政策目標4 科学技術の戦略的重点化

未来を切り拓く質の高い基礎研究を推進するとともに、国家的・社会的課題に対応する研究開発の重点化した推進と新興領域・融合領域への先見性、機動性をもった対応を実現する。

施策目標4‐1 基礎研究の推進

(研究者の自由な発想に基づく基礎研究を幅広く、着実に、かつ持続的に推進し、人類の知的資産の拡充に貢献するとともに、世界最高水準の研究成果や、新たなブレークスルーをもたらす優れた研究成果を生み出す。)
【主管課:研究振興局基礎基盤研究課】
【関係課:研究振興局学術研究助成課、同学術機関課】

評価結果の概要  平成18年度の基本目標の達成度合いについては、大学・大学共同利用機関等における基礎研究関連予算(競争的資金は含まない)を着実に確保するとともに、競争的な研究開発環境構築についても、一定の効果をあげてきたといえる。
 基礎研究を推進するための競争的資金(科学研究費補助金及び戦略的創造研究推進事業)については、厳しい財政状況のもと、対前年度比19億円増となる2,375億円を措置し、平成12年度比1.35倍の拡充となり、順調に増加している。
 競争的資金の制度改革については、間接経費を拡充するとともに、研究費の不正使用等への対応として、各大学に対し通知を発出し、納品検査の適正な実施など機関管理の徹底を求めるなど、順調に進捗している。
評価結果の政策への反映状況

(平成19年度以降の取組)
【概算要求】
 大学・大学共同利用機関等における独創的・先端的基礎研究の推進を着実に推進するため所要額を計上した。

(平成20年度予算案額:1,187億円)
 基礎研究を推進するための競争的資金(科学研究費補助金及び戦略的創造研究推進事業)として、2,714億円を概算要求に盛り込んだ。対前年度比33億円、1.4パーセント増を計上した。

(平成20年度予算案額:2,420億円)
 科学研究費補助金では、間接経費の拡充による研究環境の整備、挑戦的研究や若手研究者への投資の拡大、多様性を確保する基盤研究の充実により、革新的な学術研究の促進を図るため、2,175億円を概算要求に盛り込んだ。

(平成20年度予算案額:1,932億円)
 科学技術振興機構が実施する戦略的創造研究推進事業では、若手研究者育成の強化や間接経費の拡充を図り、539億円を概算要求に盛り込んだ。

(平成20年度予算案額:488億円)
【制度改革】
 科学研究費補助金及び戦略的創造研究推進事業では、平成20年度の申請以降、当該研究者の所属大学等の機関管理体制整備の実施状況報告書の提出を義務づけ、採択の要件とするなど、不正使用等を防止するための配分機関による経費管理体制等に関するチェック機能の強化に努めた。
 科学研究費補助金では、若手研究者の支援を拡充するため、「若手研究(B)」・「若手研究(スタートアップ)」に、新たに間接経費30パーセントを措置した。
 科学技術振興機構が実施する戦略的創造研究推進事業では、外国人による事前評価を導入し、一層の評価の質の向上を図った。また、研究活動状況を調査する体制整備を充実し、研究費の適正かつ効率的な使用に努めた。
 さらに、「さきがけ」の拡充や博士課程学生RA活用促進などの若手研究者育成強化や、男女共同参画に取り組む「出産子育て等支援制度」の新設、間接経費の拡充など制度改革に努めた。
【定員要求】
 科学研究費補助金事業の審査・評価体制の高度化のため、専門職(1名)の新設を要求することとした。
(専門職1名措置)

施策目標4‐2 ライフサイエンス分野の研究開発の重点的推進

(ライフサイエンス研究を戦略的・重点的に推進することにより、革新的な創薬・医療技術及び食料や環境問題への対応のための基盤技術を開発し、ゲノム情報を活用した創薬や個人にあった医療等を実現し、活力ある経済社会の創造に資する。)
【主管課:研究振興局ライフサイエンス課】
【関係課:研究振興局基礎基盤研究課、同研究振興戦略官付】

評価結果の概要  「個人の遺伝情報に応じた医療の実現プロジェクト
(平成15年度~平成19年度)」においては、平成15年にサンプル及び臨床情報の収集を開始しており、平成19年度末までの30万症例規模のバイオバンクの構築に向け、これまでのところ目標値を達成していることから、概ね順調に進捗している。
 各目標に関して、
 「生命現象の解明に必要な基礎的知見の蓄積を図る。」
 (計画以上に進捗)
 「画期的な創薬の実現に資する知見の蓄積、技術の開発を図る。」
 (順調に進捗)
 「ライフサイエンス研究に必要不可欠な研究基盤を整備する。」
 (順調に進捗)
 「先端的医療の実現に資する知見の蓄積、技術の開発を図る。」
 (順調に進捗)
 「社会の安全・安心の確保に必要な知見の蓄積、人材の養成等を図る。」
 (順調に進捗)
 「生物学、医学等と数学や化学、情報学等を融合し、新たな医療技術や診断技術等の実現に資する知見の蓄積、技術の開発、また、それに必要な基盤の整備を図る。」
 (順調に進捗)
 「国家的・社会的要請の高い脳、ゲノム、免疫・アレルギー研究やバイオインフォマティクス研究等の分野において、基礎的・先導的な研究を推進」
 (計画以上に進捗)
となっており、施策目標4−2は、概ね順調に進捗している。
評価結果の政策への反映状況

(平成19年度以降の取組)
【概算要求】
 平成20年度においては、「個人の遺伝情報に応じた医療の実現プロジェクト(第2期)」として、オーダーメイド医療の実現化を目指し、世界最大規模のバンクに集められた試料・一塩基多型(SNP)解析データを活用し、疾患関連遺伝子研究を推進するため、2,794百万円を概算要求した。
(平成20年度予算案額:2,794百万円)
 これを含め、事業を着実に実施するため、ライフサイエンス関係予算として、94,297百万円を概算要求に盛り込んだ。
(平成20年度予算案額:70,784百万円)

施策目標4‐3 情報通信分野の研究開発の重点的推進

(先端的な情報科学技術の研究開発及び研究開発に関する情報化を推進する。)
【主管課:研究振興局情報課】

評価結果の概要  平成18年度においては、第3期科学技術基本計画、分野別推進戦略、及び情報科学技術に関する研究開発の推進方策を踏まえ下記のような取組みを行った。
  • 次世代スーパーコンピュータプロジェクト(国家基幹技術)
  • 学術情報ネットワークの整備
  • ITプログラム(新世紀重点創生プラン)
  • 次世代IT基盤構築のための研究開発(キーテクノロジー研究開発の推進)
 等
 次世代スーパーコンピュータプロジェクトのシステムの設計については、若干遅れが見られているものの、ほぼ順調に開発が進められている。
 ソフトウェアの研究開発に関しては、次世代ナノ統合シミュレーションの開発に着手し、次世代生命体統合シミュレーションについては、平成18年8月に、理化学研究所和光研究所を研究開発拠点とすることに決定した。
 グリッドミドルウェアに関しては、国立情報学研究所を中核拠点とし、β版の開発、公開を行い第1版に向けた開発を継続しており、順調に進捗している。
 学術情報ネットワークの整備については、スーパーSINETのノード(接続拠点)を3機関増やして、合計36機関とし拠点数を順調に増加させている。
 ITプログラム(新世紀重点創生プラン)や次世代IT基盤構築のための研究開発(キーテクノロジー研究開発の推進)等については、研究開発の成果が十分でており、成果の一部を製品化するなど順調に進捗している。
評価結果の政策への反映状況

(平成19年度以降の取組)
【概算要求】
 平成20年度においては、
  • 次世代スーパーコンピュータについては、施設(計算機棟、研究棟)の整備の本格化、システム開発について詳細設計の本格化、アプリケーションソフトウェアの開発推進に必要な経費145億円
  • 学術情報ネットワークの整備については、引き続き、最先端学術情報基盤(サイバー・サイエンス・インフラストラクチャ)の構築に向けて、より信頼性・安定性が高く、柔軟かつ効率的な回線利用が可能な次世代学術情報ネットワーク(SINET3)を運用するために必要な経費(大学共同利用機関法人情報システム研究機構運営費交付金の内数)
  • 次世代IT基盤構築のための研究開発については、戦略重点科学技術を中心として、研究開発ポテンシャルを有する大学等の研究拠点を中心とする産学官連携体制により、研究開発を推進するための経費40億円を概算要求に盛り込んだ。

施策目標4‐4 環境分野の研究開発の重点的開発

(地球温暖化、水循環、資源循環、有害化学物質等の地球環境問題は、我々人類の社会生活と密接な関連を有し、重大な影響を及ぼす恐れがあることから、総合科学技術会議の環境分野推進戦略や地球観測の推進戦略を受け、その影響を科学的に解明し、適切な対応を図るための研究開発成果を生み出す。)
【主管課:研究開発局海洋地球課地球・環境科学技術推進室】
【関係課:研究開発局海洋地球課、同宇宙開発利用課】

評価結果の概要  達成目標「人工衛星、ブイ等を活用し大気、海洋、陸域における観測を行うとともに南極域における研究・観測を行うことで、地球温暖化等の地球規模の環境変動等の解明を行う。
 更に、地球観測サミットにおいて承認された「全球地球観測システム(GEOSS)10年実施計画」を推進するため、平成17年度より10年間にわたり、地球観測に係る体制強化を図る。」、「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書をはじめ、地球温暖化対応のための政策決定に貢献する高精度予測モデルの開発を行う(19年度・23年度)とともに、シミュレーション技術を高度化し、短期から長期にわたる気候変動予測について、極端現象を含めて確度の高い予測情報を創出る。」、「「持続型経済社会」の実現に向け、都市・地域から排出される廃棄物・バイオマスの無害化処理と再資源化に関するプロセス技術開発を行うとともに、その実用化と普及を目指して、影響・安全性評価及び社会システム設計に関する研究開発を産学官の連携・協力を推進する。」までの各事項について、各達成目標とも概ね順調に進められていることから、目標については概ね順調に進捗していると判断する。
評価結果の政策への反映状況

(平成19年度以降の取組)
【概算要求】
 人工衛星からの地球観測について、引き続き「だいち」の運用を行い、GOSAT、GPM/DPR等の開発等を推進するため、18,164百万円を概算要求に盛り込んだ。
(平成20年度予算案額:13,643百万円)
 ARGO計画について、国際的な枠組みのもとに、国際的な目標の常時3,000台のフロートによる地球規模での海洋観測システムの構築に引き続き貢献する。
 南極地域観測第7期計画(平成18~21年度)に基づき、南極域での環境変化の把握を目的とした多項目の観測を引き続き行うため、2,474百万円を概算要求に盛り込んだ。平成21年度の就役を目指し、「しらせ」後継船の建造とヘリコプター後継機の製造を着実に行うため、12,740百万円を概算要求に盛り込んだ。
(平成20年度予算案額:14,511百万円)
 「地球観測システム構築推進プラン」について、さらに総合的に観測システムを構築する観点から、全球規模で輸送される大気中に含まれる人為起源および自然起源の微量成分や微粒子の対流圏中の大気成分変化を観測するシステムの構築の実現に資する観測研究および技術開発を目指して、573百万円を概算要求に盛り込んだ。
(平成20年度予算案額:373百万円)
 21世紀及びそれ以降における確度の高い高解像度の予測情報を国内外の地球温暖化対応に関する検討の場に提供し、IPCC第5次評価報告書(2013年頃予定)への寄与をはじめ、気候変動に対する政策検討、技術的対策の立案に資する観点から、平成18年度に終了する「人・自然・地球共生プロジェクト」における「日本モデル」を発展的に継承した革新的なプログラムを、平成19年度に立ち上げる必要があるため、2,813百万円を概算要求に盛り込んだ。
(平成20年度予算案額:2,232百万円)

施策目標4‐5 ナノテクノロジー・材料分野の研究開発の重点的推進

(ナノテクノロジーに関して、我が国における産学官の英知を結集した戦略的な取組みを行うと共に、物質・材料に関して、重点的に投資を行うことにより、総合的かつ戦略的な研究開発を進め、世界に先駆け技術革新につながる成果を創出する。)
【主管課:研究振興局基礎基盤研究課ナノテクノロジー・材料開発推進室】
【関係課:科学技術・学術政策局計画官付、研究振興局基礎基盤研究課量子放射線研究推進室、研究開発局研究開発戦略官付】

評価結果の概要  平成18年度においては、科学技術基本計画及び分野別推進戦略等を踏まえ、主に下記のような取組を行った。
  • ナノテクノロジー総合支援プロジェクト
  • キーテクノロジー研究開発の推進「ナノテクノロジー・材料を中心とした融合新興分野研究開発」
  • リーディング・プロジェクト
  • 独立行政法人物質・材料研究機構による研究開発
  • X線自由電子レーザーの開発利用(国家基幹技術)
 ナノテクノロジー総合支援プロジェクトについては、平成18年度には、700件を超える支援を実施し、また1,500件以上のプロジェクト関連論文・研究発表を生み出しており、概ね順調に進捗している。
 キーテクノロジー研究開発の推進「ナノテクノロジー・材料を中心とした融合新興分野研究開発」やリーディング・プロジェクト等の各プロジェクトについては、研究開発の後半を迎えるものは成果が出てきており、研究開発に着手したものは、概ね計画通りに進捗している。
 独立行政法人物質・材料研究機構による研究開発については、平成13年度から17年度までの第1期中期目標・計画期間を終え、平成18年度は、第2期中期目標・計画期間の実施プロジェクトに着手して、概ね計画通りに進捗している。
 X線自由電子レーザーの開発利用については、装置開発・施設整備、利用研究に関して、概ね計画通りに進捗している。
 平成18年度の基本目標の達成度合いについては、上記の各達成目標の達成度合いが概ね順調であったことから、基本目標4−5については、一定の成果が上がっており、概ね順調と判断できる。
評価結果の政策への反映状況

(平成19年度以降の取組)
【概算要求】
 先端的な機能を有する研究機関の施設・設備を共用化することで研究環境の整備を図り、イノベーションの創出を目指す「先端研究施設共用イノベーション創出事業(ナノテクノロジー・ネットワーク)」を新たに開始して、ナノテクノロジー関連の研究施設の共用化を推進するとともに、さらなる推進を図るため、2,160百万円を概算要求に盛り込んだ。
(平成20年度予算案額:1,727百万円)
 「ナノテクノロジー・材料を中心とした融合新興分野研究開発」について、物質・材料の特性・機能を決める元素の役割を解明し利用する「元素戦略」を新たに開始するとともに、既存の研究も引き続き推進するため、2,440百万円を概算要求に盛り込んだ。
(平成20年度予算案額:2,000百万円)
 「次世代の電子顕微鏡要素技術の開発」の一層の推進を図るため、400百万円を概算要求に盛り込んだ。
(平成20年度予算案額:350百万円)
 物質・材料研究機構における基礎研究及び基盤的研究開発等を着実に推進するため、運営費交付金として、17,207百万円を、施設整備費補助金として、465百万円を、それぞれ概算要求に盛り込んだ。
(平成20年度予算案額:運営費交付金15,749百万円、
施設整備費補助金320百万円)
 国家基幹技術としてX線自由電子レーザーの開発利用を引き続き推進するため、17,757百万円を概算要求に盛り込んだ。
(平成20年度予算案額:11,000百万円)

施策目標4‐6 原子力分野の研究・開発・利用の推進

(長期的なエネルギーの安定供給、原子力を利用する先端科学技術の発展、国民生活の質の向上に向けて、原子力の多様な可能性を最大限引き出す研究開発成果を得る。)
【主管課:研究開発局原子力計画課】
【関係課:研究振興局基礎基盤研究課量子放射線研究推進室、同研究振興戦略官付、研究開発局開発企画課立地地域対策室、同原子力研究開発課、同研究開発戦略官付】

評価結果の概要  高速増殖炉(FBR)サイクル技術について、平成18年10月に、今後のFBRサイクル技術の研究開発の進め方等「高速増殖炉サイクルの研究開発方針について」がとりまとめられた。
 また、研究開発から実証・実用化段階への円滑な移行を図るため、経済産業省、文部科学省、電気事業者、メーカー、日本原子力研究開発機構からなる五者協議会を設置し、所要の検討を進め、平成18年12月には、中核メーカー1社に権限やエンジニアリング機能等を集中する方針を決定した。
 さらに、高速増殖原型炉「もんじゅ」については、運転再開に向けて改造工事、工事確認試験を実施(工事進捗率:94パーセント
(平成18年度末))するなど、2025年頃に実証炉を建設する等のFBR実証ステップおよび研究開発プロセスは順調に進捗している。
 ITER(イーター)計画については、平成18年11月に、ITER(イーター)協定に署名し、ITER(イーター)機構が暫定的に活動を開始した。
 また、平成19年2月には幅広いアプローチ(ITER(イーター)計画に並行して補完的に取り組むべき研究開発プロジェクト)協定についても署名を行うなど、ITER(イーター)の建設・運転および幅広いアプローチの推進に向けた取組が順調に進捗している。
 量子ビームテクノロジーを利用した最先端の大型研究施設として、大強度陽子加速器(J-PARC)の整備が進んでいる。
 また、重粒子線がん治療患者数が増えているところであり、放射線医学総合研究所における医療利用が着実に進んでいる。
 長期的な原子力研究開発利用を円滑に進めるため、日本原子力研究開発機構による原子力・エネルギー技術者への講習を実施した。
 また、東京大学大学院原子力専攻をはじめ、原子力に関する教育を行っている大学との連携大学院制度により、原子力分野の人材を育成しており、概ね順調に進捗している。
 わが国の原子力開発利用を円滑に進めるため、第4世代原子力システムに関する国際フォーラム(GIF)等により、国際協力を進めており、概ね順調に進捗している。
 電源立地対策として、発電の用に供する施設の設置及び運転の円滑化に資するため等の財政上の措置を講じるため、各立地自治体等からの申請に基づく補助金・交付金の交付等を行い、概ね順調に進捗している。
評価結果の政策への反映状況

(平成19年度以降の取組)
【概算要求】
 「FBRサイクル技術」を着実に実施するため、30,094百万円を概算要求に盛り込んだ。
(平成20年度予算案額:28,996百万円)
 平成19年6月に幅広いアプローチ協定、平成19年10月にITER(イーター)協定が発効し、本格的に活動を開始した。
 ITER(イーター)計画及び幅広いアプローチを着実に推進するため、12,158百万円を概算要求に盛り込んだ。
(平成20年度予算案額:10,298百万円)
 大強度陽子加速器(J-PARC)計画のため、26,200百万円(高エネ機構分含む)を概算要求に盛り込んだ。
(平成20年度予算案額:189億円)
 高度先進医療としての重粒子線がん治療を進めるとともに、膵がん等の難治がんの治療法開発に向けた臨床試験の展開や、より効果的・効率的な治療を目指した最適な照射法(次世代照射システム)の開発研究などを推進するために、5,979百万円を概算要求した。
(平成20年度予算案額:5,797百万円)
 経済産業省と連携して、長期的な原子力の研究・開発・利用を円滑に進めるため、大学等の原子力関係学部等の取組への支援や、産業界のニーズを踏まえたコアカリキュラムの整備を実施するため、242百万円を概算要求した。
(平成20年度予算案額:216百万円)
 着実に国際協力を推進するための経費として、効率化を図りつつ、20百万円を概算要求した。
(平成20年度予算案額:19百万円)
 電源立地対策として財政上の措置を講じるため、7,724百万円を概算要求した。
(平成20年度予算案額:7,724百万円)

施策目標4‐7 宇宙・航空分野の研究・開発・利用の推進

(宇宙・航空分野の研究・開発・利用を積極的に推進することにより、国民生活の豊かさと質の向上、人類社会の持続的な発展への貢献、先端技術開発による産業基盤の強化と経済発展、人類の知的好奇心の追及、及び我が国の総合的な安全保障への貢献を目指す。)
【主管課:研究開発局参事官(宇宙航空政策担当)】
【関係課:研究開発局宇宙開発利用課】

評価結果の概要  輸送系技術については、H−ⅡAロケットの打上げについて、目標となる成功率90パーセントを超えるとともに、基幹輸送系の維持、多様な輸送手段の確保、更なる信頼性の向上、及び将来輸送系に必要な技術基盤の確立に向けた研究開発が概ね計画どおり実施された。
 人工衛星については、既に打ち上げた人工衛星等の運用及び将来打上げ予定の人工衛星等の開発が概ね計画どおり行われた。
 特に、陸域観測技術衛星「だいち」が災害時に緊急観測等を行い、宇宙開発利用の成果を国民・社会に還元するとともに、宇宙科学の分野においても、太陽観測衛星「ひので」、赤外線天文衛星「あかり」等が学術的に意義の大きな成果を挙げ、高く評価された。
 また、宇宙分野の広報・普及活動も前年度を上回る規模で実施され、国民・社会からの理解の増進に貢献した。
 さらに、航空分野においては、社会からの要請に応える先端的、基盤的な研究開発を推進した。
評価結果の政策への反映状況

(平成19年度以降の取組)
【概算要求】
 引き続き、宇宙輸送システムの維持・発展に必要な経費、利用ニーズを踏まえた人工衛星システムの開発・運用に必要な経費、宇宙天文学等のための科学衛星の開発・運用に必要な経費、宇宙開発に関する国民・社会への理解増進と宇宙開発に関するニーズの開拓に必要な経費、並びに航空分野における先端的、基盤的な研究開発に必要な経費として、2,355億円の概算要求に盛り込んだ。
(平成20年度予算案額:1,877億円)
【機構・定員要求】
 宇宙開発の官民連携事務の実施体制の強化を図るため、宇宙開発連携推進係長の新設を要求することとした。
(係長1名措置)
 また、利用ニーズを踏まえた災害監視衛星の研究開発等を推進するため、災害監視・危機管理担当補佐への振替え及び災害監視・危機管理係長の新設を要求することとした。
(担当補佐・係長2名措置)

施策目標4‐8 海洋分野の研究開発の推進

(地球全表面の7割を占め、多様な資源・空間を有する海洋に関する調査研究を行うことで、気候変動、地殻変動等の地球変動現象を解明し、国民生活の質の向上など経済社会への貢献を目指す。)
【主管課:研究開発局海洋地球課】

評価結果の概要  国民生活や経済活動に密接な関係がある海洋に関する調査研究・技術開発を引き続き行った。主な成果を挙げれば、地球環境観測・予測分野では、アルゴフロートを始めとする観測網の整備を行った。
 また、気候変動に大きな影響を及ぼすインド洋ダイポールモードの予測に成功した。
 地球内部ダイナミクス分野では、巨大地震の発生域であるプレート沈み込み帯の地殻構造の解析を進展させた。
 海洋・極限環境生物分野では、極限環境に生息する生物の研究のための手法を発展させ、特殊な環境に生息する生物の機構を解明した。
 基盤技術開発分野では、自律型無人探査機の海域試験を行い、詳細なデータの取得が確認できた。
 深海地球ドリリング計画では、地球深部探査船「ちきゅう」の掘削試験を行い、掘削に必要な技術の蓄積が行われた。
 以上のように、各分野とも順調に進捗していると評価できる。
 今後も地球環境変動の解明に向けて、調査研究・技術開発を推進することが必要である。
 特に、第3期科学技術基本計画
(平成18年3月28日閣議決定)において、重点推進分野に位置づけられる環境分野の研究を、引き続き着実に推進するとともに、推進分野に位置づけられるフロンティア分野について、国家基幹技術「海洋地球観測探査システム」に位置づけられる次世代型深海探査技術開発、深海底ライザー掘削技術の要素技術開発を、平成19年度より開始したところであり、着実に推進する必要がある。
評価結果の政策への反映状況

(平成19年度以降の取組)
【概算要求】
 評価の結果を踏まえ、着実に推進すべきとされた施策を中心に、選択と集中によるメリハリのある予算要求を行った。
 環境分野のうち、戦略重点科学技術に位置づけられる施策について、重点的に予算配分を実施し、合計3,351百万円を計上している。
 また、国家基幹技術「海洋地球観測探査システム」に位置づけられる次世代海洋探査技術の開発については、「次世代型深海探査技術の開発」398百万円、「「ちきゅう」による世界最高の深海底ライザー掘削技術の開発」6,408百万円を計上している。 (予算額については、平成20年度予算案額の運営費交付金中の推計値)
【研究開発の推進】
 目標達成に向けた研究開発を引き続き推進する。
 特に、戦略重点科学技術に位置づけられた施策、中でも戦略重点科学技術のうち、国家基幹技術「海洋地球観測探査システム」に位置づけられるものを重点的に実施する。
 「次世代型深海探査技術の開発」では、昨年度に引き続き、要素技術開発を進めるほか、「ちきゅう」については、前年度より開始された統合国際深海掘削計画(IODP)の枠組みにおける国際運用を推進しながら、「ちきゅう」による世界最高の深海底ライザー掘削技術の開発」を着実に推進する。
 さらに、国際アルゴ計画への参加など、国際的な枠組みにおける研究開発も推進する。

施策目標4‐9 新興・融合領域の研究開発の推進

(幅広い応用可能性を有する新たな先端的融合領域や人文・社会分野における融合的な研究を積極的に発掘し推進することにより、わが国の科学技術・学術の高度化・多様化、ひいては社会ニーズへの対応と経済社会の発展を図る。)
【主管課:研究振興局・基礎基盤研究課】
【関係課:研究振興局・学術企画室】

評価結果の概要  新興・融合分野とは、今までにない全く新しい研究領域と異なる分野間の融合領域であり、これらの領域を開拓することで今まで解決できなかった課題に対応し、イノベーションを促進する可能性があること等から、その重要性が増しつつある分野である。
 平成18年度においては第3期科学技術基本計画等を踏まえ、
  • がんの診断や様々な製品の非破壊検査等、幅広い産業分野で利用が期待されているテラヘルツ光の本格的実用化
  • 我が国との関係で重要な世界の諸地域を対象に、国際貢献等の推進に必要な地域研究の推進
など、幅広い応用可能性を有する新たな先端的融合領域や人文・社会分野における融合的研究等を積極的に推進した。
 また、各達成目標が各判断基準の結果の平均から判断した結果、それぞれ概ね順調に進捗だったことから、平成18年度の基本目標の達成度合いについては、「概ね順調に進捗」と判断できる。
評価結果の政策への反映状況

(平成19年度以降の取組)
【概算要求】
 光・量子科学技術分野の複数の研究機関を中核として、産業界や光及び量子ビームの利用研究を行っている他分野の研究者等も参画したネットワーク型の研究開発拠点を構築し、光・量子科学技術分野のシーズと他分野や産業界のニーズとを融合した、最先端の光源・ビーム源・ビーム制御技術・計測法等の研究開発や人材育成等を効果的・効率的に実施する「光・量子科学研究拠点形成に向けた基盤技術開発」として、概算要求額1,900百万円を新規要求した。
(平成20年度予算案額:1,500百万円)
 人文・社会科学分野において、政策的・社会的ニーズに対応した研究を推進するとともに、豊富な学術資料やデータ等を有する組織のポテンシャルを活用し、また全国共同利用・共同研究拠点の整備を私立大学等にも拡大することにより、当該分野の振興を図ることが必要なので、平成20年度概算要求額1,131百万円を従来の施策より拡充要求をした。
(平成20年度予算案額:601百万円)
【定員要求】
 光科学技術分野の研究開発に係る推進体制の強化のために、光科学技術係長(1名)の新設を要求することとした。
(光科学技術係長1名措置)

施策目標4‐10 安全・安心な社会の構築に資する科学技術の推進

(豊かで安全・安心で快適な社会を実現するための研究開発等を行い、これらの成果を社会に還元する。)
【主管課:科学技術・学術政策局政策課安全・安心科学技術企画室】
【関係課:研究開発局地震・防災研究課、同防災科学技術推進室】

評価結果の概要  自然災害に強い防災科学技術基盤を確立するため、「地震・津波観測監視システム」の構築
(平成18~21年度)を新規に開始したほか、「地震調査研究推進」
(平成17年度~)、「東南海・南海等海溝型地震に関する調査研究」
(平成15~20年度)、「高度即時的地震情報伝達網実用化プロジェクト」
(平成15~19年度)、「大都市大震災軽減化特別プロジェクト」
(平成14~18年度)、「防災研究成果活用による総合防災研究成果普及事業」
(平成16~18年度)を継続して実施しており、地震及び火山に関する調査研究や、災害発生時の被害軽減を目指した防災科学技術に関する研究開発の推進が概ね順調に進捗している。
 「安全・安心科学技術に関する研究開発の推進方策について」報告書をとりまとめ、「安全・安心科学技術プロジェクト」を平成19年度から事業化するとともに、安全・安心な社会の構築に資する研究開発に支援を行うなど、文部科学省の持つ多様な科学技術的知見の現場における活用を図るための基盤となる体制整備と実際の活用に向けた研究開発が概ね順調に進捗している。
評価結果の政策への反映状況

(平成19年度以降の取組)
【概算要求】
 地震計、水圧計等を備えた稠密な海底ネットワークシステムを紀伊半島熊野灘沖に展開するための技術開発を行う「地震・津波観測監視システム」を実施するため、1,868百万円を概算要求に盛り込んだ。
(平成20年度予算案額:1,406百万円)
 地震により強い揺れに見舞われる可能性が高い地域において、重点的調査観測等を行う「地震調査研究推進」を実施するため、624百万円を概算要求に盛り込んだ。
(平成20年度予算案額:609百万円)
 首都直下地震による被害の大幅な軽減に資することを目的とした「首都直下地震防災・減災特別プロジェクト」を実施するため、1,839百万円を概算要求に盛り込んだ。
(平成20年度予算案額:1,102百万円)
 近年地震が頻発している「ひずみ集中帯」について、活断層・活褶曲等の活構造の解明を行う「ひずみ集中帯の重点的調査観測・研究」を実施するため、新たに1,300百万円を概算要求に盛り込んだ。
(平成20年予算案額:401百万円)
 将来連動して発生する可能性が高いとされる東海・東南海・南海地震について、海底稠密地震・津波・地殻変動観測やシミュレーション研究等を行う「東海・東南海・南海地震の連動性評価研究」を実施するため、新たに1,200百万円を概算要求に盛り込んだ。
(平成20年度予算案額:495百万円)
 防災研究による知見を活かした、防災教育の優れた取組を選定・支援するモデル地域事業等を行う「防災教育支援推進プログラム」を実施するため、新たに300百万円を概算要求に盛り込んだ。
(平成20年度予算案額:30百万円)
 独立行政法人防災科学技術研究所において、「実大三次元震動破壊実験施設(E−ディフェンス)を利用した耐震実験研究」や「災害リスク情報プラットフォーム」等、防災分野における研究開発を実施するため、12,311百万円を概算要求に盛り込んだ。
(平成20年度予算案額:8,469百万円)
 テロ対策等に係る研究開発と地域社会の安全・安心を確保するための研究開発を実施するとともに、関係研究者等のネットワークの構築を図る「安全・安心科学技術プロジェクト」実施のため、1,001百万円を概算要求に盛り込んだ。
(平成20年度予算案額:625百万円)
【機構・定員要求】
 防災科学技術の知見を、学校教育や社会教育等に積極的に活用していくための方策を検討・実現する必要があることから、防災科学技術推進室室長補佐1名、防災教育支援係長1名を要求した。
(防災科学技術推進室室長補佐1名措置)

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大臣官房政策課評価室

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