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全国都道府県教育委員会連合会平成十六年度第二回総会文部科学大臣挨拶


期日   平成17年1月20日
会場   フロラシオン青山

 全国都道府県教育委員会連合会総会の開催に当たり、一言御挨拶を申し上げます。
 皆様方におかれましては、各都道府県において、教育行政の責任者として日頃から御尽力いただいており、改めて敬意を表する次第であります。
 本日は、各都道府県の教育委員長と教育長の皆様方に、私の教育に対する基本的な考え方を申し上げるとともに、教育改革に関する文部科学省の今後の取り組みについて御説明したいと思います。

 私は、かねてから新しい時代の国づくりの基盤となるのは「人」であると考えておりました。文部科学大臣就任以来、その思いを一層強くしております。
 天然資源に恵まれない我が国にとって、人材こそが資源であるということは、日本国民共通の認識であったはずです。しかし、戦後の高度成長により、日本が豊かな国となり、何でも手に入る時代になって、我々はこの大切なことを忘れてしまったのではないでしょうか。

 近隣諸国が目覚しい経済発展を遂げ、世界はまさに国際的な「知」の大競争時代に入っており、各国とも国を挙げて教育改革を進めております。我が国だけが遅れを取るわけにはまいりません。
 我が国が、今後も競争力を維持し、将来にわたって活力ある国家として発展していくためには、知力、体力にすぐれ、品格、教養を備えた人材を輩出していくことが重要だということを再認識すべきです。

 私は、義務教育は、国家・社会の形成者たる国民の育成という観点と、日本に生まれた子どもたち一人一人に、その一生を幸せかつ有意義に生きるための土台をつくってやるという二つの目的をもっていると考えます。
 育ち盛りの子どもたちにとって、今日という日は一日しかありません。一日一日が大切であり、一日一日が勝負であります。今日受けた教育の影響は一生に及びます。

 私たちは、常に、考えられる最善の教育を子どもたちに与えていかなければなりません。そういう意味で、教育改革は永遠の課題であり、また喫緊の課題であります。旧来のやり方にとらわれることなく、改善すべき点は一刻も早く改めなければなりません。私は、そういう緊張感と責任感を持って、教育改革に取り組む覚悟であります。

 私は、このような思いで、昨年の十一月に「甦れ、日本!」と題する教育改革案を発表しました。
 この「甦れ、日本!」では、五つの改革案を示しております。
 第一に、教育の根本法である「教育基本法の改正」であります。
 第二に、学力向上を図るための方策を模索することであります。
 第三に、専門職大学院の設置や教員免許更新制などの「教員の質の向上」を図ることであります。
 第四に、「現場主義」の観点に立った学校・教育委員会の改革であります。
 第五に、「義務教育費国庫負担制度の改革」であります。

 この「甦れ、日本!」の基本は、二十一世紀の厳しい社会を生き抜くために、互いに切磋琢磨し、「頑張ることを応援する教育」を目標とし、「挑戦する精神」をもった子どもたちを育てる教育を目指すことであります。
 また、地方の自由度を高め、市町村や学校現場の権限を強化し、それぞれが創意工夫し、競い合って教育水準の向上に努めることを目指します。「現場主義」の徹底であります。

 これにより、各地方、各学校の責任は重くなります。どの学校、どの地域が素晴らしい教育を行っているか、いわば「次世代育成コンテスト」の時代になるということであります。
 学校、家庭、地域が一体となって、「子どもは国の宝、社会の宝である」という認識に立ち、子どもの教育の充実こそがそれぞれの地域と日本全体の将来を決定するとの決意と心構えをもって、学力の面でも、体力、健康、気力の育成の面でも、競い合って教育の質を高めていただきたいと考えております。

 また、教育の充実のためには、実際に指導に当たる教師の役割が極めて重要であり、教師がもっと尊敬される存在となる必要があると考えます。
 教師が日々研鑽を積み、切磋琢磨することにより、その資質・能力の向上を図ること、また、各学校では、教師が児童生徒や保護者の信頼、尊敬を得られるような関係を育み、規律をもって学習に集中できる環境を整えることが重要であると考えます。

 以上、私の教育に関する基本的な考えを申し上げました。次に、昨年末に公表された国際学力調査の結果を受けた、子どもたちの学力向上について申し上げます。

 先般、OECDやIEAの国際学力調査の結果が明らかになりました。
 その結果によれば、日本の子どもたちの学力は低下傾向にあります。このことは率直に認めなければなりません。
 特に読解力の大幅な低下など、現行の学習指導要領が目指したものが十分に達成されていないのではないかと考えられます。我が国がこれまでトップクラスにあった数学や理科の学力も低下傾向にあることについては、その背景や原因をしっかり分析する必要があります。
 そして、私がとりわけ憂慮するのは、子どもたちの学ぶ意欲が乏しいということであります。国際的に見て家庭学習の時間が最も少なく、逆にテレビやビデオを見る時間が最も長くなっています。

 子どもたちは、なぜ勉強をしなくなったのでしょうか。現行の学習指導要領における「ゆとり」とは、子どもたちが勉強をしなくてもよいということではなかったはずです。

 私は、子どもたちになぜ勉強しなければならないのかを教えるべきだと思います。この世に生を受け、充実した人生を送るためにはしっかりとした学力を身に付けることが必要であること、社会に出たら厳しい競争の世界が待っていることを自覚させ、動機付けをしっかり与えるとともに、互いに切磋琢磨して学び合う環境をつくり、世界トップレベルの学力の復活を目指さなければならないと考えます。
 今後は、今回の国際学力調査の結果の分析を基に、学習指導要領全体の見直し、教員の指導力の向上、全国学力調査の実施等について、速やかに改善策を講じたいと考えております。

 私は、「ゆとり」の中で自ら学び自ら考える力などの「生きる力」を育むという現行の学習指導要領の理念や目標に誤りはないと考えています。ただ、その狙いが十分に達成されているか、必要な手立てが十分講じられているか。ここに課題があると考えます。
 学習指導要領の見直しについては、昨年末に開催された中央教育審議会において、私から、こうした学習指導要領のねらいが必ずしも十分身に付いていない状況、さらには子どもたちの実態や社会・経済状況の変化等を踏まえ、教育課程の基準全体の見直しについて、本格的な検討に着手していただくようお願いいたしました。
近く、私としての問題意識を中教審に具体的にお示しした上で、精力的に審議を進めていただきたいと考えております。

 なお、昨日、いくつかの新聞において、私が「総合的な学習の時間」を削減するとの考え方を示したとの報道がなされましたが、これは、後ほど申し上げます第一回の「スクールミーティング」を行った際に、国語や算数などの授業時数が足りず中途半端になっているといった教職員の意見が背景にあったことを紹介するとともに、総合的な学習の時間の在り方を含め、授業時数の在り方など、考えなければならない課題がいろいろあるとの感想を述べたものであります。

 中教審にお示ししようとしている問題意識については、現在、まさに「スクールミーティング」の機会などを通じて、関係者の声を聞きながら整理しているところであります。追って、中教審に対し、正式にお示しすることとなりますので、その際には、各都道府県に対しても情報をお伝えし、今後の審議にも御協力いただきたいと考えております。

 以上、学力向上について述べてきましたが、私としては学力の問題だけでなく、新しい時代にふさわしい義務教育の在り方について、今まさに根本から全般にわたって議論を行う必要があると考えております。

 昨年末には、文部科学省を挙げて義務教育の問題に取り組むため、塩谷副大臣を本部長とする「義務教育改革推進本部」を設置したところであります。

 また、中央教育審議会に、新たに「義務教育特別委員会」を設置し、義務教育の在り方について総合的に検討していくこととしております
 その中では、将来を担う子どもたちを育成するために必要な教育内容、教師の質の向上、信頼される学校づくりと家庭・地域との連携、教育行政の在り方や国と地方の関係・役割、義務教育に係る費用負担の在り方など、幅広く義務教育の在り方を議論することとしております。

 また、これらの議論の中で、義務教育の根幹を支える義務教育費国庫負担金の問題についても検討を行うこととなっておりますが、昨年十一月の政府・与党合意では、「義務教育制度については、その根幹を維持し、国の責任を引き続き堅持するとの方針の下、費用負担についての地方案を生かす方策を検討し、また教育水準の維持向上を含む義務教育の在り方について幅広く検討する」こと、「こうした問題については、平成十七年秋までに中央教育審議会において結論を得る」こととされたところであります。

 今後、以上のような広範なテーマについて国民的な議論を深めていく必要があります。私は、議論する際には、実際に教育の任に当たっておられる教師や保護者、子どもたちなど、広く国民の声を十分お聞きしながら進めていくことが大切だと考えております。

 このため、文部科学省では、私を含め、二人の副大臣、二人の政務官、その他幹部職員が、学校を訪問し、教師や保護者、子どもと対話する「スクールミーティング」を新たに始めたところであり、三百校を目標に実施する予定です。私も早速、今週はじめに私の母校でもある宮崎県の中学校と高等学校を訪問いたしました。現場の率直な声を聞いてまいったところです。

 都道府県の委員長及び教育長の皆様方におかれましては、このような文部科学省の考え方を御理解いただき、訪問した折には、現場の声をしっかりと聞かせていただきますようお願いいたします。

 最後になりましたが、皆様方の益々の御活躍と本会の一層の御発展を心から祈念して、私の御挨拶といたします。


平成17年1月20日
 文部科学大臣 中山 成彬


-- 登録:平成21年以前 --