1.新規・拡充事業評価

事業名【1】専修学校を活用した就業能力向上支援事業(新規)
【主管課:生涯学習政策局生涯学習推進課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 本事業の目的は、働く意欲はあるが、就職に必要な知識・技術等が不足しているため、仕事に就くことが困難となっている人々に、就業に必要な能力を身に付け、キャリア形成を支援し、就業機会の充実を図ることである。人口減少社会・高齢化社会をむかえる我が国にとって、将来の労働人口の確保は経済成長を持続するために喫緊に取り組むべき課題であり、中小企業等における地域人材ニーズや地場産業における後継技術者不足等に対応するためにも、本事業は必要である。
(有効性)
 本事業を、過去の事業の実績を踏まえ、経年にわたり実施することで、事業の地域へ定着やノウハウの蓄積がなされ、優れた成果が広く普及されることになる。これにより、各モデル講座において、受講者が十分に確保され、受講者満足度及び再就職率が高いものとなることが期待される。また、各講座における成果普及に関する取組が適切に実施されることで、広く社会に事業が定着することとなる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:659百万円
 (平成21年度予算案:540百万円)
事業名【2】環境教育総合プログラム開発事業(新規)
【主管課:生涯学習政策局社会教育課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 「教育振興基本計画」(平成20年7月1日閣議決定)において、「いつでもどこでも学べる環境の整備」が盛り込まれており、「環境教育の推進」や「持続可能な社会の構築に向けた教育に関する取組の推進」が挙げられている。
 平成20年7月29日には、「低炭素社会づくり行動計画」が閣議決定され、環境問題に取り組む団体、人材とも連携し、学校や地域で排出削減に役立つ教育を進める仕組みを取り入れていくこと、また、地域におけるNGO/NPO、企業、地方公共団体等のパートナーシップによる環境保全の取組を支援し、地域ぐるみの国民運動など地域に根ざした活動が定着して全国に広がり、国民一人一人が足元から行動する社会を目指すことが本行動計画に盛り込まれている。
 環境問題については、洞爺湖サミットの議長総括や京都議定書にある約束期間の開始等、具体的な取組を行う必要性が高く、今すぐ対応すべき緊急的な課題である。
 環境問題に対する取組は、行政や企業だけに任せておくのではなく、市民一人一人が意識し、総がかりで取り組んでいかなければならない緊急性の高い問題であり、社会教育における環境教育を市民総がかりで進めていく必要がある。そのためにも、関係団体単独の活動だけではなく、関係機関や団体が連携を図った総合的なモデルプログラムを47都道府県で1地域のプログラム開発を行い、県内への普及と共に全国への普及を図っていく必要がある。
(有効性)
 地球規模の環境悪化の状況は、更に深刻化しており、洞爺湖サミットが行われた本年度は、環境に関する国民の関心は今まで以上に高まっている。また、市民レベルの活動に関しては、今までに地域やNPO団体による地道な環境保護活動が実施されており、市民が環境に関する活動を実践する基盤は育ってきている。
 本事業は、これまで単独で実施されていた個々の取組を、市町村レベルで関係諸団体の連携を図りながら総合的に実施するプログラム開発をしていくことを狙っており、これまで全国各地で培われてきた学習基盤を基に都道府県ごと、全国の47地域での様々なプログラム開発されることが見込まれる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
平成21年度予算概算要求額:489百万円
(平成21年度予算案:0百万円)
 予算編成過程で廃止した。
事業名【3】地域の知の拠点・ネットワーク推進事業(新規)
【主管課:生涯学習政策局社会教育課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
(図書館機能を活用した「地域の知の拠点」づくり推進事業)
 「新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策について0知の循環型社会の構築を目指す0」(平成20年2月19日中央教育審議会答申)において、図書館未設置の市町村にあっては、住民のニーズを踏まえ、今後速やかに図書館の整備に向けた取組に着手することを提言されたことから、図書館未設置市町村等を含め、全国各地における図書サービスの普及・定着のため、図書館サービスの充実に関する調査研究や、先進的取組等の調査研究を行う必要がある。
 また、図書館法の改正に伴う評価の努力義務規定が設けられたが、自己点検・評価を行っている図書館の割合は低く(都道府県26.8パーセント、市町村28.6パーセント(平成15年度))、図書館が自らの運営状況に対する評価を行うためには、国が、外部の視点を入れた図書館の評価及び評価のガイドラインを作成する必要がある。図書館共通に必要性の高いテーマであるリスクマネージメントは、平成18年3月に報告された「これからの図書館像」(平成18年これからの図書館の在り方検討協力者会議)においても、図書館独自で危機管理マニュアルを作成する必要性があることが提案されている。さらに、指定管理者制度の実態については、「社会教育法等の一部を改正する法律」に対する附帯決議において、適切な管理運営体制の構築を目指すことが決議されており、いずれも図書館を振興する上で検討に必要な課題である。
 加えて、改正された図書館法では、図書館が学習の成果を活用して行う教育活動の提供を奨励することが新たに規定されたのに加え、「社会教育法等の一部を改正する法律」に対する附帯決議では、司書等の有資格者の活用方策について検討を進めることが決議されており、地域の司書の有資格者を活用して図書館のボランティアや図書館活動の支援者を育成することは、喫緊の課題である。
(地域で輝く博物館連携推進事業)
 地震等の自然災害が相次いでいる中で博物館における危機管理に関するガイドブックを策定することが求められるとともに、現在、評価を実施している博物館は、31.5パーセント(平成16年度)にとどまり、博物館法の改正に伴って、早急な評価基準の策定が求められるなど、いずれも我が国の博物館を振興する上で喫緊かつ緊急な課題となっている。また、博物館の連携・ネットワーク化についても、行政の壁があり設置者が異なる博物館の連携が進んでいないため、国として連携の枠組みを提示する必要がある。さらに、館種によって入館者層が異なるなど多様な博物館が連携して事業を行うことにより、博物館の新たな可能性を国として検証する必要がある。
(有効性)
(図書館機能を活用した「地域の知の拠点」づくり推進事業)
・ 本事業により、図書館の未設置市町村など図書館サービスの遅れている地域でのサービスを普及・定着させるための仕組みづくりを記した事例集を各都道府県、市町村立図書館、関係団体へ配布することにより、他地域における図書館サービスの向上の取組が促進され、従来、図書館を利用しなかった住民の図書館利用率の増加など、目標に向けて効果を発揮すると見込まれる。
・ 本事業により、委託を受けた市町村での取組成果と策定された図書館に関する評価のガイドラインを記した報告書を各都道府県、市町村立図書館、関係団体へ配布することにより、これまで図書館の評価を実施していなかった図書館の実施率を向上させるだけでなく、不十分な取組しかしていなかった図書館においても、図書館評価の質を高めることができ、目標に向けて効果を発揮すると見込まれる。
・ 図書館におけるリスクマネージメント等については、図書館における必要性の高いテーマであり、国が外部委託として調査研究を行うことにより、各図書館の危機管理マニュアルの作成だけでなく、自館や他館の情報を共有することで、目標に向けて効果を発揮すると見込まれる。
・ 地域の司書の有資格者の活用を図る支援事業を実施することにより、有資格者の活用だけでなく、地域での図書館サービスの向上につながり、目標に向けて効果を発揮すると見込まれる。
(地域で輝く博物館連携推進事業)
 既に博物館ネットワークを構築している博物館については、従来、来館していない層の入館者が増え、全体的にも入館者数が増大して目標に向けて効果を発揮すると見込まれる。調査研究については、いずれも博物館が緊急に対応を求められている課題であるため、国がガイドライン等の作成を支援することにより、各博物館の取組が進むことが見込まれる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:280百万円
(平成21年度予算案:72百万円)
【事業名の変更】
 平成21年度政府予算案において、事業名を「図書館・博物館における地域の知の拠点推進事業」に変更。
【事業内容の見直し】
 図書館と博物館の連携を推進するため、事業内容を統合した。
事業名【4】優れた社会教育重点推進プラン(新規)
【主管課:生涯学習政策局社会教育課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 社会の多様化に伴い、様々な新たな教育課題が求められており、社会教育においても、こうした社会の要請に応える必要がある。しかし、そういった課題については学習機会が十分でなく、また、情報も少ないことから、国が積極的に学習機会の提供や、学習機会に関する情報提供を行う必要がある。
 また、関係者が連携し、ネットワークを構築することにより、地域全体で効果的・重点的に課題に取り組むことが必要である。
 さらに、社会の要請による課題は、全国的な課題であるので、国においてプログラムの開発を行ったり、先進例などの情報提供を行うことで、各地域の取組を促す必要がある。
 また、公民館の運営状況に関する評価については、社会教育法等の一部を改正する法律の国会審議において、衆議院、参議院の両院から附帯決議がなされ、「評価の透明性、客観性を確保する観点から、可能な限り外部の視点を入れた評価となるよう、国がガイドラインを示す等、適切な措置を講じる」(平成20年5月23日衆議院文部科学委員会)(平成20年6月3日参議院文教科学委員会同旨)と決議されており、社会の要請に応えていることが客観的に担保されるような評価のシステム構築が求められている。
(有効性)
(1)社会教育重点推進プログラムの実施
 先進的な取組を行っている地域・団体が、重点的に支援を受けることにより、さらに事業を発展・拡充させることが見込まれる。各地域においても、先進的取組事例に関する情報提供を受けることにより、現在の取組内容を改善することが見込まれる
(2)社会の要請に対応した学習・人材養成プログラムの開発
 社会の要請に対応した学習プログラム及び人材養成プログラムを国が開発して、全国各地域に提供することで、全国各地域にプログラムが普及することが見込まれる
(3)公民館の評価に関する調査研究の実施
 国が全国の公民館における評価実施状況を調査し、全国に情報提供することにより、各公民館における評価の見直しに活用され、公民館の運営改善が見込まれる
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
平成21年度予算概算要求額:220百万円
(平成21年度予算案:76百万円)
事業名【5】学校支援地域本部事業(拡充)
【主管課:生涯学習政策局社会教育課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
(学校教育の充実)
 地域住民が学校を支援することで、多様な体験活動やコミュニケーション能力、規範意識の醸成を図ることができる。「教員の勤務実態調査」(平成18年度文部科学省委託調査)においては、教員の超過勤務時間で月平均34時間であるなど、教員の多忙化が指摘されており、教員が教育活動により力を注げる環境を整えることが重要である。
(地域の教育力の向上)
 地域の連帯感の形成や活性化が図られ、これにより地域の教育力が向上し、学校を核とした地域づくりが図られると考える。
 「地域の教育力に関する実態調査」(平成18年度文部科学省委託調査)で保護者を対象に行ったアンケートにおいて、自身の子ども時代と比べて地域の教育力が低下していると回答している人が過半数を占めており、地域の教育力の向上に取り組む必要がある。一方、各地域における地域の教育力に差があることから、国が事業として実施し、普及・啓発をしていくことが必要不可欠である。
(生涯学習社会の実現)
 地域住民が自らの知識や経験を子どもの教育に生かすことで、生涯学習の成果を生かす場が拡がるものである。本年改正された社会教育法においても、教育委員会の事務として「社会教育における学習の機会を利用して行った学習の成果を活用して学校、社会教育施設その他地域において行う教育活動等の機会を提供する事業の実施等の事務」が規定(第5条15号)されたところであり、学習成果を活用する場の充実に向け、取り組む必要がある。
 また、20年度は各市町村に学校支援地域本部が設置されることを目標に1,800ヶ所で実施したところだが、未実施の市町村もあることから、本事業をより広く学校を支援する仕組みづくりを普及させるため、各市町村の地域の実情等を踏まえた事業実施箇所数を拡充することが必要である。
(有効性)
 各市町村に実践例を設けることで、各地域における本部の設置が進み、全国的に拡がっていくことが見込まれる。これにより、地域住民による学校支援ボランティアの取組が進み、前記の目標の達成が見込まれる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:6,378百万円
 (平成21年度予算案:委託事業分 3,404百万円
 補助事業分 14,261百万円の内数)
【事業名の変更】
 委託事業分 変更なし
 補助事業分 「学校・家庭・地域の連携協力推進事業」
 (メニューの1つとして「学校支援地域本部事業」が入っている。)
【事業内容の見直し】
 文部科学省が全額国庫で負担しているモデル事業について、事業成果の活用の状況や費用対効果の観点から事業の在り方を見直し、「学校・家庭・地域の連携協力推進事業」を創設し、「学校支援地域本部事業」もその中のメニューの一つとした。
事業名【6】地域における家庭教育支援基盤形成事業(拡充)
【主管課:生涯学習政策局男女共同参画学習課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 都市化、核家族化及び地域における地縁的なつながりの希薄化等により、家庭の教育力の低下が指摘されているが、子どもも社会の構成員の一人であり、将来の我が国を支える存在であることから、国においても家庭教育の支援を行う責任と役割がある。
 改正教育基本法第10条においては、国等について保護者に対する学習の機会及び情報の提供などの家庭教育支援のために必要な施策を講ずるよう規定されており、教育振興基本計画においても、国が行う重点施策として、子育てに関する情報の提供など家庭の教育力の向上に向けた総合的な取組を推進し、身近な地域においてきめ細かな家庭教育支援が実施されるよう促すことが盛り込まれている。一方で、子育てに無関心な親や不安や悩みを持つ孤立しがちな親、子育てに関心は高いが学ぶ余裕のない親、父親などが、身近な地域で子育て等に関する学習や相談対応などきめ細かな家庭教育支援を得るための基盤の形成が課題となっているが、各地域においてきめ細かな家庭教育支援を行う体制整備が十分なされていない状況である。このため、国が率先して本事業を実施することにより、様々な状況にある子育て中の親などに対するきめ細かな家庭教育支援の効果的な手法を模索・開発する必要がある。また、その成果の全国的な普及・定着を図ることにより、身近な地域における家庭教育支援基盤の形成を促進することについても、国において取り組む必要がある。
(有効性)
 平成19年度まで文部科学省が実施した「家庭教育支援総合推進事業」においては、約1,000市町村が家庭教育支援のための学習機会の提供や人材養成等を行っている。また、本事業では、平成20年度において約300の市町村が家庭教育支援チームを設置し、これまで行ってきた家庭教育・子育て支援のための取組の連携促進による活性化を図ろうとしている。以上から、本事業の成果の普及により達成年度までに目標値を達成できると考える。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:1,441百万円(平成21年度予算案:354百万円、学校・家庭・地域連携協力推進事業費補助金14,261百万円の内数)
【事業名の変更】
・「訪問型家庭教育相談体制充実事業」に名称変更
・「家庭教育支援基盤形成事業」(学校・家庭・地域の連携協力推進事業の1メニュー)
【事業内容の見直し】
 本事業については、きめ細かな家庭教育支援の効果的な手法の模索・開発に重点化するための見直しを行った(「訪問型家庭教育相談体制充実事業」に名称変更)。
 また、成果の全国的な普及・定着を図り、身近な地域における家庭教育支援基盤形成の促進については、補助事業である学校・家庭・地域の連携協力推進事業を創設し、その中で家庭教育支援基盤形成事業を実施することとした。
事業名【7】子どもの生活習慣づくり支援事業(新規)
【主管課:生涯学習政策局男女共同参画学習課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 最近の子どもたちをみると成長期に必要不可欠な基本的な生活習慣が大きく乱れており、この乱れが学習意欲や気力、体力の低下の要因の一つであると指摘されている。
 また,毎朝朝食をとる子どもほど学力調査の平均正答率が高い傾向にあることが明らかになっている。
 家庭における食事や睡眠など、基本的な生活習慣の乱れに起因した子どもたちをめぐる問題は、個々の家庭の問題として見過ごすのではなく、社会全体の問題として地域一丸となって取り組むことが必要である。
 これまで3年間行われてきた「子どもの生活リズム向上プロジェクト」では、選定された地域において各々に工夫した取組を実施し、子どもの基本的な生活習慣を育成するための効果的な活動や専門家による研究成果等が把握できた。今後は、この成果等を全国的に普及する必要がある。
(有効性)
 平成20年度まで文部科学省が実施した「子どもの生活リズム向上プロジェクト」において,各地域において、子どもの生活リズムを向上させるための地域ぐるみの取組を実践し、実践地域における事例の分析や効果の検証等を行ってきている。
 新規事業においては、これまでの成果をもとに、子どもの基本的な生活習慣づくりの定着に向けた方策及び効果を活用し、全国的な普及啓発を図る。以上により、子どもの生活習慣づくりのための地域における効果的な取組の推進を全国において図ることができ、各地域や家庭で取組が促進されるものと見込まれる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:478百万円(平成21年度予算案:219百万円)
【事業内容の見直し】
 本事業については、これまでの成果をもとに、子どもの基本的な生活習慣づくりの定着に向けた全国的な普及啓発を図るため、「全国的な普及啓発の実施」に関する事業や「地域における研究成果の普及啓発」に関する事業など、普及啓発に特化した事業内容に見直した。
事業名【8】家庭教育手帳の作成(拡充)
【主管課:生涯学習政策局男女共同参画学習課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 都市化、核家族化及び地域における地縁的なつながりの希薄化等により、家庭の教育力の低下が指摘されているが、子どもも社会の構成員の一人であり、将来の我が国を支える存在であることから、国においても家庭教育の支援を行う責任と役割がある。
 改正教育基本法第10条においては国等について保護者に対する学習の機会及び情報の提供などの家庭教育支援のために必要な施策を講ずるよう規定されており、教育振興基本計画においても、国が行う重点施策として、子育てに関する情報の提供など家庭の教育力の向上に向けた総合的な取組を推進し、身近な地域においてきめ細かな家庭教育支援が実施されるよう促すことが盛り込まれている。
 このような中、文部科学省では、一人ひとりの親が家庭を見つめ直し、それぞれ自信を持って子育てに取り組んでいく契機となるよう、家庭教育に関するヒント集(家庭教育手帳)を作成し、情報の提供を図ってきたところである。
 本事業については、平成17年度に実施した家庭教育手帳の活用状況の調査結果において、配付対象者の90パーセントが「参考になる」と回答し、70パーセントの保護者が「不安や悩みの解消に役立った」と回答しており、必要性の高い事業であることから、定期的に家庭教育手帳の認知度や内容に対する満足度を把握しつつ、今後も継続実施していく必要がある。
 なお、提供方式を変更したことにより、国(手帳の一括作成)と地方自治体(地域の実情等に応じた利活用)との役割の一層の明確化を図った。
(有効性)
 文部科学省が実施した平成17年度の利用状況調査では、その認知度について、非配付対象者のうち公民館等利用者の6割、インターネット調査における2割程度しか認知していなかったところである。その後、家庭教育支援全般についてのPRポスター、パンフレット等による周知を行っており、また平成19年度まで実施した「家庭教育支援総合推進事業」における学習機会の提供において、家庭教育手帳の掲載内容をテーマに取組を行っている地域もあるため、認知度等については向上の見込みがある。
 また、平成20年度からの配付方法の変更にともない、平成17年度の利用状況調査で一定の満足度等の評価を得ている家庭教育手帳について、そのまま地方自治体で印刷して配付することや、部分的に学習機会の提供等で活用することが考えられるため、活用する市町村数は多くなることが見込まれる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:76百万円(平成21年度予算案:25百万円)
【事業内容の見直し】
 本事業については、家庭教育支援の効果的な情報提供に重点化するため内容を見直した。
事業名【9】小中高等学校等における地上デジタルテレビの整備に係る補助事業(新規)
【主管課:生涯学習政策局参事官(学習情報政策担当)】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 平成23年7月のテレビ放送の地上デジタル放送への完全移行に伴って、大きな社会的混乱を招くことなく円滑にアナログ放送を終了するために、昨年度、内閣官房に関係省庁連絡会議が設けられ、政府全体の取り組みを推進することとされた。今般、この関係省庁連絡会議において、今後の取り組みを加速させるために「地上デジタルテレビ放送への移行完了のためのアクションプラン2008」が決定されたところである。
 このアクションプランによると、全国の小・中・高等学校等に設置されているアナログテレビを買換え等にて置換し、地上デジタルテレビ放送を視聴できる環境を早急に整備することが目標とされており、文部科学省は学校等の設置者である地方公共団体等のこのような取り組みを推進することとされている。
 これまでも、文部科学省は、教育委員会に対して説明会や広報等を通じて、デジタル化を推進していただくようにお願いしてきたところであるが、現状は、学校に設置されているテレビ受像機のうち地上デジタルテレビ放送に対応しているものは約1パーセントにすぎない。
 現在、教育委員会や学校関係者からは、国の緊急かつ、積極的な財政支援なしには、相当な混乱を招くとの声が多数寄せられている。
 平成23年7月までに学校等のテレビを地上デジタル放送へ円滑に移行させる為に、地方公共団体等に対して必要な経費の一部を補助する。(有効性) 本事業を着実に実施することにより、平成23年7月の地上デジタル放送への完全移行に向け、現在学校等にあるテレビについて社会的な混乱を起こすことなく、円滑に地上デジタル放送へ対応することができる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:7,500百万円(アンテナ等工事費について公立学校施設整備費の中で措置)
事業名【10】地域で取り組むIT安心利用推進事業(新規)
【主管課:生涯学習政策局参事官(学習情報政策担当)】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 社会に多種多様な情報が溢れている中で、情報通信技術を活用した教育を振興するためには、情報機器の操作技術のみならず、情報を適切に選択・活用していくための能力等を身につけることが子ども及び大人も必須となっている。第169回国会において成立した「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」や「教育振興基本計画」等においても、インターネットの安全・安心な利用に向けた教育・啓発について記載されるなど、各方面でその重要性が指摘されている。
(有効性)
 本事業を着実に実施することにより、各地域においてインターネットの安全・安心な利用に向けた啓発講座の実施することにより、各地域における情報リテラシーの育成を図ることができる。
 また、各地域においてインターネットの安全・安心な利用に向けた啓発講座を実施するボランティアの養成を図ることにより、地域において継続的な啓発活動のための体制が構築される。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:259百万円(平成21年度予算案:3百万円)
【機構・定員要求】
 情報リテラシーに関する施策の推進を図るため、情報リテラシー係長(1名)及び係員(1名)の新設を要求した。(情報リテラシー係長1名措置)
事業名【11】新学習指導要領の円滑な実施のための教材整備事業(新規)
【主管課:初等中等教育局教育課程課】
【関係課:初等中等教育局児童生徒課、同国際教育課、スポーツ・青少年局企画・体育課】
評価結果の概要 (必要性)
 新学習指導要領においては、授業時数の増加とともに、理科及び算数・数学等の教科では、指導内容が増加し、また、小学校の外国語活動や中学校保健体育における武道の必修化が図られた。このため、教科等によっては、新学習指導要領に基づいた指導を実施するために新たに教材の整備が必要となる。もし、教材が十分に整備されないと、各学校において新学習指導要領に基づいた授業を行うことができず、新学習指導要領の円滑な実施が困難になる。よって、教材を整備する補助金を創設することで、各市町村での教材整備事業を促進し、全国の小・中学校で円滑に新学習指導要領に基づいた指導ができるようにする必要がある。
(有効性)
 新学習指導要領においては、基礎的な知識・技能の定着と、思考力、判断力などの育成を目指している。
 新学習指導要領教材整備の補助により、全国の小・中学校において必要となる設備の整備が促進されることにより新学習指導要領の内容に沿った授業が十分に行われると見込まれる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:15,481百万円
 (平成21年度予算案:0百万円)
 予算編成過程で廃止した。
事業名【12】新学習指導要領移行措置に対応する算数・数学、理科の補助教材の作成・配布事業(新規)
【主管課:初等中等教育局教育課程課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 平成21年度からの新学習指導要領の移行期間中における算数・数学、理科については、現在の教科書に掲載されていない内容も指導することとなるため、学習に支障を生じないよう補助教材を準備する必要がある。また、教員の指導のしやすさ、児童生徒の使いやすさの観点から、現在児童生徒が使用している教科書に準拠した補助教材の作成を教科書発行者に委託することが適当である。
(有効性)
 本事業の実施により、平成21年度、平成22年度に算数・数学、理科で指導内容が追加される学年のすべての児童生徒に補助教材が配布されることとなる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:2,512百万円(平成20年補正予算額:1,317百万円、平成21年度予算案:1,311百万円)
【事業内容の見直し】
 平成21年度に使用する補助教材の作成・配布経費として平成20年度補正予算に計上し、当該事業では、平成22年度に使用する補助教材の作成・配布を行うこととした。
事業名【13】理科教育設備整備費等補助金(拡充)
【主管課:初等中等教育局教育課程課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 我が国の子どもたちの学力は、全体として国際的にみて上位にあるが、平成18年(2006年)に実施されたPISA調査に結果において、数学的リテラシーにおいては、成績上位層の割合が減少し、平均得点が低下していることや、科学的リテラシーにおいては、科学への興味・関心や楽しさを感じる生徒の割合が全般的に低いなどの課題がみられた。
 科学技術創造立国の実現を目指すためには、初等中等教育段階から次代を担う子どもたちに観察・実験等の体験的・問題解決的な学習等を通じて、理科及び算数・数学への興味・関心を高めることが重要である。
 本年3月に公示した小・中学校の新学習指導要領では、中央教育審議会答申(平成20年1月17日)における指摘を踏まえ、理数教科について、授業時数、指導内容ともに大幅に増加し、観察・実験や反復学習などを充実するなどの改善を図ったところである。
 各学校において、新学習指導要領に基づき、観察・実験を一層充実した授業を行うことができるように、理科及び算数・数学設備の整備を促進する必要がある。(有効性) 新学習指導要領においては、基礎的な知識・技能の定着と、思考力、判断力などの育成を目指している。理科教育設備整備の補助により、各学校において理科、算数・数学設備の整備が促進されることで、観察・実験等の体験的・問題解決的な学習が一層充実される。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:2,500百万円(平成21年度予算案:2,000百万円)
【事業内容の見直し】
 学習指導要領の改訂(平成20年3月)に伴い、理科教育設備の整備を推進するため、予算を拡充。
事業名【14】全国的な学力調査の実施事業(拡充)
【主管課:初等中等教育局教育水準向上PT】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 教育振興基本計画において、世界トップの学力水準を目指すこと等が目標として示されているなど、我が国の児童生徒の学力向上を図ることが強く求められている。
 このため、国・教育委員会・学校の各段階において、教育に関する検証改善サイクルを確立し、義務教育の質を保証する仕組みを構築するとともに、児童生徒一人ひとりの学習改善や学習意欲の向上に資するために、同一学年全員を対象として毎年継続した学力・学習状況に関する調査を行うことが引き続き必要である。
 また、得られた調査結果についても、その調査結果を最大限活用して教育活動等の改善につなげることが重要であり、優れた改善の取組の普及等により調査結果の積極的な活用を一層推進していく必要がある。
(有効性)
 平成19年度の全国学力・学習状況調査については、平成19年10月にその調査結果を公表するとともに、「学力調査の結果に基づく検証改善サイクルの確立に向けた実践研究」を実施し、すべての都道府県・指定都市において「学校改善支援プラン」を策定した。
 平成20年度については、2回目となる全国学力・学習状況調査を実施するとともに、「学校改善支援プラン」等を踏まえて調査結果を活用する「全国学力・学習状況調査等を活用した学校改善の推進に係る実践研究」を順調に進めているところである。平成21年度拡充事業と合わせた取組の一層の推進により、本事業の目標については十分に達成可能であると考えられる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:6,251百万円(平成21年度予算案:5,734百万円)
【機構・定員要求】
 「全国学力・学習状況調査」をはじめ、学校運営の改善支援を総合的に推進するため、平成21年度より初等中等教育局参事官の職務分掌の見直しや分析体制の強化を行うこととしている。(参事官の担当事務の変更及び専門職1名を措置)
【事業内容の見直し】
 「全国学力・学習状況調査」について、大学等の研究機関の知見を活用したより専門的・多面的な分析を行うことにより、教育施策等の改善や学校現場に役立つ情報発信に努めることとした。また、教育委員会等における調査結果を活用した取組を一層促進するとともに、支援等の充実に取り組むこととした。
事業名【15】新学習指導要領の円滑な実施のための指導体制整備(新規)
【主管課:初等中等教育局財務課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 新学習指導要領は、小学校では平成23年度から、中学校では平成24年度から全面的に実施することとしているが、平成20年度中に新学習指導要領の趣旨の周知・徹底を図った上で、平成21年度から算数・数学、理科を中心に先行して実施することとしている。
 この点について教育振興基本計画において、「授業時数や指導内容を増加する新学習指導要領の円滑な実施を図るために、教職員定数の在り方、算数・数学、理科に係る先行実施のための補助教材の作成・配付などの教育を支える条件整備について検討する。」とされており、新学習指導要領の本格実施までの移行期間中における授業時数の増等に対応するため、非常勤講師を配置することにより、授業に支障が生じることなく新学習指導要領の円滑な実施を図る必要がある。
(有効性)
 各都道府県は、新学習指導要領の本格実施までの移行期間中における授業時数の増等に対応するため、非常勤講師を配置することにより、授業に支障が生じることなく新学習指導要領の円滑な実施を図る必要がある。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:15,241百万円(平成21年度予算案:‐百万円)
【事業内容の見直し】
 新学習指導要領の円滑な実施のための指導体制整備に係る非常勤講師の配置は、平成20年度に創設された退職教員等外部人材活用事業を拡充することで対応する。
事業名【16】学校図書館の活性化推進総合事業(新規)
【主管課:初等中等教育局児童生徒課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 新しい教育基本法の理念を受けて、平成19年6月に改正された学校教育法では、義務教育として行われる普通教育の目標の一つとして、「読書に親しませ、生活に必要な国語を正しく理解し、使用する基礎的な能力を養うこと(第21条第5号)」が新たに規定された。また、平成20年3月28日に公示された新しい小・中学校学習指導要領では、「言語力の育成」を新しい基軸として打ち出し、各教科等の学習を通じ、言語を使った活動を充実することとしている。
 このような中、学校図書館は、児童生徒の想像力を培い、学習に対する興味・関心等を呼び起こし、豊かな心をはぐくむ、自由な読書活動や読書指導の場である「読書センター」として、また、児童生徒の自発的、主体的な学習活動を支援し、教育課程の展開に寄与する「学習情報センター」として、その機能の充実を図り、学校教育の中核的な役割を担うよう期待されている。
 政府においても、平成20年3月に子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画(第二次)を閣議決定し、児童生徒の読書習慣の確立や読書指導の充実を目指すとしたところであり、本計画に基づいた取組の推進が必要である。
(有効性)
 本事業により、教科指導における学校図書館の効果的な活用や、放課後の利用を推進することで、児童生徒等が学校図書館を利用するようになることが見込まれる。
 また、授業の準備や教材研究に活用できるよう、教員のサポート機能を強化することにより、教員の学校図書館利用頻度の増加が見込まれる。
 さらに、学校図書館を中心として家庭や地域も巻き込んだ読書活動の推進を図ることで、児童生徒の読書習慣の定着が見込まれる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:235百万円(平成21年度予算案:134百万円)
【事業内容の見直し】
 一部メニューについては、省全体の事業の見直し・再編に伴い、他局事業と一本化等することとした。
・「子ども読書の街」づくり推進プロジェクト
→「子ども読書応援プロジェクト」の一部として編成(スポーツ・青少年局)
・「地域に根ざした学校図書館の放課後開放プロジェクト」
→放課後解放の推進は「学校・家庭・地域連携推進事業」(生涯学習政策局)の中で取り組む
事業名【17】学校教育情報化推進総合プラン(新規・拡充)
【主管課:初等中等教育局参事官(産業教育・情報教育担当)】
【関係課:生涯学習政策局参事官】
評価結果の概要 (必要性)
 教育の情報化については、急速な情報化の進展に伴い、膨大な情報量を誇るインターネットを活用した調べ学習やデジタルコンテンツを活用することで、子どもが視覚的に理解できる等、確かな学力を育成する上で大変有効なツールである。
 しかしながら、ICTを使って教科指導ができる教員の不足や自治体の厳しい財政事情などから教育の情報化の優先順位が低い。
 このようなことから、国が先導的に授業における効果的なICTの活用方法や教員の指導力の向上に関する調査研究を実施し、その成果を普及し効果を示すことで自治体における教育の情報化に向けた取組が加速化されるものと考えており、これらの促進を図るためにも当事業は必要不可欠なものである。
(有効性)
 本事業は、教育の情報化を促進する観点から、平成17年度に開始され、その後、平成18年度に策定された「IT新改革戦略」の目標達成のために引き続き実施してきている。平成21年度新規分については、教員のICT指導力のうち情報モラルを指導できる教員が100パーセントになることを目指しており、教員の研修や専門員を派遣する事業を行うことで確実に教員の情報モラルを指導する能力が促進され目標が達成できると見込まれる。また、拡充分である総合支援モデル事業については、平成20年度の5地域に加え新たに5地域を増やすことで、様々な自治体規模における支援体制のモデルが完成し、これを普及することでIT新改革戦略に掲げる「学校のICT化のサポート体制を強化する」という目標に確実に寄与できるものと見込まれる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:646百万円(平成21年度予算案:427百万円)
【事業内容の見直し】
 総合支援モデル事業については、平成20年度からの5地域で重点的に実施することとした。
事業名【18】英語教育改革総合プラン(新規)
【主管課:初等中等教育局国際教育課】
【関係課:初等中等教育局教育課程課、同教科書課】
評価結果の概要 (必要性)
 教育振興基本計画においては「確かな学力」を確立するため、小学校段階における外国語活動を含めた外国語教育の充実を目指す小・中学校の学習指導要領について着実な実施が掲げられており、授業時数や指導内容を増加する新学習指導要領の着実な実施を図るため、教育を支える条件整備について実施することとされている。このため、小学校の外国語活動に関して、共通教材の配付等の条件整備を、文部科学省として積極的に講じる必要がある。
 また、「経済財政改革の基本方針2008」などの国の基本的な政策方針においては、英語教育の抜本的強化が指摘されていることから、国としてそのような提言に対応する必要がある。
(有効性)
 本事業を適切に計画どおり実施できれば小学校外国語活動の円滑な導入をはじめとする「新学習指導要領の着実な実施に向けた条件整備」が行われ、また「英語教育改善のための一貫した教育システムの構築」により英語教育の充実を図ることできるため、本事業の目的を達成できる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:1,624百万円(平成21年度予算案:900百万円)
【機構・定員要求】
 外国語教育の充実のための推進体制を強化するために、企画調整係長(1名)及び事業推進係員(1名)を要求した。(企画調整係長1名及び事業推進係員1名措置)
事業名【19】退職教員等外部人材活用事業(拡充)
【主管課:初等中等教育局財務課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 教員勤務実態調査(平成18年度文部科学省実施)によると、教諭の残業時間は1ヶ月当たり平均34時間と多忙化が指摘されており、教員が子ども一人一人に向き合う環境が十分であるとはいえない状況にある。
 これまでの教育再生の取組を真に実効あるものとし、子どもたちの学力の向上と規範意識の育成を図るためには、教員が子ども一人一人に向き合う環境をつくることができるよう、学校現場で日々頑張っている教員を支援する体制を整備することが必要である。
 このことは、平成20年7月1日に閣議決定された教育振興基本計画にも、「教員が子ども一人一人に向き合う環境づくりの観点から、教職員配置の適正化を行うとともに、(中略)退職教員・経験豊かな社会人等の外部人材の積極的な活用を図る。」と明記されているところであり、喫緊の課題として外部人材の積極的な活用に取り組む必要がある。
 なお、教員が子ども一人一人に向き合う環境づくりの観点から、退職教員や経験豊かな社会人等の外部人材の積極的な活用を図るため、事業を拡充するとともに、平成20年度は都道府県の事業費を補助対象としていたが、地域の実情に応じた積極的な活用が行われるよう、教職員の人事権を有し都道府県と同等の財政規模を有する政令指定都市が行う事業についても補助の対象とする。
(有効性)
 事業初年度である平成20年度においては、8月末現在で41都道府県で本事業が実施されており、最終的には全国で約7,000人程度の非常勤講師の配置が見込まれている。
 さらに平成21年度は、教員が子ども一人一人に向き合う環境づくりの観点から、退職教員や経験豊かな社会人等の外部人材の積極的な活用を図るため、事業を拡充するとともに、平成20年度は都道府県の事業費を補助対象としていたが、地域の実情に応じた積極的な活用が行われるよう、教職員の人事権を有し都道府県と同等の財政規模を有する政令指定都市が行う事業についても補助の対象とするため、前記の目標の達成が見込まれる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:4,346百万円(平成21年度予算案:5,795百万円)
【事業内容の見直し】
 教員が子ども一人一人に向き合う環境をつくるとともに、新学習指導要領の先行実施における理数教科の授業時数の増に対応する。7,000人→14,000人(週12時間換算)
事業名【20】道徳教育用教材活用支援事業(新規)
【主管課:初等中等教育局教育課程課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 教育振興基本計画において、道徳教育について、「学習指導要領の趣旨を踏まえた適切な教材が教科書に準じたものとして十分に活用されるように、国庫補助制度等の有効な方策を検討する」とされたように、道徳教育の充実のためには、実際の指導に大きな役割を果たす教材の充実が極めて重要である。
 教育振興基本計画を踏まえ、道徳用教材に対する財政支援の試行を行うことで、各学校において、教科と同様に「道徳の時間」に用いる主たる教材が整備されることとなる。このことにより、学習指導要領の趣旨を踏まえた適切な道徳教育がなされることとなると考えており、本事業は、道徳教育の改善・充実を図る上で必要不可欠なものであると考えている。
(有効性)
 本事業を実施することで、各学校において、教科と同様に「道徳の時間」に用いる主たる教材が整備されることとなる。このことにより、学習指導要領の趣旨を踏まえた適切な道徳教育が着実になされることとなると考えている。また、平成25年度には道徳教育推進状況調査(おおむね5年毎に実施)を実施し、道徳教育の推進状況を把握する予定であり、その中でも相当程度の成果が得られるものと考えている。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:4,118百万円(平成21年度予算案:800百万円)
【事業名の変更】
 道徳教育用教材費補助→道徳教育用教材活用支援事業
【事業内容の見直し】
 道徳教育用教材の購入に対する財政支援の試行を行うこととした。
事業名【21】豊かな体験活動推進事業(拡充)
【主管課:初等中等教育局児童生徒課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 近年高度情報化や都市化、少子化といった社会の変化に伴い、子どもについて社会性の不足、生命の尊重や基本的な倫理観が不十分であるといった指摘があり、各学校においては豊かな人間性や社会性を養うのに効果的とされる体験活動に取り組んでいるところである。また、さらに子どもの意欲や協調性の欠如が指摘されており、生活や学習における意欲や、知識やノウハウを実践に結びつける力などの「人間力」、「社会人基礎力」等社会人としての基礎的な能力の養成・強化を図るためにも体験活動を推進する必要がある。
 学校教育において体験活動に取り組むことにより、規範意識や社会性等を養う機会を確保するとともに、平時とは異なる児童生徒の様子を見取ることで児童生徒の新たな一面を発見し、平時の学級経営のいっそうの向上につなげる等のことが可能である。これらは、通常の学校生活とは違う集団において様々な体験活動に取り組む社会教育での体験活動とは異なり、児童生徒の「豊かな心」を組織的・系統的に育む学校教育をより充実させるものである。
 体験活動の理念の浸透や実施の際のノウハウ等は依然として不足している状況にあり、豊かな心を育成するために学校教育における体験活動の推進を図るには、本事業の拡充が必要である。なお、「農山漁村におけるふるさと生活体験推進校」については、農山漁村にある豊かな自然、文化財や伝統的行事、さらには民泊を通じた人と人との触れ合いなど、様々な教育資源の活用が期待されている。
(有効性)
 本事業は平成14年度に、学校における体験活動を充実させるために開始され、他校のモデルとなる体験活動を実施する学校を指定して、体験活動のプログラム等の調査研究を実施し、その成果の普及を図ってきた。
 学校における体験活動の実施状況については、平成18年度に、全学校種において、年間日数が平均7日間以上という基準を達成(小学校:8.2日、中学校:7.2日、高等学校:7.8日)しており、一定の成果が上がっている。しかし、体験活動の理念の浸透や、体験活動の実施のノウハウは依然として不足している状況にあり、引き続き、効果的な体験活動プログラムの構築や指導員の確保、財政的な支援などの様々な課題を解決するとともに、体験活動の教育的効果の検証を行うことにより、学校における体験活動のより一層の充実が見込まれる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:1,146百万円(平成21年度予算案:1,079百万円)
【事業内容の見直し】
 本事業については、事業内容の重複を見直し、「学校教育における人間力向上のための長期宿泊体験活動推進プロジェクト」を「農山漁村におけるふるさと生活体験推進校」に統合して重点化を行った。
事業名【22】発達段階に応じたキャリア教育支援事業(新規)
【主管課:初等中等教育局児童生徒課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 児童生徒が勤労観・職業観を身に付け、自己の進路を主体的に選択・決定できる能力を育むためには、児童生徒の発達段階・学校種に応じた組織的・系統的なキャリア教育を効果的・効率的に実施することが必要である。
 しかし、学校が置かれる地域の規模・性格によっては、キャリア教育を効果的に実施することが困難な課題を抱えており、国が、これらの課題に対する解決策(モデルケース)を示し、全国に普及・定着させることが必要であると考える。
(有効性)
 本事業において指定した6県(18地域)が、それぞれの3カ年の実施計画(計画・実施・課題の検証・解決方法の実施)を通して、キャリア教育を効果的・効率的に実施することが困難となっている原因(課題)に対する解決策を見いだすことが見込まれる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:127百万円
 (平成21年度予算案:55百万円)
事業名【23】小学校におけるキャリア教育の指導内容の充実(新規)
【主管課:初等中等教育局児童生徒課】
【関係課:初等中等教育局教育課程課】
評価結果の概要 (必要性)
 小学校においては、キャリア教育の理念・目的等に関する理解不足、これまでの教育実践とキャリア教育との関連性に関する認識不足などキャリア教育推進上の課題、個々の教員の資質や学校ごとの様々な実践など指導内容・指導方法を巡る課題、新小学校学習指導要領における横断的なキャリア教育が求められている。
 小学校教員を対象とした、キャリア教育の指導資料を作成・配付することによって、新小学校学習指導要領に基づくキャリア教育の趣旨の徹底と指導内容の充実だけでなく、中学校における指導との系統性・一貫性の確保を図るなどの成果が、今後の小学校におけるキャリア教育の推進に寄与するものと考える。
 以上のことから、小学校教員を対象とした、キャリア教育の指導内容・指導方法を含めた指導資料を作成・配付し、小学校におけるキャリア教育を推進するためには、本事業は不可欠である。
(有効性)
 本事業において作成・配付した小学校キャリア教育指導資料により、新小学校学習指導要領に基づくキャリア教育の趣旨の徹底と指導内容の充実だけでなく、中学校における指導との系統性・一貫性の確保を図るなど、今後の小学校におけるキャリア教育の推進が見込まれる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:102百万円
 (平成21年度予算案:15百万円)
事業名【24】いじめ対策緊急支援総合事業(拡充)
【主管課:初等中等教育局児童生徒課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 いじめ問題については、いじめを苦にした児童生徒の自殺が大きく取り上げられ、社会問題となるなど、依然として教育上の大きな課題となっている。
 問題行動等の原因や背景は個々のケースにより様々であるが、問題が深刻化した背景として、1.学校の危機管理に係るノウハウの集積が不十分であり、児童生徒の自殺が発生した場合などの緊急事態に十分対応できない、2.いじめ等をめぐり保護者との意思疎通の問題等が生じているなどの理由で、教育委員会や学校による解決が困難な場合がある、等という状況が報告されている。また、インターネットや携帯電話を介した「ネット上のいじめ」という新しい形のいじめ問題が生じており、インターネット等に関する専門的な知識も必要となり、学校だけではいじめの発見や発見した後の対応が困難な状況が見られる。さらに、「いじめは決して許されない」という意識が児童生徒に依然としてしっかり身についていない状況も課題となっている。
 こうした現状を踏まえ、いじめ問題への適切な対応を推進するために、未然防止、早期発見・早期対応につながる効果的な取組や、外部の専門家や関係機関等の協力を得た取組に関して、学校や教育委員会による適切な対応を効果的に支援する方策の在り方について調査研究を行い、その成果や課題を十分に検証・分析したうえで、効果的な取組については、全国に普及する必要がある。各種答申等においても、こうした取組の重要性・必要性が求められているところであり、引き続いて、これらの取組を国として積極的に実施する必要がある。
(有効性)
 本事業は、いじめをはじめとした問題行動等への適切な対応の充実の観点から開始され、いじめ等の問題行動が生じた際に、外部専門家等や関係機関の協力を得て、教育委員会や学校による適切な対応を効果的支援する方策等のあり方について調査研究し、効果的な取組については、全国に普及させることを目的としている。
 本事業では、文部科学省で実施する「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」等に基づく各種の指標を用いて、それぞれの指標に対する目標を達成することを目指している。
 平成21年度においては、学校問題解決支援事業を拡充し、調査研究内容を充実させるとともに、より効果的に成果の普及を図ることで、関係機関との連携の促進やいじめ問題の解決に資するものと考えられる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:105百万円
 (平成21年度予算案:105百万円)
事業名【25】問題を抱える子ども等の支援事業(拡充)
【主管課:初等中等教育局児童生徒課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 いじめ、不登校、暴力行為等の児童生徒の問題行動等については、依然として相当数に上るなど憂慮すべき状況にあり、教育上の大きな課題である。そのため、施策目標2"3「児童生徒の問題行動等への適切な対応」では、「学校・家庭・地域社会が一体となって、学校における暴力行為・いじめ等の問題行動及び不登校を解決する。」とされている。現状、学校と関係機関等との連携が不十分なこと、また、家庭、地域社会の教育活動が低下し、問題行動等の対応が一層困難となっていることなどの背景もあり、児童生徒の問題行動等を学校だけで抱え込んでしまい、適切な対応ができないことや、問題行動等への対応に当たって、先生個人の力に拠るところも多く、個々のケースの実態に応じた科学的な研究成果に基づく効果的な対応が図られないことなど課題が多く、各種答申等においても指摘されているところである。
 こうした現状を踏まえ、問題行動等へ適切な対応を図るためには、関係機関等と連携を深め、問題行動等の未然防止、早期発見・早期対応につながるような取組や、様々な要因や背景に応じたプログラム等の開発などについて調査研究を行い、その成果や課題を検証・分析したうえで、効果的な取組については、全国に普及する必要がある。
 また、問題行動等の要因・背景は様々であり、地方自治体だけに取組を任せるのではなく、全国的にその取組の普及を図っていくことが、問題行動等の解決のためには必要であり、本事業の継続拡充が不可欠である。
(有効性)
 本事業は、問題行動等への適切な対応の充実を図る観点から開始され、関係機関等とのネットワークの構築、未然防止、早期発見・早期対応につながる取組、学習プログラムや活動プログラム等の開発などを実践的な調査研究を行い、効果的な取組等については、全国に普及させることを目的としている。
 本事業では、文部科学省で実施する「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」等に基づく各種の指標を用いて、それぞれの指標に対する目標を達成することを目指している。
 平成21年度においては、不登校児童生徒数が近年の減少傾向から増加に転じたことから、学校外の機関を活用した不登校児童生徒の相談、指導やNPO等による問題行動等に対する教育プログラム等の開発についての調査研究を新たに行う。
 近年、本事業の取組とその成果により、問題行動等に対する地方自治体や民間団体等の取組は充実してきており、不登校児童生徒が登校できるようになった割合が、平成16年度は26.3パーセントであったが、平成19年度は30.5パーセントと増加傾向にあるなど、問題行動等の解消を示すデータも明らかとなっていることから、引き続き本事業を進めることですべての指標に対する目標が達成できると見込まれる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:979百万円
 (平成21年度予算案:956百万円)
事業名【26】スクールカウンセラー等活用事業費補助(拡充)
【主管課:初等中等教育局児童生徒課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 いじめ、不登校、暴力行為等の児童生徒の問題行動等については、依然として相当数に上るなど、憂慮すべき状況であり、教育上の大きな問題であり、そのため施策目標2‐3「児童生徒の問題行動等への適切な対応」では、「学校・家庭・地域社会が一体となって、学校における暴力行為・いじめ等の問題行動及び不登校を解決する」とされている。現状、スクールカウンセラーの配置についても、人材の不足や偏在、財政状況等の理由によって活用状況が異なっていること、スクールカウンセラーの活用の仕方は校内組織の在り方、教職員の意識の差などにより、教職員とスクールカウンセラーの連携が不十分である場合が多く、「教育相談等に関する調査研究協力者会議」でも指摘されている。しかし、スクールカウンセラーについては、教育振興基本計画において「教育相談を必要とするすべての小・中学生が、スクールカウンセラー等による相談等を受けられるように促す」とされており、他にも多くの答申等においてその必要性が提言されている。
 「24時間いじめ相談ダイヤル」についても同様である。
 こうした状況を踏まえ、問題行動等への適切な対応をするために、地方公共団体の取組を支援する本事業が必要である。
(有効性)
 本事業は児童生徒の問題行動等に適切に対処し、その解決を図る目的で、学校内外の教育相談体制の充実を図るため、スクールカウンセラー等の配置、24時間電話相談体制の整備を行うものである。本事業では文部科学省で実施する「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸課題に関する調査」等に基づく各種指標を用いてそれぞれの指標に対する目標を達成することを目指している。
 なお、スクールカウンセラー等配置については、平成18年度において全公立中学校(約1万校)に対し、7,692校の配置となっている。このことは、スクールカウンセラーは児童生徒の問題行動等への対処のみならず、自然災害や事件・事故の被害にあった児童生徒に対する緊急時の心のケアを担っており、その対応などから特別な事情のある小学校・高等学校にも配置されて有効に活用されているためである。教育振興基本計画にもあるとおり、今後においても引き続き全公立中学校への配置を進めるとともに、災害や事件・事故の被害児童生徒に対する緊急支援などを進めることで、すべての指標に対する目標が達成できると見込まれる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:3,665百万円(平成21年度予算案:14,261百万円の内数)
【事業内容の見直し】
 新たに学校・家庭・地域の連携協力推進事業を創設し、本事業はその中で実施することとした。
事業名【27】青少年体験活動総合プラン(拡充)
【主管課:スポーツ・青少年局青少年課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 直接体験の不足(体を動かす体験、自然体験)、生活習慣の乱れ(夜更かし、朝食欠食)、希薄な対人関係(保護者の関与が少ない、地域の大人の関与が少ない、仲間との接触が少ない)等の理由により、ニート等自立の意欲に欠ける青少年が増加している。青少年の意欲を高め、心と体相伴った成長を促すために、すべての青少年の生活に体験活動を根付かせ、体験を通じた試行錯誤切磋琢磨を見守り支えることが重視されている。(「次代を担う自立した青少年の育成に向けて」平成19年1月中央教育審議会答申)
 また、「教育再生懇談会 ‐第一次報告‐」において、すべての子どもに体験活動の機会を提供すると提言されている。
 さらに、「経済財政改革の基本方針2008」において「2.未来を切り拓く教育」の中で体験活動の機会の提供に積極的に取り組むとしている。
(1)小学校長期自然体験活動支援プロジェクト
 「教育振興基本計画」において、「関係府庁が連携して、小学校で自然体験・集団宿泊体験を全国の児童が一定期間(例えば1週間程度)実施できるよう目指すとともに、そのために必要な体験活動プログラムの開発や指導者の育成を支援する。」としている。また、「教育再生懇談会"第一次報告"」において、全ての子供への自然体験・農山漁村体験(小学校で1週間)の機会の提供を目指し、関係府省が連携して支援すると提言していることから、小学校における長期自然体験活動の指導者養成やプログラム開発に取り組む。
 この取組を実施することにより、教育振興基本計画において、小学校で全国の児童が一定期間(例えば1週間程度)実施できるように目指している自然体験・集団宿泊体験が効果的に安全に実施され、推進される。
(2)青少年の課題に対応した体験活動推進プロジェクト
 「教育振興基本計画」において、「教育をめぐる課題として、子どもの学ぶ意欲や学力・体力の低下、問題行動など多くの面で課題が指摘されている。」「社会が急速な変化を遂げる中にあって、個人には、自立して、また自らを律し、他と協調しながら、その生涯を切り拓いていく力が一層求められるようになる。」「子どもたちの安全・安心を確保するとともに、質の高い教育環境を整備する観点からも、放課後や週末の子どもたちの体験・交流活動等の場づくりを推進する。」としている。
 最近では、秋葉原事件など青少年による凶悪犯罪が増加しており、犯罪対策閣僚会議においても、犯罪対策が議論されているが、このような犯罪の背景の1つとして、社会から孤立する青少年の増加が指摘されている。
 このようなことから、青少年の課題に対応した体験活動を推進する。この取組を実施することにより、青少年の課題に対応した体験活動を実施するための重要な知見が得られるとともに、青少年の行動の原動力である意欲や、職業的自立の礎となる社会性等が育まれる。また、青少年の体験活動の機会や場が開拓される。本取組の成果を全国に普及することを通じて、各自治体において青少年の課題に対応した体験活動の支援体制の整備が推進されることが期待できる。
 これらの取組により、豊かな人間性を育むために必要な体験活動の機会が増加し、我が国の青少年が自立した人間として成長することが期待されることから、本事業の拡充が不可欠である。
(有効性)
(1)小学校長期自然体験活動支援プロジェクト
 1.自然体験活動指導者養成事業
 約2万の小学校が効果的に自然体験活動を実施するためには、10万人の指導者が必要である。平成20年度については、6,000人(全体指導者2,000人、補助指導者4,000人)の指導者を養成する予定であり、今後計画的に養成していく必要がある。また、小学校の長期自然体験活動が実施されるにあたり、教員の負担は増えていくことから、外部の指導者が支援することにより、教員の負担が増えるのを軽減できる。さらに、支援体制についても学校教育における自然体験活動の位置づけや、教科教育との関連などについて理解した上で、自然体験活動について一定程度の知識と指導力を有する全体指導者と実際の活動場面で児童の活動を補助したり、安全確保に配慮できる補助指導者が支援することにより、効果的にまた安全に実施できる。このことから、小学校の長期自然体験活動には、指導者が必要であり、活用されると考えられることから、養成した指導者が活動した割合を毎年度増加させていくという目標を達成することができると見込まれる。
 2.小学校自然体験活動プログラム開発事業
 プログラム開発については、活動フィールド・学校規模・学年・教育課題・課題解決手法・実施時期毎に多様なプログラムが考えられるが、小学校の長期自然体験活動の多様なプログラム開発はなされていない現状にある。平成20年度に24プログラムを開発する予定であり、毎年度評価し、必要なプログラム数を検証しながら、開発していく必要がある。小学校が実施する1週間のプログラムを学習指導要領との関連、地域資源の活用、具体的な指導体制や教材等も含めて開発することで、教員や外部指導者は実施する際に参考になるため、活用されると考えられることから、開発したプログラムが参考にされる割合を毎年度増加させていくという目標を達成することができると見込まれる。
(2)青少年の課題に対応した体験活動推進プロジェクト
 平成17~19年度に実施した青少年の自立支援事業により、自立に支援を要する青少年として、ひきこもり青年、不登校児童・生徒、ニート等を対象とした事業を実施した平成19年度の都道府県数は、平成17年度からは9道府県増加(29パーセント)し、概ね順調に増加した。事業数については、42事業増加(44パーセント)し、それぞれの内訳についても、ひきこもり青年(10から15)、不登校児童・生徒(29から35)、ニート(4から15)と概ね順調に増加しており、この施策については、順調に進捗した。このことから、国が先導的に青少年の課題に対応した取組を実施し、成果や課題を普及することにより、各自治体が青少年の課題に対応した体験活動を実施できる体制を整備することができ、各自治体において青少年の課題に対応した体験活動の支援体制の整備を推進するという目標を達成することができると見込まれる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:540百万円
 (平成21年度予算案:203百万円)
【事業内容の見直し】
 小学校自然体験活動プログラム開発事業については、平成20年度は開発したプログラムの検証事業に要する経費を計上していたが、平成21年度は小学校の取組状況を勘案し、長期自然体験活動を予定している小学校と連携してこの事業に取り組むことにより、検証事業に要する経費について合理化減を行う見直しを行った。
事業名【28】青少年を取り巻く有害環境対策推進事業(拡充)
【主管課:スポーツ・青少年局青少年課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 発達途上にある青少年の人格形成に悪影響を及ぼす各種メディア上の性的な内容や暴力的な表現をはじめ、昨今の携帯電話の普及により青少年がインターネット上の違法・有害情報サイトを通じて犯罪やいじめ等に巻き込まれており、これは解決すべき喫緊の課題と考えられる。
 このため、青少年がインターネットを適切に活用できるよう、情報活用能力を育成し情報モラルを身に付けさせることや保護者への啓発等をとおしてフィルタリング利用の普及や家庭(親子)でのルールづくりを促進するなどの地域の取組を支援することは、この問題を解決するためには有効な手段と考えられる。
 以上のことから、本事業の実施により青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境を整えるためには、本事業の実施は不可欠である。
(有効性)
 本事業において、有害環境から子どもを守るための推進体制の構築、有害情報に関する普及啓発資料の作成・配付、青少年とメディアに関する調査研究等の取組により、保護者のフィルタリングの認知率を大幅に向上させ、子どもが使用する携帯電話等において、原則としてフィルタリングが利用されるようになることに資すると考えられる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:501百万円(平成21年度予算案:214百万円)
【機構・定員要求】
 青少年を取り巻く有害情報環境対策を強化するため、有害情報対策調整係長(1名)の新設、有害情報対策推進係長(1名)、同係員(1名)の新設を要求した。(措置なし)
事業名【29】子どもの読書応援プロジェクト(拡充)
【主管課:スポーツ・青少年局参事官(青少年健全育成担当)】
【関係課:スポーツ・青少年局青少年課】
評価結果の概要 (必要性)
 読書活動は、子どもが、言葉を学び、感性を磨き、表現力を高め、創造力を豊かなものにし、人生をより深く生きる力を身につけていく上で欠くことのできないものである。また、子どもたちが、社会を構成する一員として、主体的に社会の形成に参画していくために必要な知識や教養を身につけるとともに、真理を求める態度を養う礎となるものであり、社会全体でその推進を図っていくことは極めて重要である。
 平成13年に成立した「子どもの読書活動の推進に関する法律」に基づき、平成14年8月の「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」閣議決定から5年が経過し、新たに平成20年3月に「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」が閣議決定された。その中では、学校段階が進むにつれて子どもたちが読書をしなくなる傾向にあること、地方公共団体の取組状況に大きな差が見られること、平成19年に公表された「OECD生徒の学習到達度調査」により、我が国の子どもたちの読解力の向上が課題であることなどの課題が明らかとなった。
 このような課題等を踏まえて、今後は乳幼児期から発達段階に応じて読書に親しめるように配慮すべく、読書活動への理解や関心を深めるために指導・助言できる人材の養成・育成を全国に広く行うために、読書ボランティアの質的及び量的拡充をはじめとする各事業を、それぞれ都道府県を単位として47箇所に展開することを目指す。また、子ども読書地域スクラム事業については、平成20年3月に閣議決定された「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」の中で、子どもの読書活動の推進については地域によって取組に格差が見られることから、地域の行政・図書館・公民館・学校・PTA・民間企業等による子ども読書活動推進のためのネットワークを形成し、地域の子どもの読書活動の推進に取り組む事業の展開を目指すこととする。さらに、本事業において開設した、子どもの読書活動を応援する全国的な情報サイトの運営及び新規コンテンツの追加によって、子どもの読書活動の推進に関する情報の提供等を通じて、子どもの読書活動の普及・啓発を図る。また、発達段階に応じた読書に親しむための本の普及等により家庭・地域における読書活動の推進体制を整備する。
(有効性)
 読書ボランティアについての図書館への登録数については、平成17年度において約7万人となっているが、平成19年度「子ども読書応援プロジェクト」事業において、参加数のうち、ボランティア関係者が69,674人であり、他に「発達段階に応じて読書活動への理解を深める取組の調査研究」の参加者が23,526人、前年度の子ども読書地域フロンティア事業における読書フェスティバル参加者数が12,800人となっているため、本事業によって、子どもの読書活動に興味及び関心のある人が読書ボランティアの活動をするための支援を行うことにより、平成23年度までに読書ボランティアについての図書館への登録数を10万以上にすることは可能と思われる。
 「子どもの読書活動の推進に関する法律」第9条では、都道府県及び市町村は、それぞれ「子ども読書活動推進計画」を策定するよう努めなければならないとされており、平成18年度末時点で、47都道府県(平成18年度において全ての都道府県で策定済)、市町村においては昨年度より136市町村増えて567市町村で策定され、前年度と比較して伸び率は約32パーセントとなっている。本事業によって、子ども読書応援団推進事業で各地域における子どもの読書活動推進体制の下地をつくり、子ども読書地域スクラム事業によって、「市町村子ども読書活動推進計画」の策定率の進捗を図り、子ども読書情報ステーション事業によって子どもの読書活動の情報を各都道府県及び市町村に提供すること等を通じて、この伸び率を維持していきたい。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:488百万円
 (平成21年度予算案:155百万円)
事業名【30】学校すこやかプラン(拡充)
【主管課:スポーツ・青少年局学校健康教育課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 近年、子どもを取り巻く生活環境の急激な変化を背景として、心と体の両面に関わる様々な健康課題として、ストレスによる心身の不調などメンタルヘルスに係る課題への対応や、ぜん息、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーなどのアレルギー疾患への対応、さらには、薬物乱用、感染症の問題など、粘り強い継続的な取組が必要とされる課題が顕在化している。
 これらの健康課題への取組に当たっては、正しい理解に基づく迅速かつきめ細かい対応が必要であり、それぞれの課題は学校のみでは十分な対応ができないものも少なくなく、地域や家庭との連携・協力による総合的な取組が必要である。
 以上のことから、学校保健の取組を推進し、学校における児童生徒の現代的健康課題にきめ細やかな対応を行うためには、本事業「学校すこやかプラン」の拡充が不可欠である。
 また、平成20年6月には、学校保健の充実を図るため、学校保健法の一部が改正され学校保健に関して、地域の実情や児童生徒等の実態を踏まえつつ、各学校において共通して取り組まれるべき事項について規定の整備が行われたところである。
(有効性)
 本事業では、これまで、学校保健に関する様々な取組を実施することにより、学校における保健活動の中心的な役割を担う学校保健委員会の設置率が増加したほか、薬物等に対する意識等調査において、薬物は絶対に使うべきでないと回答した児童生徒の割合が増加してきているなど一定の成果を得ている。
平成19年度においては、
 1.公立学校における学校保健委員会の設置率は、平成19年度 83.9パーセント
 2.薬物乱用防止教室の開催率は、平成19年度 中:57.9パーセント、高:69.0パーセント
 3.薬物等に対する意識の改善としては、公立小学校6年生において絶対にいけないと回答した者の割合は、平成18年度:91.9パーセント
 4.スクールヘルスリーダーは平成20年度新規事業であるため派遣率は、0パーセント
 となっている。今後「学校すこやかプラン」を継続的に実施することにより、各学校へ効果的な実施方法等が波及することにより、達成年度の平成26年度には、目標である数値の達成が見込まれる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:728百万円
 (平成21年度予算案:467百万円)
事業名【31】食育推進プラン(拡充)
【主管課:スポーツ・青少年局学校健康教育課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 近年、子どもを取り巻く生活環境が変化し、朝食欠食、偏食、孤食といった食に関する課題が生じている。子どもたちが健やかに育つための生活リズムを育み、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病を予防するためにも、子どもの発達段階に応じて、各教科の内容や学校給食を関連付けながら食に関する指導を推進する必要がある。また、平成20年6月には学校給食の充実を図るため、学校給食法の一部が改正され学校給食に関する規定の整備が行われたところである。
(有効性)
 本事業では、これまで、栄養教諭を中核とした学校における食育の指導体制の整備や地場産物の活用による学校給食の充実に取り組んだ結果、栄養教諭の配置数や学校給食における地場産物の使用割合が増加している。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:630百万円
 (平成21年度予算案:491百万円)
事業名【32】子ども安心プロジェクト(拡充)
【主管課:スポーツ・青少年局学校健康教育課】
【関係課:文教施設企画部施設企画課、生涯学習政策局参事官、スポーツ・青少年局企画・体育課】
評価結果の概要 (必要性)
 近年、学校内外において不審者による子どもや教職員の安全を脅かす事件・事故、交通事故や自然災害による被害が発生するなど、子どもの安全を確保することが極めて重要な課題となっている。
 こうした課題に対応するため、保護者や地域の関係団体等の協力を得て、地域社会全体で子どもの安全を見守る体制を整備するとともに、子ども自身に危険を予測・回避する能力を習得させるための取組を進める必要がある。また、平成20年6月には学校安全の充実を図るため、学校保健法の一部が改正され学校安全に関する規定の整備が行われたところである。
(有効性)
 学校安全については、平成14年度から平成18年度において、子どもの安全確保に向けた取組を実施しており、平成19年度からは、更に地域社会全体で子どもの安全を見守る体制を整備するとともに、子ども自身に危険を予測・回避する能力を習得させることを目的としている。
 本プロジェクトでは、1.防犯マニュアルを活用している学校の割合、2.子どもの安全対応能力の向上を図るための取組を実施している学校の割合、3.地域のボランティアによる学校内外の巡回・警備が行われている小学校の割合を一義的な指標として、全ての小学校で、1.~3.について100パーセントとなることを目指している。
 平成18年度においては、全国平均が1.が97.7パーセント、2.が80.6パーセント、3.が91.0パーセント(平成19年度は調査中)となっている。
 今後とも、学習指導要領の改訂、学校安全に関する事項を新たに設けた学校保健安全法の公布を踏まえ、学校安全に関する適切な対応について理解が深まるよう学校安全教育・管理に関する資料の作成・配付等による学校の危機管理の向上を図るとともに、スクールガード・リーダーの充実により、地域社会全体で子どもの安全を見守る体制を整備することによって目標を達成することができると見込まれる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:2,023百万円
 (平成21年度予算案:子ども安心プロジェクト137百万円
 補助事業分14,261百万円の内数)
【事業名の変更】
 補助事業分 「学校・家庭・地域の連携協力推進事業」
 (メニューの1つとして「地域ぐるみ学校安全体制整備推進事業」が入っている。)
【事業内容の見直し】
 本事業については、他の教育関係のモデル事業と合わせ、補助事業に統合している。
事業名【33】免許状更新講習開設事業費等補助(拡充)
【主管課:初等中等教育局教職員課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 教員免許更新制は、教員が、社会構造の急激な変化等に対応して、最新の知識・技能を身に付け、自信と誇りを持って教壇に立ち、社会の尊敬と信頼を得られるようにする必要があることから導入が決定されたものであり、教員の資質向上に多大な寄与をするものである。そのため、教員免許更新制の実施の円滑な実施のための取組や多様で優れた免許状更新講習の開設も当然に、教員の資質向上に多大な寄与をすることから、事業の成果が上位目標の実現に直結するものである。
(有効性)
 免許状更新講習の開設だけでなく、開設講座数や科目、受入人数等も、講習開設者の任意とされているが、量的・質的に十分な免許状更新講習を確保するため、更新講習開設者に対して財政的支援を行うことで、各開設者に十分量の講習開設を促進できるとともに、大学の所在地や講習受講者等の地域偏在によらない、多様で質の高い更新講習開設されることが見込まれる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:4,658百万円
 (平成21年度予算案:1,002百万円)
事業名【34】学校マネジメント支援に関する調査研究事業(拡充)
【主管課:初等中等教育局初等中等教育企画課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 教育は人なりと言われるように、教育の質の向上は教員にかかっている。教員が子どもと向き合う時間を確保し、質の高い授業や生徒指導等を行うこと、また心身ともに健康な状態で子どもの指導にあたることができるようにするためには、学校マネジメント支援を図ることは喫緊の重要課題である。
 このことは、経済財政改革の基本方針2008や教育振興基本計画において明記され、政府がこれからすぐに取り組むべき事項として、閣議決定されたことからも明らかである。
 また、総理の下に設置された教育再生会議第3次報告においても、各種調査や提出書類の簡素化・軽減、校内会議の削減・合理化等を図ること、学校問題解決支援チームを全ての教育委員会に設置することが提言され、その後まとめられた最終報告(「社会総がかりで教育再生を」)において、直ちに実施に取りかかるべき事項としてフォローアップすることとされている。
 このように学校マネジメント支援の取組を全国に広めていくことは必要であり、現在の委託数では不十分であるため、全国に普及させていくためにも拡充は必要である。
(有効性)
 本事業は、1.事務の外部委託、2.校務分掌の適正化、3.保護者等への対応、4.教職員のメンタルヘルス対策などを通じて、学校マネジメントを支援し、教員が児童生徒に向き合う時間を確保するとともに、心身ともに健康で、児童生徒の指導に当たること、また組織的・機動的な学校運営が行われることで、より質の高い教育を提供し、全国的な教育水準の向上を図ることを目的としている。
 学校マネジメント支援という課題は、全国的な課題であり、全ての都道府県・指定都市教育委員会において教員の勤務負担軽減に資すると考えられる取組などを実施し、これまで以上に教員が児童生徒に向き合う時間を確保することを目標としており、平成21年度からは本事業の委託先を増やし、全ての都道府県・指定都市教育委員会を対象とすることにより、未だ教員の勤務負担軽減に対応できていない地域に対しても本課題に着手させることが見込まれる。
 また、校務の効率化や適正化の変化の内容、職場環境の改善内容、教員の勤務の負担感の軽減の程度を把握することにより、総合的に教員の勤務負担軽減に関する実例を収集し、各地域にフィードバックすることができる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:42百万円
 (平成21年度予算案:42百万円)
事業名【35】公立小中学校施設の耐震化等(拡充)
【主管課:大臣官房文教施設企画部施設助成課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 公立学校施設は、児童生徒等が一日の大半を過ごす場であるとともに、災害発生時には地域住民の応急避難場所ともなるため、その安全性の確保は喫緊の課題である。しかしながら、平成20年4月1日現在の公立小中学校施設の耐震化率は62.3パーセントとなっており、特に大規模な地震による倒壊等の危険性の高い公立小中学校施設は、10,656棟と推計されている。このため、安全・安心で豊かな学校施設の整備推進を達成するためには、進捗にやや遅れが見られる公立小中学校施設等の耐震化を推進することが必要不可欠であり、特に大規模な地震によって倒壊等の危険性が高い公立小中学校施設(約1万棟)については、できる限り早期に耐震化を実施する必要がある。
(有効性)
 公立小中学校等施設の耐震化は進捗にやや遅れが見られるものの、整備の推進による一定の効果が得られている。(平成20年4月1日現在の公立小中学校の耐震化率は62.3パーセント)
 本事業の実施により、全国の公立小中学校等施設の耐震補強等事業が促進され、現在より多くの公立小中学校等において、児童生徒や教職員等が一日の大半を過ごす場の安全が確保されるとともに、非常災害時における地域住民の応急避難場所の安全が確保される。
 なお、耐震化が進まない原因は地域によって様々であるが、1.多くの学校施設が昭和56年以前に建設されたため、耐震化を必要とする施設の絶対量が多いにもかかわらず、耐震化をしていない施設が大量に残っている。2.一度に多くの耐震化事業を実施するとなると市町村の財政負担が大きくなり、市町村の財政力の限界を超えることになって事業化ができない。総じて市町村の財政状況は厳しく余裕がない。3.地域住民への情報提供が十分でないなどの理由で、地域として地震防災の意識が低いため、他の課題に優先して耐震化に取り組んでいない。4.学校の統廃合等の問題を抱えており、施設整備の計画自体が策定されていないため、耐震化に着手できないでいる。などの理由が挙げられる。
 このため、目標を達成するには、地方公共団体の財政負担の軽減等が必要となるが、本年6月に地震防災対策特別措置法が改正され、地震による倒壊の危険性が高い公立小中学校等施設(約1万棟)の耐震化事業についての国庫補助率の引き上げ等の加速策が講じられたところである。これにより、事業量の増加が見込まれるため、本事業の拡充により、地方公共団体の事業の前倒しに対応できるような予算の確保に努めることが必要不可欠である。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成20年度第補正予算(第一号)1,139億円、
 同補正予算(第二号)501億円)
 平成21年度予算概算要求額:193,510百万円
 (平成21年度予算案:114,971百万円)
【機構・定員要求】
 公立学校の耐震化推進体制を強化するため、耐震化推進企画官(1名)、専門職(1名)の新設を要求した。(専門職1名措置)
事業名【36】帰国・外国人児童生徒受入促進事業(拡充)
【主管課:初等中等教育局国際教育課】
【関係課:大臣官房国際課、文化庁文化部国語課】
評価結果の概要 (必要性)
 当該事業は、就学前の外国人の子どもへの初期指導教室(プレクラス)の実施や学校での日本語指導の補助、外国語が使える人材の配置等を行うものであり、達成目標「外国人の児童生徒に対する教育支援体制を整備することにより、日本語指導が必要な外国人児童生徒への指導の充実を図る。」の実現のために必要不可欠である。
 また、これまで主に市町村教育委員会を主な実施主体として本事業を実施してきたが、外国人児童生徒数やその在籍校数の増加等により、より広域的な問題となってきていることから、平成21年度は、主な実施主体を都道府県として事業を実施していくこととし、日本語指導が必要な児童生徒が200人以上在籍する都道府県数と同数の20地域に委嘱することを予定している。
(有効性)
 本事業は平成19年度から開始し、地域における外国人の子どもの就学支援や学校における日本語指導、適応指導の充実を図るためのモデル事業として実施しており、他の外国人児童生徒教育の関連施策と相まって、公立学校における日本語指導が必要な外国人児童生徒数のうち、学校で日本語指導等特別な指導を受けている児童生徒数の割合が85パーセント以上となることを目指している。
 平成19年度においては、この割合が83.5パーセントとなっており、より一層の事業内容の充実や効果的な事業の実施を図り、平成21年度には、目標である85パーセント以上を達成することを目指す。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:402百万円
 (平成21年度予算案:301百万円)
事業名【37】外国人児童生徒の日本語指導等の充実のための総合的な調査研究(新規)
【主管課:初等中等教育局国際教育課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 小・中学校における外国人児童生徒の日本語指導の効果的・効率的な教育のために、各学校で活用できる日本語指導のガイドラインの開発や外国人児童生徒の日本語能力の客観的な測定法、日本語指導を行う教員の資質の向上を図るための研修マニュアルの開発は極めて重要である。
(有効性)
 本事業は平成21年度から開始し、小・中学校における外国人児童生徒の日本語指導の体系的・総合的なガイドラインの開発や外国人児童生徒の日本語能力の客観的な測定法、日本語指導を行う教員の資質の向上を図るための研修マニュアルの開発及びその成果の全国への普及を図ることにより、他の外国人児童生徒の関連事業と相まって、公立学校における日本語指導が必要な外国人児童生徒数のうち、学校で日本語指導等特別な指導を受けている児童生徒数の割合が85パーセント以上となることを目指している。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:11百万円
 (平成21年度予算案:0百万円)
 予算編成過程で廃止した。
事業名【38】認定こども園幼保連携型移行・設置促進事業(新規)
【主管課:初等中等教育局幼児教育課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 平成18年10月に開始した認定こども園制度は、保護者や施設から高い評価を受けている一方、施設や地方公共団体から、「財政的支援」や「文部科学省と厚生労働省の連携強化」が運用上の課題として指摘されている。これらの課題の解決のために、本事業を通して、幼稚園・保育所の枠組みを超えた総合的な支援を行う必要がある。
(有効性)
 認定こども園の認定件数は、平成20年4月1日現在で229件であるが、平成19年4月1日現在での調査によると、申請見込件数としては約2,000件とのことであった。平成20年3月に実施した実態調査では、保護者や施設において認定こども園制度が高く評価されている一方、施設や地方公共団体からは運用上の課題も指摘されており、特に、国に対して「財政的支援」を求める声は大きい。本事業の実施により認定件数2,000件以上を達成することが見込まれる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:2,496百万円
 (文部科学省・厚生労働省合計:10,316百万円)
 (20年度1次補正:21億円、2次補正:「安心こども基金(仮称)」1,000億円の内数(1次、2次ともに文部科学省・厚生労働省合計額)により前倒し)
事業名【39】幼稚園教育理解推進事業(新規)
【主管課:初等中等教育局幼児教育課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 近年の研究では、幼児教育がその後の教育に影響を与えることが明らかになりつつあり、幼児教育の質の保証が重要である。そのためには、幼稚園教育要領の周知徹底が必要である。特に、現在、幼稚園教育要領が改訂され、幼稚園におけるその着実な定着が求められている。
(有効性)
 新幼稚園教育要領に対する幼稚園教員等の理解を深め、幼児教育の質の向上に資するため、協議会の参加者数3万5千人以上を目指す。これは幼稚園教員の約30パーセントであり、達成することができることが見込まれる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:36百万円
 (平成21年度予算案:36百万円)
事業名【40】幼稚園就園奨励費補助事業(拡充)
【主管課:初等中等教育局幼児教育課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 保護者の所得状況に応じた経済的負担の軽減及び公私立幼稚園間の保護者負担の格差の是正を図り、幼稚園への就園機会の確保を図るものであり、本事業の拡充は不可欠である。
(有効性)
 平成19年度の幼稚園就園率は、18年度と比較し、2パーセント上昇の86.6パーセントであった。今後、多子軽減策の拡充により、目標である幼稚園就園率5年間で5パーセントの上昇率は達成することができると見込まれる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:24,763百万円
 (平成21年度予算案:20,397百万円)
事業名【41】発達障害等に対応した教材等の在り方に関する調査研究(新規)
【主管課:初等中等教育局特別支援教育課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 発達障害については、外見からは判断が難しい障害であるため、読む、書く、計算する、集中力を持続させるといった学校での学習に必要な基礎的な能力が備わっていない発達障害等の児童生徒は、本人の努力不足や親のしつけが悪いなどと叱責を受けることが多く、自己肯定感を持ちにくく、適切な教育的支援がされない場合、いじめや不登校などにつながるケースもあると言われている。
 また、弱視については、同じ視力であっても、見え方が個々に異なっており、ルーペ・拡大読書器等の視覚補助具を活用しても、十分な支援ができているとは言い難い。
 このため、発達障害等の児童生徒の障害特性、発達段階、教科の特性などに応じた教科用特定図書等や教材の在り方、それらを利用した効果的な指導方法や教育的効果等を研究し、障害のある児童生徒の教科学習等における困難の改善を図ることにより、基礎学力の確実な習得と、学校生活や社会にうまく適応できるようにする必要がある。
 よって、当事業の実施は不可欠である。
(有効性)
 本事業では、小・中・高等学校等における発達障害等の障害のある児童生徒の教科用特定図書等や教材の在り方について実践研究を行い、適切な支援が図られることを目指すものである。
 各分野の専門性を有する団体に委託して実践研究を行うことや、研究成果について、研究報告書の作成・配付、文部科学省ホームページへの掲載、各種雑誌への掲載などを通じて、広く普及を図ることで、目標は達成できると見込まれる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:159百万円
 (平成21年度予算案:39百万円)
【事業内容の見直し】
 委託団体数の見直しを行った。
事業名【42】発達障害を含む特別支援教育におけるNPO等活動体系化事業(新規)
【主管課:初等中等教育局特別支援教育課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 中教審答申(特別支援教育を推進するための制度の在り方について(平成17年))において、学校内外の人材の活用と関係機関との連携協力として、総合的な支援体制整備に当たっては、生徒指導主事、養護教諭、スクールカウンセラー、学校医などの学校内の人材はもとより医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士等の外部専門家の総合的な活用を図ることや福祉、医療、労働など関係機関等との連携の推進及び、親の会やNPO等との連携を図り、全体として有機的なネットワークを構築する必要があると提言されている。
 このため、多岐に渡る障害児支援団体の活動の体系化を行うことによる民間活力の効率的な障害児支援を図るという観点から、NPOに加えて障害者団体、自治会、PTA、企業等、障害児支援を行っている民間団体の活動の在り方についての実践研究及び支援活動の体系化をすることが必要である。
 よって、当事業の実施は不可欠である。
(有効性)
 本事業では、多岐に渡る障害児支援団体の活動の体系化を行うことによる民間活力の効率的な障害児支援を図るという観点から、NPOに加えて障害者団体、自治会、PTA、企業等、障害児支援を行っている民間団体の活動の在り方についての実践研究及び支援活動の体系化を目指すものである。
 障害のある子どもへの対応について、先導的な取組を行っている民間団体の支援活動の体系化について、実践研究を行い、研究成果について、研究報告書の作成・配付、文部科学省ホームページへの掲載などを通じて、広く普及を図ることで、目標は達成できると見込まれる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:132百万円
 (平成21年度予算案:29百万円)
【事業内容の見直し】
 本事業については、支援団体間の効果的な連携の在り方や先導的な取組に関する実践研究を重点的に実施し、研究成果を広く普及する内容に見直した。
事業名【43】発達障害等支援・特別支援教育総合推進事業(拡充)
【主管課:初等中等教育局特別支援教育課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 特別支援教育は、障害のある幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じた適切な指導や必要な支援を行うものである。平成19年4月に改正学校教育法が施行され、全国の幼稚園、小・中学校、高等学校、特別支援学校等において、支援体制の整備が進められている。小・中学校においては、基礎的な体制は整備されつつあるが、一人一人ニーズに応じた支援の充実が求められており、幼稚園や高等学校は小・中学校に比べ体制整備が遅れている等、それぞれにおいて様々な課題があり、本事業を通して特別支援教育の体制整備を総合的に推進する必要がある。
(有効性)
 平成15年度より実施している「特別支援教育体制推進事業」の成果により、平成15年度に57.4パーセントだった公立の小・中学校における「校内委員会の設置率」や19.2パーセントだった「特別支援教育コーディネーターの指名率」がいずれも平成19年度には99.5パーセントとなる等、特別支援教育の体制は着実に整備されつつある。公立の小・中学校においては、今後は一人一人のニーズに応じた支援体制の整備が求められているところであり、本事業を通じて「個別の指導計画の作成率」や「個別の教育支援計画の作成率」を向上させることが見込まれる。
 また、小・中学校に比べ、体制整備が遅れていた幼稚園、高等学校においても、本事業を活用することにより、「校内委員会の設置率」や「特別支援教育コーディネーターの指名率」を向上させ、特別支援教育に関する基礎的な体制の整備を推進することが見込まれる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:879百万円
 (平成21年度予算案:503百万円)
事業名【44】発達障害早期総合支援モデル事業(拡充)
【主管課:初等中等教育局特別支援教育課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 発達障害は主に社会性や他人とのコミュニケーション等に非常に困難が生じる障害であり、外見だけでは障害の有無がわかりにくいという特徴を持つが、幼児期に発見をしてその障害の状況等に応じた適切な療育を行うことで、将来社会生活や集団にうまく適応できると言われている。しかし、適切な支援がされず周囲の理解が得られないと、いじめの対象となったり不登校等の二次障害を引き起こし、思春期にはその対応がさらに困難になる事例もあると言われており、一人一人の教育的ニーズを把握した早期発見・早期支援が重要であるが、そのためには、教育、福祉、医療、保健等の多岐に渡る関係機関が緊密に連携した体制整備が必要である。よって、当事業は施策目標の実現に結びつくものである。
(有効性)
 平成19年度から全ての学校において、発達障害を含む障害のある幼児児童生徒への教育を行うよう、学校教育法の改正を行い、各学校における特別支援教育体制の整備を推進していることもあり、現場においても次第に発達障害に対する理解が進んできていると認識している。また、平成19年度に当事業において指定したモデル地域においても、発達障害に対する理解が高まるにつれ、教育相談等の活用や個別の教育支援計画の作成が増え、早期発見・早期支援につながっているとの報告がある。よって、目標は達成できると見込まれる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:198百万円
 (平成21年度予算案:64百万円)
【事業内容の見直し】
 新規指定地域数の見直しを行った。
事業名【45】拡大教科書等普及推進事業(新規)
【主管課:初等中等教育局教科書課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 通常学級に在籍する障害のある児童生徒に対しては、拡大教科書等について義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律(昭和38年法律第182号)に基づく無償給与が行われておらず、予算措置によって無償給与してきた。
 平成20年6月に制定された、「障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律(平成20年法律第81号)」においては、通常学校に在籍する障害のある児童生徒に対する拡大教科書等の無償給与について規定するとともに、国における施策の推進について示されたところであり、また、同法が採決された際には、
 1.拡大教科書等の供給・普及の促進という国の責任を果たすためには、教科書発行者による拡大教科書等の発行が重要であることにかんがみ、その発行が一層促進されるよう、必要な措置を講ずること。
 2.教科書発行者からの教科書デジタルデータの提供については、その提供が円滑に行われるとともに、提供されたデジタルデータが適切に管理・活用されるよう必要な支援措置を講ずること。
 その際、拡大教科書等を作成するボランティアにとって使い勝手のよいデジタルデータが提供されるよう、適切な処置を講ずること。
 等といった附帯決議を受けている。
 国としては、これらを受け、現在の諸問題を早急に検討・解決し、視覚に障害のある児童生徒に拡大教科書を普及充実させることで、障害のある児童生徒に対する教育における機会均等の保障を担保していく必要がある。
(有効性)
 本事業により得られる教科書デジタルデータの提供拡大や標準規格に基づく拡大教科書等の発行の促進等といった成果を通じて、必要とする児童生徒に拡大教科書等を速やかに、かつ、確実に給与することが可能となる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:300百万円
 (平成21年度予算案:172百万円)
事業名【46】特別支援学校等における指導充実事業(拡充)
【主管課:初等中等教育局特別支援教育課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 特別支援学校においては、障害の重度・重複化、多様化が進んでいることから、一人一人に応じたきめ細かな指導の一層の充実が求められている。また、特別支援学校卒業後、自立し、社会参加していくため、国として教育、労働、福祉関係機関が一体となった施策の強化が求められている。
 小・中学校等においては、LD、ADHD、高機能自閉症等の児童生徒が約6パーセント程度の割合で存在する可能性が示されており、これらの児童生徒を含め、小・中学校等における障害のある児童生徒等に対し、適切な指導及び必要な支援を行うことが求められている。
 また、学習指導要領については、不断の見直しが求められており、国が教育課程の基準を改善するためには、国として実践研究を行い、その成果と課題を明らかにし、特別支援学校等における教育課程の改善に必要な実践データを収集していく必要がある。
 さらに、平成19年12月の国連総会において、「世界自閉症啓発デー」が決議され、自閉症の子どもについて、社会全体への意識啓発のための手立てをとることを促すこと等が盛り込まれており、こうした国際的な動向も踏まえ、自閉症についての正しい理解や障害特性等に応じた教育的な支援について検討することが必要である。
 これらの特別支援学校等における喫緊の課題に対応するためには、自立と社会参加に向けた指導の改善を図るための施策を総合的に行い、もって特別支援教育の改善・充実に資する本事業の拡充が不可欠である。
(有効性)
 本事業では、特別支援学校や小・中学校等の特別支援教育に関する教育課程の編成や学習指導の方法等について実践研究を行い、教育課程の改善等に必要な資料を得るとともに、各学校における特別支援教育の改善・充実を図ることを目指している。
 各指定校や指定地域による研究について、外部有識者を含めた審査評価委員会により計画内容や成果の審査を行い、適切な指導助言を行うことや、研究成果について、研究報告書の作成・配付、文部科学省ホームページへの掲載、研究成果報告会の開催、各種雑誌への掲載などを通じて、広く普及を図ることで、目標は達成できると見込まれる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 自閉症の障害特性等に対応した教育課程、指導内容・方法の改善を図るため、実践研究に必要な経費を概算要求に盛り込んだ。
 平成21年度予算概算要求額:132百万円
 (平成21年度予算案:100百万円)
事業名【47】義務教育費国庫負担金(拡充)
【主管課:初等中等教育局財務課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 義務教育費国庫負担制度は、義務教育無償の原則に則り、公立義務教育諸学校の教職員の給与費について都道府県が負担した3分の1を国が負担するものであり、全国すべての地域において必要な教職員を確保し、義務教育の機会均等と教育水準の維持向上を図る役割を担っている。
 また、優れた教員を確保するため、メリハリある教員給与体系の実現に取り組むとともに、子どもたちの学力の向上と規範意識の育成を図る観点から、教員が子ども一人一人に向き合う環境をつくるため、教職員定数の改善に取り組むこととしており、教育の質的向上を図る観点からも本事業は重要な役割を担っている。
(有効性)
 義務教育費国庫負担制度は、義務教育無償の原則に則り、公立義務教育諸学校の教職員の給与費について都道府県が負担した3分の1を国が負担することにより、全国すべての地域において必要な教職員を確保し、義務教育の機会均等と教育水準の維持向上を図ることを目的としている。
 本事業は、全ての都道府県において、5月1日現在における公立小・中学校の教員定数の充足率(都道府県ごとに、義務標準法第6条に基づき算定した教員定数に対する実際に各都道府県が配置した教員数の割合)が100パーセントとなることを目標としているが、平成19年度においては、教員定数を充足している県が43県、未充足となっている県が4県(未充足4県の平均充足率は99.8パーセント)となっている。
 なお、未充足となっている4県については、5月2日以降、随時、教員を配置しており、年度末までには未充足は解消されている。
 このような状況から、年度内において充足率100パーセントを達成することができると見込まれる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:1,676,776百万円
 (平成21年度予算案:1,648,250百万円)
事業名【48】国際化拠点整備事業(新規)
【主管課:高等教育局高等教育企画課】
【関係課:高等教育局大学振興課、同学生支援課】
評価結果の概要 (必要性)
 日本を世界により開かれた国とし、アジア世界との間のヒト、モノ、カネ、情報の流れを拡大するためには、海外の学生が我が国に留学しやすい環境を提供したり、海外との教育カリキュラムについての相互連携などを通じた大学教育の国際化が必要であり、「教育再生懇談会第一次報告」において「質の高い留学生を受け入れる重点大学30を選定し、重点的支援を行う。」と指摘されているのをはじめとして、「経済財政改革の基本方針2008」において「留学生受入の拠点となる質の高い国公私立大学をコンペ方式で全国・各分野をトータルで30校程度選定」といった取組の重要性が指摘されているところである。
 また、「留学生30万人計画」骨子においては、「留学生を引きつける魅力ある大学づくりとして、英語のみによって学位取得が可能となるなど大学等のグローバル化と大学等の受入れ体制の整備について支援を重点化して推進する。」とされているところである。
 以上の状況より、日本の大学が海外の有力大学と伍していくためには、国際的な拠点となる大学に対して国が支援を行っていく意義は大きい。
(有効性)
 本事業は、本年1月の福田内閣総理大臣の施政方針演説の中で言及のあった、「新たに日本への『留学生30万人計画』を策定し、実施に移すとともに、産学官連携による海外の優秀な人材の大学院・企業への受入れの拡大を進めます。」や、これを踏まえた経済財政改革基本方針2008の経済成長戦略の中で、「「留学生30万人計画」の実現、英語教育の強化に向けて、平成20年度から3カ年の取組を加速させる。」として、「グローバル30(国際化拠点大学)」(仮称)の構想の具体化が上げられたところである。基本方針等で上げられた「留学生30万人計画」を達成するために、本事業は必要なものであり、これにより、平成18年度現在の英語のみで学位が取得できるコース(5大学6学部、57大学101研究科)の大幅な増加が見込まれるとともに、平成18年度現在の留学生12万人を2020年までに30万人に増加することにも大きく寄与することが見込まれる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:15,000百万円
 (平成21年度予算案:4,081百万円)
【事業名の変更】
 国際化拠点整備事業(グローバル30)
事業名【49】海外進出・ネットワーク形成支援事業(新規)
【主管課:高等教育局高等教育企画課】
【関係課:高等教育局大学振興課、同学生支援課】
評価結果の概要 (必要性)
 ヨーロッパをはじめとした先進諸国を中心に、国際的な連携、国際的通用性を高める取組が加速する中、国際的認知度の向上や国際競争力の強化は我が国の大学が国際的に取り残されないためにも喫緊の課題となっている。このような状況を打破するため、海外との教育カリキュラムについての相互連携などを通じた大学教育の国際化が必要であり、「社会総がかりで教育再生を・第二次報告」において「単位互換・ダブル・ディグリーなど海外大学との国際連携の推進」の重要性が指摘されているのをはじめとして、「経済財政改革の基本方針2007」において「アジアを含めた国際的な大学間の相互連携プログラムを促進」、さらに「長期戦略指針イノベーション25」においては「海外の大学や大学院との単位互換の促進、複数学位制の拡大」、「アジア・ゲートウェイ構想」においては「海外の大学とのダブル・ディグリー等の国際的なプログラムの開発」、「留学生30万人計画」においては「交換留学、単位互換、ダブルディグリーなど国際的な大学間の共同・連携や短期留学、サマースクールなどの交流促進、学生の流動性向上、カリキュラムの質的保証などにより大学等の魅力を国際的に向上」といった取組の重要性が指摘されているところである。
 現在、大学間協定数は増加の傾向にあるが、ダブル・ディグリー等をはじめとした複数学位プログラムについてはその取組が始まったばかり(37大学での実施)であり、今後世界的にも広がりが見込まれている。
 従って、日本の大学が海外の有力大学と連携し、取り残されることなく取り組んでいくために、このような取組に対して国が支援を行っていく意義は大きい。
(有効性)
 本事業を通じ、近年世界各国の大学で導入が進められている外国人学生に対する教育の提供や「ダブル・ディグリー」について、平成21年度からはダブル・ディグリーを実施する上で必要なコーディネーターの配置や短期プログラムなどを進めるための支援を行うことにより、平成18年度においては37大学において実施されていたダブル・ディグリーの取組を、達成年度である平成25年度には、全大学の概ね一割にあたる70大学で実施されることが見込まれる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:1,158百万円
 (平成21年度予算案:0百万円)
 予算編成過程で廃止した。
事業名【50】学士力確保と教育力向上プログラム(拡充)
【主管課:高等教育局大学振興課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 これまでの「特色ある大学教育支援プログラム」及び「現代的教育ニーズ取組支援プログラム」により、国公私立を通じた競争的環境の下で大学の個性化・特色化を推進するとともに、各大学の優れた取組を広く共有することで、我が国の大学教育改革に向けた意識改革を促進してきたところである。
 大学等が、知識基盤社会を担う優れた人材を養成し、高度化・多様化する社会からの期待に応えていけるよう、各大学等が教育の質の向上に向けた取組を推進し、人材育成機能の強化を図る必要がある。また、社会の信頼に応える高等教育の実現のために、大学設置基準等を改正し、人材養成目的の明確化やFDの実施等について新たに規定したところであり、各大学等において積極的に対応する必要がある。そこで、各大学等が行う教育の質の向上に向けた様々な優れた取組を積極的に支援するとともに、これらの取組の情報を社会に提供することで、我が国の高等教育全体の更なる活性化を図る必要がある。
(有効性)
 本事業の実施により、各大学における大学教育改革の取組が一層積極的に行われると見込まれる。
 平成15年度からの「特色ある大学教育支援プログラム」、平成16年度からの「現代的教育ニーズ取組支援プログラム」への申請数は毎年多く、また、学長や選定取組者を対象としたアンケート調査では約9割以上がこれらの事業が大学改革に役立っていると回答するなど、本事業の定着及び他大学を含めた社会への普及・啓蒙は一定程度達成したと考える。
 また、平成18年度において、教員の教育力の向上のための取組(ファカルティ・ディベロップメント)を行う大学は628校(前年度比53校)、厳格な成績評価(GPA)を行う大学は294校(前年度比46校)、学生による授業評価結果を授業改善に反映させる組織的取組を行う大学は377校(前年度比42校)と、それぞれ増加している。
 このように大学改革への意識の高まりが醸成されていることから、本事業を国公私立を通じた競争的な環境の下で展開することで、より効果的に大学改革が促進され、社会からの信頼に応え、求められる学習成果を確実に達成する学士課程教育の質の向上が図られるものと考える。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:9,551百万円
 (平成21年度予算案:11,002百万円)
【事業名の変更】
 予算編成過程において、本事業と「社会人力育成のための学生支援プログラム」(概算要求額:35億円)を統合し、名称を「大学教育・学生支援推進事業」とした。
【事業内容の見直し】
 予算編成過程において、本事業と「社会人力育成のための学生支援プログラム」を統合し、学部教育等の充実や就職支援を含む総合的な学生支援の推進のための各大学の取組を支援する「大学教育・学生支援推進事業」を行うこととした。
事業名【51】法科大学院教育水準高度化事業(新規)
【主管課:高等教育局専門教育課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 新たな法曹養成制度は、法学教育、司法試験、司法修習を有機的に連携させた「プロセス」を重視した制度であり、法科大学院は、その中核的機関として、その課程を修了した者のうち相当程度の者が新司法試験に合格できるような充実した教育を行うことが強く求められており、確実に教育体制の強化を図る必要性がある。
(有効性)
 本事業では、各地域における基幹的法科大学院を中心とした質の高い教育のための体制構築が目標である。本事業では、連携・協同体制の構築や共同設置を目指した取組のうち、特に、質の高い教育のための体制構築への道筋がより具体的で実効性の高いものに対して支援を行うこととしており、当該目標を達成することは可能であると考える。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:500百万円
 (平成21年度予算案:0百万円)
 予算編成過程で廃止した。
事業名【52】先導的ITスペシャリスト等育成推進プログラム(拡充)
【主管課:高等教育局専門教育課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 近年、少子高齢化、高度情報化、国際化などが急速に進む中で、我が国では、経済の活力の維持、環境問題といった様々な重要な課題に対応するためには、大学における優秀な人材の育成が必要不可欠であり、大学が企業等と連携し、「社会から望まれる人材」像を理解した上で、職業人として必要な基礎知識から実践的スキルまでを身につけさせ、社会で活躍できる資質を備えた高度な人材を育成していく必要がある。
 先導的ITスペシャリスト育成については、平成18年度より実施している各拠点における教育プロジェクトが3年目を迎え、それぞれの特色に応じた所要の成果が輩出されつつあるが、各拠点にて共通利用しうる教材等や共通認識すべき課題等の十分な共有あるいは検討に至っていないのが現状である。今後は、拠点間の密な情報交換を図り、著作権や知的財産権等に関するガイドラインの策定やポータルサイトの構築など、教材等を横断的に展開するための整備を行い、高度IT人材育成方策の全国展開を進めていくことが望まれている。
 さらに、本プログラム終了後の平成22年度以降も高度IT人材の量的拡大を進め、我が国の国際競争力の継続的な向上を図る必要があるため、教員等の教育力向上や社会人向け教育プログラムの展開など、大学における教育機能のさらなる強化を図る必要がある。
 高度実践型理工系スペシャリスト育成については、先行して行われているIT分野の人材育成の状況も踏まえ、同様の手法を用いIT分野以外の人材の育成を図っていく必要があることから、新たに人材育成拠点を形成するもの。
(有効性)
 先導的ITスペシャリスト育成については、全国8拠点で多様な教育プログラムが開発・実施されるとともに、その活動を通じて得られた成果について、各拠点が個別に普及展開に取り組むだけでなく、「拠点間教材等洗練事業」を通じて、各拠点が協力して、ポータルサイトの構築やシンポジウムの開催など組織的かつ効率的な方法によって普及展開活動を実施することにより、世界最高水準のIT人材育成方策の全国的な波及効果が期待できる。
 新たに開始する高度実践型理工系スペシャリスト育成については、ITスペシャリスト育成拠点に関する中間評価結果を踏まえ、問題点を整理した上で拠点形成を試みることから、受講者の2/3以上から良好との評価を得ることは可能と考える。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:2,453百万円
 (平成21年度予算案:895百万円)
事業名【53】医師不足対策人材養成推進プラン(新規)
【主管課:高等教育局医学教育課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 へき地、離島等の地域や小児科・産科等の特定の診療部門における医師不足にかかる対策は喫緊の課題であり、これまで「新医師確保総合対策(平成18年8月)」及び「緊急医師確保対策(平成19年5月)」を策定し緊急臨時的な医師養成数の増を図ってきたが、更なる医師確保のための緊急対策に取り組むため、「経済財政改革の基本方針2008(平成20年6月)」及び「社会保障の機能強化のための緊急対策"5つの安心プラン"(平成20年7月)」において医師養成等にかかる提言がなされ、その必要性・緊急性が求められている。
 このため、地域医療等に対応した質の高い高度な医療人の養成を図り、地域医療への積極的な貢献を行うための大学の取組等を支援する必要があることから、本事業の実施が不可欠である。
 これにより、地域医療に貢献しうる質の高い医療人の養成が図られ、医師不足とされる地域・診療科において安全・安心な診療体制の実現が期待される。
(有効性)
 本事業では、大学がその人材養成・医療機能資源を最大限活用し、地域の医療機関と連携しながら医師不足解消等に対応するため、地域医療を担う質の高い医療人の養成及び安心・安全な医療体制の構築が見込まれる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:18,500百万円
 (平成21年度予算案:1,700百万円)
【事業名の変更】
 ・医学部定員増に伴う学生教育用設備整備
 (平成20年度1次補正額:4,000百万円)
 ・周産期医療環境整備事業(平成21年度予算案:1,700百万円)
【事業内容の見直し】
 医学部における医師養成数の増を行う大学の教育環境の整備・充実は、平成20年度補正予算で前倒しして措置した。
 社会的に大きな問題となっている周産期医療体制について、地域医療の「最後の砦」として、大学病院への期待が益々高まっていることから、大学病院における周産期医療体制を強化し、積極的に貢献することを目的に「大学病院の周産期医療体制整備計画」(平成20年12月5日)を発表し、それに基づき、大学病院におけるNICU等の医療環境の整備、次代を担う若手医師や女性医師の復帰支援など教育指導体制の充実及び院内助産所等を活用した助産師養成環境の整備を行うよう事業内容の見直しを行い、事業名称を変更した。
事業名【54】がんプロフェッショナル養成プラン(拡充)
【主管課:高等教育局医学教育課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 がんは、わが国の死亡率第1位の疾患であるが、がんを専門的に診療できる専門家が全国的に少ないことが社会問題となっている。そして、がん専門医等の養成等必要性について平成19年4月に施行されたがん対策基本法第14条に「がん医療に携わる専門的な知識及び技能を有する医師その他の医療従事者の養成を図ることが示されており、また、同法への対応として、同年6月にがん対策推進基本計画が策定され、本事業の取組があげられており、各大学におけるがん診療に関する教育を専門的に行う教育組織、その実施体制の充実と緩和ケアを含めた人材養成の更なる推進を図ることが必要であると指摘され、さらに「経済財政改革の基本方針2008」では、「がん対策推進基本計画に基づき、がんの総合的な対策を講じる。」とされている。
 本基本計画等の実現を目指すためには、重点的な支援を行い、がん診療を専門的に行う医師等が専門性を発揮できる環境を整えることが必要であることから、本事業の拡充が必要不可欠である。
(有効性)
 本事業では、各大学が、大学病院、がん診療連携拠点病院や地域の医療機関と連携して、がんに特化した教育や全医師等に緩和ケアの教育を行うことにより、がんに関する幅広い知識及び技術を有した一定数の専門医等の育成が見込まれる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:2,500百万円
 (平成21年度予算案:2,000百万円)
事業名【55】社会人力育成のための学生支援プログラム(拡充)
【主管課:高等教育局学生支援課】
【関係課:高等教育局大学振興課】
評価結果の概要 (必要性)
 少子化による人口減少を迎える日本が持続的発展を続けるためには、大学が学士課程教育を通じ教養を備えた専門的な人材を育成することも大切であるが、それ以上に、いわゆる大学全入時代において、資質・能力の異なる多様な学生が増加しており、大学で学生が身につけるべき社会人としての基盤となる資質・能力を各大学で養うことは極めて重要な課題となっている。このため、各大学等における学生支援機能充実に資するようなプログラムを重点的に支援するとともに、これらの取組の情報を社会に提供することで、我が国の高等教育全体の更なる活性化を図る必要がある。
(有効性)
 平成19年度から実施の「新たな社会的ニーズに対応した学生支援プログラム」については、事業を完了した例が存在せず、具体的な数字等に表すことはできない。
 しかし、学生が置かれている現状は、下に示すような状況にあり、目的意識の明確化によるニート・フリーター化の防止、不本意な休学の減少、心の問題を抱えている学生の減少などに向け、本事業を国公私立を通じた競争的な環境の下で展開することで、より効果的に改善されていくものと考えられる。
 休学者数 平成14年度 22,244人→ 平成19年度 23,061人(1.04倍)
 自殺者数(大学生) 平成14年度327人→ 平成19年461人(1.41倍)
 早期離職の割合 平成11年3月卒 34.3%→ 平成16年3月卒 36.6%
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:3,541百万円
 (平成21年度予算案:11,002百万円)
【事業名の変更】
 予算編成過程において、本事業と「学士力確保と教育力向上プログラム」(概算要求額:96億円)を統合し、名称を「大学教育・学生支援推進事業」とした。
【事業内容の見直し】
 予算編成過程において、本事業と「学士力確保と教育力向上プログラム」を統合し、学部教育等の充実や就職支援を含む総合的な学生支援の推進のための各大学の取組を支援する「大学教育・学生支援推進事業」を行うこととした。
事業名【56】グローバルCOEプログラム(拡充)
【主管課:高等教育局大学振興課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 我が国の大学が、世界トップレベルの大学と伍して教育及び研究活動を行っていくためには、第三者評価に基づく競争原理により競争的環境を一層醸成し、国公私立大学を通じた大学間の競り合いがより活発に行われることが重要であることから、大学の構造改革の一環として、平成14年度から、世界的な研究教育拠点の形成を重点的に支援し、もって国際競争力のある大学づくりを目指す「21世紀COEプログラム」を実施してきたところである。
 「21世紀COEプログラム」の成果として、大学改革の推進、優れた若手研究者の養成、新たな学問分野の開拓や研究水準の向上などが図られてきたが、知識基盤社会、グローバル化の進展のなかで、国際的に第一級の力量をもつ研究者の育成は益々その重要性を増しており、「新時代の大学院教育(中央教育審議会答申)」や「第3期科学技術基本計画」においても必要性が指摘されている。また、国際的に卓越した教育研究拠点の形成については、「教育振興基本計画」、「教育再生会議"第二次報告"」等においても示されており、まさに本事業を通じて世界最高水準の教育研究拠点の形成を加速していくことの重要性が指摘されているところである。これらを踏まえ、博士課程学生への経済的支援の更なる充実や国内外の大学・機関との連携強化を含め国際的に卓越した教育研究拠点に対する重点的支援を図ることが重要であり、本事業の拡充が不可欠である。
(有効性)
 本事業は、第三者評価に基づく競争原理により、国公私立大学を通じて、国際競争力のある卓越した教育研究拠点の形成を重点的に支援し、もって国際競争力のある世界最高水準の大学づくりを推進することを目的としている。
 本事業の実施を通じて、採択拠点はもとより、それ以外の大学においても、全学的視野に立った戦略的な教育研究体制の構築が促進されるなど、国公私立大学を通じた大学間の競争的環境の醸成等が期待されるところであるが、平成19年度には28大学63拠点(申請:111大学281拠点)、平成20年度には29大学68拠点(申請:130大学315拠点)と、多数の申請の中から優れた拠点を採択することができた。
 また、本事業の前身である「21世紀COEプログラム」の採択拠点大学に対して、人材育成面や研究活動面等の状況についてアンケート調査を実施した結果、若手研究者の雇用増加(リサーチ・アシスタント2.6倍:3,157人から8,178人)、企業の研究開発部門への就職者数増加(3割増(600人から797人))、大学院生の学会、論文発表数増加(論文3割増(約9千件から約1万1千件)、国外の学会発表数5割増(約6千5百件から約1万件))、国内外の大学・研究機関・企業等との共同研究の増加(5割増(約1万件から約1万5千件))など教育研究上の成果が確認されており、本事業においても同様の成果が期待される。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:34,488百万円
 (平成21年度予算案:34,228百万円)
【事業内容の見直し】
 平成21年度は平成19年度採択拠点に厳格な中間評価を行い、結果に応じて平成22年度以降の補助金の重点配分を実施する。
事業名【57】組織的な大学院教育改革推進プログラム(拡充)
【主管課:高等教育局大学振興課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 資源に乏しい我が国を、人材立国として発展させ、国際競争力を向上させるためには、科学技術の急速な発展による知の専門化・細分化に対応できる深い専門性、新たな学問分野や急速な技術革新に対応できる幅広い応用力を持つ人材を養成することが重要であり、大学院の人材養成機能への期待が増大しているところである。一方、現状では、大学院の量的整備や制度の柔軟化は行われてきたものの、産業界をはじめとする社会の幅広い分野で活躍する人材の養成機能が十分でない状況にある。
 そのような状況を踏まえ、「新時代の大学院教育」(平成17年9月中央教育審議会答申)等において、大学院教育の実質化(教育の課程の組織的展開の強化)を図ることが提言され、これまで各大学院の人材養成目的の明確化、FD実施の義務化等についての大学院設置基準の改正などの取組が行われてきたが、さらに大学院教育の改革を推進するために、産業界をはじめ社会の様々な分野で幅広く活躍する高度な人材を育成する各大学院が設定した目標の達成に向けた優れた組織的・体系的な教育取組に対して厳格な評価を行いつつ重点的な支援をすることが重要であり、本事業の拡充が不可欠である。
(有効性)
 平成19年度より実施している本事業は、産業界をはじめ社会の様々な分野で幅広く活躍する高度な人材を育成する大学院博士課程、修士課程を対象として、各大学院が設定した目標の達成に向けた優れた組織的・体系的な教育取組を厳格な評価を行いつつ重点的に支援するものであるが、各大学などにおける大学改革の取組が一層推進されるよう、国公私立大学を通じた競争的環境の下で、特色・個性ある優れた取組を選定するものである。特に人社系の取組に配慮することとしている。
 本事業の実施及び情報提供を通じて、採択拠点はもとより、それ以外の大学においても、大学教育改革への取組が一層積極的に行われるなど、国公私立大学を通じた大学間の競争的環境の醸成等が期待されるところであり、ひいては大学院の人材育成機能の強化という成果に結びつくものと考えられる。
 また、本事業の前身として、現代社会の新たなニーズに応えられる創造性豊かな若手研究者の養成機能の強化を図るため、大学院における意欲的かつ創造的な教育の取組を支援することを目的として、平成17年度及び平成18年度に採択を行った「『魅力ある大学院教育』イニシアティブ」事業について、2年間の事業期間終了後となる平成19年度に事後評価を実施した。その結果、各大学において、5年一貫カリキュラム、研究科共通コア科目の設定等によるコースワークの強化や成績評価基準の明確化・厳格化など大学院教育の実質化の推進が図られるとともに、平成16年度から平成18年度の大学院学生の動向等について、他機関への学生の派遣の増加(インターンシップ約60パーセント増(322人から515人)、公的研究機関約60パーセント増(320人から500人)、他大学約80パーセント増(355人から645人))、企業の研究開発部門への就職者数増加(約20パーセント増(254人から294人))など教育上の成果が確認されており、本事業においても同様の成果が期待される。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:9,024百万円
 (平成21年度予算案:5,746百万円)
事業名【58】大学教育充実のための戦略的大学連携支援プログラム(拡充)
【主管課:高等教育局大学振興課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 各大学が、それぞれの機能・特色等に応じて多様な発展を果たしていくことが、我が国の高等教育の強化を図る上で重要であり、その中で地方大学が果たす役割は、地域における知の拠点としての役割からも、また、地域貢献や地域ニーズを踏まえた人材育成を行う観点からも極めて高いものと考える。
 そこで、複数の大学が連携強化を図ることにより、大学教育の高度化や教育研究の学際化等への対応が可能となるよう、大学単独ではなく複数大学によるスケールメリットを活かした教育研究活動の展開等に対する積極的な取組を支援する必要がある。
(有効性)
 本事業において、複数の大学間の連携を支援することで、多様な地域社会ニーズを踏まえた人材育成など地域の「知の拠点」として求められる機能の一層の強化や、各大学の教育資源を結集することによる教育研究水準の更なる高度化が促進され、教育研究の多様化・個性化が図られることが期待されるものと考える。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:8,000百万円
 (平成21年度予算案:6,000百万円)
事業名【59】大学病院連携型高度医療人養成推進事業(拡充)
【主管課:高等教育局医学教育課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 近年、我が国においては、高齢化による疾病構造の変化、国民の医療ニーズの多様化・複雑化の中で、これらに対応できる医療人の育成が一層重要となってきている。
 質の高い医療人養成等による医療の質向上、研修医の循環による地域医療への貢献を行うためには、複数の大学病院が緊密に連携し、それぞれが得意とする分野の相互補完を図ることにより、学会が認定する専門医の養成など、質の高い医療人養成の推進に向けた取組に関する支援を行うことが不可欠である。
 平成20年度は19件の取り組みを選定したところであるが、更に対象を拡大し医師不足に対応必要があるため、事業を拡充することとしたい。
(有効性)
 本事業において、複数の大学病院が緊密に連携し、それぞれが得意とする分野の相互補完を図るシステムが確立することにより、医師の資質向上や大学病院が有する医師派遣機能が強化されることから、国民の要請に応えられる質の高い専門医や臨床研究者の養成に資するとともに研修中及び研修終了後により多くの医師が地域医療に貢献することが見込まれる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:3,000百万円
 (平成21年度予算案:1,560百万円)
事業名【60】看護職キャリアシステム構築プラン(新規)
【主管課:高等教育局医学教育課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 近年、医師不足・医師の過重労働は慢性的な社会的問題となっている。
 その解決手段の一つとして先頃公表された『社会保障の機能強化のための緊急対策"5つの安心プラン"(平成20年7月"政府取りまとめ)』において「大学病院が医師、コメディカルスタッフの養成機能を強化するための方策の充実」が求められている。また、「経済財政改革の基本方針2008」においても「医師不足の解消や病院勤務医の就労環境の改善」が提言されているところであるが、現在の看護職の現職教育には体系立てられたシステムはなく、キャリアパスも不明確な状況である。
 このような状況を打開し、我が国の医療水準を向上させるためには、教育・研究・診療機能を有する大学病院が率先して、看護師の体系的な人材養成システムを確立する取り組みを支援することが不可欠である。
(有効性)
 本事業では、各大学病院が、教育・研究機能を有する学部・研究科と連携するなどして看護職の教育プログラムやキャリアシステムを開発することにより、体系立てられた看護教育を受けた質の高い看護職を養成することにより、極めて厳しい医師の勤務状況改善に対応することが見込まれる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:2,000百万円
 (平成21年度予算案:200百万円)
事業名【61】国立大学等の施設整備の推進(拡充)
【主管課:大臣官房文教施設企画部計画課】
【関係課:高等教育局国立大学法人支援課、同専門教育課、同医学教育課、研究振興局学術機関課】
評価結果の概要 (必要性)
 国立大学等の施設は、世界一流の優れた人材の養成や創造的・先端的な研究開発を推進するための拠点であり、科学技術創造立国を目指す我が国にとっては不可欠な基盤である。しかしながら現状は、老朽化した施設が増加し、次世代をリードする研究者など優れた人材の養成や創造的・先端的な研究開発の場の確保が困難になりつつある。
 また、「第2次5か年計画」に基づき、安全・安心な教育研究環境を確保するため、耐震化を中心とした老朽施設の再生を最重要課題として取り組んできた。その結果、大地震により倒壊し、又は崩落する危険性が高い施設については、補正予算等により緊急的かつ集中的に資源配分することで、国立大学等の耐震化率は、80パーセントを超えることができた。残りの約20パーセントの耐震性が著しく劣る施設の耐震改修整備を早期に実施する必要がある。
 併せて、新たな教育研究ニーズによる施設の狭隘化の解消を図り、イノベーションを創出する若手研究者等の人材養成や国際競争力強化のための世界トップレベルの教育研究拠点の形成等を図るための施設整備を推進する必要がある。また、大学附属病院については、先端医療の先駆的な役割等を果たすことができるよう、計画的に整備を図る必要がある。
(有効性)
 本事業等の実施により、平成20年度までに教育研究基盤施設の老朽再生整備は213万平方メートル、狭隘解消整備は29万平方メートル、大学附属病院の再生整備は34万平方メートル、合計276万平方メートルの整備が見込まれる。
 達成年度である平成22年度に目標である教育研究基盤施設等(約540万平方メートル)の整備を達成するためには、大幅な予算の拡充が必要である。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成20年度補正予算(第一号)67,691百万円、
 同補正予算(第二号)22,006百万円
 平成21年度予算概算要求額:135,523百万円
 (平成21年度予算案:83,375百万円)
事業名【62】意欲・能力のある学生に対する奨学金事業の推進(拡充)
【主管課:高等教育局学生支援課】
【関係課:初等中等教育局児童生徒課】
評価結果の概要 (必要性)
 奨学金を希望する者は増加しており、学生が経済的な面で心配することなく、安心して学べるようにするためにも、奨学金事業の更なる充実を図ることが必要である。また、貸与基準を満たしているにもかかわらず、無利子奨学金において採用できていない学生等に対する支援を充実する必要がある。
(有効性)
 本事業は、教育の機会均等の観点から、意欲と能力のある学生等が家庭の経済状況によって修学の機会が奪われないよう、学生の多様なニーズ等を踏まえて、事業を充実し、教育負担の軽減を図ってきた。
 本事業は、我が国の大学等において学ぶ学生等に対する適切な修学環境を整備し、もって次代の社会を担う意欲と能力のある学生が経済的な面で心配することなく、安心して学べるよう、奨学金事業を充実をすることとしており、奨学金の貸与を受けることにより修学が可能となった学生の割合が80パーセント以上となることを目標としている。
 奨学金事業の開始以来、65年間で852万人の学生等に対して奨学金の貸与を行ってきており、平成19年度の進学率において、奨学金事業が約10パーセントの上昇に寄与し、約11万人の進学の機会が確保されたという分析結果もある。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:141,244百万円(事業費総額957,567百万円)
 (平成21年度予算案:130,899百万円(事業費総額947,492百万円))
事業名【63】私学助成の充実(拡充)
【主管課:高等教育局私学部私学助成課】
【関係課:生涯学習政策局生涯学習推進課、初等中等教育局幼児教育課、同参事官、スポーツ・青少年局企画・体育課】
評価結果の概要 (必要性)
 私立学校は、建学の精神に基づく多様な人材育成や特色ある教育研究の展開を担うなど、我が国の学校教育の質・量両面にわたる発展に重要な役割を果たしている。このような私立学校の特性と役割にかんがみ、その自主性を尊重しつつ、私立学校の教育研究に対する財政的な支援である私学助成を行う必要がある。
(参考)私立学校の経常的経費に占める国庫補助割合の推移
・私立大学等 H14年度12.2%、H15年度12.1%、H16年度11.9%、H17年度11.7%、H18年度11.5%
・私立高校等 H13年度 4.9%、H14年度 5.2%、H15年度 5.3%、H16年度 5.4%、H17年度 5.5%
(有効性)
 これまで、私学助成、税制などの施策により、教員一人当たりの学生数、大学および短期大学における定員超過率が150パーセントを超えるものの全体に占める割合、教育研究費依存比率、図書の蔵書数など、教育研究条件について改善の傾向が続いており、引き続き実施することにより教育研究条件の維持向上が図られる。
教員一人当たりの学生数
 大学等 H19年度 9.0人(対前年度比95.6パーセント)
 高校等 H19年度 12.2人(対前年度比98.2パーセント)
定員超過率が150パーセント超えるものの割合H19年度 0.54パーセント(前年度0.65パーセント)
教育研究費依存率
 大学等 H18年度 61.4パーセント(前年度 60.2パーセント)
 高校等 H18年度 44.5パーセント(前年度 44.4パーセント)
私立大学の図書の蔵書数 H18年度 約173百万冊(対前年度比 102.9パーセント)
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:469,956百万円
 (平成21年度予算案:445,635百万円)
【事業内容の見直し】
 本事業については既存の補助項目の見直しを行った。
事業名【64】理数学生応援プロジェクト(拡充)
【主管課:科学技術・学術政策局基盤政策課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 我が国が科学技術創造立国として持続的な発展を遂げ、安全・安心で質の高い生活環境を構築していくためには、科学技術・学術活動を先導する優れた人材を養成・確保していくことがきわめて重要な課題である。
 現在、将来の科学技術をリードしうる人材を育成するため、高等学校等を対象にスーパーサイエンスハイスクール支援事業等を推進し、理数が得意な子どもの意欲・能力を伸長する環境を提供しているところである。
 スーパーサイエンスハイスクールの教育プログラムを受けた者や国際科学オリンピックで活躍する者等の意欲・能力を大学学部段階で伸ばしていくためには、適切な評価により大学に受け入れ、広い視野、研究推進能力、研究開発技能の育成など、大学院での研究活動につながる基本的・基礎的な力及び学生の意欲・能力を更に伸ばすための取組を実施することが必要である。
 また、このような国の施策の方向性を踏まえた取組の実施を希望する大学に対して、その立ち上げを支援することでその後のプログラム展開における大学の自助努力を促し、ひいては、理数に対して強い学習意欲を持つ学生の意欲・能力を更に伸ばす教育を行う大学の顕在化を図る必要がある。
 事業開始以降、平成19年度は採択予定枠3大学の募集で37大学、平成20年度は採択予定枠4大学の募集で29大学の申請があり、国公私立を問わず本事業に対して多くの大学が意欲を示している。
 平成21年度は地域的なバランス、大学の置かれた環境、取組の特色に応じた研究開発に必要な規模等の点で充実を図るため、20大学(新規10大学)で本事業を実施する必要がある。
(有効性)
 高等学校等を対象に推進している「スーパーサイエンスハイスクール支援事業」が、生徒の科学技術に関する能力の向上に効果を発揮していること、また平成20年度の本事業への応募大学数が採択予定枠に比して多く、本事業への期待・取組の意欲が高いことが確認できていることから、成果が期待できると判断した。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:332百万円
 (平成21年度予算案:325百万円)
事業名【65】地域産業の担い手育成プロジェクト(拡充)
【主管課:初等中等教育局参事官(産業教育・情報教育担当)】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 近年、急速な産業構造の変化、科学技術の進歩等の情勢の変化に対応した実践力の向上や職業人としての就業観や規範意識の育成等が求められており、専門高校には産業界との連携による教育の一層の充実が期待されている。
 現状では、専門高校では学校内での座学や実習が多く、地域産業界との連携は十分とは言えない状況であることから、国が専門高校と産業界との連携のあり方に関する先進的な実践事例を支援し、広く普及を図る必要がある。また、複雑化する産業界と連携するに当たっては、複数の分野において研究をすることが不可欠である。
(有効性)
 本事業は専門高校と地域産業界が連携(協働)して、ものづくりや食・くらしを支え、地域産業を担う専門的職業人を育成することを目的としている。
 この目的達成の指標として、本事業を通じて生徒の実践力の向上や勤労観・職業観の醸成が図られたと回答した学校の割合が80パーセント以上となることを目指すとともに、1学校あたりの大学や企業などの連携機関数が前年度比115パーセント以上となることを目指している。
 平成19年度において、生徒の実践力の向上や勤労観・職業観の醸成が図られたと回答した学校の割合は76.1パーセント(62校中46校)となっている。今後、各地域で実施している生徒の実践力の向上や勤労観・職業観の醸成を図る効果的な教育プログラム事例の吸い上げ、フィードバックを行うことで80パーセント以上を達成することができると見込まれる。また、1学校あたりの受入企業数は24.4社(総受入企業数1,930社)であり、平成20年はさらに幅広い機関と長期実習などで連携を実施するよう啓発することにより、115パーセント以上を達成することができると見込まれる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:504百万円
 (平成21年度予算案:335百万円)
【事業内容の見直し】
 事業終了後に各地域が自立して同様の事業を継続できるよう、事業年度毎の予算配分を見直した。
事業名【66】知的クラスター創成事業(グローバル拠点育成型)(新規)
【主管課:科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官付(地域科学技術担当)】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 国際競争力の激化や、人口減少・少子高齢化の急速な進展等、我が国の経済状況を取り巻く環境は厳しさを増しており、また、地域経済活動に目を向けても、生産拠点の海外流出や公共工事の削減等により、地域経済の地盤沈下が一層進んでいる状況にある。
 国際競争力・生産性向上の原動力となる科学技術の高度化・多様化や、科学技術駆動型の地域経済活性化の実現のためには、地域が有するポテンシャルを活用し、顔の見えるネットワークにおいて産学官の共同研究を進めること必要である。
 文部科学省ではこれまでも、世界中からヒト・モノ・カネを惹きつける国際競争力のあるイノベーティブ・クラスターの創出を目指した知的クラスター創成事業、及び、小規模でも地場産業等の地域の特色を活かした強みを持つクラスター形成を目指した都市エリア産学官連携促進事業を実施してきたところである。
 都市エリア産学官連携促進事業の終了地域の中には、国際競争に打ち勝つことのできる技術コアを確立させ、今後我が国の成長センターと成りえる地域が存在することから、我が国全体の科学技術の更なる高度化を図るため、これらの地域に対し、国際的なネットワーク形成活動や共同研究等に対する支援を行うことが我が国の国際競争力の強化や、科学技術の一層の高度化のためには必要である。
(有効性)
 各地域の事業実施期間である5年間の3年目には、外部有識者による中間評価を実施し、進捗状況等と評価することとしている。その段階で事業内容について厳しく評価し今後の展開にむけての助言を実施することとしている。このような仕組みとしていることから、目標は達成される見込みである。
 また、これまで関連事業において成果を出してきており、今後グローバルな拠点となり得る地域が多数存在することから、目標は達成される見込みである。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:3,200百万円
 (平成21年度予算案:1,400百万円)
事業名【67】都市エリア産学官連携促進事業(拡充)
【主管課:科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官付(地域科学技術担当)】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 国際競争の激化や、人口減少・少子高齢化の急速な進展等、我が国の経済状況を取り巻く環境は厳しさを増しており、また、地域経済活動に目を向けても、生産拠点の海外流出や公共工事の削減等により、地域経済の地盤沈下が一層進んでいる状況にある。
 国際競争力・生産性向上の原動力となる科学技術の高度化・多様化や、科学技術駆動型の地域経済活性化の実現のためには、地域が有するポテンシャルを活用し、顔の見えるネットワークにおいて産学官の共同研究を進めること必要である。
 我が国には、特色ある技術を有する地域があり、その技術を核として小規模でも強みのあるクラスター形成を行うことにより、我が国全体の科学技術の多様化を図り、イノベーションの連鎖的創出に資することから、本事業を実施する必要がある。
 また、「経済財政改革の基本方針2008」、「科学技術による地域活性化戦略」等を踏まえ、産学官連携による地域科学技術拠点形成支援に資するものとして、本事業を実施する必要がある。
(有効性)
 これまで事業を実施してきた各地域の事後評価においては、クラスター施策や産学官連携に関する専門家等からなる有識者により、事業計画の妥当性、技術評価、クラスター形成のための取組み、地域への波及効果、今後の発展可能性等の評価項目に分けて、評価を行っており、その結果優れていると評価される地域の割合は6割以上であることから、今後も同様の水準であれば、十分達成可能である。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:5,500百万円
 (平成21年度予算案:4,500百万円)
事業名【68】サービス科学・工学研究の推進(新規)
【主管課:科学技術・学術政策局計画官】
【関係課:科学技術・学術政策局調査調整課】
評価結果の概要 (必要性)
 サービスは、経済活動において大きな比重を占めるなど、国際競争力の観点から一層重要となる分野であるが、その最適化・高度化等は経験や勘に頼るのが一般的で、抜本的な対策を講じることが困難である。このため、これまでの経験的手法のみならず、サービスを体系化し、高度化へ結びつける科学的・工学的手法が必要である。
(有効性)
 本事業は、サービスについて、数学やIT等複数分野の知の融合と産学の協働により、成果の実社会への実装を見据えた基礎的段階からの研究を行うことを目的として研究公募を行うものであり、大学等研究機関(大学、大学共同利用機関、国立試験研究機関及び独立行政法人、以下同じ)が中心となって、その成果を実現する意欲のある企業等と研究開発の当初から協力し、実社会に適用可能なサービスの最適化・高度化を実現する方法論を確立することを目指している。
 このためには、対象とする分野において広く普及することが重要であることから、本事業により開発された方法論を協力企業等により利用、あるいは応用研究の基礎として活用された数について、10件以上を目標としている。
 本事業の実施に当たっては、サービスを実社会に実装する企業等と一体となって研究を推進するのみならず、その成果が特定の企業等の利益ではなく我が国の産業や官公庁のサービスの向上に全体として資するよう、その知的財産の在り方や研究成果の公表の仕方に留意しつつ実施することとする。さらに、成果の活用が期待される機関へのコンサルティング等を通じた浸透を図ることにより、達成年度である平成25年度には、目標である10件以上における成果の活用を達成することができると見込まれる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 経済において大きな比重を占めるサービスの分野(例えば、医療・福祉、運輸・物流、金融等)を対象に、その高度化等を目的として、数学やIT等複数分野の知の連携とともに産学の協働による基礎的段階の研究を公募により実施することとし、504百万円を概算要求に盛り込んだ。
 平成21年度予算概算要求額:504百万円
 (平成21年度予算案:0百万円)
【事業内容の見直し】
 当初はサービスの高度化等に係る基礎的段階の研究を公募により実施することとしていたが、昨年末にかけて開催した「サービス科学・工学の推進に関する検討会」において、研究公募を開始する前にあらかじめサービス科学・工学を社会に認知させ、必要な研究者を掘り起こすことが先決であるとの有識者の意見を踏まえ事業内容を見直した。
 具体的には、平成21年度はワークショップ等の開催によってサービス科学・工学の効果的な実践に当たって必要な事項を明らかにし、推進に必要な人的なネットワークの形成や関係者の適切な協力体制を構築するための取組を進め、これを独立行政法人科学技術振興機構の運営費交付金によって措置することとした。
【機構・定員要求】
 サービス科学・工学研究についての企画・立案、関係機関等との連絡調整、公募・採択及び評価等の取組の促進のため、新領域推進係長(1名)の新設を要求した。(措置なし)
事業名【69】デジタル・ミュージアムの実現に向けた研究開発の推進(新規)
【主管課:科学技術・学術政策局計画官】
【関係課:研究振興局情報課】
評価結果の概要 (必要性)
 本事業は、既に失われ、又は現在失われつつある文化をより現実に近い形で保存するとともに人々に体感してもらうことを可能とするシステムの実現のための研究開発であり、ここで得られる研究成果は、技術的観点はもとより、文化的観点、教育的観点等からも波及効果が大きい。
 また、EUでは「フレームワーク計画」(FrameworkProgramme)の第6次及び第7次における研究領域であるDigiCult(DigitalHeritageandCulturalContent)において、文化的・科学的資源の保存(デジタル化)とVR(バーチャルリアリティ)・画像認識・位置検出等の先進技術を活用した映像展示が推進されているほか、米国においても、スミソニアン博物館において3次元計測と3次元CG表示を行う等、関連技術を展示に応用する取組が行われているところであり、より先進的な文化発信システムの構築に向けた研究開発を他国に先駆けて我が国において実施することにより、関連技術の競争力を維持・向上することが期待される。
(有効性)
 大型ディスプレイ開発技術やロボット開発技術等のものづくり技術、コンピュータビジョンに代表されるセンシング技術、インタラクティブ3D技術を含むユーザ・インタフェース技術等、本研究事業に関連した要素技術は、日本が強い分野である。
 特に、VR(バーチャルリアリティ)技術に関しては、研究者を束ねる学会を持っているのは日本だけであり、SIGGRAPH等国際学会における実空間表示系では、わが国の存在感が際だっている。触覚インタフェース分野でも、東京大学のほか、東京工業大学、大阪大学、国際電気通信基礎技術研究所等が国際会議で活発な発表を行っている。また、立体映像表示、表示映像とのインタラクション、触覚ディスプレイ等については東京大学等が世界各国に特許を出願している。
 このように、他国と比較しても高度な技術が我が国にあることから、これらを統合したシステムを構築しようとする本事業の目的達成可能性は高い。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:606百万円
 (平成21年度予算案:101百万円)
【機構・定員要求】
 新領域推進係長(1名)の新設を要求することとした。(措置なし)
【事業内容の見直し】
 平成21年度は、デジタル・ミュージアムのシステムに関するフィージビリティスタディを行い、システム構成、スペック(機能等)、コンテンツ、開発すべき要素技術、研究開発ロードマップを明らかにすることとした。
事業名【70】国際約束の履行に必要な国内保障措置制度の完成(拡充)
【主管課:科学技術・学術政策局原子力安全課保障措置室】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 (1)IAEA保障措置の受け入れは国際約束に基づく義務であり、原子力の平和利用を担保する唯一の手段である。
 (2)また、昨今の、イラン、シリア、北朝鮮、インド等の核開発問題のために、IAEAの査察に対する要請がこれまでになく高まってきており、一方で、我が国がIAEA査察資源の3割をも活用していることに対して、米国等から批判的な意見が寄せられつつある。またIAEAからも、昨今の核不拡散を取り巻く国際社会情勢をかんがみ、保障措置協定で規定された国内保障措置制度の完成が強く求められている。
 (3)さらに、六ヶ所再処理施設の本格操業、軽水炉によるプルサーマル開始等、我が国の原子力活動は一貫して拡大していく中で、現在のIAEAに過度に依存した国内保障措置制度ではIAEAへの対応に膨大な資源が必要となり、持続的保障措置の実現は不可能であることから、早急に国内保障措置制度を確立し、IAEA保障措置への対応を効率化させることが必要である。
(有効性)
 日・IAEA保障措置協定において要請されている国内保障措置制度の完成には、IAEAが実施している評価制度に関する知識が必要であるが、これについては、これまでの日・IAEA協議の過程でほぼ入手されている。
 一部IAEA側としても開示できない情報があるものの、IAEAとしても日本が国内保障措置制度の完成を要請しており、協力的であるところ本目標の達成見込みは極めて高い。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:3,609百万円
 (平成21年度予算案:3,229百万円)
【機構・定員要求】
 国際約束の履行に必要な国内保障措置制度の完成のためIAEA等との高度な国際交渉を担当する保障措置企画官(1名)を振替要求、我が国独自の保障活動の評価手法を検討し、試行的に開始するための保障措置評価専門官(1名)を新規要求した。(保障措置評価専門官1名措置)
事業名【71】科学研究費補助金(拡充)
【主管課:研究振興局学術研究助成課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 我が国が持続的に発展していくためには、多様な学術研究の推進など、イノベーションを絶え間なく創造する環境作りが必要である。科学研究費補助金は、人文・社会科学から自然科学まで全ての分野にわたる基礎から応用までのあらゆる学術研究を支援するものであり、イノベーションの種を生みだし、ひいては我が国全体の社会経済発展に資するものとして必要な事業である。
(有効性)
 「第3期科学技術基本計画」の方針に基づき、科学研究費補助金の拡充が引き続き図られる見込み。また、予算の増に伴って、採択件数も増加し、研究成果として報告のあった論文数も着実に増加する見込み。
 なお、科学技術政策研究所による調査(「優れた成果をあげた研究活動の特性:トップリサーチャーから見た科学技術政策の効果と研究開発水準に関する調査報告書」平成18年3月)によれば、被引用度上位10パーセント論文の46.5パーセントが科学研究費補助金を使用した研究の成果である。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:217,176百万円
 (平成21年度予算案:196,998百万円)
事業名【72】政策や社会の要請に対応した人文・社会科学研究推進事業(拡充)‐近未来の課題解決を目指した実証的社会科学研究推進事業‐
【主管課:研究振興局振興企画課学術企画室】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 少子化などによる日本経済の経済活力の減退や、現在の労働市場を取りまく諸課題など、これら社会的課題の解決には、社会や経済のあり方に関する従来の経験や既存の知識のみならず、課題に関する新しい認識の枠組みの創出が必要であり、とりわけ、社会科学を中心とした諸学の協働により、課題の解決に向けた実証的な研究を行う必要が高まっている。
 また、現在、科学技術・学術審議会に「人文学及び社会科学の振興に関する委員会」を設置して、人文学及び社会科学の研究成果の社会還元などについて審議が行われている。同委員会の「「人文学及び社会科学の振興について」審議経過の概要」(平成19年8月)においても、人文学や社会科学研究において、「政策や社会の要請に応える研究」を積極的に推進していくことが必要であるとの提言がなされている。
 さらに、本事業の実施による研究成果を課題解決のための選択肢として社会へ発信することにより、「経済・社会の活性化」と「社会の安全・安心」の両立を視野にいれた「国民の生活と福祉の向上」に資することが期待される。このように政策や社会の要請に対応した人文・社会科学研究を行うことの必要性を踏まえ本事業が開始された。
(有効性)
 本事業は、平成20年度開始であるため具体的な達成度の判断については今後検討を要するが、事業の実施に当たっては、大学等研究機関への公募により提案された諸課題について、外部有識者による審査を行い、そこから事業目的に相応しい課題を選定するため、目標の達成は見込まれると考えている。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:209百万円
 (平成21年度予算案:149百万円)
事業名【73】産学官連携戦略展開事業(拡充)
【主管課:研究振興局研究環境・産業連携課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 厳しい国際競争を勝ち抜けるよう、独創的な研究成果からイノベーションを創出していくためには、大学等における知的財産の管理・活用及び産学官連携が不可欠である。
 共同研究や特許出願の増加など大学における産学官連携は着実に進展しているものの、特許の海外における権利化をはじめとする国際的な活動が少なく、大学発ベンチャー創出を含む成果の事業化や特許実施料収入の実績が十分に上がっていないなど、多くの課題がある。
 質の高い知的財産の管理・活用のための産学官連携活動を自立的・主体的に実施するため、大学の体制強化を推進することが必要である。
(産学官連携拠点の形成支援)
 我が国における産学官連携活動が本格化して数年が経過し、産学官共同による研究件数や大学等の特許のライセンス件数等は飛躍的に増加しているが、新産業の創出による経済成長など本来期待されている成果は未だあがっていない。既存施策の連携等を含めて、我が国における産学官連携機能や技術移転機能が最大限に発揮されるよう、産学官連携体制の再構築を促進し、持続的・発展的なイノベーションを創出するイノベーション・エコ・システムの構築を図る必要がある。
(バイオベンチャー創出環境の整備)
 近年、ビジネスモデルの拙さ、経営力の弱さや金融市場の冷え込みなどにより、提携等もできず、さらに資金調達が困難になるという悪循環に陥っているバイオベンチャーも少なくない。今後、大学の有望な知的財産が国民に十分還元されないまま消失したり、その価値に見合う対価を得ることなく国外に放出されたりする恐れがある。このため、大学のバイオベンチャー創出環境を整備し、研究成果を目利きにより厳選するとともに技術力や経営力の基盤が強固なバイオベンチャーを継続的に創出することが求められている。
(特許ポートフォリオ形成モデルの構築)
 これまで大学等は研究成果を個々に単体でとらえライセンス活動を行ってきたが、技術の複合化が進んでいる分野においては、一つの製品を数百にも及ぶ特許権で保護することもあり、その様な製品を扱う企業に対しては、製品や技術テーマ等との関係で「群」として管理・活用することが効果的である。また、その際、周辺技術の研究開発も重要となる。
 しかしながら、1大学では「群」を形成することは難しく、また、そもそも大学は研究者の自由な発想に基づく研究が基本であるため、「群」を形成するための研究開発を行うという研究スタイルを取りにくい。このため、特許ポートフォリオを形成するためには、政策目的の達成を使命とし戦略的研究を重点的に行う研究開発型独立行政法人と連携することが有効であるが、研究開発型独立行政法人と大学等の知的財産に関する連携は進んでいない。したがって、研究開発型独立行政法人と大学との連携による特許ポートフォリオの構築を政策的に誘導する必要がある。
(有効性)
 国公私立大学等の企業等からの研究資金等の受入額の推移をみると、平成15年度からの5年間で約900億円(約1.9倍)増加しており、企業等が大学等の研究開発力に注目してきていると考えられる。
 一方、大学等発ベンチャーの年間設立件数は、大学発ベンチャー1,000社計画達成に伴い、ここ数年減少しているものの、年間170社以上の設立実績があることから、大学等における起業化支援体制が徐々に整ってきていると思われる。
 本事業において、さらなる産学官連携体制の強化等により、我が国の産学官連携活動全体の質の向上を図ることで、目標の達成が見込まれる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:4,940百万円
 (平成21年度予算案:2,967百万円)
 イノベーション創出の原動力である大学等において、研究開発初期段階からの戦略的な知的財産の創造・保護・活用をはじめとする知的財産戦略等の持続的な展開を推進し、我が国の産学官連携活動全体の質の向上を図る「産学官連携戦略展開事業」を実施するため、4,940百万円を概算要求に盛り込んだ。(平成21年度予算案:2,967百万円)
 また、当該事業にて、産学官連携拠点の形成支援等について、4,940百万円の内数として概算要求に盛り込んだ。(平成21年度予算案:2,967百万円の内数)
事業名【74】研究開発基盤整備補助金【先端研究施設共用促進】(新規)
【主管課:研究振興局研究環境・産業連携課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 多額の国費を用いて整備された研究開発施設等のうち、広範な分野又は多様な研究等で利用が可能なものについて、独創的・先端的な基礎研究からイノベーション創出に至るまでの我が国の科学技術活動全般の高度化及び国の研究開発投資の効率化を図るため、これらの共用の促進を図る必要がある。
(有効性)
 他施設に先駆けて共用体制の構築が推進されてきた大型放射光施設SPring‐8については、年々産業界による利用割合が増加しており、共用による施設の有効利用が図られていることや、産業界の利用の増加に伴い、有償利用件数も増加傾向であることが分かる。
 先端研究施設共用イノベーション創出事業(産業戦略利用)を実施中の17機関についても、共用体制が整備され、外部利用者の利用割合が増加しており、有償利用件数の増加も十分に見込まれる。
 本事業の実施により、さらに多くの研究開発施設等において共用体制が構築されるとともに、共用によりイノベーションにつながる成果の創出が促進され、目標は達成されると考えられる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:6,391百万円
 (平成21年度予算案:1,691百万円)
【機構・定員要求】
 先端研究施設の共用を促進するための体制を強化するため、係長(1名)の新設を要求した。(係長1名措置)
【事業名の変更】
 研究開発基盤整備補助【先端研究施設共用促進事業】
【事業内容の見直し】
 平成19年度に委託事業として開始した「先端研究施設共用イノベーション創出事業【産業戦略利用】」(以下、委託事業という。)を廃止して、機関の主体的取組かつ弾力的運用を推進する本補助事業を創設する。平成21年度は、委託事業において採択していた機関を本補助事業の対象機関として採択するとともに、新規の対象機関の公募も実施する予定である。
事業名【75】脳科学研究戦略推進プログラム(拡充)
【主管課:研究振興局ライフサイエンス課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 脳は、人間が人間らしく生きるための根幹をなす「心」の基盤であり、その研究は、人文・社会科学と融合した新しい人間の科学を創出し、これまでの科学の枠組みを変える可能性を秘めている科学的意義の高い取組である。
 また、現在の脳科学研究は、脳の発達障害・老化の制御や、精神神経疾患の病因解明、予防・治療法の開発を可能にするとともに、脳機能や身体機能の回復・補完を可能とする技術開発等をもたらすことから、医療・福祉の向上に最も貢献できる研究分野の一つであるとともに、記憶・学習のメカニズムや脳の感受性期(臨界期)の解明等により、教育等における活用も期待されるなど社会的意義も大変高い取組である。
 このため、高齢化、多様化、複雑化が進み、様々な課題に直面している現代社会において、脳科学に対する社会的な関心と期待が急速に高まっており、このような状況を踏まえ、「社会に貢献する脳科学」の実現を目指し、社会への貢献を明確に見据えた脳科学研究を戦略的に推進する必要がある。
(有効性)
 本事業は、脳科学研究に対する社会からの大きな期待や関心に応えるため、効率良く成果を社会に還元する「社会に貢献する脳科学」の実現を目標とし、社会への貢献を明確に見据えた戦略的な脳科学研究の推進を行っていることから、研究開発拠点のポテンシャルや事業の手法等を勘案すると、設定した目標を達成できる見込みである。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:2,700百万円
 (平成21年度予算案:2,300百万円)
事業名【76】革新的タンパク質・細胞解析研究イニシアティブ(新規)
【主管課:研究振興局ライフサイエンス課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 ライフサイエンスは、複雑な生命現象を解明するための科学であり、我が国の産業競争力強化の鍵となる分野である。欧米及びアジア各国は生命科学研究の基礎となるゲノム配列、ゲノム機能の研究に対して、国家プロジェクトとして積極的な支援を行っており、引き続き、我が国のライフサイエンス研究を推進するため、遺伝子発現制御、シグナル伝達、代謝制御など細胞機能のシステムを理解する研究の重点的な実施が必要である。
 また、これらゲノム情報解析に用いるシーケンサーの技術的進展は目覚ましく、従来型と比べて桁違いの処理速度を持つ超高速の次世代シーケンサーの実用化が始まっている。米国、英国、中国、シンガポール等では、すでにシーケンサーを集中的に配備した拠点整備が行われており、我が国のライフサイエンス分野の国際競争力を維持するためには、次世代シーケンス解析拠点整備は急務である。また、シーケンサーからは大量かつ多種多様なデータが産出されることから、これら膨大なデータを既存のデータと比較するとともに、データの一元的な集約、解析計算を行い、適切な形で提供・知識の発掘を行うためのデータ解析拠点の整備が必要である。
 さらに、ある時点のスナップショットであるゲノム情報解析に加え、発生・分化、幹細胞、がん、免疫、神経細胞など計時変化が重要な意味を持つ、生命現象における細胞レベルの機能解明を行うためには、細胞・組織イメージング技術等の細胞情報計測などの開発や細胞機能の物理学的理解に向けた数理科学との融合を考慮した形での研究推進が必要である。
(有効性)
 細胞プログラムの解明により、将来の新たな治療法、治療薬創出への基礎的知見・技術の提供が可能となる。また、本プロジェクトで構築した基盤設備をアカデミアや産業等にライフサイエンス研究の設備基盤として広く共用することにより、iPS細胞研究、がん研究、SNPs研究、免疫研究等の幅広い研究分野への波及効果が期待される。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:6,900百万円
 (平成21年度予算案:5,800百万円)
【事業の統合】
 科学技術・学術審議会ライフサイエンス委員会において、生命の理解に向けて次に焦点をあてるべき階層は「細胞」であるとの提言を受け、分子レベルに注目した既存の「ターゲットタンパク研究プログラム」を廃止し、「細胞」を対象としたオミックスやネットワークなどの統合的解析と、タンパク質の機能・構造解析とを統合した新たな事業として本事業を立ち上げ、6,900百万円を概算要求に盛り込んだ。(平成21年度予算案5,800百万円)
事業名【77】再生医療の実現化プロジェクト(第2期)(拡充)
【主管課:研究振興局ライフサイエンス課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 再生医療は、細胞移植や組織移植によって、これまでの医療を根本的に変革する可能性を有するものであり、難病・生活習慣病等に対して、新たな治療法を実現し、患者のQOLと国民福祉の向上をもたらす先端医療である。
 昨年11月、日本の研究チームが、世界で初めて、生命の萌芽である胚を滅失することなく、成人の皮膚細胞から様々な細胞に分化する能力を持つヒトiPS細胞(人工多能性幹細胞)を作り出すことに成功したという論文が発表された。
 iPS細胞については、平成18年8月に日本の同じ研究チームがマウスの細胞からの樹立に成功して以降、ヒトの細胞での樹立に向けて国際的な競争が行われていた。我が国の研究チームの成功は、世界に誇れる日本発の成果であり、再生医療の実現に向けた大きな第1歩であるため、今回の成果を受け、国際競争が進む中で、我が国の研究を加速させ、また再生医療技術の開発などを日本全体で戦略的に進めていくことが求められている。
 係る状況の中で、文部科学省においては、科学技術・学術審議会ライフサイエンス委員会幹細胞・再生医学戦略作業部会等における議論を踏まえ、ヒトiPS細胞を中心に、ヒトES細胞、ヒト体性幹細胞を用いた再生医療研究を総合的に推進するヒトiPS細胞等研究拠点を整備するとともに、幹細胞の操作技術に関する開発等を推進し、再生医療を実現化していく必要がある。
 本事業では、こうした再生医療の実現化を目指し、世界に誇る画期的な成果であるiPS細胞をさらに発展させるとともに、ヒト幹細胞を用いた前臨床研究を強力に推進し、研究成果の社会還元を図ることとしており、逸早い国民生活の向上を目指して、日本全体としての研究体制を構築して、戦略的に研究を推進する必要がある。
 なお、本研究分野は、世界的にも競争の激しい分野であり、製薬・医療機器開発等による経済の活性化、難病患者等の医療費削減効果も見込まれることから、積極的に推進する必要がある。
(有効性)
 再生医療は、細胞移植や組織移植によって、これまでの医療を根本的に変革する可能性を有するものであり、難病・生活習慣病等に対して、新たな治療法を実現し、患者のQOLと国民福祉の向上をもたらす先端医療である。
 このため、再生医療の実現化を目指す本事業により、先端的医療の実現に資する知見の蓄積、技術の開発、またそれに必要な環境の整備を図ることが可能となり、細胞治療に加え、様々な疾患の原因解明や創薬に応用できる可能性への道を開くことにより、目標の達成が見込まれる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:3,650百万円
 (平成21年度予算案:2,650百万円)
 また、補正予算として、iPS細胞等研究拠点における疾患特異的iPS細胞樹立に係る研究体制整備のための措置を行った。
(平成20年度補正予算額1,501百万円)
【機構・定員要求】
幹細胞・再生医学研究体制の強化に伴う幹細胞・再生医学研究推進室の新設の要求並びに室長(振替1名)、室長補佐、幹細胞・再生医学研究企画係長及び幹細胞・再生医学研究推進係長(新規3名)の要求を行った。(要求どおり措置)
事業名【78】橋渡し研究支援推進プログラム(拡充)
【主管課:研究振興局研究振興戦略官】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 「施策目標:ライフサイエンス分野の研究開発の重点的推進」においては、「研究成果の実用化のための橋渡し」を特に重視し、国民への成果還元を抜本的に強化することが目標として掲げられており、施策目標の実現には本事業の推進が必要である。
 本事業および関連施策「革新的ながん治療法等の開発に向けた研究の推進」は、わが国における橋渡し研究を支援する初めての試みであり、定期的にプロジェクトの進捗等について評価、検討を行いながら進めているところであるが、現段階において、橋渡し研究を推進する上で主に次のような課題が明らかになった。
 1.橋渡し研究拠点における研究を円滑に進めるためには、全体を管理・統括する医師、研究開発全般に精通したプロジェクトマネージャ、生物統計家、データマネージャー、薬事専門家等が必要であり、現在各拠点において、人材の確保・登用・育成に努めているものの、必ずしも十分には措置できていない。
 2.多くの研究拠点において、細胞調製施設(CPC)等をGMP基準・GLP基準レベルで維持する経費が不足しており、それら基準に完全には対応できていない。
 3.がんだけでなく様々な領域からも、シーズとなる優れた基礎研究の成果が毎年生み出されている。しかし、例えば非臨床試験及び臨床研究に使用するための試験物を製造する場合など、毒性や効果について厳密に評価するため、また被験者を有害事象から守るためには、GMP基準に準拠して試験物を製造することが必須であるが、十分な製剤費等の研究資金が手当できていない。
 これらの課題に対し、今後、橋渡し研究を推進するためには次の取組が必要である。
 1.橋渡し拠点において円滑に研究開発を推進していくために必要な人材の確保について充実する必要がある。
 2.再生医療やがん免疫療法をはじめ、様々な研究でCPC等は必須であり、GMP基準・GLP基準に準拠したレベルで整備・維持することが必要である。
 3.橋渡し研究を強化するためには、「革新的ながん治療法等の開発に向けた研究の推進」で得られたノウハウを生かしつつ、さらに充実強化した形で公的研究費助成の枠組みを継続し、がんをはじめ難治性疾患、生活習慣病などの領域も含めて、大学等における基礎研究の有望なシーズを、橋渡し拠点を活用するなどして、研究支援していく仕組みを構築していくことが必要である。
(有効性)
 先駆的事業である「革新的ながん治療法等の開発に向けた研究の推進」は本年度が事業終了年度であるが、6課題中5課題が臨床研究(うち一課題については治験)のフェーズに入っており、順調に目標を達成しつつある。この事業を通じて得られた橋渡し研究の知見・ノウハウを活用し、整備しつつある各拠点の機能を利活用することで本事業の目標が着実に達成されると考えられる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:6,100百万円
 (平成21年度予算案:2,400百万円)
【機構・定員要求】
 橋渡し研究プログラムの強化に伴う専門職 (新規1名)の要求を行った。(措置なし)
事業名【79】Web社会分析基盤ソフトウェアの研究開発(新規)
 ※情報基盤戦略活用プログラムの中で実施
【主管課:研究振興局情報課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 実世界の様々な事象が網羅的かつ即時的にWeb上の情報として反映され、貴重な文化資産として形成されつつあることから、それらのWeb情報の収集・分析による高度利用は学術、文化及び社会活動等において非常に有益である。これまで文部科学省ではテキスト情報を対象とした収集・分析技術の研究開発を実施したが、近年CGMや画像、動画等の情報が急増していることから、それらも対象とする技術が早急に求められる。
 本事業によりそれを実現し、大学や研究機関等における社会学や言語学等の研究に活用することで、社会科学分野の学術的発展に大きく寄与すると期待される。また、広く一般の意見が反映されるCGM等のWeb情報の分析を企業におけるマーケティング分析等に活用することで、産業面でも新たな機会の創出が期待できる。これらの効果をいち早く我が国が享受できるようにするために、諸外国に先駆けて本事業を実施すべきである。
(有効性)
 本事業の目標であるWeb情報の分析ソフトウェア及びクローリングソフトウェアの開発を実施するにあたり、テキスト情報に限定しているとはいえ、平成19年度まで実施していた「e‐Society基盤ソフトウェア」において、Web上の話題の変遷を追跡可能なWeb構造時系列解析技術や、更新頻度に応じた可変周期大規模Web情報収集技術を開発した実績を有している機関もあることから、本事業の目的達成の可能性は高い。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 Web情報の収集・分析による高度利用を目的として、Web上の情報を効率よく収集、蓄積し、高度な分析を行う技術の研究開発について「情報基盤戦略活用プログラムうちWeb社会分析基盤ソフトウェアの研究開発」として概算要求に盛り込んだ。
 平成21年度予算概算要求額:1,040百万円の内数
 (平成21年度予算案:619百万円の内数)
事業名【80】21世紀気候変動予測革新プログラム(拡充)
【主管課:研究開発局海洋地球課地球・環境科学技術推進室】
【関係課:研究開発局海洋地球課】
評価結果の概要 (必要性)
 地球温暖化・気候変動は、全人類が共通に直面する大きな課題となっており、第3期科学技術基本計画においても「気候モデルを用いた21世紀の気候変動予測」「気候変動リスクの予測・管理と脱温暖化社会設計」は、世界と協調して正確な気候変動の予測を行い、地球温暖化に適応できる将来社会を設計し実現する科学技術として、5年間の集中投資が必要な戦略重点科学技術として位置づけられている。
 本プログラムは2013年頃取りまとめ予定の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書への貢献をはじめ、気候変動枠組み条約の究極的な目的である「気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準において大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させる」を達成するために必要な低炭素社会の構築のための国内外の政策検討、さらには、台風、熱波、集中豪雨等の極端現象による災害リスク増大に対処するための対策を確立する上で、不可欠な情報を与えるものであり、平成19年度から開始している。本年に入り、IPCCで予測すべきシナリオが示され、そのシナリオで予測するには当初予定していた資源量、計算機量では足りないので、引き続きIPCCへ貢献し続けるためにも、本事業費を拡充し、早急にこの変更に対応する必要がある。
(有効性)
 すでに本事業の前身である「人・自然・地球共生プロジェクト」の研究成果はIPCCの第4次評価報告書作成に貢献しており、本事業で実施している気候モデル評価・世界気候予測・地域気候予測等の分野では、報告書に取り上げられた全論文数のうち日本の論文数が全体の6パーセント07パーセントにも及んでいる。本事業の研究成果も2013年頃発表予定の第5次評価報告書への貢献が見込まれている。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:2,520百万円
 (平成21年度予算案:1,540百万円)
【事業内容の見直し】
 「21世紀気候変動予測革新プログラム」については、文部科学省科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会地球環境科学技術委員会において、本プログラムによる研究成果の評価を徹底した上で、成果報告会やシンポジウム等を活用し、国民に分かりやすく公表することとしている。なお、平成21年度予算案では、本プログラムにおける地球シミュレータ(スパコン)の運用経費の効率化などを踏まえ、事業経費の縮小を図った。
事業名【81】データ統合・解析システム(拡充)
【主管課:研究開発局海洋地球課地球・環境科学技術推進室】
【関係課:研究開発局海洋地球課、同宇宙開発利用課、同宇宙開発利用課宇宙利用推進室】
評価結果の概要 (必要性)
 施策目標「環境・海洋分野の研究開発の重点的推進」を達成するため、各研究機関の地球観測データを体系的に活用することが求められている。このため、各研究機関の地球観測データを統合・解析する情報技術を開発することによって、地球環境変動への効果的な対応策の実現に貢献する必要がある。また、我が国の有する最先端の科学技術に関する知見を活用し、世界に対する情報提供が求められている。
 特にデータ統合・解析システムは、資源エネルギー供給の逼迫化や気候変動による自然災害の頻発等、我が国を取り巻く状況が大きく変化する中で、我が国が持続的に発展し、世界をリードしていくために長期的な国家としての見通しを持って取り組むべき重要技術として内閣府総合科学技術会議が選定した国家基幹技術の一つである「海洋地球観測探査システム」の中核をなすものであり、我が国が必要とする重要技術として開発する必要がある。
 また、中間評価として指摘を受けた、「気候変動・地球温暖化、水循環、生態系の各分野で行われている個別取組のさらなる総合化」及び「様々な分野の利用者が共有的なデータにアクセスできる基盤情報システムとして拡張する」に対応するため、分野横断的取組を開始し、それに伴って多様化する観測データの記述用語や保存形式、及び増大する地球観測・気候変動予測データに対して、ペタバイト級のコアシステムの磁気ディスク装置や磁気テープ装置等の整備を実施する必要があるので、本事業費を拡充する。
(有効性)
 平成18年度に本事業を開始するに当たり、衛星観測データ、地上や海洋での観測データ、社会経済データ、気候変動予測結果などを統合的に処理するため、少なくともペタバイト級のデータを処理するシステムを構築することを目標としている。
 平成19年度末までに、データを蓄積するための空間として約600テラバイトの磁気ディスク装置を導入した。今後、磁気ディスク装置を増設することにより実施期間中にペタバイト級のデータを処理するシステムとして整備できるものと見込まれる。
 平成20年度においては、観測・気候変動予測データ(約600テラバイト)の蓄積を引き続いて実施するとともに、品質管理、統合、解析によって科学的・社会的に有用な情報へと変換して、それを国際的に共有するシステムの開発を着実に推進している。また、気候変動・地球温暖化、水循環、生態系の分野毎に創造的な価値を有する情報創出に向けた取組として9つの応用機能開発を継続して実施している。このことからも達成年度である平成22年度までに、目標の達成が見込まれる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 「データ統合・解析システム」については、予算編成の過程で「地球観測システム構築推進プラン」をその一部として整理した。
 平成21年度予算概算要求額:1,191百万円
 (平成21年度予算案:1,130百万円)
事業名【82】元素戦略(拡充)
【主管課:研究振興局基礎基盤研究課ナノテクノロジー・材料開発推進室】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 一部の希少元素や有害元素は近年の先端技術に不可欠の存在である一方で、埋蔵量や地域偏在といった希少元素の需給バランスに大きく影響を受けやすく、環境負荷が大きいなどの問題があり、本事業はこれら地球規模の問題を解決するものとして期待されている。更に、科学技術創造立国である我が国にとって、先端技術に不可欠な希少元素・有害元素の代替材料の開発は、我が国の持続的な経済成長を支える上で極めて重要である。
 「元素戦略」は我が国の発展を支える上で極めて重要な研究課題であるとともに、総合科学技術会議が取りまとめた「革新的技術戦略」として、国を挙げて取り組むべき革新的技術の一つに指定されたため、これを確実に実行するため、「元素戦略」を拡充して対応する必要がある。
(有効性)
 審査時点においてシーズの確かさ、実用化への見通しを厳しく評価して採択していることから、5年経過時点で応用研究のスタートラインに立てる程度の成果を得られる見通しは高く、我が国の持続的な発展に貢献するとともに、ナノテクノロジー・材料分野の研究レベルを向上させ、世界に先駆けた技術革新につながる成果がを創出できると考える。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:1,200百万円
 (平成21年度予算案:651百万円)
事業名【83】光・量子科学研究拠点形成に向けた基盤技術開発(拡充)
【主管課:研究振興局基礎基盤研究課】
【関係課:研究振興局基礎基盤研究課量子放射線研究推進室】
評価結果の概要 (必要性)
 光科学技術及び量子ビーム技術は、ナノテクノロジー・材料、情報通信、ライフサイエンス等の重点科学技術分野を先導するキーテクノロジーであり、各分野における画期的なイノベーション創出の源泉である。このような観点から、欧米はもとより中国などでも、他に先駆けて新しい光源・ビーム源を実現し、これを革新的な方法によって活用することなどのために、凌ぎを削った研究開発を戦略的に推進しているところである。
 我が国においては、これまでSPring‐8(放射光)、JRR‐3(中性子)、TIARA(イオンビーム)等を利用した世界最先端の研究成果のほか、面発光型半導体素子、セラミクスレーザー素子、超伝導高周波加速空洞など光・量子ビームの要素技術においても、我が国独自開発で世界トップにたつ成果を輩出しており、光・量子科学技術分野のポテンシャルは極めて高いと言える。
 一方、光・量子科学技術を戦略的・積極的に推進するための光源・ビーム源開発プロジェクト等は、国家基幹技術としてのX線自由電子レーザーの開発などの特定の領域以外はほとんど存在していないことに加えて、我が国の光産業の現状をみると、近い将来、世界市場の主流を占めると予想されている高出力半導体レーザーに関しては、現時点における需要が低いことからその開発に消極的であり、将来的な国際競争力低下が懸念されている。
 今後、先端科学技術分野や産業分野において国際競争力を強化していく観点からも、全国に散在する光・量子科学技術のポテンシャルを結集し、世界をリードする次世代光源・ビーム源や計測機器、ビーム制御技術等を研究開発する必要がある。また、今後、急速に世界市場規模が拡大すると予測されている光産業などにおいて、これらの要素技術開発等は産業応用への発展も期待され、このような汎用性の高い先進的・革新的な計測技術等を応用可能性や利用可能性の広い共通基盤技術として開発する意義は極めて高い。
 このため、光・量子科学技術分野において世界的にもポテンシャルの高い今、これらのポテンシャルの結集を図り、本分野を戦略的・積極的に推進することが必要である。
(有効性)
 本事業では、光科学技術・量子ビーム技術分野のポテンシャルを有する複数の研究機関を中核として、産業界や光・量子ビームの利用研究を行っている各分野の研究者等も参画したネットワーク研究拠点を、公募により選定し、次世代光源・ビーム源、計測手法、ビーム制御技術等の研究開発や若手人材育成等を実施するものである。本事業を行うネットワーク研究拠点は、光・量子科学技術分野での最先端の研究開発や人材育成のポテンシャルを有する機関が選定され、このような優位性をいかして事業を推進することとしているため、本目標の達成が見込まれる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成20年度より開始した「光・量子科学研究拠点形成に向けた基盤技術開発」の継続的な実施を行うとともに、平成21年度においては研究拠点を充実させてネットワークのさらなる強化を図り、当該分野における研究開発をより一層推進するために、課題を追加公募することとし、2,400百万円に拡充要求した。
 平成21年度予算概算要求額:2,400百万円
 (平成21年度予算案:1,721百万円)
【機構・定員要求】
 中性子利用推進体制の強化のため「中性子利用推進係長」1名を要求した。(係長1名措置)
事業名【84】ナノテクノロジーを活用した環境技術の研究開発(新規)
【主管課:研究振興局基礎基盤研究課ナノテクノロジー・材料開発推進室】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 これまで環境問題を抜本的に解決する環境技術がなく、これには分子・原子レベルで物質を制御できるナノテクノロジーの活用や、要素技術に収れんせず、社会システムの構築までを見越した技術開発を、産学連携で推進することが極めて重要である。このため、従来の目的志向型のプロジェクト研究に加え、社会システムの革新を念頭においた産学連携の体制を構築することで、基礎から応用までが一体となった研究拠点により、強力に研究を推進する必要がある。
(有効性)
 我が国は、これまでのナノテクノロジー研究によって培われた高いポテンシャルを有しており、また、環境・エネルギー技術についても世界をリードする技術を有している。これらを融合し、ナノテクノロジーを活用した環境技術を、我が国が主導して実施することで、世界に先駆けた成果の創出が可能となるとともに、ナノテクノロジー・材料分野の研究が振興される。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:1,000百万円
 (平成21年度予算案:205百万円)
事業名【85】数学・数理科学と他分野との融合の推進(新規)
【主管課:研究振興局基礎基盤研究課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 数学・数理科学は、諸科学の礎となる学問分野であり、他分野との連携・融合により、多くの領域においてブレークスルーをもたらすものである。また、各重点科学技術分野や産業・社会経済におけるニーズに対応した諸問題を解決するためには、複雑な自然・生命現象、社会現象等を解明することが必要であり、数理科学的手法(モデル化等)が不可欠である。このため、欧米諸国においても、数学・数理科学と他分野との融合研究を振興するプログラムや、異分野間の研究者がface‐to‐faceで議論する場としての融合研究拠点の構築や研究集会・研究フォーラムの開催等を行っている。
 我が国においては、数学・数理科学と他分野との連携・融合を促進するための施策としては、平成19年度の戦略目標「社会的ニーズの高い課題の解決へ向けた数学/数理科学によるブレークスルーの探索」の下で実施されている、「さきがけ(平成19年度開始)」と「CREST(平成20年度開始)」のみであり、必ずしも融合・連携が活発に行われているとは言えない。
 特に、純粋数学の比率が高い我が国では、数学者と他分野の研究者とが交流する機会は限定されており、数学(特に純粋数学)と他分野との間には共通理解の土壌(共通言語)が存在しないと言われている。また、他分野や産業・社会経済における実施の諸問題から数学の土俵に乗せられる人材や異分野間のインタープリター的役割を果たし得る人材(インターフェース人材)も不足している。
 このため、本事業において、数学・数理科学と他分野や産業分野の研究者が相互に交流し、知的触発を得られる出会いの場(シンポジウムやフォーラム等)を構築することにより、異分野の研究者・技術者間でのネットワーク作りを促進することが必要である。また、平成19年度から開始した戦略的創造研究推進事業において、具体的研究課題を推進するとともに、これに合わせて数学との融合について様々な分野の人が集まり議論する場を提供する本事業を推進することにより、双方の事業推進に相乗効果が得られることが期待される。
(有効性)
 本事業では、連携・融合を推進する中核機関を公募により選定し、1.国際シンポジウムや研究フォーラム等の開催、2.インターフェース人材の確保・育成等を行うこととする。本事業を行う中核機関は、数学や数理科学研究の基盤及び他分野への応用におけるノウハウを有する機関を選定し、このような優位性を生かして事業を推進することとしているため、本目標の達成が見込まれる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 数学・数理科学と他分野との融合・連携を推進するために、国際シンポジウムや国内シンポジウム、研究フォーラム等の開催やインターフェース人材の確保・育成の活動を行う中核機関を公募により採択することとし、30百万円を新規要求した。
 予算編成過程で廃止した。
 平成21年度予算概算要求額:30百万円
 (平成21年度予算案:0百万円)
事業名【86】東海・東南海・南海地震の連動性評価研究(拡充)
【主管課:研究開発局地震・防災研究課】
【関係課:研究開発局地震・防災研究課防災科学技術推進室】
評価結果の概要 (必要性)
 地震調査研究推進本部が策定した、平成21年度からの地震調査研究の10年計画「新たな地震調査研究の推進について」中間報告においては、これまでの地震調査研究を省みた上で、「これまでに地震本部が実施してきた長期評価や現状評価は、例えば、東南海地震のみが発生した後に南海地震がどのように発生するかというような、地震の詳細な切迫度についての情報を提供できる水準に至っていない。特に、我が国の将来を見通したとき、国難となり得る東海・東南海・南海地震やそれらと前後して発生する可能性の高い地震を対象とした調査観測研究を強力に推進することは、最も重要な課題である。」とされており、基本理念に「東海・東南海・南海地震に関する調査研究を推進する」ことが、また、当面10年間取り組むべき基本目標として、「海溝型地震の連動発生の可能性評価を含めた地震発生予測の精度向上」が掲げられている。
 また、同報告内において、「地震活動と火山活動は同じ海洋プレートの沈み込みに起因する自然現象であることから、地震現象を総合的に理解するためには、海溝型地震及び内陸地震の発生、マグマの生成・上昇等を統一的に理解する必要がある」ともされている。
 本事業は、平成21年度から開始する予定の「地震及び火山噴火発生の連動性評価研究」も含めて、上記趣旨に合致したものであることから、その必要性は極めて高いと判断できる。
 また、本事業は、東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法、及び日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法において、地震観測施設等の整備に努めなければならないとされていることを踏まえたものである。
(有効性)
 地震本部の設立以降、全国稠密な基盤観測網の整備、基礎研究の推進による知見の獲得、全国を概観した地震動予測地図の作成、緊急地震速報の開始等、多くの成果が上がっている。また、地震本部の方針の下、文部科学省が平成15年度からの5ヵ年計画で実施した「東南海・南海地震に関する調査研究」では、本事業開始の裏づけとなった東南海・南海地震の想定震源域境界における不整形構造の存在の確認や、地震サイクル毎の時間間隔や連動パターンを再現できる基礎技術の構築等の成果が上がっている。
 また、平成18年度からの4ヵ年計画で実施している「地震・津波観測監視システム」稼動後は、東南海地震の想定震源域においてリアルタイムに地震・津波データを得ることが可能となる。これに伴い、観測データが増大し、高精度な地震発生予測モデルの構築が可能となるとともに、データ同化技術によるシミュレーションの高度化も可能となる。
 このような我が国のこれまでの地震調査研究に関する研究開発の実績と経験、さらには他の事業の進捗状況等を考慮すると、得ようとする効果は確実に達成されるものと見込まれる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:1,181百万円
 (平成21年度予算案:501百万円)
【機構・定員要求】
 火山防災科学技術研究を確実に推進するため、専門職を新たに1名要求した。(措置なし)
【事業内容の見直し】
 予算編成過程において、平成21年度に展開する海底地震計の規模を見直すとともに、「地震及び火山噴火発生の連動性評価研究」については、内局事業ではなく独立行政法人防災科学技術研究所の事業として、シミュレーション研究等を新たに開始することとした。
事業名【87】活断層調査の総合的推進(拡充)
【主管課:研究開発局地震・防災研究課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 地震調査研究推進本部が策定した、平成21年度からの地震調査研究の10年計画「新たな地震調査研究の推進について」中間報告においては、これまでの地震調査研究を省みた上で、「近年、調査観測・研究が殆ど行われていない沿岸海域を震源とする被害地震が多発している」、「現行の評価で用いられている活断層図の精度は必ずしも十分ではない」等、多くの課題が抽出されており、これを受けて、当面10年間に取り組むべき地震調査研究に関する基本目標として、「活断層等に関連する情報の体系的収集及び評価の高度化」等が掲げられている。
 本事業は、これらの基本目標を達成するため、活断層についての調査観測・研究を総合的に実施するものであることから、必要性が極めて高いと判断できる。
(有効性)
 地震本部の設立以降、全国稠密な基盤観測網の整備、基礎研究の推進による知見の獲得、全国を概観した地震動予測地図の作成、緊急地震速報の開始等、多くの成果が上がっている。また、これまで「地震調査研究推進」として実施してきた重点的調査観測や、追加・補完調査の成果については、地震調査委員会の長期評価等に確実に活用されてきている。このような我が国のこれまでの地震調査研究に関する研究開発の実績と経験、さらには他の事業の進捗状況等を考慮すると、得ようとする効果は確実に達成されるものと見込まれる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:813百万円
 (平成21年度予算案:660百万円)
【事業内容の見直し】
 予算編成過程において、重点的調査観測としての調査活断層数を見直した。
事業名【88】安全・安心科学技術プロジェクト(拡充)
【主管課:科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官(推進調整担当)安全・安心科学技術企画室】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 科学技術の貢献については、今後は、国民の安全・安心の確保など公共的価値を生み出す分野への貢献が期待されており、そのためには、技術シーズをユーザーニーズにつなげることを支援することが必要である。それぞれのテーマを実施する必要性については、以下のとおり。
(1)重要研究開発課題の研究開発
 1.テロ対策等に係る研究開発
 国際的なテロの脅威が高まるなかで、他国の技術をそのまま受け入れるのではなく、我が国におけるテロの脅威の程度や特徴を踏まえ、我が国としてテロ対策を着実に実施することが必要。そのためには、我が国の科学技術を活用し、自国の技術でテロ対策に関する製品を開発することが必要である。
 2.地域の安全・安心の確保に係る研究開発
 災害対策や医療問題等の地域社会の抱える課題を解決するためには、地域社会の制度・組織の改善だけではなく、例えば災害時の情報共有システムのような科学技術を活用したシステムを開発し利用することも有効である。こうした地域の公的機関をユーザーとする技術開発の分野は、地域単独の取組では難しく、また、非効率的であるため、科学技術や研究機関を積極的に活用していくための仕組みを国が支援することが必要である。
 3.国家の安全・安心の基盤となる科学技術
 サイバーテロ等から、国家の安全・安心を確保するためには、科学技術を活用した効果的・効率的対策が重要である。そのため、その基盤となる科学技術における国家的なニーズの解決に向けて産学官の技術力を活用し、結集していく仕組みを推進することが必要である。
(2)安全・安心に関わる知・技術の共有化
 テロ対策等に係る情報は公表されていないことが多く、有識者も限られており、知・技術の共有化がこれまで進んでこなかった。技術シーズをユーザーニーズにつなげるためには、研究開発と同時に知・技術の共有化を進めることが必要である。
(有効性)
 テロ対策等に資する技術について、テラヘルツ波を活用した封筒内違法薬物・危険物検知装置の実証実験が税関で実施されるなど、成果の還元が進んでいる。また、平成19年度から開始した課題については、現場のニーズを踏まえた研究開発が順調に進捗しており、研究開発の成果の社会実装が期待される。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:1,283百万円
 (平成21年度予算案:538百万円)
事業名【89】トップアスリート派遣指導事業(拡充)
【主管課:スポーツ・青少年局生涯スポーツ課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 教育振興基本計画において、「学校や地域におけるスポーツの振興を通じて、生涯にわたって積極的にスポーツに親しむ習慣や意欲、能力を育成する。これにより、子どもの体力の低下に歯止めをかけ、上昇傾向に転じさせ、(略)昭和60年頃の体力水準への回復を目指す」としており、そのためには、トップアスリート等が、自らの豊かな経験と卓越した技術をもとに、講話や指導等を通じて、子どもたちが主体的にスポーツに親しむ態度や習慣を身に付けるきっかけを提供する必要がある。
(有効性)
 本事業は、子どもたちが主体的にスポーツに親しむ意欲を喚起するため、小・中学校や総合型地域スポーツクラブ等に対して、トップアスリート等のチームを派遣し、スポーツの実演・指導等を通じて体を動かすことの楽しさや正しい生活習慣を身につけることの大切さ、スポーツの素晴らしさなどを伝え、子どもの体力向上を図ることを目的としてきた。
 本事業では、体力・運動能力調査において小学校5年生の運動実施率を85パーセント以上となることを目指している。平成18年度(注)においては、小学校5年生の運動実施率は80パーセントとなっている。今後、より多くの小・中学校等にトップアスリート等のチームを派遣し、スポーツの実演・指導等を行うことで、子どものスポーツに対する取組が積極的になり、教員の指導法の改善も一層図られることにより、達成年度である平成22年度には、目標である理解・習熟度85パーセント以上を達成することができると見込まれる。
(注)平成19年度は現在集計中
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:205百万円
 (平成21年度予算案:101百万円)
事業名【90】「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」に基づく子どもの体力向上支援事業(新規)
【主管課:スポーツ・青少年局生涯スポーツ課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 教育振興基本計画において、「学校や地域におけるスポーツの振興を通じて、生涯にわたって積極的にスポーツに親しむ習慣や意欲、能力を育成する。これにより、子どもの体力の低下に歯止めをかけ、上昇傾向に転じさせ、(略)昭和60年頃の体力水準への回復を目指す」としており、そのために各地域における子どもの体力の状況、運動習慣、生活習慣等との相関関係について、全体的にきめ細かに把握・分析し、また、都道府県、市町村、学校それぞれの段階における子どもの体力向上に係る施策の成果と課題を整理する必要がある。
(有効性)
 本事業は、「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」の結果等を分析、活用することにより、各教育委員会、学校が自らの子どもの体力の向上に係る施策の成果と課題を把握し、その改善を図ることを目的としている。今後、各都道府県・政令指定都市において、「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」の結果を分析、活用して提案された、子どもの体力向上にかかる施策の改善に資する具体的方策を収集し、全国に普及させ、各地域において子どもの体力向上のためのより効果的な取組が実施されることにより、達成年度である平成23年度には、目標である子どもの体力を上昇傾向へ転じさせ、昭和60年頃の水準への回復を達成することができると見込まれる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:227百万円
 (平成21年度予算案:158百万円)
事業名【91】中学校武道必修化に向けた地域連携指導実践校等(新規)
【主管課:スポーツ・青少年局企画・体育課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 武道及びダンスについては、これまで選択であったが、新たに必修となったことから、武道とダンスの指導者・施設・設備の確保が必要となってくる。そのためには、学校単独で確保することのみならず、地域の資源を有効活用する必要がある。例えば、地域の指導者の活用などにより、生徒により高い技術的指導をすることができると同時に教員の指導力を向上させることができる。地域の武道場などを活用することで、学校に武道場が無い場合にも効果的な指導が行うことができる。さらに、各都道府県が全国連絡協議会等で実践校における取組について情報交換を行い、一層の成果の普及を図る必要もある。
 以上のことから、武道及びダンスの円滑な実施を図るためには、本事業の実施が不可欠である。
(有効性)
 平成20年3月に学習指導要領を改訂し、武道とダンスを必修化したことを踏まえ、平成21年度から940校で本事業を実施することにより、新たに必修とした2領域について、地域と連携した指導手法を蓄積し、事業の成果を全国に普及することで、すべての中学校で様々な形態で武道・ダンスが実施できるようにすることができる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 課題となっている武道の必修化の条件整備として、988百万円を概算要求に盛り込んだ。
 平成21年度予算概算要求額:988百万円
 (平成21年度予算案:494百万円)
事業名【92】地域スポーツ人材の活用実践支援事業(拡充)
【主管課:スポーツ・青少年局企画・体育課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 多くの中学校では部活動の指導者不足が深刻な状況である。その要因として考えられるのは、教員数の減少や高齢化の進展、練習・引率及び大会運営等の負担が大きいこと、生徒の指導に対するニーズが高度で専門的になっていることなどである。また、平成18年度に行われた教員の勤務実態調査では、中学校の教員にとって部活動指導のための残業時間が長くなっていることが明らかになった。このような状況を改善するためには、学校外の地域のスポーツ人材を積極的に活用し、生徒の指導ニーズに応えるとともに、教員の負担を軽減することが必要である。
 また、学級担任が全ての教科を担当する小学校においては、特に、高学年で指導内容が高度化するために、個に応じた指導の必要性も高くなり、児童の関心・意欲にあった体育指導が困難と感じる教員が少なくない。児童生徒の体力が長期的な低下傾向にある中、児童生徒の運動する意欲をより一層培うためには、発達段階に応じて、教員の指導を補助できる地域のスポーツ人材とともに指導していくことも必要である。
 以上のことから、学校体育への地域スポーツ人材の活用を促進し、学校体育の活性化を図るためには、本事業の拡充が不可欠である。
(有効性)
 都道府県教育委員会等が中心となり、域内の学校への地域スポーツ人材の活用の趣旨や効果を啓発していくことにより、地域スポーツ人材の活用する気運が高まり、すべての小・中学校において地域スポーツ人材の活用ができる体制を構築するという目標を達成することができると見込まれる。
 また、本事業の実施により、地方自治体が抱える地域スポーツ人材活用上の課題の解決が図られ、より一層の人材活用がなされることも期待される。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 課題となっている子どもの体力低下や教員の負担増への対応として、1,064百万円を概算要求に盛り込んだ。
 平成21年度予算概算要求額:1,064百万円
 (平成21年度予算案:358百万円)
事業名【93】公立中学校武道場整備費補助事業(新規)
【主管課:スポーツ・青少年局企画・体育課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 平成24年度より中学校において武道必修化が完全実施となるため,中学校において安全かつ効率的に武道を実施するための条件整備を行うことが必要である。
 現在,「安全・安心な学校づくり交付金」により,国庫補助制度があるものの,中学校武道場整備率は47.0パーセント(平成19年5月1日現在)にとどまっており,整備促進は不可欠である。
 このため,新学習指導要領完全実施後2カ年経過までの5カ年間(21年度025年度)で重点的に整備促進を図るため,所要の予算措置及び補助率のかさ上げ,交付先における使途を武道場新設に特定した本事業の新規実施が必要である。
(有効性)
 各地方公共団体においては,武道必修化完全実施(平成24年4月)までに,円滑な武道の実施に向け武道場の整備が喫緊の課題である。本事業により所要の財源を時限的に確保し,補助率を1/2とする支援策を講じることにより,各地方公共団体における武道場整備の取組が促進され,達成年度である平成25年度末には、目標である整備率70パーセントを達成することができると見込まれる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:4,799百万円、補助率1/2
(平成21年度予算案:安全・安心な学校づくり交付金(公立中学校武道場新規整備分)4,026百万円、補助率1/2)
事業名【94】私立学校体育等諸施設整備費補助(拡充)
【主管課:スポーツ・青少年局企画・体育課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 平成24年度より中学校において武道必修化が完全実施となるため,中学校において安全かつ効率的に武道を実施するための条件整備を行うことが必要である。
 現在,「私立学校体育等諸施設整備費補助」により,国庫補助制度があるものの,中学校武道場整備率は24.8パーセント(平成19年5月1日現在)にとどまっており,整備促進は不可欠である。
 このため,新学習指導要領完全実施後2カ年経過までの5カ年間(21年度025年度)で重点的に整備促進を図るため,箇所数の増及び補助率のかさ上げを行うため,本事業の拡充が不可欠である。
(有効性)
 各学校法人においては,武道必修化完全実施(平成24年4月)までに,円滑な武道の実施に向け武道場の整備が喫緊の課題である。本事業により所要の財源を時限的に確保し,補助率を1/2とする支援策を講じることにより,各学校法人における武道場整備の取組が促進され,達成年度である平成25年度末には、目標である整備率10パーセント増を達成することができると見込まれる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:215百万円、中学校武道場新規整備分 補助率1/2
 (平成21年度予算案:105百万円、中学校武道場新規整備分 補助率1/2)
事業名【95】総合型地域スポーツクラブの育成・支援(拡充)
【主管課:スポーツ・青少年局生涯スポーツ課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 体力・スポーツに関する世論調査(平成18年8月内閣府)のスポーツ振興についての国や地方公共団体への要望において、学校体育施設の開放・整備、地域のクラブやサークルの育成に対する要望が多く、総合型地域スポーツクラブの育成について国民からのニーズが強いものと考える。また、教育振興基本計画においては、「心身の健全な発達に重要な役割を果たすスポーツに国民のだれもが生涯を通じていつでも身近に親しむことができる環境を整備するため、総合型地域スポーツクラブ等、地域における総合的なスポーツの場の育成・整備をはじめとした取組への支援を推進する。」、「子どもが身体を動かす場や機会を確保する観点からも、総合型地域スポーツクラブの整備等、地域における身近なスポーツ環境の整備を推進する。」としており、生涯スポーツ社会の実現のために、総合型地域スポーツクラブの育成・支援を推進する必要がある。
(有効性)
 本事業は、総合型地域スポーツクラブを育成・支援することで国民の誰もが生涯にわたりスポーツに親しむことができる環境の整備を図ることを目的としてきた。
 平成20年7月1日現在において、育成率は57.8パーセントとなっている。今後、全国的な組織基盤を有する民間スポーツ団体を活用して、総合型地域スポーツクラブの設立に向けた基幹的活動に対する支援及び育成に必要な取組を実施する「総合型地域スポーツクラブ育成推進事業」やスポーツを取り巻く新たな課題を解決するため、広域スポーツセンターの機能を活用する「総合型地域スポーツクラブを核とした活力ある地域づくり推進事業」、クラブ育成率の低い地方自治体を対象に、未育成エリアミーティング(仮称)等を開催し、課題等の解決を図りながら総合型地域スポーツクラブの育成を促す「総合型地域スポーツクラブ特別支援事業」が実施されることにより、達成年度である平成22年度には、総合型地域スポーツクラブの全市区町村に対する育成率を100パーセントまで伸ばすことができると見込まれる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:934百万円
 (平成21年度予算案:485百万円)
事業名【96】競技力向上ナショナルプロジェクト(拡充)
【主管課:スポーツ・青少年局競技スポーツ課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 オリンピック競技大会をはじめとする国際競技大会における我が国のトップレベル競技者の活躍は、多くの国民、とりわけ子どもたちに夢や感動を与え、ひいては、明るく活力ある社会の形成に寄与するものであるとともに、国際社会における我が国のプレゼンスを高めていく上でも大きな影響を与えるものである。
 このため、文部科学省としては、スポーツ振興法(昭和36年法律第141号)及びスポーツ振興基本計画に基づき、これまでも種々の施策を実施してきたところであり、その結果、現時点における夏季・冬季合わせたメダル獲得率は3.22パーセントとなっている。
 しかしながら、スポーツ振興基本計画に掲げる目標である3.5パーセントは未だ実現されていない状態にあることから、メダル獲得率向上のための更なる施策が必要である。
(有効性)
 本事業を実施することにより、メダル獲得の可能性が高いと考えられる選手又は競技団体において、選手又は競技団体単独では行うことが困難と考えられる戦略的かつ総合的な選手強化方策を行うことが可能となる。このため、我が国のメダル獲得率上昇が見込まれることから、上記目標を達成することが可能と判断。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:1,248百万円
 (平成21年度予算案: 608百万円)
事業名【97】アートマネジメント重点支援事業(新規)
【主管課:文化庁文化部芸術文化課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 大学等でアートマネジメントに関する講座、コース等を置いている学部、大学院は増えてきており、その教育内容は、教育学的なもの、社会学的なもの、公共政策学的なものなど、大学それぞれにおいて多様であるものの、必ずしも文化施設等の経営とリンクしたものとなっておらず、文化芸術活動の現場において求められる実践的な資質・能力の育成につながっていないとの指摘がある。
 また、アートマネジメントの理論と実践の両面の修得の観点から、文化施設等における実習・インターンシップが有益であるが、教育プログラムに取り入れている大学等は少数であるとともに、実習等の期間も短期間となっている。
 一方、文化施設等においては、採用時に現場の経験を重視する傾向にあり、学生の就職の受け皿が少なく、学生が現場に入っていきにくい状況にあるとともに、定期的な採用が少ないなど、大学等と現場をつなぐ仕組みが整えられておらず、学生が働きたいと思っても安定的に働けないことも多い。
 アートマネジメント人材等の養成を図る上で、人材の養成を担う大学等と活用を図る文化施設等の相互理解・交流が重要であるが、大学等は、文化施設等における学生の積極的な採用や実習・インターンシップの受け入れなどを重視するが、文化施設等は、大学等に共同企画の実施や現場を知る専任教員の増員等を求めるなど、養成側と活用側で意識の乖離が見られる。
 以上のことから、我が国の文化芸術の水準の維持・向上を図っていくためには、芸術系大学と文化施設が連携・協力し、質の高いアートマネジメント人材の育成と活用を一体的に行うとともに、拠点となる文化施設へ重点的な支援を行うことで、我が国のアートマネジメント人材等の育成及び活用の拠点を形成し、各地域での取組を促す本事業が必要不可欠である。
(有効性)
 文化施設等から大学等に対しては、63パーセントが「共同企画の積極的な実施」を、59パーセントが「現場を知る専任教員の増員」を、50パーセントが「専門家の派遣・交流」を求めている。一方、大学等から文化施設に対しては、88パーセントが「実習・インターンシップの受入れと学生の積極的な採用」を、61パーセントが「アートマネジメント専門職の設置」を求めており、支援対象施設においては当事業の実施により、これらの要望に応じることができる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:762百万円
 (平成21年度予算案:101百万円)
【機構・定員要求】
 アートマネジメント人材の育成及び活用に係る事務体制強化のため、アートマネジメント専門官1名を要求した。(措置なし)
【事業内容の見直し】
 予算編成過程で事業の見直しを行った結果、専門的なアートマネジメント人材の育成及び活用に一体的に取り組む文化施設に対し重点支援を行い、我が国におけるアートマネジメントの推進を図ることとした。
 具体的には、アートマネジメント専門の職員を配置し、特色ある芸術性の高い創造活動等を行うとともに、他の文化施設等から中堅の現職アートマネジメント担当職員等を受入れ、その資質向上のための指導助言を行う文化施設に対して、専門職員の配置及び中堅職員の指導助言にかかる必要な経費を支援するものである。
 また、全国の公立文化施設の管理運営に携わる職員を対象にしたアートマネジメント研修を併せて実施することとした。
事業名【98】本物の舞台芸術体験事業(拡充)
【主管課:文化庁文化部芸術文化課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 次代の芸術文化の担い手である子どもたちの豊かな心や感性を育むために、学校において子どもたちに芸術文化に触れる機会を提供することは、我が国の芸術文化の振興には必要な事業であると考える。
(有効性)
 本事業は平成14年度に開始した後、事業規模を拡充しながら、平成20年度においては950公演を確保した。引き続き、達成年度(平成23年度)に向けて公演数の拡充を図る。
 平成19年度の実施状況に関する調査を行ったところ、「学校における鑑賞教室等に関する実態調査(社団法人日本芸能実演家団体協議会)」では、鑑賞教室が児童・生徒に与える効果の回答としては、「舞台芸術への関心を高められた」が85.1パーセント、「豊かな心や感性・創造性をはぐくめた」が82.0パーセントとなっている(本調査結果は本物の舞台芸術体験事業を含む、学校における舞台芸術の鑑賞教室全般に関するデータである)。また、「文部科学省政策評価に関する調査研究(株式会社三菱総合研究所)」では「当該事業をきっかけに文化・芸術活動を実施したくなった児童生徒の割合」が81.1パーセント、「豊かな心や感性、創造性を育てるきっかけになったと思う保護者・教職員の割合」が保護者78.0パーセント、教職員78.2パーセントとなっており(本調査結果は、本物の舞台芸術体験事業を対象としたデータである)、児童・生徒に与える効果は高い結果となった。引き続き事業を充実させ、高いレベルでこの結果を維持する。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:4,302百万円
 (平成21年度予算案:3,804百万円) 
事業名【99】国宝重要文化財等買上げ(拡充)
【主管課:文化庁文化財部美術学芸課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 近年の社会情勢、経済情勢による長引く不況等の理由から、所有者が国宝・重要文化財等を転売したり、複数の員数で構成されている1件の国宝・重要文化財等を分割して個別に手放すことによる国内外での散逸等が懸念されていることや、文化財が脆弱な材質でつくられているにも関わらず、所有者による適切な保存管理が行われていないため、劣化やき損を招く危険性が高い状況のものがある。
 このことから、国において保存管理の措置を講ずる必要がある文化財を緊急に買上げ、適切な保存管理の実施と併せて展覧会への公開活用にも資するものである。
(有効性)
 適切な買取を行い、文化財の保存活用に努め、貴重な文化財の散逸防止に努める。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:2,649百万円
 (平成21年度予算案:1,637百万円)
事業名【100】建造物保存修理等(拡充)
【主管課:文化庁文化財部参事官(建造物担当)】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 我が国には木造として世界最古の法隆寺金堂をはじめ、数多くの木造建造物が保存されている。これは建物が良質な材料を使用し、かつ優れた施工技術で建てられただけでなく、各時代のたゆまない保存管理のたまものである。
 文化財建造物の保存は、適切な周期、適切な材料、適切な技術で修理を繰り返すことが必要であり、適切な周期で保存修理を実施しないと文化財としての価値を大きく損なうこととなる。
 しかしながら、現状では適切な周期による保存修理ができない状況であり、我が国の貴重な文化財を次世代に確実に継承するためには、建造物保存修理予算の拡充が必要である。
 文化財建造物の修理は多額の経費を要するため、所有者負担は極めて重い。所有者には檀家や信者等が少ない社寺や年金生活の民家所有者等も多く、修理についてこれ以上の所有者負担を求めることは難しい。
 また、都道府県・市町村による所有者への修理経費支援(随伴補助)も、地方財政の縮小により困難となっている。さらに、本事業は、災害の復旧修理事業にも対応しているが、近年、地震・台風・大雨等の災害が多発していることから、国費負担の迅速な充実が必要不可欠である。
 なお、「文化芸術の振興に関する基本的な方針(第2次基本方針)」(平成19年2月9日閣議決定)において、文化財建造物等の有形の文化財について、「その種別や特性に応じて計画的に保存・修復を進める」ことを基本施策として定めており本事業の拡充が不可欠である。
(有効性)
 本事業は、目標が達成された後も絶えることなく継続して行うことが必要である。
 しかし、当面の達成年度である平成24年度には対応の迅速化を図り、文化財建造物の保存修理は目標である毎年、根本修理13件、維持修理50件を達成することが見込まれる。
 また、伝統的建造物群の保存修理は目標である毎年300件を達成することが見込まれる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:6,632百万円
 (平成21年度予算案:5,691百万円)
事業名【101】建造物防災施設等(一般)(拡充)
【主管課:文化庁文化財部参事官(建造物担当)】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 東南海・南海地震が発生する可能性が高いと予測されているなか、近畿圏を中心とした地域において文化財建造物の防災対策の必要性が一段と高まっている。平成19年3月に能登半島地震、平成20年6月に岩手宮城内陸地震があり、危険度が低いといわれていた地域においても大地震が発生しており、全国的な耐震、防災対策の必要性が生じた。
(有効性)
 本事業は、目標が達成された後も絶えることなく継続して行うことが必要である。
 しかし、当面の達成年度である平成25年度には、対応の迅速化を図ることにより、目標である防災設備の設置率(総合防災70パーセント、老朽施設の改修率50パーセント)を達成することが見込まれる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:798百万円
 (平成21年度予算案:623百万円)
事業名【102】地域日本語教育体制整備事業(新規)
【主管課:文化庁文化部国語課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 これまで地域における日本語教育は主にボランティアによって支えられてきたが,学習者の増加と多様化にともなって,学習者のニーズに十分にはこたえられなくなった。近年,外国人人材の活用は,我が国において欠くことのできないものとなっており,彼らを地域社会の一員としてとらえた施策の必要性が高まっている。そのため,彼ら及び彼らの家族が安心して暮らせるように地域における日本語教育に対する支援が必要である。
(有効性)
 地域の日本語教室は,学習者の通える時間と場所に開設できていなかったり,学習者の期待する質と内容で指導が行えていなかったりする。実際,日本語教育のプログラムの企画立案,及び会場の確保や講師の手配等といったコーディネート業務は,地域の日本語教育の担い手であるボランティアにとっては過度の負担となっている。以上のような役割をボランティアにかわって,行政機関または国際交流協会等の機関および人材が業務として担うことで,設定した目標(教室数,学習者数の増加)は達成することができると見込まれる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 予算編成過程で廃止した。
 平成21年度予算概算要求額:69百万円
 (平成21年度予算案:0百万円)
【機構・定員要求】
 地域の日本語教育の体制整備に係る事務体制を強化するため、日本語教育調査官(2名)の新設を要求した。(日本語教育調査官1名措置)
事業名【103】国際初中教育支援事業"日本の学び舎を海外へ"(新規)
【主管課:大臣官房国際課】
【関係課:初等中等教育局国際教育課】
評価結果の概要 (必要性)
 国際的な資源獲得競争が激しくなる中、産油国との経済レベルにとどまらない文化や教育等の多角的な関係強化の必要性が指摘されている。また、国際社会での日本の発信力強化のため、日本への留学生の受入を大幅に拡大するなど、知日家・親日家の育成の必要性も指摘されている。
 そこで、日本式教育を世界に発信することにより、中東地域等での教育改革に協力する他、優れた留学生を確保し、知日(親日)家を育成するなど、対日理解を促進することを通じて豊かな国際社会の構築に貢献するため本事業を実施する。
(有効性)
 UAE及びカタールとの教育協力を推進するにあたり、日本側関係機関(外務省、経済産業省、文部科学省)と相手国側の関係機関による教育協力検討作業部会が設置されている。これら作業部会において、現地人子女の日本人学校への入学が検討されており、目標人数の達成が見込まれている。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:69百万円
 (平成21年度予算案:0百万円)
 本事業については、平成20年度補正予算において措置することとなった(171百万円)ため、平成21年度予算案においては措置されていない。
事業名【104】日米教育交流プログラム(新規)
【主管課:大臣官房国際課】
【関係課:国際統括官】
評価結果の概要 (必要性)
 近年、日米両国の首脳は、首脳会談等の場において、日米同盟は日米両国がグローバルな諸課題に対処していく上で不可欠の役割を果たしており、今後もその同盟関係を一層盤石なものとしていく必要があるとの認識のもと、将来のさらなる日米関係の強化のために、知的交流、草の根交流、日本語教育等からなる日米交流を強化するイニシアティブを累次にわたり表明している。これらの政策的ニーズに応えるためには、教育分野での日米交流の強化に関する事業を実施する必要がある。
(有効性)
 平成9年度以降実施してきた「日本フルブライト・メモリアル基金事業」においては、平成19年度までに累計6,000名を超える米国人教員等の我が国への招へい等により、米国人(被招へい教員はもとより、その教員の生徒などへの波及効果もある)の対日理解と、日米教員間の理解増進や交流促進に効果的であった。本件プログラムは、平成20年6月にまとめられたカルコン(日米文化教育交流会議)による政策提言を踏まえ「日本フルブライト・メモリアル基金事業」の事業改編を行うものであり、同基金事業と同様、日米間の教育・文化交流の促進に資するという目標の達成が可能なものと考えられる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:200百万円
 (平成21年度予算案:200百万円)
【事業名の変更】
 平成21年度予算案には「日米教育交流プログラム拠出金」として計上。
【事業内容の見直し】
 「日本フルブライト・メモリアル基金事業」をカルコン(日米文化教育交流会議)による政策提言を踏まえた新たな事業とすべく検討した結果、平成21年度より「日米教育交流プログラム」として、新たな日米間の教育・文化交流に資する事業を実施することとした。
事業名【105】留学生交流の推進(拡充)
【主管課:高等教育局学生支援課】
【関係課:高等教育局高等教育企画課】
評価結果の概要 (必要性)
 留学生の受入れ・派遣を通じた留学生交流は、我が国と諸外国との間の人的ネットワークの形成や相互理解と友好関係の深化、国際的な視野を持った日本人学生の育成と開かれた活力ある社会の実現、我が国の大学等の国際化・国際競争力の強化、国際社会に対する知的国際貢献等の推進を図るために必要である。
(有効性)
 平成20年1月の福田内閣総理大臣の施政方針演説の中で言及のあった「新たに日本への『留学生30万人計画』を策定し、実施に移す。」や、これを踏まえた経済財政改革基本方針2008の経済成長戦略の中で、「留学生30万人計画」の実現に向けて構想の具体化が上げられたところである。また、同年7月29日、文部科学省ほか関係6省により策定され、閣僚懇談会で報告、公表された「留学生30万人計画」骨子により、その趣旨や方策の具体化が図られたところである。
 「留学生30万人計画」を達成するために、本事業は必要なものであり、大学等の教育研究の国際競争力を高め、優れた留学生を戦略的に獲得し、また関係省庁・機関等が総合的・有機的に連携して計画を推進することで、「留学生30万人計画」へも寄与することとなる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:64,723百万円
 (平成21年度予算案:43,361百万円)
【機構・定員要求】
 留学生の受入れ・派遣の両面で一層の交流の推進を図るため、機構(留学生交流政策室)及び定員(係長3名)を要求した。(係長1名措置)
【事業内容の見直し】
 国費外国人留学生制度については、在学段階及び地域による生活費の違い等を総合的に勘案し単価を見直すとともに、より多くの優秀な者の採用を図ることとした。
 地域留学生交流推進会議経費については、そのほとんどが地域で行うイベント経費であり地域独自で実施できることから廃止し、新たに全国レベルの留学生交流総合推進会議を実施することとした。
 「外国人留学生修学援助費補助金(授業料減免学校法人援助)」について、補助対象の精査等を検討することとした。
事業名【106】国連大学人材育成プログラム(新規)
【主管課:大臣官房国際課】
【関係課:】
評価結果の概要 (必要性)
 我が国の大学等が国際社会において、他の機関に伍して国際開発協力活動に参画していくためには、二国間協力(バイ協力)だけでなく、国連機関等による協力を含む多国間協力(マルチ協力)にも熟知していく必要がある。
 国連大学は、我が国が積極的に誘致し、日本にある唯一の国連機関の本部機能を持つ機関として活動を展開しているところである。
 文部科学省としては、国連大学が我が国に所在する地の利を活かし、我が国の学術界と国連大学との連携協力を図ること、さらに、国連大学を通じて我が国の大学等の国際化の進展を図り、国際協力活動展開のための基盤整備をより一層図っていく必要がある。
(有効性)
 20年度に東京大学との協力協定に調印し、本事業に着手したところであり、今後も順調に進捗すれば、目標を達成すると見込まれる。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:20百万円
 (平成21年度予算案:20百万円)
事業名【107】アジア太平洋地域教育協力信託基金拠出金事業(新規)
【主管課:大臣官房国際課】
【関係課:国際統括官】
評価結果の概要 (必要性)
 EFAの目標達成を始め、様々な教育課題の克服は、ユネスコのみならず、多くの国際機関が達成に努めているところ、我が国が目標達成に貢献することは、教育分野における国際貢献につながり、上位目標である「国際協力の推進」に寄与するものである。
(有効性)
 EFAの国際的な取組が、2015年(平成27年)までの目標達成を目指しており、ユネスコをコーディネーターとして国際機関によるEFA達成の取組が実施されていることから、平成27年度までに達成ができる見込みである。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:100百万円
 (平成21年度予算案:95百万円)
事業名【108】日本/ユネスコパートナーシップ事業(拡充)
【主管課:大臣官房国際課】
【関係課:国際統括官】
評価結果の概要 (必要性)
 ESDを国際的な立場から推進することを提唱したのは日本政府である。2002年(平成14年)9月に開催された持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネスブルグ・サミット)での小泉首相(当時)の提案に基づき、同年12月の第57回国連総会において、2005年(平成17年)から2014年(平成26年)までの10年を「国連持続可能な開発のための教育の10年(DESD)」とし、ユネスコをその主導機関とするとの決議が採択された。これを受け2005年(平成17年)9月には、ユネスコが中心となって各国の具体的対応の指針となる国際実施計画が策定された。
 我が国にとって、国際的取組に対する協力と並んで重要なことは、国内における取組の推進である。特に学校現場におけるESDの概念が十分に理解されているとは言えない状況であり、早急な対策が必要である。
 ESDを学校教育の中で推進するに当たっては、環境教育、国際理解教育、人権教育など等、多岐にわたる分野をつなげて総合的に取り組むことが求められているが、ユネスコの国際的な学校間ネットワークである「ユネスコ・スクール」が取り組むテーマとESDが取り組むべき分野とが重なることから、全国の小・中・高等学校においてESDを普及促進していく上で、ユネスコ・スクールのネットワークを活用することが有効である。そこで、本事業ではユネスコ・スクールの活動の充実を図る。
 また、ESDは教育分野に限らず、科学・文化など横断的に取り組む必要があることから、科学・文化についてもプログラム開発、無形文化遺産の保護計画の策定等を実施し、科学・文化面からESDの普及・促進を図る。
 これらの取組が、我が国が提唱し、ユネスコが主導する地球規模の課題であるESD及び気候変動等への取組の国内外で普及・推進につながり、上位目標である「国際協力の推進」に寄与することが可能となる。
(有効性)
 現存する国内のユネスコ・スクールは25校であるが、昨年度事業を実施したところ新たに20校余りがユネスコ・スクールへの関心を持つに至った。今後、本事業を拡充することにより、年間100校は新たにユネスコ・スクールに参加すると予想され、平成26年度には500校以上が参加する見込み。
評価結果の政策への反映状況 【概算要求】
 平成21年度予算概算要求額:150百万円
 (平成21年度予算案:120百万円)

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-- 登録:平成22年01月 --