政策目標9 基礎研究の充実及び研究の推進のための環境整備

 学術研究の振興や優れた研究成果の創出・活用の促進を図ることとともに、科学技術振興のための基盤を強化する。
施策目標9-1 学術研究の振興
 (研究者の自由な発想に基づく学術研究について、新しい知を生み続ける重厚な知的蓄積を形成することを目指し、萌芽段階からの多様な研究や時流に流されない普遍的な知の探求を長期的視点の下で振興する。)
【主管課:研究振興局振興企画課学術企画室】
【関係課:研究振興局学術研究助成課、同学術機関課】
評価結果の概要  大学・大学共同利用機関等における独創的・先端的基礎研究関連予算の着実な確保及び全国の大学研究者等による共同利用・共同研究体制の整備・充実により、当該研究を着実に推進した。
 さらに、学術研究に関する競争的資金(科学研究費補助金)については、研究種目の新設や2種目について新たに間接経費を措置するなど競争的環境の整備を進めるとともに、不正使用等への対応や審査・評価システムの改善等着実な制度改革を実施した。
 また、社会のニーズに基づく現代的な課題に対応した総合的・融合的な研究を振興し、優れた成果を創出するため、世界の諸地域を対象に、今後人的交流や国際貢献を進めるために必要な社会的・政策的ニーズに対応したプロジェクト研究を順調に実施した。
評価結果の政策への反映状況
(平成20年度以降の取組)
【概算要求】
 大学・大学共同利用機関等における独創的・先端的基礎研究について、一定の資源を確保し、全国の大学研究者等による共同利用・競争研究体制等により推進するため、1,320億円を概算要求に盛り込んだ。(平成21年度予算案:1,146億円) 
 科学研究費補助金においては、多様な学術研究を支える「基盤研究」や、革新的な学術研究を推進する「新学術領域研究」、若手研究者を育成・支援する「若手研究」の充実を図るなど、2,172億円を概算要求に盛り込んだ。(平成21年度予算案:1,970億円) 
 人文・社会科学分野において、政策的・社会的ニーズに対応した研究を推進するとともに、豊富な学術資料やデータ等を有する組織のポテンシャルを活用し、国公私立大学を通じた共同利用・共同研究拠点の整備等により、当該分野の振興を図るため、13億円を概算要求に盛り込んだ。(平成21年度予算案:8億円) 
【制度改正】
 国公私立大学を問わず大学の研究ポテンシャルを活用して、研究者が共同で研究を行う体制を整備するため、平成20年7月に、学校教育法施行規則の改正等により、国公私立大学を通じたシステムとして、新たに文部科学大臣による共同利用・共同研究拠点の認定制度を創設した。
 科学研究費補助金では、挑戦的な学術研究を支援するため「萌芽研究」の審査体制等を見直し、挑戦的で斬新なアイデアに着目する「挑戦的萌芽研究」として公募することにした。
施策目標9-2 研究成果の創出と産学官連携などによる社会還元のための仕組みの強化
 (世界最高水準の研究成果や、新たなブレークスルーをもたらす優れた研究成果を生み出すとともに、イノベーションを通じて研究成果を社会的価値・経済的価値として発現させ、社会・国民に還元する。)
【主管課:研究振興局研究環境・産業連携課】
【関係課:科学技術・学術政策局基盤政策課、研究振興局基礎基盤研究課】
評価結果の概要  戦略的創造研究推進事業(社会技術研究開発事業(公募分)を含む)においては、新たな研究領域の設定、間接経費の拡充のための予算の確保及びそれに伴う課題数の増加等競争的環境の整備を進めるとともに、「ヒト人工多能性細胞(iPS細胞)」の樹立という大きな成果を迅速に支援したこと等を踏まえ、順調に進捗した。
 また、大学知的財産本部の整備、産学官連携コーディネーターによる大学等への支援、大学等の研究成果を基にした共同研究や技術移転に係る研究開発の推進により、大学等における産学官連携、知的財産活動は着実に進展している。
評価結果の政策への反映状況
(平成20年度以降の取組)
【概算要求】
 今後のイノベーション創出につながる社会・経済ニーズに対応した新技術を創出するため、国が定めた戦略目標の達成に向けた目的志向型の基礎研究を推進する「戦略的創造研究推進事業」として、54,963百万円を概算要求に盛り込んだ。(平成21年度予算案:49,790百万円)
 独立行政法人科学技術振興機構の基礎研究等の成果から産業創出の基盤となりうる技術を選定した上で、産学官の研究者から構成される複数の研究チームによるコンソーシアムを形成し、チーム間で知財等の主要な情報の共用を図りながらシームレスな研究開発を効果的に推進する「戦略的イノベーション創出推進事業」を実施するため、2,800百万円を概算要求に盛り込んだ。(平成21年度予算案:550百万円)
<大学知的財産本部の整備、産学官連携コーディネーターによる大学等への支援について>
 イノベーション創出の原動力である大学等において、研究開発初期段階からの戦略的な知的財産の創造・保護・活用をはじめとする知的財産戦略等の持続的な展開を推進し、我が国の産学官連携活動全体の質の向上を図る「産学官連携戦略展開事業」を実施するため、4,940百万円を概算要求に盛り込んだ。(平成21年度予算案:2,967百万円)
 また、当該事業にて、産学官連携拠点の形成支援等について、4,940百万円の内数として概算要求に盛り込んだ。(平成21年度予算案:2,967百万円の内数)
<共同研究や技術移転に係る研究開発の推進について>
 平成21年度より、従来から実施している独立行政法人科学技術振興機構の企業化開発事業をより柔軟な形で適用した「研究成果最適支援展開事業」を実施し、研究開発課題の内容に応じた最適なファンディングを行い、大学等の研究成果のより効果的・効率的な社会還元を図るため、5,000百万円を概算要求に盛り込んだ。(平成21年度予算案:3,200百万円)
 「技術移転支援センター事業」において、大学等の研究成果について、海外特許出願を支援するとともに、目利き人材の育成、大学見本市の開催等により大学等の技術移転活動を総合的に支援するため、3,170百万円を概算要求に盛り込んだ。(平成21年度予算案:2,557百万円)
【その他】
 平成19年度に終了した「大学知的財産本部整備事業」についての事後評価結果報告書を科学技術・学術審議会技術・研究基盤部会産学官連携推進委員会大学知的財産本部審査・評価小委員会において取りまとめた。
施策目標9-3 科学技術振興のための基盤の強化
 (先端的な研究施設・設備・機器、知的基盤等は、独創的・先端的な基礎研究からイノベーション創出に至るまでの科学技術活動全般を支える基盤として不可欠なものであることから、その整備や効果的な利用を促進する。)
【主管課:研究振興局研究環境・産業連携課】
【関係課:研究振興局情報課、同基礎基盤研究課同基礎基盤研究科ナノテクノロジー・材料開発推進室、同ライフサイエンス課】
評価結果の概要  公的研究試験機関等における知的基盤の整備については、知的基盤整備計画の戦略目標に対して順調に進捗している。
 また、大学・独立行政法人等が有する先端研究施設の共用については、産業利用が増加するなど概ね順調に進捗した。特に、特定放射光施設(Spring-8)については、共用の促進により、利用者数、利用研究課題数とも順調に増加するとともに、次世代スーパーコンピュータの共用については、基本的な方針に対する意見募集をするなど概ね順調に進捗した。
 さらに、次世代スーパーコンピュータプロジェクトのハードウェアの設計、施設整備、ソフトウェアの研究開発については、概ね計画通りに進捗している。
 X線自由電子レーザー装置の開発・整備については、加速器製作と装置収納建屋等の整備を昨年度に引き続き実施するなど概ね計画通りに進捗している。
 特定放射光施設(大型放射光施設(SPring-8))については、平成19年度には施設利用者等の発表論文数(査読あり原著論文等)は432報であり、利用体制の整備を充実することによって、研究成果の一層の質的・量的向上を達成できる見込みである。
評価結果の政策への反映状況
(平成20年度以降の取組)
 大学・独立行政法人等が有する先端研究開発施設の共用を促進するために平成19年度に委託事業として開始した「先端研究施設共用イノベーション創出事業【産業戦略利用】」を廃止して、機関の主体的取組かつ弾力的運用を推進する「研究開発基盤整備補助【先端研究施設共用促進事業】」を創設する。このため、6,391百万円を概算要求に盛り込んだ。(平成21年度予算案:1,691百万円)
 次世代スーパーコンピュータの開発・整備及びこれを最大限利活用するためのソフトウェアの開発・普及等を総合的に推進するため271.55億円を概算要求に盛り込んだ。(平成21年度予算案190億円)
 また、次世代スーパーコンピュータの利用促進に向けた戦略的な利用の実行可能性調査の実施及びフォーラムを開催するため1.6億円を概算要求に盛り込んだ。(平成21年度予算案0.3億円)
○X線自由電子レーザー
 国家基幹技術としてX線自由電子レーザーの開発利用を引き続き推進するとともに、X線自由電子レーザーの建屋完成に伴う維持・管理等のために、13,512百万円を概算要求に盛り込んだ。(平成21年度予算案:10,353百万円) 
○特定放射光施設(大型放射光施設(SPring-8))
 基礎研究から応用研究、さらに産業利用まで様々な分野で利用されているSPring-8の共用に係る施設整備費や運転経費、共用支援要員の雇用経費などを支援し、利用研究成果の一層の質的・量的向上を促進するために、10,230百万円を概算要求に盛り込んだ。(平成21年度予算案:8,664百万円)
【機構・定員要求】
 先端研究施設の共用を促進するための体制を強化するため、係長(1名)の新設を要求した。(係長1名措置)
 計算科学技術推進体制の強化に伴い、計算科学技術推進室室長補佐(1名)、共用係長(1名)の新設を要求した。(計算科学技術推進室室長補佐1名、共用係長1名措置)
【その他】
 平成20年度に「X線自由電子レーザー計画 中間評価報告書」を科学技術・学術審議会において取りまとめた。

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大臣官房政策評価室

-- 登録:平成22年01月 --