3.税制改正に関する評価

税制名 家庭の教育費負担の軽減(特定扶養控除の拡充等)(拡充)(対象税目:所得税、住民税)
【主管課:生涯学習政策局政策課】
【関係課:高等教育局学生支援課】
評価結果の概要 1.必要性の観点
 我が国の教育費の私費負担割合は諸外国と比較して高く、また、内閣府の調査によると、子育ての辛さの内容として「子どもの将来の教育にお金がかかること」を挙げた者の割合が、全体の4割を超え、全10項目中第1位となっており、また、その割合が一貫して増加傾向(16年:39.1パーセントから17年:39.2パーセントから18年:39.8パーセントから19年:42.4パーセントから20年:45.8パーセント)にあるなど、教育費に対する国民の負担感が非常に大きいことが明らかになっている。
 現行の扶養控除やその上乗せ措置である特定扶養控除は、これまで、教育費を含めた経済的負担の軽減に一定の役割を果たしてきたが、上述の状況を踏まえれば、特に教育費の負担が重い16歳以上23歳未満の特定扶養親族(高校生・大学生相当)を扶養する家庭については、その経済的負担をより一層軽減することが必要不可欠である。
2.有効性の観点(減税見込み)
 約490億円(所得税:330億円、住民税:160億円)
(積算の考え方)
 ・高校と大学の授業料は、平均で46万円。
 ・一方、現行の特定扶養親族は、学校の授業料など教育費等の負担が重い年齢層であることが考慮され、一般の扶養親族よりも控除額が上乗せされているが、その上乗せの控除額は1人当たり計37万円(所得税で25万円、住民税で12万円が上乗せで控除)にとどまっている。
 ・このため、この上乗せの控除額(37万円)を、高校と大学の授業料を勘案して9万円増額し、高校と大学の授業料の平均額と同額の46万円に引き上げる。
 ・上記「9万円」について、所得税と住民税の特定扶養控除の上乗せ控除額(所得税25万円:住民税12万円)に基づき比例配分すると、それぞれ「所得税:6万円」、「住民税:3万円」となる。
 ・「所得税:6万円」、「住民税:3万円」に、それぞれ特定扶養親族数(5,482,216人)と税率(10パーセント)を乗じ、減税見込み額を算出。
 <所得税>6万円5,482,216人10パーセント32,893百万円
 <住民税>3万円5,482,216人10パーセント16,447百万円
 (特定扶養親族数は「平成18年民間給与実態統計調査及び申告所得税標本調査」より)
3.効率性の観点(代替手段との比較)
 授業料の減免措置や独立行政法人日本学生支援機構が実施する奨学金事業は、希望する学生に対して教育の機会均等の観点から措置されるものであり、これらの施策が全ての教育費を負担している家庭に対して教育費の負担感を軽減する直接的な効果をもたらしているとは言えない。上述したとおり、子育ての辛さの内容として「子どもの将来の教育にお金がかかること」を挙げた者の割合が、全体の4割を超えるなど、教育費に係る国民の負担感が非常に大きいという現状を踏まえれば、効果がより多くの家庭に波及する施策の実施が求められるところである。
 以上より、実質的に家庭の教育費負担を軽減するとともに、大多数の国民が抱いている教育費に対する負担感を軽減する観点から、特定扶養親族(高校生・大学生相当)を扶養する家庭について、高校及び大学の授業料の額を勘案し、所得税について6万円、住民税について3万円を所得控除する本要望は効率的であり妥当であると判断する。
 なお、児童手当制度は、小学校修了前の児童を養育している保護者に対し、月額5,000〜10,000円を支給するものであり、特に教育費負担の重い16歳以上23歳未満の特定扶養親族を扶養する家庭の教育費負担を軽減することにはならない。
 (参考)特定扶養親族数=5,482,216人(出典:平成18年民間給与実態統計調査及び申告所得税標本調査)
評価結果の政策への反映状況  政策評価結果を踏まえ、平成21年度税制改正要望を行ったところ、本控除を含む個人所得課税に係る各種控除制度については、税体系の抜本改革の際に見直すこととされた。
税制名 大学等への寄附に係る税制(新設・拡充)
 (対象税目:所得税、相続税)
【主管課:高等教育局国立大学法人支援課、同私学部私学行政課、文化庁長官官房政策課】
【関係課:高等教育局高等教育企画課、同大学振興課、同学生支援課、同専門教育課】
評価結果の概要 1.必要性の観点
 人材養成の場であるとともに知の拠点でもある学校法人等は、知的基盤社会の活力を生み出す根源であり、学校法人等に投資することは、我が国の将来に対して投資することに他ならない。
 また、学校法人等については、国立大学法人運営費交付金や私学助成の削減、また、近年の少子化等の影響により、経営環境の厳しい学校法人等が増しており、そのような中で寄附金収入等の多様な財源の確保を図ることにより、財政基盤を強化することが、喫緊の課題となっている。
 さらに、国民に心豊かな生活をもたらし、社会を活性化させる文化芸術の振興を図ることが大変重要であり、そのためには寄附を一層促進することで、文化芸術関係法人の財政基盤を強化する必要がある。
2.有効性の観点(減税見込み)
 学校法人、文化芸術関係法人等に対する調査結果を踏まえ算出予定
3.効率性の観点(代替手段との比較)
 寄附に係る税制上の優遇措置は、国、地方公共団体及び一定の要件を満たす公益性の高い法人についてのみ認められるものであり、公益事業の振興を図ることを目的としているものである。
 学校法人、文化芸術関係法人等に対する寄附を含め、そもそも寄附は寄附者たる個人の自主的・自発的な善意に基づくものであり、反対給付もないことから、今以上に外部資金を寄附として流入しやすくするためには、その税制上の優遇措置を更に充実・拡充することは不可欠である。
評価結果の政策への反映状況 政策評価結果を踏まえ、平成21年度税制改正要望を行った結果、寄附税制の拡充については認められなかった。
税制名 文化財の修理に係る税制(新設)(対象税目:所得税)
【主管課:文化庁文化財部伝統文化課、同文化財部参事官(建造物担当)】
【関係課:】
評価結果の概要 1.必要性の観点
 我が国の多くの重要文化財建造物は木や紙など脆弱な材料を用いて作られているものが常に風雨に曝されていることから、その価値を大きく減ずることのないように適切な周期で大規模な修理(維持修理は平均30年周期、解体・半解体修理は平均150年周期)を行うとともに、当該建造物の価値を維持していくために必要な小規模な修理を定期的に行っている。
 大規模な修理については、必要に応じて国庫から補助を行っているが、その費用が多額であるため、個人の所有者にとっては自己負担分が重荷となっている。また、国庫補助の対象とならない小規模な修理については、その費用の全額が所有者の負担となる。
 このような状況を踏まえ、国民共有の財産である重要文化財建造物を適切に保存・維持していくためには、所有者の修理費用の自己負担を軽減するための税制上の優遇措置が必要である。また、文化財保護法において、文化財の保護は国や地方公共団体の任務であるとともに、所有者の責務とされており、国や地方公共団体による補助に加えて、税制措置によって所有者自らの取組を後押しすることが必要である。
2.有効性の観点(減税見込み)
 国庫補助事業:
 19年度個人所有の重要文化財事業数16件×個人負担平均約120万円=1,920万円
 所有者自主修理:
 修理が行われた数(推定)48件×修理費用の平均約50万円=2,400万円計4,320万円
減税見込額(10パーセントの税額控除の場合) 4,320万円×0.1=432万円
3.効率性の観点(代替手段との比較)
 現在、主に大規模な修理について、国庫補助により支援を行っており、国庫補助事業は文化財の保護のため不可欠なものである。
 他方、国庫補助事業では、予算上の制約から、文化財修理の全てには対応できるものではなく、所有者の自主的な修理が促進される必要がある。また、国庫補助による支援を待つことなく、所有者自ら継続的に行われるべき修理を実施することが必要である。
 継続的な修理・保存措置が、所有者自らによって行われることによって、国庫補助事業による大規模修理事業の周期を長期化させ、事業費を抑制し、結果として、公費負担を抑制することにつながるものと考えられる。
評価結果の政策への反映状況 政策評価結果を踏まえ、平成21年度税制改正要望を行なった結果、長期検討事項となった。

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-- 登録:平成22年01月 --