「図書館の設置及び運営上の望ましい基準」の告示について(平成24年12月19日 24文科生第572号 各都道府県教育委員会教育長あて 文部科学省生涯学習政策局長通知)

 このたび、別添のとおり、平成24年12月19日付けで、図書館法(昭和25年法律第118号)第7条の2に基づく「図書館の設置及び運営上の望ましい基準」(文部科学省告示第172号)が告示され、同日から施行されました。
 本告示は、1平成20年の図書館法改正、2社会の変化や新たな課題への対応の必要性などを受けて、「公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準」(平成13年文部科学省告示第132号)の全部を改正したものです。
 改正条文の概要及び留意事項は下記のとおりですので、貴教育委員会におかれましては、本基準を踏まえ、適切な取組を図るとともに、域内の市(特別区を含む。)町村教育委員会及び私立図書館に対し、本基準について周知を図るよう、お願いします。

記 

1 改正条文の概要

第1 総則

1 趣旨(第一の一関係)
本基準について、公立図書館に加え、私立図書館も新たに対象とすること。

 

2 設置の基本(第一の二関係)
1 市町村は、住民の生活圏、図書館の利用圏等を十分に考慮し、市町村立図書館及び分館等の設置に努めるとともに、必要に応じ移動図書館の活用を行うものとすること。併せて、市町村立図書館と公民館図書室等との連携を推進することにより、当該市町村の全域サービス網の整備に努めるものとすること。
2 都道府県の役割について引き続き規定すること。
3 公立図書館の設置に当たって必要な事項について引き続き規定すること。

 

3 運営の基本(第一の三関係)
1 図書館の設置者は、当該図書館の設置の目的を適切に達成するため、司書及び司書補の確保並びに資質・能力の向上に十分留意しつつ、必要な管理運営体制の構築に努めるものとすること。
2 市町村立図書館は、知識基盤社会における知識・情報の重要性を踏まえ、資料や情報の提供等の利用者及び住民に対する直接的なサービスの実施や、読書活動の振興を担う機関として、また、地域の情報拠点として、利用者及び住民の要望や社会の要請に応え、地域の実情に即した運営に努めるものとすること。また、図書館法第3条第1号の規定を踏まえ、図書館が扱う資料に「電磁的記録」が含まれることを明確化すること。
3 都道府県立図書館の役割について引き続き規定すること。
4 私立図書館は、当該図書館を設置する法人の目的及び当該図書館の設置の目的に基づき、広く公益に資するよう運営を行うことが望ましいものとすること。
5 図書館の設置者は、当該図書館の管理を他の者に行わせる場合には、当該図書館の事業の継続的かつ安定的な実施の確保、事業の水準の維持及び向上、司書及び司書補の確保並びに資質・能力の向上が図られるよう、管理者との緊密な連携の下に、この基準に定められた事項が確実に実施されるよう努めるものとすること。

 

4 連携・協力(第一の四関係)
1 連携・協力の目的として、高度化・多様化する利用者及び住民の要望に対応することに加え、利用者及び住民の学習活動を支援する機能の充実を図ることを規定すること。
2 図書館は、図書館相互の連携のみならず、国立国会図書館、地方公共団体の議会に附置する図書室、学校図書館及び大学図書館等の図書施設、学校、博物館及び公民館等の社会教育施設、関係行政機関並びに民間の調査研究施設及び民間団体等との連携にも努めるものとすること。

5 著作権等の権利の保護(第一の五関係)
図書館は、その運営に当たって、職員や利用者が著作権法その他の法令に規定する権利を侵害することのないよう努めるものとすること。
   
6 危機管理(第一の六関係)
1 図書館は、事故、災害その他非常の事態による被害を防止するため、当該図書館の特性を考慮しつつ、想定される事態に係る危機管理に関する手引書の作成、関係機関と連携した危機管理に関する訓練の定期的な実施その他の十分な措置を講じるものとすること。
2 図書館は、利用者の安全の確保のため、防災上及び衛生上必要な設備を備えるものとすること。

第2 市町村立図書館

1 管理運営(第二の一の1関係)
(1)基本的運営方針及び事業計画
1 市町村立図書館は、その設置の目的を踏まえ、社会の変化や地域の実情に応じ、当該図書館の事業の実施等に関する基本的運営方針を策定し、公表するよう努めるものとすること。
2 基本的運営方針を踏まえ、図書館サービスその他図書館の運営に関する適切な指標を選定し、これらに係る目標を設定するとともに、事業年度ごとに、当該事業年度の事業計画を策定し、公表するよう努めるものとすること。
3 基本的運営方針並びに指標、目標及び事業計画の策定に当たっては、利用者及び住民の要望並びに社会の要請に十分留意するものとすること。
(2)運営の状況に関する点検及び評価等
1 市町村立図書館は、各年度の図書館サービスその他図書館の運営の状況について、自ら点検及び評価を行うよう努めなければならないとすること。
2 1のほか、当該図書館の運営体制の整備の状況に応じ、図書館協議会の活用その他の方法により、関係者・第三者による評価を行うよう努めるものとすること。
3 1・2の結果に基づき、当該図書館の運営の改善を図るため必要な措置を講ずるよう努めなければならないとすること。
4 1~3の内容について、インターネット等を活用すること等により、積極的に公表するよう努めなければならないとすること。
(3)広報活動及び情報公開
積極的かつ計画的な広報活動及び情報公開について引き続き規定すること。
(4)開館日時等
開館日時の設定に当たって配慮する事項及び移動図書館を運行する場合に必要な事項について引き続き規定すること。

(5)図書館協議会
図書館法第16条の規定により条例で定める委員の任命の基準について規定すること。
(6)施設・設備
市町村立図書館は、高齢者、障害者、乳幼児とその保護者及び外国人その他特に配慮を必要とする者が図書館施設を円滑に利用できるよう、傾斜路や対面朗読室等の施設の整備、拡大読書器等資料の利用に必要な機器の整備、点字及び外国語による表示の充実等に努めるとともに、児童・青少年の利用を促進するため、専用スペースの確保等に努めるものとすること。
     
2 図書館資料(第二の一の2関係)
(1)図書館資料の収集等
1 市町村立図書館は、利用者及び住民の要望、社会の要請並びに地域の実情に十分留意しつつ、図書館資料の収集に関する方針を定め、公表するよう努めるものとすること。
2 1の方針を踏まえ、充実した図書館サービスを実施する上で必要となる十分な量の図書館資料を計画的に整備するよう努めるものとすること。また、郷土資料及び地方行政資料の電子化に努めるものとすること。
(2)図書館資料の組織化
市町村立図書館は、利用者の利便性の向上を図るため、図書館資料の分類、配架、目録・索引の整備等による組織化に十分配慮するとともに、書誌データの整備に努めるものとすること。
     
3 図書館サービス(第二の一の3関係)
(1)貸出サービス等
市町村立図書館は、貸出サービスの充実を図るとともに、予約制度や複写サービス等の運用により利用者の多様な資料要求に的確に応えるよう努めるものとすること。
(2)情報サービス
1 市町村立図書館は、インターネット等や商用データベース等の活用にも留意しつつ、レファレンスサービスの充実・高度化に努めるものとすること。
2 図書館の利用案内、テーマ別の資料案内、資料検索システムの供用等のサービスの充実に努めるものとすること。
3 利用者がインターネット等の利用により外部の情報にアクセスできる環境の提供、レフェラルサービスの実施に努めるものとすること。

(3)地域の課題に対応したサービス
市町村立図書館は、利用者及び住民の生活や仕事に関する課題や地域の課題の解決に向けた活動を支援するため、利用者及び住民の要望並びに地域の実情を踏まえ、次に掲げる事項その他のサービスの実施に努めるものとすること。
ア 就職・転職、起業、職業能力開発、日常の仕事等に関する資料及び情報の整備・提供
イ 子育て、教育、若者の自立支援、健康・医療、福祉、法律・司法手続等に関する資料及び情報の整備・提供
ウ 地方公共団体の政策決定、行政事務の執行・改善及びこれらに関する理解に必要な資料及び情報の整備・提供

(4)利用者に対応したサービス
市町村立図書館は、多様な利用者及び住民の利用を促進するため、関係機関・団体と連携を図りながら、次に掲げる事項その他のサービスの充実に努めるものとすること。

ア (児童・青少年に対するサービス) 児童・青少年用図書の整備・提供、児童・青少年の読書活動を促進するための読み聞かせ等の実施、その保護者等を対象とした講座・展示会の実施、学校等の教育施設等との連携
イ (高齢者に対するサービス) 大活字本、録音資料等の整備・提供、図書館利用の際の介助、図書館資料等の代読サービスの実施
ウ (障害者に対するサービス) 点字資料、大活字本、録音資料、手話や字幕入りの映像資料等の整備・提供、手話・筆談等によるコミュニケーションの確保、図書館利用の際の介助、図書館資料等の代読サービスの実施
エ (乳幼児とその保護者に対するサービス) 乳幼児向けの図書及び関連する資料・情報の整備・提供、読み聞かせの支援、講座・展示会の実施、託児サービスの実施
オ (外国人等に対するサービス) 外国語による利用案内の作成・頒布、外国語資料や各国事情に関する資料の整備・提供
カ (図書館への来館が困難な者に対するサービス) 宅配サービスの実施
(5)多様な学習機会の提供
1 利用者及び住民の自主的・自発的な学習活動を支援するための多様な学習機会の提供及びその活動環境の整備について引き続き規定したこと。共催の相手方として、関係行政機関を加えること
2 利用者及び住民の情報活用能力の向上を支援するために必要な学習機会の提供について引き続き規定すること。
(6)ボランティア活動等の促進
1 市町村立図書館は、図書館におけるボランティア活動が、住民等が学習の成果を活用する場であるとともに、図書館サービスの充実にも資するものであることにかんがみ、読み聞かせ、代読サービス等の多様なボランティア活動等の機会や場所を提供するよう努めるものとすること。
2 1の活動の機会や場所に関する情報の提供、当該活動を円滑に行うための研修等を実施するよう努めるものとすること。
     
4 職員(第二の一の4関係)
(1)職員の配置等
1 市町村教育委員会は、市町村立図書館の館長として、その職責にかんがみ、図書館サービスその他の図書館の運営及び行政に必要な知識・経験とともに、司書となる資格を有する者を任命することが望ましいものとすること。
2 市町村教育委員会は、市町村立図書館が専門的なサービスを実施するために必要な数の司書及び司書補を確保するよう、その積極的な採用及び処遇改善に努めるとともに、これら職員の職務の重要性にかんがみ、その資質・能力の向上を図る観点から、第1の4の2に規定する関係機関等との計画的な人事交流(複数の市町村又は都道府県の機関等との広域的な人事交流を含む。)に努めるものとすること。
3 司書及び司書補のほか、必要な数の職員を置くことについて引き続き規定すること。
4 外部の専門的知識・技術を有する者の協力を得ることについて引き続き規定すること。
(2)職員の研修
1 継続的・計画的な研修の実施等について引き続き規定すること。
2 市町村教育委員会は、市町村立図書館の館長その他の職員の資質・能力の向上を図るため、各種研修機会の拡充に努めるとともに、文部科学大臣及び都道府県教育委員会等が主催する研修その他必要な研修にこれら職員を参加させるよう努めるものとすること。

第3 都道府県立図書館

1 域内の図書館への支援(第二の二の1関係)
1 都道府県立図書館が当該都道府県内の図書館の求めに応じて支援に努める事項として、「郷土資料及び地方行政資料の電子化に関すること」を加えること。
2 当該都道府県内の図書館の間における情報の円滑な流通や、資料の貸出のための円滑な搬送の確保について引き続き規定すること。
3 当該都道府県内の図書館で構成する団体等を活用した図書館間の連絡調整について引き続き規定すること。
   
2 施設・設備(第二の二の2関係)
都道府県立図書館の施設・設備について引き続き規定すること。
     
3 調査研究(第二の二の3関係)
利用者及び住民の利用促進に向けた新たなサービス等に関する調査研究を加えること。
     
4 図書館資料(第二の二の4関係)
都道府県立図書館の図書館資料について引き続き規定すること。
     
5 職員(第二の二の5関係)
都道府県立図書館の職員について引き続き規定すること。
     
6 準用(第二の二の6関係)
第2に規定する市町村立図書館に係る基準を都道府県立図書館に準用することについて引き続き規定すること。

第4 私立図書館

1 管理運営(第三の一関係)
(1)運営の状況に関する点検及び評価等
1 私立図書館は、その運営が適切に行われるよう、図書館サービスその他図書館の運営に関する適切な指標を選定し、これらに係る目標を設定した上で、その目標の達成状況等に関し自ら点検及び評価を行うよう努めるものとすること。
2 1のほか、当該図書館の運営体制の整備の状況に応じ、関係者・第三者による評価を行うことが望ましいものとすること。
3 1・2の結果に基づき、当該図書館の運営の改善を図るため必要な措置を講ずるよう努めるものとすること。
4 1~3の内容について、積極的に公表するよう努めるものとすること。
(2)広報活動及び情報公開
私立図書館は、積極的かつ計画的な広報活動及び情報公開を行うことが望ましいものとすること。
(3)開館日時
私立図書館は、開館日・開館時間の設定に当たっては、多様な利用者に配慮することが望ましいものとすること。
(4)施設・設備
私立図書館は、その設置の目的に基づく図書館サービスの水準を達成するため、多様な利用者に配慮しつつ、必要な施設・設備を確保することが望ましいものとすること。
     
2 図書館資料(第三の二関係)
私立図書館は、当該図書館が対象とする専門分野に応じて、図書館資料を計画的かつ継続的に収集・組織化・保存し、利用に供することが望ましいものとすること。

3 図書館サービス(第三の三関係)
私立図書館は、当該図書館における資料及び情報の整備状況、多様な利用者の要望等に配慮して、閲覧・貸出・レファレンスサービス等のサービスを適切に提供することが望ましいものとすること。

4 職員(第三の四関係)
1 私立図書館には、専門的なサービスを実施するために必要な数の司書及び司書補その他職員を置くことが望ましいものとすること。
2 これら職員の資質・能力の向上を図るため、当該職員に対する研修の機会を確保することが望ましいものとすること。

2 留意事項

1 基準の対象に私立図書館を含めることについて(第一、第三関係)

    本基準は、平成20年の図書館法改正において、本基準の対象に私立図書館を加えることとされたことを踏まえ、私立図書館にも改善・充実が望まれる事項等について、望ましい姿を定めるものであって、これをもって教育委員会が私立図書館の事業に干渉することを求める趣旨ではないこと。        

2 図書館の扱う資料に「電磁的記録」を含むことを明確化したことについて(第一の三等関係)

    「電磁的記録」とは、具体的には、音楽、絵画、映像等をCDやDVD等の媒体で記録した資料や、図書館が所蔵する市場動向や統計情報等のデータ等を想定していること。したがって、インターネット等の利用により入手できる情報や、いわゆる商用データベースなどの図書館外部の資料は含まれず、これらについては第二の一の3の(二)において、別に定めていること。

3 運営の基本について(第一の三関係)

    地方自治法(昭和22年法律第67号)第244条の2第3項の規定により指定管理者制度を導入するに当たっては、「指定管理者制度の運用について」(平成22年12月28日総行経第38号)も参考にしつつ、経費削減効果のみに着目するのではなく、適切な指定期間の設定等に留意し、図書館の設置の目的の適切な達成を図ること。

4 著作権等の権利の保護について(第一の五、第二の一の2の(一)等関係)

  郷土資料及び地方行政資料の電子化に当たっても、著作権の保護が必要となる場合もあることに留意すること。

5 基本的運営方針及び事業計画について(第二の一の1の(一)関係)

    図書館が果たすべき役割を含め、図書館の事業に関する基本的な運営の方針を明らかにするとともに、毎事業年度の事業計画を策定・公表することにより、事業の計画的な遂行を図り、広く図書館への関心を高め、理解を得るよう努めること。

6 運営の状況に関する点検及び評価等について(第二の一の1の(二)関係)

    平成20年の図書館法改正において、図書館の運営状況に関する評価及び改善並びに地域住民等に対する情報提供が努力義務化されたことを踏まえ、図書館における着実な実施を図ること。目標の設定に当たっては、「図書館の設置及び運営上の望ましい基準について」(平成24年8月 これからの図書館の在り方検討協力者会議)に掲載されている「目標基準例」(日本図書館協会作成)も参考にしつつ、数値で設定することのできるものはできる限り数値目標とすること。

7 子どもの読書活動の推進について(第二の一の3の(四)関係)

    本基準に加え、子どもの読書活動の推進に関する法律(平成13年法律第154号)第9条に基づく子ども読書活動推進基本計画も踏まえ、図書館における子どもの読書活動の推進を図ること。

 

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総合教育政策局地域学習推進課

(総合教育政策局地域学習推進課)

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