はじめに

 「規制改革・民間開放推進3か年計画」 (平成16年3月閣議決定、平成17年3月一部改定)において各府省が規制影響分析を試行的に実施すべきとされる等、規制の社会への影響を分析し、規制の設定または改廃にかかる意見提出手続き(以下パブリック・コメント手続き)等を通じて国民に情報を提供することが求められている。また、文部科学省の所管する教育、科学技術・学術等の分野において、規制の費用・規制の便益などの評価の手法を開発することが必要である。さらに、海外に目を向けると、イギリスやアメリカ等では規制の政策評価の取り組みは盛んであり、確固たる制度上の位置づけが与えられている。

 これらを受け、文部科学省では、平成16年度より「規制に関する評価」を実施しており、平成17年度においても「平成17年度文部科学省政策評価実施計画」(平成17年3月、文部科学大臣決定)に基づき、規制に関する評価を試行的に実施した。

(1) 評価の対象について
   平成17年度については、平成18年1月1日から平成18年3月31日までに行われる法令に基づく規制の新設又は改廃のうち、社会的影響の大きいものを対象として事前評価を実施することとし、具体的には以下の法律案、省令について実施した。
 学校教育法施行規則の一部を改正する省令
教頭の資格要件の緩和
 就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律案
認定こども園に関する認定手続き等

(2) 評価の方法について
   文部科学省においては、規制を導入する際の便益と費用を明確にし、それらを比較考量することにより評価を実施することとしているが、本年度においては、昨年度の有識者会議委員からの指摘を踏まえ、「規制緩和」については費用分析(リスク分析)を中心として便益分析を省略し、評価の合理化を図った。
 なお、評価を実施する際の規制の便益、費用の分析については、以下に記す点が明確になるよう留意することとしている。
規制の便益(「規制強化」の場合について分析)
   規制を新設・強化することにより得られると見込まれる便益、又は規制を廃止・緩和することにより軽減されるコストについて、直接便益(注1)、社会便益(注2)の別に留意しながら、定量的、定性的に評価した。また規制を新設・改廃することにより軽減することができると見込まれるリスク(注3)についても評価する。

(注1) 規制実施の効果として、規制対象者に発生する便益
(注2) 規制実施の効果として、社会全体に及ぼす便益
(注3) ある特定の状況で損害を引き起こす危険要因、損害や害が生じる可能性のこと。

規制の費用
   当該規制を新設・改廃することにより見込まれる費用について、行政コスト(注4)、遵守コスト(注5)、社会コスト(注6)の別に留意しながら、定量的又は定性的に評価する。特に「規制緩和」については、リスク分析を中心に実施する。

(注4) 規制を導入することにより直接発生する、政府の規制運用のための費用(事業予算、行政担当者の人件費、政府側の機会費用等)
(注5) 規制を遵守するために規制対象者(法人・一般国民等)が負担しなければならない費用(法人等における担当者の人件費、規制官庁への申請・報告のための費用、法人内の制度変更・普及啓発・遵守状況の把握のための費用、法人側の機会費用等)
(注6) 規制制度の運用により波及的に社会全体が負担しなければならない費用(自然環境への負荷、社会的利便性への負荷)

 また、想定できる他の代替手段の便益および費用との比較考量や、規制を見直す条件、レビューを行う時期についても評価票に記載することとしている。

(3) 評価票の公表について
   作成した規制評価票案は、法律案については当該法律案の国会提出後、省令案についてはパブリック・コメント手続きにおける意見の募集に合わせて公表した。
 また、評価の客観的かつ厳格な実施を確保するため、学識経験者等を構成員とする「政策評価に関する有識者会議」(座長:古賀正一 株式会社東芝常任顧問)の委員各位より助言を頂いた。
 本評価書は、文部科学省政策評価会議(議長:事務次官)において決定した後、文部科学省のホームページ等を通じて公表する。
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-- 登録:平成21年以前 --