政策目標10 科学技術の戦略的重点化

 国家的・社会的課題に対応する研究開発の重点化した推進と新興・融合領域への先見性、機動性をもった対応を実現する。
施策目標10-1 ライフサイエンス分野の研究開発の重点的推進
 (「生命現象の統合的全体像の理解」を目指した研究を推進するとともに「研究成果の実用化のための橋渡し」を特に重視し、国民への成果還元を抜本的に強化する。)
【主管課:研究振興局ライフサイエンス課】
【関係課:研究振興局研究振興戦略官、同基礎基盤研究課】
評価結果の概要  「細胞・生体機能シミュレーションプロジェクト」、「個人の遺伝情報に応じた医療の実現プロジェクト」が最終年度を迎えた。「細胞・生体機能シミュレーションプロジェクト」については、これまでに蓄積した基盤技術の集大成とアドバイザリーボードで指摘されていた各拠点間の連携により、シミュレーションモデルの開発および利用可能性の検証を行い、一部においては薬・医療機材の有効性・安全性評価に使えることを示し、当初目標を概ね達成した。
 また、「個人の遺伝情報に応じた医療の実現プロジェクト」については、47疾患の30万症例規模のDNA等の試料及び臨床情報を収集し、当該試料について遺伝子多型(SNP)解析を行うとともに、プロジェクト終了時に累積症例数の目標値(30万症例)とほぼ同等の29.5万症例を収集した世界最大規模のバイオバンクを構築しており、当初目標を概ね達成した。
 また「橋渡し研究支援推進プログラム」、「粒子線がん治療に係る人材育成プログラム」、「ターゲットタンパク研究プログラム」を開始し、これまでの研究の蓄積を生かし、国民への成果還元を抜本的に強化していくこととしている。
 「再生医療の実現化プロジェクト」については、引き続き研究用幹細胞バンク事業を着実に推進して広く研究者のニーズにあわせた幹細胞を提供し、研究の機会を提供するとともに、iPS細胞関連技術等の世界をリードする細胞操作技術、脊髄損傷をはじめとした治療法を臨床につなげるための研究開発等を着実に進める。
 「統合データベースプロジェクト」については、中核機関を中心として整備された推進体制により、国内のライフサイエンス関係データベースの統合化を進める。
 「ゲノムネットワークプロジェクト」については、今後は、従来の細胞生物学を超え、オミックスやネットワークなどの統合的理解の対象として「細胞」を取り上げ、様々な研究を集約することの必要性が提言された。
 「革新的ながん治療法等の開発に向けた研究の推進」については、がんだけではなく医療としての実用化が見込まれる有望な基礎研究の成果を積極的に予防・診断・治療へ応用する橋渡し研究を推進し、医療への普及・定着や企業へのライセンスアウトを目指すため、「橋渡し研究支援推進プログラム」における研究拠点を利用した研究を支援する研究費として拡充を検討する必要がある。
評価結果の政策への反映状況
(平成20年度以降の取組)
【概算要求】
 「再生医療の実現化プロジェクト」や「脳科学研究戦略推進プログラム」等の事業を着実に実施するため、ライフサイエンス関係予算として、86,107百万円を概算要求に盛り込んだ。(平成21年度予算案71,187百万円)
 また、20年度補正予算として、以下を措置した。
 iPS細胞等研究拠点における疾患特異的iPS細胞樹立に係る研究体制整備のための措置を行った。(平成20年度補正予算額1,501百万円) 
 次世代シーケンサー及び超大容量データベースを整備するための措置を行った。(平成20年度補正予算額2,505百万円)
 理研バイオリソースセンターにおける特別高圧変電設備建設のための措置を行った。(平成20年度補正予算額500百万円)
 理研脳科学総合研究センターにおける脳科学先端研究拠点整備のための措置を行った。(平成20年度補正予算額2,999百万円)(三年債)
【機構・定員要求】
 幹細胞・再生医学研究体制の強化に伴う幹細胞・再生医学研究推進室の新設の要求並びに室長(振替1名)、室長補佐、幹細胞・再生医学研究企画係長及び幹細胞・再生医学研究推進係長(新規3名)の要求を行った。(要求どおり措置。)
 橋渡し研究プログラムの強化に伴う専門職(新規1名)の要求を行った。(措置なし。)
【事業内容の見直し】
 「ターゲットタンパク研究プログラム」については、オミックスやネットワークなどの統合的解析と、タンパク質の機能・構造解析とを統合した新たなプロジェクト(革新的タンパク質・細胞解析研究イニシアティブ)を立ち上げ、6,900百万円を概算要求に盛り込んだ。(平成21年度予算案5,800百万円) 
 「統合データベースプロジェクト」については、平成22年度末に終了することとなっているが、データベースは継続的に整備され、利用されることにより大きな価値が認められることから、その後も引き続き、整備された統合データベースを維持し発展させることが肝要であることを踏まえ、同プロジェクト終了後の体制のあり方を見据え、国内にある代表的な生命情報データベースの高度化・標準化等を行っている独立行政法人科学技術振興機構のバイオインフォマティクス推進センターの事業と一体的運用を図ることでより政策効果を高めるべく平成23年度からの統合に向けて平成21年度よりその段階的移行を進めることとした。
【事業の廃止】
 「ゲノム機能解析等の推進」については、ゲノムワイドにデータを収集・解析する基盤技術の開発やRNA大陸の発見といった成果を得るなど、事業開始の際に定めた遺伝子の発現調節機能等の系統的な解析に基づき、転写制御を中心にネットワークを明らかにすることにより発生・分化等の生命科学に関する基本的問題の解明の基盤を構築するという目標を達成しつつあることから、新たな課題の追加公募や期間の延長を行うことなく廃止することとした。
 「革新的ながん治療法等の開発に向けた研究の推進」については、がんに関する優れた基礎研究の成果を革新的な治療法、診断法につなげる橋渡し研究を推進するものであるが、初年度に選定したがん免疫療法や分子標的治療法などのがん治療法等に関する個別課題の研究を推進し、ほとんどの研究課題が、目標とする臨床試験に入るなどの実績を残しつつあることから、新たな課題の追加公募や期間の延長を行うことなく廃止し、橋渡し研究支援推進プログラムと統合して、がん治療法に関する橋渡し研究拠点整備等を推進することとした。
施策目標10-2 情報通信分野の研究開発の重点的推進
 (先端的な情報科学技術の研究開発及び研究開発に関する情報化を推進する。)
【主管課:研究振興局情報課】
【関係課:】
評価結果の概要  将来のスーパーコンピューティングのための要素技術の研究開発、革新的シミュレーションソフトウェアの研究開発、e-Society基盤ソフトウェアの総合開発、安全なユビキタス社会を支える基盤技術の研究開発については目標を達成するとともに、研究成果の公開等を通じた成果の社会への普及を行ったことから、平成19年度で事業を終了した。また、高機能・超低消費電力コンピューティングのためのデバイス・システム基盤技術の研究開発をはじめとするその他の事業についても目標を達成しており、平成19年度は順調に進捗した。各事業の実施により先端的な情報科学技術の推進につながると判断した。
 また、従来の学術情報ネットワークSINETと、先端的学術情報基盤スーパーSINETを統合し、平成19年6月からSINET3の本格運用を開始しており、先端研究分野の多様なニーズへの対応が可能な革新的なネットワークを実現し、新たなサービスを提供する等、学術情報ネットワークの高度化を通じて、研究開発に関する情報化を推進するなど、順調に進捗した。
 文献情報・研究者・研究成果等のデータベース整備や活用促進、科学技術情報発信・流通総合システム事業等を実施し、科学技術情報の流通や科学技術の振興のための基盤の整備は、順調に進捗した。
評価結果の政策への反映状況
(平成20年度以降の取組)
【概算要求】
 平成21年度においては、これまでの取組を引き続き推進するため、次の経費を概算要求に盛り込んだ。
・次世代IT基盤構築のための研究開発について、連携施策群や革新的技術に位置付けられるなど重要性が認められており、これまでの研究開発において得た知見を更に発展させ、先端的な情報科学技術による研究開発の情報化をより推進し、また、産業界等からの強い期待に応える研究開発を推進するための経費2,840百万円(平成21年度予算案1,644百万円)
・学術情報ネットワークSINET3について、ネットワークの利用回線の効率化、高機能化を図るために必要な経費(大学共同利用機関法人情報・システム研究機構の運営費交付金の内数)
・科学技術情報流通事業について、引き続き、科学技術情報の流通促進を図るため、研究開発に係わる情報を総合に活用するための基盤整備を実施するための経費(独立行政法人科学技術振興機構運営費交付金の内数)
施策目標10‐3 環境・海洋分野の研究開発の重点的推進
 (気候変動や地球ダイナミクス等、環境・海洋分野の諸問題は、人類の生存や社会生活と密接に関係していることから、これらの諸問題を科学的に解明し、国民生活の質の向上と安全を図るための研究開発成果を生み出す。)
【主管課:研究開発局海洋地球課】
【関係課:研究開発局海洋地球課地球・環境科学技術推進室同宇宙開発利用課、同宇宙開発利用課宇宙利用推進室】
評価結果の概要  気候変動や地球ダイナミクス等、環境・海洋分野の諸問題は、人類の生存や社会生活と密接に関係している。これらの諸問題を科学的に解明し、国民生活の質の向上と安全を図るための研究開発を引き続き行った。
 人工衛星、ブイ、船舶、アルゴフロート等を活用し大気、海洋、陸域における観測や南極域における研究・観測を行うことで、地球温暖化等の地球規模の環境変動等の解明を図り、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書をはじめとする地球温暖化対応のための政策決定に貢献するモデル技術を高度化し、確度の高い予測情報を提供するための研究を行った。
 バイオマス分野については、自治体等がバイオマス利活用の中長期計画を策定する際に利用が可能なプロセス技術、安全性評価、物流を含めた統合的なバイオマス集積・処理システムのモデル開発を行うなど、産学官連携により、バイオマスの利活用に関する研究開発を5年間行い、プロジェクトを終了した。
 地球内部ダイナミクス分野では、海底地殻変動による災害の軽減に資するために、巨大地震の発生域であるプレート沈み込み帯の地殻構造の解析を進展させるなど、海域の地震・火山活動に関する調査観測等による現象と過程に関する研究を行い、地球内部プレートの動的挙動モデルの開発が進んでおり、概ね順調に進捗した。
 海洋・極限環境生物分野では、中深層生物の細胞培養法やそれを用いた実験法を確立するなど、特殊な環境に生息する生物の機構を解明した。
 基盤的技術開発分野では、自律型無人探査機に複数の探査機器を同時に搭載し、海底精密調査試験を3回実施するなど、実運用に向けた詳細なデータの取得が確認できた。
 深海地球ドリリング計画では、地球深部探査船「ちきゅう」の掘削試験を引き続き行い、掘削に必要な技術をさらに蓄積するとともに、研究や解析着手に必要なLWDデータや地殻コア試料を取得するなど、順調に進捗した。
 以上のように、各分野とも順調に進捗していると評価した。
評価結果の政策への反映状況
(平成20年度以降の取組)
【概算要求】
 人工衛星からの地球観測については、陸域観測技術衛星「だいち」や温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」による観測及びデータ提供を着実に実施するともに、更なる多様なデータの収集・提供を行う地球観測衛星の研究開発を推進するため、地球観測衛星開発費補助金15,866百万円及び宇宙航空研究開発機構運営費交付金(内数)を概算要求に盛り込んだ。(平成21年度予算案:地球観測衛星開発費補助金10,805百万円及び宇宙航空研究開発機構運営費交付金(139,703百万円)の内数)
 「データ統合・解析システム」について、地球温暖化の影響評価等に資するため、気候変動・地球温暖化、水循環、生態系の分野を横断的に扱う応用機能開発を開始し、それに伴ってコアシステムの整備を加速するため、1,191百万円を概算要求に盛り込んだ。

 「地球観測システム構築推進プラン」について、さらに総合的に観測システムを構築する観点から、全球規模で輸送される大気中に含まれる人為起源および自然起源の微量成分や微粒子の対流圏中の大気成分変化を観測するシステムの構築の実現に資する観測研究および技術開発を目指して、554百万円を概算要求に盛り込んだ。(平成21年度予算案:1,130百万円)
 「21世紀気候変動予測革新プログラム」について、より精度の高い気候変動予測を行うため、全球大気モデルの改良を図るとともに、気候変動の影響を受けやすいアジア諸国における自然災害の出現頻度や強度の変化予測を強化する。さらに本事業の成果を集約し、気候変動予測情報を蓄積・共有することにより、IPCC第5次評価報告書へのインプットに向けたアプローチを継続するため、2,520百万円を概算要求に盛り込んだ。
 本事業については、文部科学省科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会地球環境科学技術委員会において、本プログラムによる研究成果の評価を徹底した上で、成果報告会やシンポジウム等を活用し、国民に分かりやすく公表することとしている。なお、平成21年度予算案では、本プログラムにおける地球シミュレータ(スパコン)の運用経費の効率化などを踏まえ、事業経費の縮小を図った。(平成21年度予算案:1,540百万円)
 南極地域観測第7期計画(平成18〜21年度)に基づき、南極域での環境変化の把握を目的とした多項目の観測を引き続き行うため、1,621百万円を概算要求に盛り込んだ。平成21年度の就役を目指し、新南極観測船「しらせ」の建造及び次期南極輸送支援ヘリコプターの製造を平成21年度の完成・就役を目指し着実に行うため、14,069百万円を概算要求に盛り込んだ。 (平成21年度予算案:15,690百万円)
 「深海地球ドリリング計画の推進」について、東南海地震の発生メカニズム解明のため、統合国際深海掘削計画(IODP)の枠組みの下、地球深部探査船「ちきゅう」による熊野灘における掘削・研究航海を推進するため、19,196百万円を概算要求に盛り込んだ。
 本事業については、事業目標等について、ホームページやパンフレット等を活用するなど広く国民に対する広報に努めていく予定。また、「ちきゅう」の運航委託先を国内企業に変更し、運航体制について、人件費等を精査するなどの見直しを行い、運用の効率化を図った。(平成21年度予算案:14,155百万円)
 国家基幹技術「海洋地球観測探査システム」の構成要素である次世代海洋探査技術の開発のうち、「次世代型深海探査技術の開発」について、要素技術開発を本格化するため、1,902百万円を概算要求に盛り込んだ。 (平成21年度予算案:1,063百万円)
 「海洋資源の利用促進に向けた基盤ツール開発プログラム」について、海底熱水鉱床の賦存状況を広域かつ効率的に探査するための新たな技術開発を実施するため、800百万円を概算要求に盛り込んだ。(平成21年度予算案:700百万円)
 (概算要求額及び予算案については、運営費交付金中の推計値を含む)
施策目標10-4 ナノテクノロジー・材料分野の研究開発の重点的推進
 (ナノテクノロジーに関して、我が国における産学官の英知を結集した戦略的な取組みを行うと共に、物質・材料に関して、重点的に投資を行うことにより、総合的かつ戦略的な研究開発を進め、世界に先駆け技術革新につながる成果を創出する。)
【主管課:研究振興局基礎基盤研究課ナノテクノロジー・材料開発推進室】
【関係課:科学技術・学術政策局計画官、研究開発局研究開発戦略官】
評価結果の概要  ナノテクノロジー・材料分野の研究開発に関しては、総合的かつ戦略的な研究開発を進め、技術革新につながる成果を創出し、概ね順調に進捗した。具体的には、ナノテクノロジー・ネットワークについては、平成19年度には1,200件を超える支援を実施し、また1,500件以上の関連論文・研究発表を生み出しており、概ね順調に進捗した。また、キーテクノロジー研究開発の推進やリーディング・プロジェクト等の各プロジェクトについては、種々の論文を発表するなど、研究開発に着手したものは概ね計画通りに進捗した。さらに、独立行政法人物質・材料研究機構による研究開発については、平成19年度は第2期中期目標・計画期間の2年目に相当するが、この計画を着実に実施しており、概ね計画通りに進捗した。
評価結果の政策への反映状況
(平成20年度以降の取組)
【概算要求】
 キーテクノロジー研究開発の推進(ナノテクノロジー・材料を中心とした融合新興分野研究開発)については、引き続き研究開発を推進するとともに、「元素戦略」において「革新的技術戦略」の「レアメタル代替材料・回収技術」に関する研究開発を新たに推進するため、2,758百万円を概算要求に盛り込んだ。(平成21年度予算案1,813百万円)
 リーディング・プロジェクト(次世代の電子顕微鏡要素技術の研究開発」については、引き続き研究開発を推進するため、150百万円を概算要求に盛り込んだ。なお、計画に基づき、平成21年度限りで事業を廃止することとしている。(平成21年度予算案105百万円)
 物質・材料研究機構における基礎研究及び基盤的研究開発等を着実に推進するため、運営費交付金として16,246百万円を、施設整備費補助金として337百万円を概算要求に盛り込んだ。(平成21年度予算案:運営費交付金15,049百万円、施設整備費補助金278百万円)
施策目標10-5 原子力分野の研究・開発・利用の推進
 (長期的なエネルギーの安定供給、原子力を利用する先端科学技術の発展、国民生活の質の向上に向けて、原子力の多様な可能性を最大限引き出す研究開発成果を得る。)
【主管課:研究開発局原子力計画課】
【関係課:研究振興局基礎基盤研究課量子放射線研究推進室、同研究振興戦略官、研究開発局開発企画課立地地域対策室、同原子力研究開発課、同研究開発戦略官】
評価結果の概要  高速増殖炉(FBR)サイクル技術については、研究開発体制が整備されるなど順調に進捗している。核融合技術については、幅広いアプローチ協定、ITER(イーター)協定が発効し、実施体制の整備や機器の調達活動等が進められている。
 大強度陽子加速器についても着実な進捗が見られ、平成20年12月には供用を開始できる見込みとなっている。RIビームファクトリー、重粒子線がん治療研究についても順調に進捗している。
 原子力分野の人材育成については、「原子力人材育成プログラム」を創設し、人材育成取組に対する支援を行った。原子力分野の国際協力については、第�W世代原子力システムに関する国際フォーラム(GIF)等により国際協力を進めた。電源立地対策については、補助金・交付金の交付等や原子力・エネルギーについて初等中等教育段階からの理解促進を図った。
評価結果の政策への反映状況
(平成20年度以降の取組)
【概算要求】
 FBRサイクル技術に関する研究開発を着実に実施するため、37,157百万円を概算要求した。(平成21年度予算案:34,687百万円)
 ITER計画及び幅広いアプローチを着実に推進するため、12,252百万円を概算要求した。(平成21年度予算案:11,088百万円)
 大強度陽子加速器施設(J-PARC)における研究推進のため、20,644百万円を概算要求した。(平成21年度予算案:14,760百万円)
 先進医療としての重粒子線がん治療や次世代照射システムの開発等を推進するため、5,357百万円を概算要求した。(平成21年度予算案:5,330百万円)
 RIビームファクトリー計画を着実に推進するために4,087百万円を概算要求した。(平成21年度予算案:3,216百万円)
 原子力人材育成プログラムを着実に実施するため、255百万円を概算要求した。(平成21年度予算案:240百万円)
 電源立地対策として財政上の措置を講じるため、7,923百万円を概算要求した。(平成21年度予算案:7,583百万円)
【機構・定員要求】
 高速増殖炉の実用化に係る研究開発及び産業界との連携の体制を強化するため、新たに課長補佐(高連増殖炉実用化研究・産業連携担当)及び連携係長(各1名)の新設を要求した。(課長補佐1名、連携係長1名措置)
 大強度陽子加速器施設(J-PARC)の利用開始等を受け、中性子利用推進体制を強化するため、新たに中性子利用推進係長(1名)の新設を要求した。(中性子利用推進係長1名措置)
 国際動向の変化を踏まえ、原子力に関する科学技術分野における人材育成・研究開発に関する国際的な連携協力等を総合的・戦略的に推進するため、新たに国際原子力専門官(1名)の新設を要求した。(措置なし)
施策目標10-6 宇宙・航空分野の研究・開発・利用の推進
 (宇宙・航空分野の研究・開発・利用を積極的に推進することにより、国民生活の豊かさと質の向上、人類社会の持続的な発展への貢献、先端技術開発による産業基盤の強化と経済発展、人類の知的好奇心の追求、及び我が国の総合的な安全保障への貢献を目指す。)
【主管課:研究開発局参事官(宇宙航空政策担当)】
【関係課:研究開発局宇宙開発利用課、同宇宙開発利用課宇宙利用推進室】
評価結果の概要  宇宙開発利用分野においては、平成19年度は、月周回衛星「かぐや」(SELENE)及び超高速インターネット衛星「きずな」(WINDS)が打ち上げられた。また、既に打ち上げられた人工衛星等の運用及び将来打上げ予定の人工衛星等の開発が概ね計画どおり行われた。国際宇宙ステーション計画については、日本実験棟「きぼう」の船内保管室が打ち上げられるとともに、船内実験室の打上げ準備作業を完了した。航空科学技術分野においては、国産旅客機の開発に関して、社会が求めている燃費・騒音面での先端技術の確立によって民間企業の事業化判断に貢献した。
評価結果の政策への反映状況
(平成20年度以降の取組)
【概算要求】
 平成20年5月に成立した宇宙基本法を踏まえ、国民生活の向上、産業の振興、人類社会の発展、国際協力等に資する宇宙開発利用を国家戦略のひとつとして積極的に推進するために、宇宙輸送システムの維持・発展に必要な経費、利用ニーズを踏まえた人工衛星システムの開発・運用に必要な経費、宇宙天文学等のための科学衛星の開発・運用に必要な経費、宇宙開発に関する国民・社会への理解増進と宇宙開発に関するニーズの開拓に必要な経費、並びに航空科学技術に係る先端的・基盤的研究を推進するために必要な経費として、2,438億円を概算要求に盛り込んだ。(平成21年度予算案:1,928億円)
施策目標10-7 新興・融合領域の研究開発の推進
 (幅広い応用可能性を有する新たな先端的融合領域を積極的に発掘し推進することにより、わが国の科学技術・学術の高度化・多様化、ひいては社会ニーズへの対応と経済社会の発展を図る。)
【主管課:研究振興局基礎基盤研究課】
【関係課:研究振興局基礎基盤研究課量子放射線研究推進室同基礎基盤研究課ナノテクノロジー・材料開発推進室】
評価結果の概要  平成19年度においては第3期科学技術基本計画等を踏まえ、幅広い応用可能性を有する新たな先端的融合領域における融合的研究等を積極的に推進した。
 なお、テラヘルツ光を利用した医療用システム及びその関連技術の開発及び高感度・高効率検出を可能とする検出技術の研究開発においては、医療用システム開発に必要な要素技術はすべて開発され、実用化に向けた開発の着手が期待される。
 また、最新の光技術を融合した診断・検診技術の研究開発においては、要素技術の開発に概ね成功し、一部においては臨床試験において技術の性能向上が確認されるなど、各達成目標がそれぞれ「概ね順調に進捗」だったことから、平成19年度の基本目標の達成度合いについては、「概ね順調に進捗」と判断できる。
評価結果の政策への反映状況
(平成20年度以降の取組)
【概算要求】
 平成20年度より開始した「光・量子科学研究拠点形成に向けた基盤技術開発」の継続的な実施を行うとともに、平成21年度においては当該事業のさらなる戦略的推進のために、課題を追加公募することとし、2,400百万円に拡充要求した。(平成21年度予算案1,721百万円)
 また、新興・融合分野の新たな発展を目指し、我が国の優れたナノテクノロジーの研究ポテンシャルを環境技術のブレイクスルーに活用するために「ナノテクノロジーを活用した環境技術開発」として1,000百万円(平成21年度予算案205百万円)を新規要求した。
【機構・定員要求】
 中性子利用推進体制の強化のため「中性子利用推進係長」1名を要求した。(係長1名措置)
施策目標10-8 安全・安心な社会の構築に資する科学技術の推進
 (豊かで安全・安心で快適な社会を実現するための研究開発等を行い、これらの成果を社会に還元する。)
【主管課:科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官(推進調整担当)安全・安心科学技術企画室】
【関係課:科学技術・学術政策局政策課資源室、同原子力安全課、同原子力安全課放射線規制室研究開発局地震・防災研究課、同地震・防災研究課防災科学技術推進室】
評価結果の概要  「首都直下地震防災・減災特別プロジェクト」、「地震調査研究推進」、「東南海・南海地震等海溝型地震に関する調査研究」、「地震・津波観測監視システム」、「高度即時的地震情報伝達網実用化プロジェクト」等のプロジェクトや、独立行政法人防災科学技術研究所における防災科学技術に関する基礎基盤研究について、概ね順調に進捗した。また、「安全・安心科学技術プロジェクト」において、関係省庁や空港等の現場と連携して危険物検知装置の開発が進んでいるなど、成果の社会実装に向けて、ニーズに立脚した研究開発等が順調に進捗した。
 今後の課題及び政策への反映方針として、地震調査研究については、現行の基本計画策定から10年程度経過し、一定の成果が上げられた一方で多くの課題が山積していることから、平成21年度以降は、地震調査研究推進本部が策定する新たな10年計画に基づいた調査観測・研究等を推進することが必要である。また「安全・安心科学技術プロジェクト」については、ニーズの高い分野について積極的に拡充する必要がある。さらに、事業の推進等に必要な人員を措置する必要がある。
評価結果の政策への反映状況
(平成20年度以降の取組)
【概算要求】
 沿岸海域に存在する活断層や、地震が発生した場合に社会的影響が大きい活断層等の調査観測・研究を推進する「活断層調査の総合的推進」実施のため、813百万円を概算要求に盛り込んだ。(平成21年度予算案:660百万円)
 地震計や水圧計等を備えたリアルタイム観測可能な海底ネットワークシステムを開発し、東南海地震の想定震源域である紀伊半島熊野灘沖に敷設する「地震・津波観測監視システム」実施のため、2,951百万円を概算要求に盛り込んだ。(平成21年度予算案:1,274百万円)
 東海・東南海・南海地震の想定震源域における海底稠密地震観測やシミュレーション研究等により、3つの地震が将来連動して発生する可能性等を評価する「東海・東南海・南海地震の連動性評価研究」実施のため、1,181百万円を概算要求に盛り込んだ。(平成21年度予算案:501百万円)
 日本海東縁部等のひずみ集中帯における海陸統合調査等により、ひずみ集中帯の地震発生メカニズム等の解明に資する「ひずみ集中帯の重点的調査観測・研究」実施のため、863百万円を概算要求に盛り込んだ。(平成21年度予算案:596百万円)
 首都直下地震による被害の軽減に資することを目的とした「首都直下地震防災・減災特別プロジェクト」実施のため、1,404百万円を概算要求に盛り込んだ。(平成21年度予算案:809百万円)
 防災研究による知見を活かした、防災教育の優れた取組を支援する等の「防災教育支援推進プログラム」実施のため、60百万円を概算要求に盛り込んだ。(平成21年度予算案:41百万円)
 地震調査研究推進本部の円滑な運営等のため、934百万円を概算要求に盛り込んだ。(平成21年度予算案:804百万円)
 独立行政法人防災科学技術研究所において、「火山観測基盤及び火山防災研究の強化」や「次世代型高性能気象レーダ(MPレーダ)を用いた集中豪雨予測研究等の推進」、「災害リスク情報プラットフォーム」等、防災分野における研究開発実施のため、11,395百万円を概算要求に盛り込んだ。(平成21年度予算案:8,351百万円)
 テロ対策等に係る研究開発と地域社会の安全・安心を確保するための研究開発を実施するとともに、関係研究者等のネットワークの構築を図る「安全・安心科学技術プロジェクト」実施のため、1,283百万円を概算要求に盛り込んだ。(平成21年度予算案:538百万円)
【機構・定員要求】
 防災科学技術の推進体制を強化するため、防災科学技術に関する国内外の連携を推進するための防災研究調整官1名、及び火山防災科学技術研究を確実に推進するための専門職1名を要求した。(防災研究調整官1名措置)
 放射線同位元素の使用等に係る廃棄物の処分対策を強化するため、埋設技術基準等の整備のための廃棄物対策専門官1名を要求した。(廃棄物対策専門官1名措置)

お問合せ先

大臣官房政策評価室

-- 登録:平成22年01月 --