1 総合評価について

1 総合評価の位置付け

  文部科学省では、「行政機関が行う政策の評価に関する法律(平成13年法律第86号)」(以下、「法律」という。)及び「政策評価に関する基本方針(平成13年12月28日閣議決定)」に基づき、「文部科学省政策評価基本計画(平成17~19年度)(平成17年3月25日文部科学大臣決定)」(以下、「基本計画」という。)を定め、所掌する政策について、必要性、効率性、有効性の観点から評価を行っている。
  基本計画において、政策評価を実施するに当たっては、「実績評価」「事業評価」「総合評価」方式で行うこととしており、このうち、「総合評価」方式については、「政策の実施から一定期間を経過した後等に、特定のテーマに係る政策・施策等を対象に政策効果の発現状況や、効果の発現に至る因果関係などを、ロジックモデルを適用するなどの方法により様々な角度から掘り下げて分析し、政策に係る問題点を把握するとともにその原因を分析するなど総合的に評価する方式」と定義している。

2 評価対象の選定及び総合評価のテーマ

  評価対象の選定については、学識経験者等で構成する「政策評価に関する有識者会議」の助言を踏まえ、各年度毎に「文部科学省政策評価実施計画」(以下、「実施計画」いう。)において定めることとしている。
  平成16年度及び17年度の「実施計画」において、「国際競技力向上施策の効果に関する総合評価」をテーマとすることを決定し、2ヵ年に渡り分析し評価を実施した。

3 評価の目的

  文部科学省が策定した「スポーツ振興基本計画(平成13年1月6日一部改正)」では、主要課題として「我が国の国際競技力の総合的な向上施策」を決定し、その政策目標として、「1996年(平成8年)のオリンピック競技大会において、我が国のメダル獲得率が1.7パーセントまで低下したことを踏まえ、我が国のトップレベルの競技者の育成・強化のための諸施策を総合的・計画的に推進し、早期にメダル獲得率が倍増し3.5パーセントになることを目指す」と定めている。
  また、「基本計画」では、文部科学省の政策目標として「施策目標7-2我が国の国際競技力の向上」を掲げており、基本目標として「平成22年までにオリンピック競技大会におけるメダル獲得率3.5パーセントを実現する」を設定している。
  本総合評価は、これらの目標の達成に向けて、文部科学省が実施している国際競技力向上施策は国際競技大会における日本選手の成績向上にどのような効果があったのか等について評価を行い、今後の国際競技力向上施策の改善に資することを目的としている。

4 評価の実施体制

(1)スポーツ総合評価研究会の設置

  本総合評価では、「国際競技力向上施策の効果に関する総合評価」の手法の開発のための調査研究の実施及び総合評価書を取りまとめるため、有識者の知見を活用することを目的として「スポーツ総合評価研究会」(以下、「研究会」という。)を設置し、調査研究の方向性、調査方法及び総合評価書の取りまとめ等について助言をいただいた。

委員(順不同・敬称略)

河野 一郎 筑波大学人間総合科学研究科教授
杉山 茂 スポーツプロデューサー
田中 啓 静岡文化芸術大学文化政策学部文化政策学科助教授
田辺 陽子 日本大学講師
間野 義之 早稲田大学スポーツ科学学術院助教授
和久 貴洋 国立スポーツ科学センタースポーツ情報研究部先任研究員
ヨーコ・ゼッターランド スポーツキャスター

(2)文部科学省における政策評価の手法の在り方に関する調査研究事業

  文部科学省では、平成16年度及び平成17年度の実施計画において、評価手法の研究開発及び向上を図るための調査研究などを実施することとしている。
  今回、文部科学省における政策目標及び指標の設定の手法を開発するための事例研究及び国際競技力向上施策の効果に関する総合評価の手法を開発するための調査研究を実施した。
  本調査研究については、株式会社三菱総合研究所(以下、「三菱総研」という。)へ委嘱し、平成16年~17年度の2ヵ年に渡り、1国際競技力向上施策の効果を測定するための指標の設定、2評価のためのアンケート調査や現地視察等のデータ収集、具体的な分析手法(実験結果の分析・解釈等)の検討、3施策の効果に影響を及ぼす外部要因の検討、4報告書の取りまとめ等を実施した。

5 評価の視点、方法及び枠組み

  今回、文部科学省の総合評価としては初めての試みとして、「セオリー評価」及び「インパクト評価」という手法を用いて評価を実施した。セオリー評価では、国際競技力向上を目的とする各施策が、基本目標(平成22年までにオリンピック競技大会におけるメダル獲得率3.5パーセントを実現する。)の実現に向けて妥当なものかどうかを評価するために、ロジックモデルの作成と、施策と効果の相関分析を行った。インパクト評価については、各施策の効果や貢献度を評価するために、施策と効果の相関分析に加えて、施策の結果・成果の指標分析、貢献度の測定を行った。

  具体的には、ロジックモデルの作成、妥当性評価の検証については、研究会、財団法人日本オリンピック委員会(以下、「JOC」という。)及び主要競技団体へのヒアリングを踏まえて実施した。
  施策と効果の相関関係の測定については、全ての施策について、その効果の相関関係を測定することは、時間的な制約等により困難であることから、「一貫指導体制構築」及び「重点競技強化」に限定し、かつ、出来る限り外部要因等の影響が少ないと考えられる競技種目を選択したうえで、相関関係の分析を実施した。
  施策の結果、成果の測定については、ロジックモデルに沿って、文部科学省、JOC及び各競技団体からのデータをもとに測定した。また、施策の貢献度の測定のため、各競技団体に対するアンケート調査を実施した。

図 評価の枠組み
図 評価の枠組み

  • ※セオリー評価
      施策の論理的な構造(プログラム・セオリー/ロジック・モデル)を明らかにし、その質や内容を評価する手法。
      一般的には、インプット→アウトプット→アウトカムという政策の流れについて、予想される仮定の連鎖(セオリー/ロジック)について、その因果関係が妥当であるかどうかの観点から論理的に行う。
  • ※ インパクト評価
      政策の実施が初期の効果を実際に生み出したのか否かを見極めようとする評価手法。
      本手法は、政策が外部要因を除いて実際にどれだけのアウトカムをもたらしたのかを測定するため、政策とアウトカムの間の因果関係を実証的に検証する。因果関係の検証にあたっては、例えば政策を実施した集団と比較集団を設定してデータを比較したり、政策実施の事前と事後で指標を比較する等様々な手法を用いて、政策の社会への直接の影響・貢献度を測定できるようにする。

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大臣官房政策課評価室

-- 登録:平成21年以前 --