成のための鍵となるソフトウェア開発を実現させて、いつでもどこでも誰でも安心して参加できるIT社会の構築に資する。
  • S=学術的成果を挙げる一方で、企業との適切な連携を確立しており、また、実用レベルまで完成度を高め、適切に人材育成を行うなど、当初計画以上に研究が進捗している。
  • A=目標が適切に設定され、学術的にも優れた成果が得られている。
  • B=妥当な目標を立てて研究開発を実施しているが、研究開発テーマ間の連携等が不十分である。
  • C=目標が適切に設定されておらず、達成目標の実現性に疑問がある。

2.平成19年度の状況

  高機能・超低消費電力コンピューティングのためのデバイス・システム基盤技術の研究開発に関して、次世代高機能低消費電力スピンデバイス基盤技術の開発においては、素子の加工プロセスの検討や、不揮発ロジック基本演算要素の回路モデルの構築を行った。
  また、超高速大容量ストレージシステムの開発においては、シミュレーションを用いて技術的課題の抽出を行った。

  革新的実行原理に基づく超高性能データベース基盤ソフトウェアの開発に関して、非順序型データベースエンジンを実装した効果を確認するため、既存のデータベースシステムを用いた実験環境において、非順序型実行原理を模擬する小規模実験を実施し、性能向上効果を確認した。

  e-Society基盤ソフトウェアの総合開発に関して、「高信頼組込みソフトウェア構築技術」においては、UML設計検証ツールの実用版の開発等を、「先進的なストレージ技術およびWeb解析技術」においては、ディザスタリカバリシステムの監視技術及びサイバーコミュニティ抽出技術の評価等を、「ユーザ負担のない話者・環境適応性を実現する自然な音声対話処理技術」においては大語彙連続音声認識プログラムや音声規則合成プログラムなどの大幅なバージョンアップ等をそれぞれで行うなど、各課題においては目標の達成に向けた作業を行い、当初予定である5年間のプロジェクトを完了した。

3.評価結果

  A

判断理由

  各判断基準に照らした結果、A、A、Aとなり、達成目標10‐2‐2は「想定どおり順調に進捗」と判断。

4.今後の課題及び政策への反映方針

  高機能・超低消費電力コンピューティングのためのデバイス・システム基盤技術の研究及び革新的実行原理に基づく超高性能データベース基盤ソフトウェアの開発については、平成19年度は順調に進捗しており、また、これら課題は連携施策群や革新的技術に位置づけられるなど、重要性が認められているため、更に目標達成に向けて研究開発を推進する。

  e-Society基盤ソフトウェアの総合開発については、平成19年度をもって、当初予定である5年間のプロジェクトが完成した。全研究開発において、当初目標は達成しており、成果を上げた。
  なお、プロジェクト内の課題において、引き続き研究開発すべき事業については、引き続き施策として進めていくべきである。

5.主な政策手段

政策手段の名称
[19年度予算額(百万円)]
概要 19年度の実績 21年度予算要求への考え方
高機能・超低消費電力コンピューティングのためのデバイス・システム基盤技術の研究開発
(次世代IT基盤構築のための研究開発)
(425百万円)
革新的な高機能・低消費電力デバイスにより、高機能コンピューティングを実現させる技術基盤を確立するため「超高速・多機能スピンデバイスの開発」、「高速大容量ストレージシステムの開発」等といった、ブレークスルーが必要な技術について一体的に研究開発を実施している。 次世代高機能低消費電力スピンデバイス基盤技術の開発においては、素子の加工プロセスの検討や、不揮発ロジック基本演算要素の回路モデルの構築を行った。
また、超高速大容量ストレージシステムの開発においては、シミュレーションを用いて技術的課題の抽出を行った。
継続
革新的実行原理に基づく超高性能データベース基盤ソフトウェアの開発
(次世代IT基盤構築のための研究開発)
(145百万円)
爆発的に増大し続ける情報の戦略的活用に不可欠な超高性能データベース基盤技術を実現するための要素技術について一体的に研究開発を実施している。 非順序型データベースエンジンを実装した効果を確認するため、既存のデータベースシステムを用いた実験環境において、非順序型実行原理を模擬する小規模実験を実施し、性能向上効果を確認した。 継続
e-Society基盤ソフトウェアの総合開発
(671百万円)
世界最高水準の高度情報通信システム形成のための鍵となるソフトウェア開発を実現するため、「高い生産性を持つ高信頼ソフトウェア作成技術の開発」(6プロジェクト)、及び「情報の高信頼蓄積・検索技術等の開発」(3プロジェクト)において研究開発を実施している。 「高信頼組込みソフトウェア構築技術」においては、UML設計検証ツールの実用版の開発等を、「先進的なストレージ技術およびWeb解析技術」においては、ディザスタリカバリシステムの監視技術及びサイバーコミュニティ抽出技術の評価等を、「ユーザ負担のない話者・環境適応性を実現する自然な音声対話処理技術」においては大語彙連続音声認識プログラムや音声規則合成プログラムなどの大幅なバージョンアップ等をそれぞれで行うなど、各課題においては目標の達成に向けた作業を行い、当初予定である5年間のプロジェクトを完了した。 平成19年度
廃止

達成目標10‐2‐3

  すべての国民がITの恩恵を実感できる社会の実現に向けた研究開発の推進を図る。

(基準年度:16年度・達成年度:23年度)

1.評価の判断基準

  各判断基準の結果の平均から判断する(S=4、A=3、B=2、C=1と換算する。)

判断基準1 「いつでも、どこでも」 「安全、安心」かつ「快適」なユビキタス社会を世界に先がけて実現するための基盤技術の確立を目指す。
  • S=優れた研究成果を挙げる一方で、産学官の強固な連携が確立されている。
  • A=目標が適切に設定され、優れた成果が得られている。
  • B=妥当な目標を立てて研究開発を実施しているが、研究開発テーマ間の連携等が不十分である。
  • C=目標が適切に設定されておらず、達成目標の実現性に疑問がある。
判断基準2 ソフトウェアが適正な手順で構築されているかを把握可能とする「ソフトウェアタグ」を製品に添付し発注者に提供するための技術を開発する。これにより、ソフトウェアに対するトレーサビリティの概念を普及する。
  • S=想定以上の高機能化や高精度化が実現される。
  • A=基本となる機能や精度が実現されている。
  • B=基本となる機能や精度に満たされていない部分がある。
  • C=基本となる機能や精度に大幅な欠落がある。
判断基準3 デジタル・アーカイブを作成・活用するためのソフトウェアの技術開発を目指す。
  • S=想定以上の高機能化や高精度化が実現される。
  • A=基本となる機能や精度が実現されている。
  • B=基本となる機能や精度に満たされていない部分がある。
  • C=基本となる機能や精度に大幅な欠落がある。

2.平成19年度の状況

  安全なユビキタス社会を支える基盤技術の研究開発プロジェクトについては、高性能耐タンパセキュアチップと、それと連動するリアルタイム組込みOSの開発を行うとともに、実証を行い、目標を達成し、平成19年度をもって3年間のプロジェクトは終了した。

  ソフトウェア構築状況の可視化技術の開発普及プロジェクトについては、ソフトウェア開発に関する実証的データを収集し「ソフトウェアタグ」としてソフトウェア製品に添付して提供する技術の開発を目指し、ソフトウェアタグの設計案を作成するとともに、ソースコードファイルにソフトウェアタグを搭載するシステムの試作を行った。また、ソフトウェアタグにより抽出したソフトウェア構築状況を可視化する方法を検討し、ソフトウェアタグに記録されたデータを閲覧するシステムの試作を行った。また、ソフトウェアの発注者と開発者間の過去の紛争事例について調査を行い、ソフトウェアタグに取り込むデータ項目の検討に役立てた。

  「知的資産の電子的な保存・活用を支援するソフトウェア技術の構築」に関して、「文化財のデジタル・アーカイブ化」において大型有形文化財の色彩付き3次元形状モデルを生成するための色彩データ・幾何データ統合実験や、「教育機関向けデジタル・アーカイブ利用システム」においてメディアのコンテンツを横断的に検索する検索エンジンの開発や、検索された異なるデータのコンテンツを統合する統合エンジンの研究開発等が計画通りに進捗している。

3.評価結果

  A

判断理由

  各判断基準に照らした結果、A、A、Aとなり、達成目標10‐2‐3は「想定どおり順調に進捗」と判断。

4.今後の課題及び政策への反映方針

  安全なユビキタス社会を支える基盤技術の研究開発プロジェクトに関して、平成19年度をもって、当初予定である3年間のプロジェクトが完了した。今後は産業化に向けたプロセスとして、本成果の普及に向けた取り組みを図る必要がある。
  ソフトウェア構築状況の可視化技術の開発普及に関して、平成19年度は順調に進捗しており、今後はソフトウェアタグの規格や、開発プロセスのデータ収集方法等の策定・評価を実施するとともに、現行法との関係の検討を実施する。
  知的資産の電子的な保存・活用を支援するソフトウェア技術基盤の構築に関して、研究が順調に進捗していることから、最終年度である平成20年度も引き続き目標達成に向けて研究開発を実施する。

5.主な政策手段

政策手段の名称
[19年度予算額(百万円)]
概要 19年度の実績 21年度予算要求への考え方
安全なユビキタス社会を支える基盤技術の研究開発
(次世代IT基盤構築のための研究開発)
(243百万円)
「いつでも、どこでも」 「安全、安心」かつ「快適」なユビキタス社会を世界に先がけて実現するための基盤技術の確立を目指し、「安全なユビキタス社会を支える基盤技術の研究開発」を実施している。 平成18年度に引き続き高性能耐タンパセキュアチップの開発をし、それと連動したリアルタイム組込みOSの開発や、セキュリティ技術のユビキタスコンピューティングへの応用実験を行い、目標を達成し、当初予定である3年間のプロジェクトを完成した。 平成19年度で廃止
ソフトウェア構築状況の可視化技術の開発普及
(次世代IT基盤構築のための研究開発)
(100百万円)
世界最高水準の安心・安全なIT社会を実現することを目的として、ソフトウェアが適正な手順で構築されているかを把握可能にするためにソフトウェアの構築状況のデータを収集し、「ソフトウェアタグ」として製品に添付して発注者に提供するための技術を世界に先駆けて開発する。 ソフトウェア開発に関する実証的データを収集し「ソフトウェアタグ」としてソフトウェア製品に添付して提供する技術の開発を目指し、ソフトウェアタグの設計案を作成するとともに、ソースコードファイルにソフトウェアタグを搭載するシステムの試作を行った。また、ソフトウェアタグにより抽出したソフトウェア構築状況を可視化する方法を検討し、ソフトウェアタグに記録されたデータを閲覧するシステムの試作を行った。また、ソフトウェアの発注者と開発者間の過去の紛争事例について調査を行い、ソフトウェアタグに取り込むデータ項目の検討に役立てた。 継続
知的資産の電子的な保存・活用を支援するソフトウェア技術基盤の構築
(315百万円)
(平成20年度達成年度到来事業)
人々の教育、文化・芸術に触れる機会の増大と、新たなコンテンツ作成・配信技術の創出を行うため、「文化財のデジタル・アーカイブ化」領域(2プロジェクト)。及び「教育機関向けデジタル・アーカイブ利用システム」領域(3プロジェクト)において研究開発を実施している。 【事業期間全体の総括】
「文化財のデジタル・アーカイブ化」において大型有形文化財の色彩付き3次元形状モデルを生成するための色彩データ・幾何データ統合実験や、「教育機関向けデジタル・アーカイブ利用システム」においてメディアのコンテンツを横断的に検索する検索エンジンの開発や、検索された異なるデータのコンテンツを統合する統合エンジンの研究開発等が計画通りに進捗している。
廃止

お問合せ先

大臣官房政策課評価室

-- 登録:平成21年以前 --