施策目標2-1 確かな学力の育成

  

(基準年度:18年度・達成年度:22年度)

  基礎・基本を徹底し、自ら学び自ら考える力などまで含めた「確かな学力」を身に付けさせる。

主管課(課長名)

  初等中等教育局教育課程課(高橋 道和)

関係課(課長名)

  初等中等教育局財務課(関 靖直)、同国際教育課(大森 摂生)、同児童生徒課(磯谷 桂介)
同参事官(斎藤 尚樹)

評価の判断基準

  各達成目標の平均から判断(S=4、A=3、B=2、C=1として計算)

  • S=3.4~4.0
  • A=2.6~3.3
  • B=1.8~2.5
  • C=1.0~1.7

平成19年度の状況と総合評価結果

  各達成目標の達成度合いの評価は、達成目標2‐1‐1~2‐1‐5いずれも一定の成果があがっているが、一部については想定通り達成できなかったことから、判断基準に照らして平成19年度の基本目標の達成度合いは、一定の成果があがっているが、一部については想定通り達成できなかったものとして判断する。

  • 評価結果:B(=2.0)

必要性・有効性・効率性分析

必要性の観点

  我が国の子どもたちの学力は、全体として国際的にみて上位にあるが、読解力がPISAにおいてOECD平均にとどまるなどの課題がみられる。こうした課題に対応するため、平成20年3月に学習指導要領の改訂を行ったが、新学習指導要領の目的を達成するためには、その趣旨や理念を踏まえ、教育諸条件の整備に努めるなど、「確かな学力」を身につけるための施策を引き続き行う必要がある。

有効性の観点

  新しい学習指導要領は、基礎的な知識・技能の定着と、学ぶ意欲、思考力、判断力、表現等力まで含めた「確かな学力」を育成すること目指している。本事業を行うことにより、新学習指導要領が円滑かつ効果的に実施され、その下で「確かな学力」の育成が図られることを目指している。

効率性の観点

事業インプット

  • 確かな学力の育成に必要な経費 50,767百万円(平成19年度予算額)
    • 学力・学習意欲の向上 742百万円全国的な学力調査の実施 5,359百万円
    • 学習指導要領等の編集改訂等 240百万円
    • 小学校における英語活動等国際理解活動推進プラン 626百万円
    • 学校図書館活用推進事業 659百万円
    • 学校におけるIT活用等の推進 671百万円 等
  • 教育政策の基礎的な調査研究に必要な経費 2,694百万円の内数(平成19年度予算額)

事業アウトプット

  本事業の実施により、1.指導上の課題が明らかになり、2.全国均一の水準の教育諸条件が整備され、新学習指導要領が円滑かつ効果的に実施されるといった効果が見込まれる。

事業アウトカム

  上記のような諸施策を着実に実施していくことにより、「確かな学力」を育成することができる。

今後の課題及び政策への反映方針

予算要求への反映

  これまでの取組を引き続き推進

機構定員要求への反映

  定員要求に反映

具体的な反映内容について

  達成目標2‐1‐1について、我が国の児童生徒には読解力などに課題があるが、こうした課題に対応するため、平成20年3月に学習指導要領の改訂を行った。このことを踏まえ、学習指導要領の円滑な実施のための支援を行う。全国学力・学習状況調査の分析・検証の強化を図るため、専門職1名を要求する。

  達成目標2‐1‐2について、平成15年度からの5カ年計画として策定された「英語が使える日本人」育成のための行動計画については、平成19年度が最終年度であった。達成目標に到達することはできなかったが、計画期間中、小学校における英語活動の実施状況等、学校教育において児童生徒が英語を学習するための体制の整備は進められ、「英語の使える日本人」を育成する体制の整備については一定の成果があったと言える。今後、英語教育に関する施策の充実に努めていく。

  達成目標2‐1‐3については、児童生徒の主体的な学習活動や読書活動が充実するよう、学校図書館の一層の活用に向けて、学習活動の支援、教員のサポート機能の強化、読書週間習慣の定着等関連施策の更なる推進を図る。

  達成目標2‐1‐4については、学校のICT環境の計画的な整備・充実が図られるよう、引き続き、各都道府県・指定都市教育委員会に対して通知を発出するとともに、各種調査研究事業等を通じて、地方公共団体や学校の取組みを支援していく。

  達成目標2‐1‐5については、全ての教員が、平成22年度までに教員のICT活用指導力の18のチェック項目全てについて、「わりにできる」「ややできる」と回答することを目指して、引き続き、各種調査研究事業等を通じて、地方公共団体や学校の取組を支援していく。

関係する施政方針演説等内閣の重要施策(主なもの)

経済財政改革の基本方針2008(平成20年6月27日 閣議決定)

  記載事項(抜粋)

  2.未来を切り拓く教育

  教育基本法の理念の実現に向け、新たに策定する「教育振興基本計画」に基づき、我が国の未来を切り拓く教育を推進する。その際、新学習指導要領の円滑な実施、特別支援教育・徳育の推進、体験活動の機会の提供、教員が一人一人の子どもに向き合う環境作り、学校のICT化や事務負担の軽減、教育的観点からの学校配置、定数の適正化、学校支援地域本部、高等教育の教育研究の強化、競争的資金の拡充など、新たな時代に対応した教育上の諸施策に積極的に取り組む。

教育振興基本計画(平成20年7月1日閣議決定)

  記載事項(抜粋)

  第3章 今後5年間に総合的かつ計画的に取り組むべき施策

  (3)基本的方向ごとの施策

  基本的方向2

  1. 知識・技能や思考力・判断力・表現力、学習意欲等の「確かな学力」を確立する
  • 学習指導要領の改訂と着実な実施
  • 総合的な学力向上策の実施
  • 全国学力・学習状況調査の継続的実施とその結果を活用した学校改善への支援等

関連達成目標

  なし

達成目標2‐1‐1

  学習指導要領の目標・内容に照らした児童生徒の学習状況の改善を図り、知識・技能はもとより、学ぶ意欲、思考力、判断力、表現力等まで含めた「確かな学力」を育成する。

(基準年度:18年度・達成年度:22年度)

1.評価の判断基準

判断基準 国内外の学力調査等の結果について、調査項目(教科等)ごとに詳細に分析した結果
  • S=全体的に「確かな学力」が向上している。
  • A=全体的に「確かな学力」が向上または維持されており、特段の低下傾向や課題はみられない。
  • B=全体的に「確かな学力」が向上または維持されているが、一部に低下傾向や課題がみられる。C=全体的に「確かな学力」が低下している。

2.平成19年度の状況

  学習指導要領の目標・内容に照らした児童生徒の学習状況の改善を図り、知識・技能はもとより、学ぶ意欲、思考力、判断力、表現力等まで含めた「確かな学力」を育成するため、小・中学校学習指導要領を改訂した。また、個に応じた指導の充実とそれらを通じた基礎基本の着実な習得や学習意欲の向上を図るとともに、全国的な児童生徒の学力状況を把握検証するため、全国的な学力調査を実施した。

指標・参考指標

      平成15年度 平成16年度 平成17年度 平成18年度 平成19年度
  1. 教育課程実施状況調査の結果
  • 設定通過率を上回る又は同程度と考えられる問題数の合計が過半数を占める教科の割合(学年、教科・科目数)
8/8
14/15
8/9 8/12
  • 授業の理解度(よくわかる、だいたいわかると回答した率)
3.6%(小5)
43.4%(中2)
38.0%(高3) 41.3%(高3)
  • 前回調査との同一問題に関する平均正答率
78.0%
62.4%
  1. 全国学力・学習状況調査の結果
  • 授業の理解度(よくわかる、だいたいわかると回答した率)
小6 国78.1%算77.2%
中3 国65.8%算64.0%
  • 過去の調査との同一問題について、今回の調査結果が上回った割合
小6 国6/6算6/7
中3 国7/8算3/4
  1. 生徒の学習到達度調査(PISA)の結果  
  • 数学的活用能力
1位G OECD平均より高得点G
  • 読解力
OECD平均 OECD平均
  • 科学的活用能力
1位G 上位G
  • 問題解決能力
1位G
  1. 習熟度別指導を実施している学校の割合
74.2% 81.6% 80.7% 82.7%
66.9% 72.3% 73.1% 74.4%

指標に用いたデータ・資料等

  • 資料:1.(設定通過率とは、学習指導要領に示された内容について、標準的な時間をかけ、学習指導要領作成時に想定された学習活動が行われた場合、個々の問題ごとに正答、準正答の割合の合計である通過率がどの程度になると考えられるかを示した数値)、2.(平成19年度全国学力・学習状況調査)3.(生徒の学習到達度調査(PISA)(OECD)、4.(公立小・中学校における教育課程の編成・実施状況調査)

指標の設定根拠

  • 1、2については国内の大規模な、3についてはOECD加盟国を中心とした国際的な学力調査であり、我が国の児童生徒の状況を示す代表的な調査として引用した。国内の調査については、過去の状況との比較により児童生徒の学力の状況を概括的に表すとともに、各種調査で継続的に聞いている理解度を示すことで学習の背景について示している。また、4ついては、学校における指導の充実を示す代表的な調査として引用した。

3.評価結果

  B

判断理由

  内外の学力調査等の結果について、調査項目(教科等)ごとに詳細に分析した結果、我が国の児童生徒の成績は全体として国際的にみて上位にあり、学力低下傾向に若干の歯止めがかかったと考えられるものの、PISAにおいて読解力がOECD平均にとどまるなどの課題が見られ、また、子どもの生活習慣や学習習慣が必ずしも十分身についていないため。

4.今後の課題及び政策への反映方針

    調査で明らかになった指導上の改善点を踏まえ、個に応じた指導を一層充実させるとともに、読解力を向上させることや学習意欲、学習習慣等を児童生徒に身に付けさせることが必要である。これらの視点も踏まえつつ学習指導要領の改訂を行うとともに、その趣旨の周知、円滑な実施のための支援を行う。
加えて、児童生徒の学力・学習状況を把握・分析し教育施策や指導の改善するため、全国学力・学習状況調査を平成19年度から継続的に実施するとともに、学力調査の技術基盤の構築や調査結果を活用した検証改善サイクルの確立に向けた取組を進めることとしており、「確かな学力」の向上のため、今後も「全国的な学力調査の実施」をはじめとした事業を引き続き実施する。

5.主な政策手段

政策手段の名称
[19年度予算額(百万円)]
概要 19年度の実績 21年度の予算要求への考え方
学習指導要領の編集改訂(学習指導要領全体の見直し)
(200百万円)
中央教育審議会の審議を踏まえ、学習指導要領を改訂。 学習意欲、学習習慣等の課題への対応や思考力・判断力・表現力の育成等の視点から、小・中学校学習指導要領を改訂した。 継続。改訂後の学習指導要領の趣旨の周知を図る。
学力・学習意欲の向上、国語教育の改善推進等(学力向上アクションプランの実施)
(9,834百万円)

  1.個に応じた指導の充実、2.学力の質の向上、3.個性・能力の伸長(スーパーサイエンスハイスクールなど)、4.英語力

  • 国語力の向上を柱とした学力向上アクションプランを実施。
習熟度別指導を実施している学校数が増加、スーパーサイエンスハイスクールなどの指定校数も増加し、学力向上のための取組が行われた。 学習指導要領を改訂したことを踏まえ、学習指導要領の円滑な実施のための支援を行う。
全国的な学力調査の実施
(6,184百万円)
小6、中3の原則として全児童生徒を対象として学力及び学習状況の調査に関する取組を実施。 全国学力・学習状況調査を4月に実施し、10月に調査結果を公表した。また、各都道府県・指定都市に設置された検証改善委員会へ委託研究事業を実施し、学校等における改善の取組に対する支援策を含む「学校改善支援プラン」の作成など、各地域における調査結果の検証・活用を促す取組を進めた。 継続

達成目標2‐1‐2

  国際社会で主体的に行動することができる能力の基礎を育成するために国際理解教育を推進する体制を整備するとともに、「英語が使える日本人」の育成のための行動計画に基づき、「英語が使える日本人」を育成する体制を確立する。

(基準年度:14年度・達成年度:19年度)

1.評価の判断基準

  各判断基準の結果の平均から判断する。(S=4、A=3、B=2、C=1とし、平均が3.4~4.0=S、2.6~3.3=A、1.8~2.5未満=B、1.0~1.7=Cとする)

判断基準1 体制の確立度合いを示す指標の伸び
  • S=すべての指標が、計画策定当初より10ポイント以上向上している
  • A=指標の8割以上が、計画策定当初より向上している
  • B=半分以上の指標が、計画策定当初よりが向上している
  • C=計画策定当初よりポイントが向上している指標が半分以下
判断基準2 生徒の英語力の到達目標に対する到達割合
  • S=指標6、7が、計画に示された目標(50%)を大幅に上回っている(目標に対し120%以上)
  • A=指標6、7が、計画に示された目標(50%)を達成している(目標に対し100%以上)
  • B=指標6、7が、ともに35%以上に達している(目標に対し70%以上)
  • C=指標6、7が、ともに35%未満(目標に対し70%未満)

2.平成19年度の状況

  平成19年度は、スーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクールを81校指定、英語指導法開発事業を6件採択、小学校英語活動地域サポート事業を3地域指定する等を行った。
  平成14年度に当該達成目標を設定した以後、スーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクールを延べ169校指定し、平成17年度以降英語指導法開発事業を延べ15件、小学校英語活動地域サポート事業を35地域を指定したこと等により、「英語が使える日本人」を育成する体制の確立を推進してきた。
  英語教育改善実施状況調査等によれば、小学校における外国語活動の実施状況及び中学校、高等学校における外国語指導助手(ALT)の活用状況等は、「英語が使える日本人」の育成のための行動計画が開始された平成15年度以降、おおむね順調に伸びており、学校教育において、児童・生徒が英語を学習するにあたっての体制が整備されてきている。
なお、中学校3年生の英語力は、「英語が使える日本人」の育成のための行動計画に示された「卒業者の平均が英検3級程度」という目標に対して、32.4パーセントが同程度の英語力を有しており、高等学校3年生については、行動計画に示された目標である「卒業者の平均が英検準2級から2級程度」に対して、30.3パーセントが同程度の英語力を有している。

指標・参考指標

  平成15年度 平成16年度 平成17年度 平成18年度 平成19年度
1 小学6年における英語活動実施状況 88.3% 92.1% 93.6% 95.8% 97.1%
  • 伸び(ポイント)
0 3.8 5.3 7.5 8.8
2 中学3年の授業におけるALTの参加率 20.2% 17.8% 23.3% 25.5% 26.3%
  • 伸び(ポイント)
0 -2.4 3.1 5.3 6.1
3 高校3年の授業におけるALTの参加率)  1)国際コース   21.6% 23.7% 23.4% 24.4% 25.1%
  • 伸び(ポイント)
0 2.1 1.8 2.8 3.5
2)その他の学科 7.0% 9.1% 10.4% 10.1% 10.6%
  • 伸び(ポイント)
0 2.1 3.4 3.1 3.6
4 英語教員の英語力(中学校教員:英検準1級程度の英語力を持つ教員の割合)       24.8% 26.6%
  • 伸び(ポイント)
      0 1.8
5 英語教員の英語力(高等学校教員:英検準1級程度の英語力を持つ教員の割合)        48.4% 50.6%
  • 伸び(ポイント)  
      0 2.2
6 生徒の英語力(中学生:英検3級程度の英語力を持つ生徒の割合)       33.7% 32.4%
  • 伸び(ポイント)  
      0 -1.3
7 生徒の英語力(高校生:英検準2級~2級程度)       27.8% 30.3%
  • 伸び(ポイント)
      0 2.5

指標に用いたデータ・資料等

  • 小学校英語活動実施状況調査
  • 英語教育改善実施状況調査(中学校、高等学校)
    (注)指標4~7については、平成15~17年度は調査を実施していない。

指標の設定根拠

    「英語が使える日本人」の育成のための行動計画の中に記載されている指標のうち、学校教育において児童・生徒が英語を学習するための体制の整備に関するものを指標とした。また、体制を整備した結果を図る指標として、中学校卒業段階及び高等学校卒業程度の英語力を取り上げた。

  • 中学校卒業段階:挨拶や対応、身近な暮らしに関わる話題について平易なコミュニケーションができる(卒業者の平均が実用英語技能検定(英検)3級程度)
  • 高等学校卒業段階:日常的な話題について通常のコミュニケーションができる(卒業者の平均が英検準2級~2級程度)

3.評価結果

  A

判断理由

   1.~7.のうち6つの指標について、計画策定当初より指標が向上していた。
  判断基準において、指標の8割以上が計画策定当初より向上している場合Aとしているので、評価結果はAとした。

4.今後の課題及び政策への反映方針

  平成15年度からの5ヵ年計画として策定された「英語が使える日本人」育成のための行動計画については、平成19年度が最終年度であった。英語力についての達成目標に到達することはできなかったが、計画期間中、小学校における英語活動の実施状況等、学校教育において児童生徒が英語を学習するための体制の整備は進められ、「英語が使える日本人」を育成する体制の整備については一定の成果があったと言える。今後、小学校外国語活動の導入に伴う教材等の整備等を含む英語教育改革総合プランを実施する等英語教育に関する施策の充実に努めていく。

5.主な政策手段

政策手段の名称
[19年度予算額(百万円)]
概要 19年度の実績 21年度の予算要求への考え方
「英語が使える日本人」の育成のための行動計画の着実な推進
(474百万円)
「英語が使える日本人」の育成のための行動計画を推進。
  • スーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクールを81校指定した。
継続(継続校のみ)
  • 地域における英語教育の中核的な役割を果たす人材の育成を図ることを目的に、6件を採択のうえ英語指導法開発事業を実施した。
終了
  • 現行の小学校英語活動における指導方法や教材作成等の課題に対する充実・改善をサポートするための事業を、1か年または2か年の指定をして行った。平成17年度に30地域を、18年度には17年度からの継続25地域を含む30地域を、19年度には18年度からの継続3地域を指定した。
終了

達成目標2‐1‐3

  児童生徒の主体的な学習活動や読書活動が充実するよう学校図書館の機能の充実・強化を図る。

(基準年度18年度・達成年度:22年度)

1.評価の判断基準

  指標の結果(又は指標の結果の平均)から判断する。

判断基準1 全校一斉の読書活動を実施している小・中学校全体の割合
  • S=85%以上
  • A=80~85%
  • B=75~80%
  • C=70~75%
判断基準2 公立小・中学校の学校図書の1年度間の増加冊数
  • S=800万冊以上
  • A=600~800万冊
  • B=400~600万冊
  • C=200~400万冊

2.平成19年度の状況

・平成19年度における取組について

  学校図書館の機能の充実・強化を図るため、学校図書館支援センター推進事業を拡充して引き続き実施するとともに、新たに、市町村レベルでの調査研究を行う「子ども読書の街」のモデル地域指定と、各界の有識者で構成される「子どもの読書サポーターズ会議」の設置からなる「読む・調べる」習慣の確立に向けた実践研究事業を実施した。また、19年度から23年度までの新しい学校図書館図書整備5か年計画を策定し、図書資料の計画的な整備を図った。

・指標にかかる結果について

  読書活動については、公立小・中学校全体で約91パーセントの学校が全校一斉の読書活動を実施しており、前年度と比較して約1ポイント上昇しているなど、取組は進んでいるものと判断。一方、公立小・中学校の学校図書については、平成18年3月31日現在の蔵書冊数は全体で約2億5,700万冊と前年度と比べ約300万冊の増加にとどまっている。

指標・参考指標

  平成15年度 平成16年度 平成17年度 平成18年度 平成19年度
1.公立小・中学校図書館の蔵書数 244百万冊 248百万冊 254百万冊 257百万冊 -
2.公立小・中学校全体で全校一斉読書活動を実施している学校の割合 83.9% 87.1% 89.8% 91.2% -

評価に用いたデータ・資料等

  • 評価に用いたデータ:学校図書館の現状に関する調査結果

指標の設定根拠

  1. 読書活動の取組の状況を評価する指標として、学校で実施できる代表的な活動としての全校一斉読書活動の実施割合を用いた。
  2. 学校図書館の機能の発揮を図る上で、蔵書の充実は必須であり、その増加冊数を指標として用いた。

3.評価結果

  B

判断理由

  全校一斉の読書活動を実施している学校の割合は90パーセントを超えており、評価はS。一方、学校図書の増加冊数については約300万冊であり、評価はC。これらを総合的に勘案した結果、一定の成果があがっているが、一部については想定どおり達成できなかったため、B評価とする。

4.今後の課題及び政策への反映方針

  以上のように、達成目標2‐1‐3については、概ね順調に進捗しているものの、蔵書の整備は必ずしも十分ではないなどの課題もあると判断する。なお、平成19年度から新しい学校図書館図書整備5か年計画が始まったが、当該年度における約200億円の地方財政措置に対する予算額は約156億円(予算措置率は約78パーセント)である。今後、新しい計画を活用し、各市町村においてより一層の予算化が進むよう理解の増進を図る。このため、引き続き各都道府県教育委員会に対して通知を発出するとともに、各種会議等において指導を行うことに加え、広報リーフレットやポスターの作成・配付等を通じ、広く学校図書館及び子どもの読書の重要性について周知することを進める。

  このほか、読書活動については、「子どもの読書活動の推進に関する法律」に基づく「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」等を踏まえ、引き続き、その推進を図る。

5.主な政策手段

政策手段の名称
〔19年度予算額(百万円)〕
概要 19年度の実績 21年度予算要求への考え方
学校図書館図書整備5か年計画に基づく図書整備の推進 平成19年度から5か年で毎年約200億円、総額約1,000億円の地方財政措置を講じていることを踏まえ、学校図書館図書の計画的な整備について、各都道府県教育委員会に周知を図る。   各自治体の予算措置状況について調査・公表を行い、学校図書館図書の計画的な整備について各都道府県教育委員会に周知を行った。 -
「学校図書館支援センター推進事業」の実施
(395百万円)
学校図書館の機能の充実・強化を図るため、教育センター等に、学校図書館の活用・運営に対して指導・助言等を行う学校図書館支援センターを置き、当該センターによる学校図書館に対する支援の在り方について調査研究を行う。    学校図書館支援センター推進地域を47地域指定(拡充)し、調査研究を実施した。 21年度から本事業を発展させた学校図書館の活性化推進総合事業を実施するため、廃止。
「「読む・調べる」習慣の確立に向けた実践研究事業」の実施
(198百万円)
学校図書館を活用した読書活動や学習活動の促進のための先進事例について調査研究を行う調査研究会議である「子どもの読書サポーターズ会議」を設置するとともに、その研究成果を受けた市町村レベルの実践的な調査研究として、子どもの「読む・調べる」習慣の確立に向けた取組を学校図書館を中心として街全体でモデル的に取り組む「子ども読書の街」を指定し、研究成果等を上記会議において収集・分析し、全国的に普及する。 「子ども読書の街」を10地域指定し、調査研究を実施した。また、「子どもの読書サポーターズ会議」を計5回開催し、学校図書館の在り方や公共図書館との連携、人的体制・物的整備等についての意見交換を行い、中間成果物の作成に向けて議論をまとめた。学校図書館の先進事例提供や会議の様子などを紹介する多様なコンテンツを盛り込んだホームページを作成した。
司書教諭養成講習会」の実施
(65百万円)
学校図書館法の規定により、学校図書館の専門的な職務を行う司書教諭を12学級以上の規模の学校には必ず配置しなければならないこととされている。この司書教諭は、児童生徒の読書活動や学校図書館を活用した学習活動を推進していくものであるが、同法により、文部科学大臣が大学その他の教育機関に委嘱して行う司書教諭の講習を終了した者でなければならないとされているため、司書教諭養成のための講習会を実施し、有資格者の養成を図る。 講習会実施機関数 59箇所 継続

達成目標2‐1‐4

  学校における教育の情報化が充実するよう、概ね全ての学校のICT環境の整備・充実を図る。

(基準年度:13年度・達成年度:22年度)

1.評価の判断基準

判断基準1 平成22年度までに公立小中高等学校等における教育用コンピュータ1台あたり児童生徒3.6人の割合を達成する。
  • S=教育用コンピュータ1台あたり児童生徒数6.3人を達成
  • A=教育用コンピュータ1台あたり児童生徒数6.5人~6.3人を達成
  • B=教育用コンピュータ1台あたり児童生徒数6.8人~6.5人を達成
  • C=教育用コンピュータ1台あたり児童生徒数7.1人~6.8人を達成
判断基準2 平成22年度までに概ね全ての公立小中高等学校等が、校内LANの整備を行う。
  • S=校内LAN整備率67.15%以上
  • A=校内LAN整備率61.80~67.15%
  • B=校内LAN整備率59.90~61.80%
  • C=校内LAN整備率58.00~59.90%
判断基準3 平成22年度までに概ね全ての公立小中高等学校等が、超高速インターネットに常時接続できるようにする。
  • S=超高速インターネット接続率61.25%以上
  • A=超高速インターネット接続率54.50~61.25%
  • B=超高速インターネット接続率48.00~54.50%
  • C=超高速インターネット接続率41.50~48.00%
判断基準4 平成22年度までに公立小中高等学校等の全ての教員に対しコンピュータを整備する。   
  • S=教員の校務用コンピュータ整備率57.25%以上
  • A=教員の校務用コンピュータ整備率52.60~57.25%
  • B=教員の校務用コンピュータ整備率49.40~52.60%
  • C=教員の校務用コンピュータ整備率46.20~49.40%

2.平成19年度の状況

  学校のICT環境整備等について、各都道府県・指定都市教育委員会に対し周知を行うとともに、教育の情報化に関する先導的かつ効果的な実践研究を14団体において実施。また、「学校のICT化のサポート体制の在り方に関する検討会」を実施し、学校のICT環境の計画的な整備のためのサポート体制の在り方等について検討した。
  IT新改革戦略に掲げられた教育の情報化の目標の達成状況等について把握するため、学校のICT環境の整備状況について調査を実施した。

・指標にかかる結果について

  校内LAN整備及び教員のコンピュータ整備については、前年度と比較して、それぞれ、9パーセント、14.8パーセントと上昇しており、概ね順調に進捗している。一方、教育用コンピュータ整備及び超高速インターネット整備については、進捗はしているが、評価がそれぞれC及びBとなった。

指標・参考指標

  平成15年度 平成16年度 平成17年度 平成18年度 平成19年度
学校のICT環境の整備状況
  1. 教育用コンピュータ1台あたり児童生徒数
9.7/台 8.8/台 8.1/台 7.3/台 7.0/台
  1. 校内LAN整備率
37.2% 44.3% 50.6% 56.2% 65.2%
  1. 超高速インターネット接続率
- - - 35.0% 51.8%
  1. 教員の校務用コンピュータ整備率
- - 33.4% 43.0% 57.8%

指標に用いたデータ・資料等

  • 出典:学校における教育の情報化の実態等に関する調査

指標の設定根拠

  • 「IT新改革戦略」(平成18年1月IT戦略本部)
  • 「重点計画2008」(平成20年8月IT戦略本部)

3.評価結果

  B

判断理由

  校内LAN整備及び教員のコンピュータ整備はそれぞれ10~15パーセント程度の進捗を示し、評価はA。一方、教育用コンピュータ整備及び超高速インターネット接続については進捗が遅れており、それぞれの評価はC、B。これらを総合的に勘案した結果、一定の成果があがっているが、一部については想定どおり達成できなかったため、B評価とする。

4.今後の課題及び政策への反映方針

  学校のICT環境の計画的な整備・充実が図られるよう、引き続き、各都道府県・指定都市教育委員会に対して通知を発出するとともに、各種調査研究事業等を通じて、地方公共団体や学校の取組みを支援していく。平成20年度からは、教員の指導力の向上、サポート体制の構築など教育の情報化を計画的かつ組織的に進める地域や学校の取組みを支援する事業を実施する。

5.主な政策手段

政策手段の名称
[19年度予算額(百万円)]
概要 19年度の実績 21年度の予算要求への考え方
学校のICT環境の整備促進 学校のICT環境整備等について約1,500億円の地方財政措置が講じられていることを踏まえ、学校のICT環境整備等について、各都道府県・指定都市教育委員会に対し周知を行う。 学校のICT環境整備等について、各都道府県・指定都市教育委員会に対し周知を行った。
先導的教育情報化推進プログラム(536百万円)(関連達成目標)
1‐5‐1    
情報化の急速な進展を見据えた先導的かつ効果的な教育情報化の可能性の検証を行うことを目的として、「IT新改革戦略」に掲げられている、1.ICT教育の充実、2.教員のICT指導力の向上、3.学校のICT環境の整備、4.校務の情報化の推進等に関する先導的かつ効果的な実践研究を実施。     〔事務事業等による活動量〕
14団体において、教育の情報化に関する先導的かつ効果的な実践研究を実施。
事業の継続
教育の情報化に関する検討会
(15百万円)(関連達成目標)
1‐5‐1
教育の情報化に係る諸課題について調査研究を実施。 「学校のICT化のサポート体制の在り方に関する検討会」を実施し、教員のICT活用指導力の向上のためのサポート体制の在り方等について検討。 事業の継続

達成目標2‐1‐5

  学校における教育の情報化が充実するよう、概ね全ての教員がコンピュータを使って指導できるようにする。

(基準年度:13年度・達成年度:22年度)

1.評価の判断基準

判断基準 平成22年度までに概ね全ての教員がコンピュータを使った指導を実施できるようにする。
  • S=教員のICT活用指導力の18項目の全てにおいて、「わりにできる」「ややできる」教員の割合が75%
  • A=教員のICT活用指導力の18項目の全てにおいて、「わりにできる」「ややできる」教員の割合が70%以上
  • B=教員のICT活用指導力の18項目の一部において、「わりにできる」「ややできる」教員の割合が70%未満
  • C=教員のICT活用指導力の18項目の全てにおいて、「わりにできる」「ややできる」教員の割合が70%未満

2.平成19年度の状況

  教育の情報化に関する先導的かつ効果的な実践研究を14団体において実施した。また、47都道府県において情報モラル指導セミナーを開催し、約3,500名の指導主事等が参加するとともに、約200の情報モラル指導実践事例等を紹介する教員向けWebサイトを作成した。さらに、「学校のICT化のサポート体制の在り方に関する検討会」を実施し、教員のICT活用指導力の向上のためのサポート体制の在り方等について検討した。
  IT新改革戦略に掲げられた教育の情報化の目標の達成状況等について把握するため、教員のICT活用指導力のチェックリストに基づき、18項目別に4段階(「わりにできる」、「ややできる」、「あまりできない」若しくは「ほとんどできない」)の自己評価を行う形で従来より詳細な調査を実施した。

・指標にかかる結果について

  教員のICT活用指導力の18項目の中で、70パーセント以上の項目が複数見られる一方、進捗が遅れている項目もある。

指標・参考指標

  平成15年度 平成16年度 平成17年度 平成18年度 平成19年度
コンピュータを使って指導ができる教員の割合(注1) 60.3% 68.0% 76.8% - -
1.教育効果をあげるには、どの場面にどのようにしてコンピュータやインターネットなどを利用すればよいかを計画する。(注2)       57.6% 60.5%
2.授業で使う教材や資料などを集めるために、インターネットやCD-ROMなどを活用する。
  (注2)
      77.3% 78.6%
3.授業に必要なプリントや提示資料を作成するために、ワープロソフトやプレゼンテーションソフトなどを活用する。(注2)       74.0% 75.5%
4.評価を充実させるために、コンピュータやデジタルカメラなどを活用して児童の作品・学習状況・成績などを管理し集計する。(注2)       68.5% 70.8%
5.学習に対する児童の興味・関心を高めるために、コンピュータや提示装置などを活用して資料などを効果的に提示する。(注2)       56.4% 58.7%
6.児童一人一人に課題を明確につかませるために、コンピュータや提示装置などを活用して資料などを効果的に提示する。(注2)       51.0% 53.8%
7.わかりやすく説明したり、児童の思考や理解を深めたりするために、コンピュータや提示装置などを活用して資料などを効果的に提示する。(注2)       52.4% 55.1%
8.学習内容をまとめる際に児童の知識の定着を図るために、コンピュータや提示装置などを活用して資料などをわかりやすく提示する。(注2)       50.4% 53.2%
9.児童がコンピュータやインターネットなどを活用して、情報を収集したり選択したりできるように指導する。(注2)       66.3% 66.7%
10.児童が自分の考えをワープロソフトで文章にまとめたり、調べたことを表計算ソフトで表や図などにまとめたりすることを指導する。(注2)       56.2% 57.6%
11.児童がコンピュータやプレゼンテーションソフトなどを活用して、わかりやすく発表したり表現したりできるように指導する。(注2)       48.8% 51.2%
12.児童が学習用ソフトやインターネットなどを活用して、繰り返し学習したり練習したりして、知識の定着や技能の習熟を図れるように指導する。(注2)       54.1% 55.7%
13.児童が発信する情報や情報社会での行動に責任を持ち、相手のことを考えた情報のやりとりができるように指導する。(注2)       63.8% 66.0%
14.児童が情報社会の一員としてルールやマナーを守って、情報を集めたり発信したりできるように指導する。(注2)       65.2% 67.4%
15.児童がインターネットなどを利用する際に、情報の正しさや安全性などを理解し、健康面に気をつけて活用できるように指導する。
  (注2)
      65.7% 67.7%
16.児童がパスワードや自他の情報の大切さなど、情報セキュリティの基本的な知識を身につけることができるように指導する。
  (注2)
      56.3% 59.4%
17.校務分掌や学級経営に必要な情報をインターネットなどで集めて、ワープロソフトや表計算ソフトなどを活用して文書や資料などを作成する。(注2)       71.0% 74.1%
18.教員間、保護者・地域の連携協力を密にするため、インターネットや校内ネットワークなどを活用して、必要な情報の交換・共有化を図る。(注2)       52.6% 57.2%

  平成18年度にIT新改革戦略に基づき、「ICTを活用して指導する能力」の具体化・明確化を行った。

  • (注1) 教育用ソフトウェア、インターネット等を使用してコンピュータを活用したり、大型教材提示装置(プロジェクタ等)によってコンピュータ画面上のネットワーク提供型コンテンツや電子教材などを提示しながら授業等ができる教員の割合
  • (注2) 文部科学省「教員のICT活用指導力の基準の具体化・明確化に関する検討会」でとりまとめたチェックリストに基づき、18項目別に4段階(「わりにできる」「ややできる」「あまりできない」若しくは「ほとんどできない」)の自己評価を行い、「わりにできる」「ややできる」と回答した教員の割合

指標に用いたデータ・資料等

  • 出典:学校における教育の情報化の実態等に関する調査

指標の設定根拠

  • 「IT新改革戦略」(平成18年1月IT戦略本部)
  • 「重点計画2008」(平成20年8月IT戦略本部)

3.評価結果

  B

判断理由

  教員のICT活用指導力の18項目の一部において、「わりにできる」「ややできる」と回答した教員の割合が70パーセント未満だったため、B評価とする。

4.今後の課題及び政策への反映方針

  全ての教員が、平成22年度までに教員のICT活用指導力の18のチェック項目全てについて、「わりにできる」「ややできる」と回答することを目指して、各種調査研究事業等を通じて、地方公共団体や学校の取組を支援していく。平成20年度からは、教員の指導力の向上、サポート体制の構築など教育の情報化を計画的かつ組織的に進める地域や学校の取組みを支援する事業を実施する。

5.主な政策手段

政策手段の名称
[19年度予算額(百万円)]
概要 19年度の実績 21年度の予算要求への考え方
先導的教育情報化推進プログラム(536百万円)(関連達成目標)
1‐5‐1
情報化の急速な進展を見据えた先導的かつ効果的な教育情報化の可能性の検証を行うことを目的として、「IT新改革戦略」に掲げられている、1.ICT教育の充実、2.教員のICT指導力の向上、3.学校のICT環境の整備、4.校務の情報化の推進等に関する先導的かつ効果的な実践研究を実施。 〔事務事業等による活動量〕
14団体において、教育の情報化に関する先導的かつ効果的な実践研究を実施。
事業の継続
情報モラル教育のための調査研究(37百万円)(関連達成目標)
1‐5‐1    
・情報モラル指導の一層の普及のため、市区町村教育委員会指導主事等を対象としたセミナーを開催。・情報モラル指導事例や情報モラル関連コンテンツ等を紹介する教員向Webサイトを作成。 ・〔事務事業等による活動量〕47都道府県においてセミナーを開催し、約3,500名の指導主事等が参加した。・約200の情報モラル指導実践事例を収集するとともに、このうち38の特選事例を選定するなどの評価を実施。これらの指導実践事例等を紹介するWebサイトを作成。     事業の継続
教育の情報化に関する検討会
(15百万円)(関連達成目標)
1‐5‐1
教育の情報化に係る諸課題について調査研究を実施。 「学校のICT化のサポート体制の在り方に関する検討会」を実施し、教員のICT活用指導力の向上のためのサポート体制の在り方等について検討。     事業の継続

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